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【黒ウィズ】フェアリーコード Story4章 ~激突~

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最終更新者:にゃん


目次


Story1 重なる響き

Story2 はちゃめちゃデビル

Story3 広がる翅音

Story4 暴走





登場人物




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story 重なる響き


wRこのおっ!!

 グレムリンは、空中を飛び回りながら機関銃を連射した。

飛来する弾丸の雨を、ミホロは軽やかに飛んでかわす。

彼女自身の運動性や反射神経の賜物ではない。彼女がまとう装甲――ハビィの計算と判断に、音を通じて直感的に従った結果だ。

ハビィの声――電子音が響く。現状況において最適な格闘マニューバが構築され、ミホロの身体に伝わっていく。

あとはそれに従うだけでいい。

Mやあっ!

 右から行くと見せてフェイント。鋭く左から旋回しつつ接近。機関銃の銃身を弾きながら蹴りつける。

ハビィの装甲はー種の強化服だ。ミホロの動きは数倍のすばやさを、ミホロの力は数十倍の強さを発揮する。

グレムリンは翅音を展開して楯にした。強烈なー打が、翅音をギシギシ軋ませる。

wR強エなァ、てめェ!だが、機械ならよォ!

 グレムリンの翅音から、いびつな音が広がる。機械に干渉し、その電気信号を自在に操る音。グレムリンの得意技だ。

だが。

Mてえいっ!

 ミホロはさらに、怒涛の連撃を繰り出した。拳の雨が降り注ぎ、グレムリンの翅音に罅を入れていく。

wRな、なんで効かねえ!?

Mそういうの、やめてくださいハビィが嫌がってます!

wR嫌がる――?まさか――まさか!

こいつ――機械に心があるのかぁっ!?

 電子音が響く。そうだ、と言うように。

続くミホロのー撃が、ついにグレムリンの翅音を打ち砕いた。


 ***


wRし――知っているぞ聞いたことがある!

どこかの人間が、フェアリーコードを組み込んだ機械を作ったって!その機械が心を持って、妖精と戦っているって!

〈HEARTBEAT(ハートビート)〉――それがそいつかぁっ!

 翅音を失い、地に落ちたグレムリンは、怒りに任せてがむしゃらに機関銃を連射する。

wRくそっ!くそっ!ふざけるな、ふざけるな!まがいもののくせに!機械のくせに!そんなのに、俺が、妖精が負けるなんて!

 ハビィの電子音が鳴った。その思いを、ミホロは言葉に換える。

M『動物も、植物も、風も空も大地も心があって、その心から来る音が、世界の形を作ってる』

『機械の生み出す音だって、心から来たものなら、他の誰とも変わりはしない』――ハビィはそう言ってます!

wR使われてろよ――機械ならさあっ!

M『ハビィは誰にも使われない。自分で決めて、自分で生きる!』

『だから心の音色が響く!』

 ――そう。だからこそミホロは、ハビィと共に戦うことを決めたのだ。

フェアリーコードを組み込まれ、心を得たハビィ、自分の道を探して研究所を飛び出したハビィ。妖精に襲われるミホロを助けてくれたハビィ。

生まれたての心で、誰かを守ると決めたハビィ。ハビィがハビィであったから、その心、思いに胸を打たれたから、だからミホロも決めたのだ。

ハビィといっしょに戦うことを。見捨てられないものすべて、見捨てることなく助けることを。

M決めるよ、ハビィ!

 ハビィが応える。外部装甲が展開し、ミホロの身体をさらした。展開した装甲に、ミホロは両手を当てる。

円盤状のパーツをスクラッチ。ハビィとミホロ、ふたりの心の音を刻む。確かな勝利につながる音を。

wRくそ、くそ、くそっ!

 ミホロを襲う銃撃の雨は、広がる翅音に弾かれる。

h『こっちの音色はふたり分――そんな音では通じない!

ふたりの気持ちで、打ち砕く――!』


 ***


 激しい音の衝撃が、グレムリンを押しつぶす。

wRぐえっ……!

 動けない。動きようもない。ミホロとハビィ――重なり合ったふたりの音が、重石となって妖精を地に縛りつけている。

ミホロとハビィは、さらなる音を奏でた。ふたりの音がひとつになって、いくつもの音のミサイルを生み出していく。

wRな、ちょ、え、うわ――

hてぇぇえええいっ!

 無数の音のミサイルが、問答無用でグレムリンに着弾した。

wRぬがあぁああああぁあああっ!

 到底、耐えきれるものではない。グレムリンは絶叫を上げて弾け散った。


h……ふう。

 すうっ、と道路に着地し、ー息。ハビィが労りの声を上げる。

hうん、大丈夫。ありがとう、ハビィ。

 うなずいて、ミホロは東京タワーに視線を向ける。

フェアリーコードの乱れが激しくなっていた。ミホロにそれを感じる力はないが、ハビィが感じたことなら、なんでもわかる。

hまずい――よね、あれ。

 そりゃそうだ、とばかりハビィ。

hオーケー、ハビィ。すぐに行かないと!

