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【黒ウィズ】メインストーリー 第10章 Story1

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最終更新者:にゃん

中央本部 ノクトニアポリス

2016年6月28日



目次


Story1 ノクトニアポリス

Story2 手荒い出迎え

Story3 中央の守り

Story4 天を衝く柱

Story5 三つの影

Story6 戦いの混乱

Story7 月夜に走る

Story8 眼下の敵

Story9 正しさを信じる

Story10 最後の壁

ノクトニアポリス Story2





story1 ノクトニアポリス



ヴェルタでウィズの〈神託の指輪〉を手に入れた君たちは、魔道士ギルド・中央本部へ向かった。

「中央」という言葉には畏怖とも忌避ともとれる響きがある。

そこは、魔道士たちが欲望の対価として、友情も信念も誇りも売り払ってしまう場所。そんな風に噂されている。

「息苦しい所にゃ。」

出来ることなら近寄りたくない。ウィズの本音が見え隠れした言葉だ。

でもそういうわけにはいかない。と君はウィズに言う。

「わかっているにゃ。私たちにはあそこに行く理由があるにゃ。行って……やらないといけないことがあるにゃ。」

うん、と君はウィズの言葉にひとつ頷く。ふと、ある疑問が君の脳裏に浮かぶ。

戦いとは全く無関係な疑問である。目の前に迫る戦いの気配に対して、逃避的な思考をしているのかもしれない。

「どうしたにゃ?」

クォ、アナスタシア、ウィズ……。四聖賢のほとんどがいないのに、どうやって中央は機能しているのか?