 何より頼もしい装甲を再びまとい、ミホロは混沌の空へと舞い上がった。




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story はちゃめちゃデビル


 君たちは東京タワーを目指し、最短距離を突っ走っていた。

ルミスがギンを抱え、リレイも自前の翅音で飛ぶ。普通なら、生身の君では追いつけない。

無理しないで、魔法使いさん!私たちだけでも、がんばるから!

 そうはいかない、と君は首を横に振る。

困っている人を助ける。君の魔法は、そのためにある。だから、意地でもついていってみせる、と。

その思いにカードが応え、音を奏でた。その音が、君に〝魔法を使う〟力を与える。

君は風の魔法を使い、自分の身体を吹っ飛ばす。そうして跳躍と着地を繰り返し、どうにかルミスたちに追いすがった。

おっ、いい音!やるね、魔法使いさん!

酔狂ね。あなたにとっては縁もゆかりもないでしょうに。

 たとえ来たばかりの世界でも、危機に瀕しているなら、じっとしているなんてできないよ、と君は答えた。

そのとき。


待てぇーーーーっ、ごちそぉーーーーっ!

 上からディギィが降ってきた。

なんで上から、などと考えている暇はない。君は咄嵯に防御障壁を真上に展開。振り下ろされる斧を受け止めた。

障壁が、ー撃で砕け散る。斧はそのままルミスに迫った。

それはちょっと!

 リレイの射撃。弾丸が斧に命中し、その軌道を逸らす。


行って、ルミちゃん!この子、私が止めとくから!

わかった!ありがと、リレイ!

ちょっとー!勝手に決めないでよー!


 加速するルミス、に向かうディギィ、の背中に君は立て続けに魔法を飛ばした。

ちょこざいか!

 魔法はことごとく斧に断ち割られるが、足を止めることには成功した。


ひとりで相手をするのは無茶にゃ。私たちが協力するにゃ!

ほんと?ありがとう!

ええー。

私たちの力を合わせれば無敵にゃ!

よーし!絶対に止めるぞー!

ええええええー。

 ものすごく不満そうな顔をするディギィに、君とリレイは全力で攻撃を打ち込んだ。



 ***

 BOSS:ティギィ

 ***


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story2 広がる翅音



でりゃーい!

 無造作な斧のー閃が衝撃波を巻き起こし、君とリレイに襲いかかる。

君たちは左右に散って回避した。衝撃波は道路を撃砕、まっぷたつにする。

君はいくつかの魔法をディギィに放った。

爆発する火球を飛ばして牽制。ディギィがヒョイとかわしたところへ、リレイの銃弾が飛んでいく。

うざざのざ!

 ディギィの姿がかすんだ。残像すらまとうほどのジグザグ高速飛行で、銃弾すべてをかわしてり、リレイに迫る。

その眼前に、1枚のカードが躍った。

ほにゃらら!?

読み通りにゃ!

 そう来るだろう、と思って使っておいた、時限式の罠魔法が発動。強烈な魔力がディギィを襲うが――

にゃろ!

 寸前、ディギィは斧の弦をかき鳴らした。音圧が詐裂してディギィの身体を吹き飛ばし、魔力の範囲の外に逃がす。

リレイが銃弾で追撃するも、ディギィは飛来する銃弾を連続で踏んでかわす。

君は驚いた。今の手で仕留められるとは思っていなかったが、まさか無傷で切り抜けるとは!


すごいね、あの子。めちゃくちゃノッてる。

ま、あ、ね、っと!

 3回連続で弾丸を踏んでから、ディギィはニッと笑みを見せた。

あんたたちも、いー音してんじゃん。

どうも!でも、だからって、あげないよ!

おあいにく!あたし、グルメだからちょっといい音してるくらいじゃ、食べる気にゃーなんないね!

高鳴りすぎて止まんなくなっちゃったくらい、でかくてー途で激しい音色!そうでなくっちゃ食べた気しない!だから!

 ディギィが来る。弾丸のごとく。


ギンの音色はあたしの獲物ォッ!!

 高速飛行からの斬撃ー閃。君の防御障壁とリレイの短音が合わさり、辛うじてそのー撃を食い止める。

音色――?おギンさんの!?

 ぱちぱちと翅音で鍔迫り合いながら、リレイはハッと声を上げた。

待って、それって――!!



 ***



ここでいいのね!?ギン!

 ルミスは、慎重にギンを地面に降ろした。

そびえたつ塔――東京タワー。周囲の音は外れきり、異様な旋律を奏でている。

う……。

 ギンは、苦しげにうめき、よろめいた。その背を、ルミスはあわてて支える。

ギンは微笑み、添えられたルミスの手にそっと触れた。

ありがとう、ルミス。これで――


「これで、悲願が果たせる。」


 音が弾けた。

 ギンから。ギンの身体を中心に。嵐のような音があふれて、ルミスの身体を吹き飛ばした。

なっ――

 翅音を広げ、空中で体勢を整える。大きく見聞かれた夜空色の瞳に、目の前の光景が映り込んだ。


翅音。

広がっている。ギンの背から。世界を引き裂かんばかりの音の嵐を奏でて。

ああ……やっと楽になった。ここまで護衛してくれてありがとう、ルミス。

 ギンは、あの紅い結晶を取り出した。

それは彼女の左手の上で歪み、変形し、笛の生えた楯のような形状を取った。

何が起きているのか。まるでわからず、茫然となるルミスに、ギンは、優しさと痛みの混じった瞳を向ける。


純粋ね。妖精は。だけど――

人間は、性悪よ。




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story 暴走


なんて音色――!こんなものを、隠していたなんて……!!

音を閉じ込め、結晶化する。それが、あたしの力よ。冬化生――ケラッハ・ヴェールの。

ケラッハ・ヴェール!?

 その名は、ルミスも知っている。冬に現れ、雪を降らせるという、スコットランドに伝わる魔女妖精(ハグ)である。

だが、なぜ日本生まれの人間であるギンが、遠い異国の妖精の力を宿しているのか。いや、そもそも――

どういうこと?何をしようとしているの?あなたは!

 ギンは答えず、ふわりと宙に舞い上がる。

視線が向くのは、東京タワーの頂――フェアリーコードの乱れが最も激しい場所。

ギンが、フェアリーコードの乱れを止めるために来たのではないとすれば。音の塊を別の用途に使うとすれば、それは――

ギンっ!!

 ルミスはフィドルを剣に変え、ー直線にギンヘと向かった。

対してギンは、そっと左手の楯をかざす。

激突。ルミスのー刀は、たやすく受け止められた。冷たく澄みきった音が響く。

ごめんね、ルミス。

邪魔をするなら、ここで手折(たお)るわ。あなたでも!

 ギンの音が膨れ上がった。

空いた右手が、ルミスの胴に叩き込まれる。ルミスは咄嵯に翅音を割り込ませたが、その上から、凄まじい音の詐裂が走った。

ああっ……!

wルミちゃん!


 声。

ルミスは、なすすべもなく宙を舞いながら、ちぎれかけた意識をどうにか保って、後ろを振り向く。

どういうわけか、リレイと魔法使い、それにディギィが、こちらに飛んでくるところだった。

ギンに翅音が生えてるにゃ!

うわー、あきれMAX。あんたたちホントに、あいつが何かも知らずに守ってたの?うーわー。

おギンさん――妖精だったの!?

人間よ。生まれはね。

ただ、この地のフェアリーコードが乱れたとき、その余波で、身体に音が宿ったの。ケラッハ・ヴェールと同種の音が。

言うなれば、半人半精ってところかしら。

だったら……わかるはずでしょう!?今、フェアリーコードがどんなに危ないか!

早く止めなきゃ、世界が壊れるあなたの友達は、それを止めようとしたんでしょ!?

そう――

 ギンは、憂えげに目を伏せた。尽きせぬ痛みに耐えかねたように。

みんなは、この世界を守るため――自分という音を挿げることで、フェアリーコードに空いた穴を埋めた。

それでも足りなくて、大きな被害が出たわ。地獄のような炎が、街全体に燃え広がった。今では、明暦の大火と呼ばれているんだったわね。

え?明暦の大火、って、確か……江戸時代の!?

以来、あたしは世界をさすらい、探してきた。犠牲になった友達を助けられる方法を。

それが、これよ。

世界各地で集めに集めた音の塊。これなら彼らの代わりに穴を埋め、彼らを助けることができる。

まさか、あなた……そのために、フェアリーコードに穴を開けようっていうの!?

そうしないと、彼らを助けられないでしょう?

そうだけど……!そんなことしたら、あなたがかって見た以上の惨劇が起こるかもしれないのよ!

あなたの友達は、それを防ぎたくて我が身を賭したんでしょうに!

ええ。そうよ。でも――そんなの不平等だって思わない?

なぜ、妖精だけが我が身を賭さねばならないの?なぜ、人間は何も知らず守られているだけなの?

あなたの言う通りよ――ルミス。妖精は世界を愛し、守ろうとする。でも人は違う。人は世界より自分が大事。

だから、人も、犠牲を払うべきなのよ。妖精だけに、辛い仕事を押しつけずに。

あなたはっ……!

……まだ、崩壊までには猶予がある。あなたたちは早く去りなさい。この地が焼け野原になる前に。

 それだけ言い残して、ギンは真上に跳び上がった。

待ちなさ――

 追いかけようとしたルミスが、空中で、ガクンとくずおれた。

そのまま力を失い、落下していく。

ルミちゃん!



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Fairy Chord

00. Fairy Chord Prelude
  序章前編後編
2019
01/17
01. Fairy Chord
  序章
2019
03/14
02. ルミス編(GP2019)08/30
03. リレイ編(GP2019)09/12
04. フェアリーコード2
  序章
2019
11/26
05. フェアリーコード3
  序章
2020
07/14

コメント (フェアリーコード Story4)
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  • 最終投稿日時 2020/07/17 02:44
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