「四聖賢なんてただのお飾りにゃ。もちろんそれなりの権力はあるけど、実際に魔道士たちをまとめるのは別の人間がやっているにゃ。」

そうなんだ、と君は返した。

「私がそんな面倒なことを、やりたがると思っていたのかにゃ。」

思わないね。と率直に君は言った。

「少なくとも私の代の四聖賢は、そんなことを買って出る人はいないにゃ。」

その魔道士たちをまとめている人物に協力を求められないだろうか? と君はウィズに訊ねる。

「……難しいかもしれないにゃ。中央の魔道士は全て敵だと思った方がいいにゃ。」

そう言って、ウィズは中央へ続く道を見やる。むしろその道に潜む張りつめた殺気に対して目をやっている。

少し前から殺気は、突き刺すように君に向けられていた。前途は多難……だが――。

それは承知の上である。




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story2 手荒い出迎え



中央ギルドのある一室――。

不穏さと禍々しさをギュウギュウに詰め込んだような気配がその部屋を支配していた。

そこにふたつの影が、佇んでいる。

  クォ  アナスタシア

「どうですか? 久々の中央への帰還は?」

「何もないわ。何かあるとても思う? クォ、そういうあなたはどうなの?」

「情緒的な感想は一切ないですね。ただ、利用価値のある場所だとは思っていますよ。」

「それがなければ、こんな所には来ないわ。」

「その通りですね。」

割って入るように、部屋の扉を開け放つ音が鳴り、それに続いてカツカツとブーツの腫が部屋の中に響き渡る。その音だけで、怒りや憤りが容易に伝わってくる。

「おやおや……」

靴音はそれが持つ憤りをぶつけたい相手の前までやってくるとピタリと止んだ。

「なんですか、“坊ちゃん”? そんなに怖い顔をして……。」

「私の名前はルベリだ。馬鹿にするような口の利き方は慎んでもらいたい、クォ様。」

「いやいや、これは失礼。つい昔のくせが出てしまいました。で――。何の御用でしょうか? “坊ちゃん”。」

口の端を噛みしめ、ルベリは切り出した。

「……しらばっくれるな。勝手に魔道士を動かしてあなたたちは一体何をしている。返答次第では……。」

「返答次第によっては、何なのかしら?」

先ほどまで興味無さそうに背を向けていたアナスタシアが唐突に口を開いた。

それだけで、その場が凍りつき、喉元から出かかっていたルベリの言葉は殺されてしまう。

「私たち、四聖賢が何をしようと、あなたには関係ないことよ。」

「そうです。我々は最高意思決定機関なのですからね。あなたの偉大なお父様がそうであったようにね。“坊ちゃん”。」

「グッ……。」

「立ち去りなさい。」

悔しさにわななきながら踵を返すルベリをクォが呼び止める。

「そうそう、もうすぐここに黒猫を連れた魔法使いがやって来ます。捕まえてください。」

「私が……?」

「できるでしょう。偉大なお父様から頂いた“彼ら”を使えば。」

「…………。」

来た時とは裏腹な靴音を立て、ルベリは立ち去って行く。


「さて、遊んでばかりもいられませんね。私たちも計画を進めましょう。」

「…………。」

「〈鍵〉の在り処を、突き止めなければいけませんね。」


 ***


廊下を進むルベリとその影がある。突然、影はルベリと歩調を違えて、ひとりでに彼の前を進み始める。

それを見て、ルベリは立ち止まる。すると影からは人の形をしたものが浮き上がってくる。

「黒猫の魔法使いを捕まえろ。」

「まさか本気で従うのですか……?」

「奴らの命令だからではない。これは私の意思だ。」

「承知いたしました。」

そう言って、男は影の中に消えて、影はルベリの足元に戻ってゆく。

そしてルベリは何事もなかったかのように歩き出す。



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story3 中央の守り



「ここまで来るだけで、大変な苦労にゃ。」

そこには激しい戦いの爪痕と意識を失って横たわる敵側の魔道士たちがいる。

先が思いやられるね……。と君はため息交じりに漏らす。と、ウィズは進んできた道を振り返って言った。

「真面目な話、この調子で戦い続けたら中央に辿り着く前にこっちが力尽きてしまうにゃ。

たぶんそれがクォの狙いにゃ。クォの考えそうなことにゃ。」

力を温存するためには極力、戦いを避けた方が良い。それはわかっているが……。

ここまで敵側の魔道士が多いと見つからずにやり過ごすことも難しいかもしれない。

中央の魔道士は全て敵だと思った方が良い。ウィズはそう言ったが、それがどれほど大変なことか、ここまでの道程で思い知らされた。

「向こうに辿り着いたら、隠れる場所がいくらかはあるにゃ。そこまでは一気に駆け抜けるしかないにゃ。」

君は力強く頷くと、目的地の方にそびえる巨大な“柱”を見据えた。


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story4



その“柱”はまるで逆だった。自然の摂理や本来そうあるべき姿からは、まるで逆だった。

空の上、のそのまた上。もう見えなくなるくらい上からその“柱”は地上へ向かって伸びていた。

君は思わず呆然とその“柱”を見上げた。

「ボーっとしている場合じゃないにゃ。」

ウィズの言葉に君は慌てて、思考を切り替える。目の前の荒唐無稽な光景に目を奪われて、今の状況を忘れそうだった。

ウィズの言う通り、ボーっとしている場合ではなかった。

君は中央の全ての魔道士に追われる身なのだ。しかも敵陣の真っ只中の、中央都市でだ。

「急ぐにゃ! 見つからないうちに隠れるにゃ。」

隠れながら進む。おそらくこの街にいるであろうクォとアナスタシアの近くまで、そうやって進むしかない。

君はウィズの後を追い、路地へと体を滑り込ませる。

後ろを振り返っても、追手の気配はなかった。これで当面は目の前に現れる敵を少しずつ倒せばいい。

少しは楽な状況になったはずだ。


あれが黒猫の魔法使い?

……のようだな。

なんだか頼りないのね。

資料には目を通したのだろ?

もちろん。

それなら理解しているだろ。油断はできん。

了解。


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story5 三つの影



時折遭遇する魔道士を退けつつ、君は路地を進む。

地理に明るく、目立たない猫の姿のウィズが先導することで、突然敵と出会うことは減った。

むしろ、こちらの動きを悟られにくい分、こちらが先手を打てる。

「多勢に無勢」も戦い方次第――。

路地の曲がり角からウィズが顔を出して、首を傾げて見せる。

「この先に敵はいないみたいにゃ……。」

それ以外は敵だらけだけど……というのは置いておいて、君はウィズの元へと素早く近づく。

すると、どうやらウィズが妙な違和感を感じていることに、君は気づく。

「見るにゃ。」

首をクイッとしゃくりあげて、前方の建物に君の注意を促す。

見ると、ひと際白い壁面を誇り、そびえ立つ建造物が先に見える。城……のように見えなくもない。

何の建物? と君はウィズに聞き返す。

「魔道士ギルドの行政を担っている場所にゃ。あそこの警戒は、いつもなら高いはずにゃ。」

そこまで言われて、君もようやく周囲の状況に気づく。

敵の気配が全くない。これまで追手や闇討ちの気配に終始神経を苛まれてきた。だがいまはそれがない。

一瞬安堵しかかる君を、すぐにこれまでの戦いの経験が戒める。これで終わるわけがない。むしろ、より悪い何かが……。

「……始まったにゃ。」

君の考えを代弁するようにウィズがぽつりと呟いた。すると……。

白い建造物へ伸びていく道の、透視図法的な直線から、ただの陰影だと思っていた部分が奇妙に騒き始める。

影はすうっと君に向かって伸びてくる。そして目の前までやってきて、生き物のように盛り上がると、人の形を成し始める。

それは君を取り囲むように三つあった。

気づかれたか……。なかなか鋭敏な感覚を持っている。

気づかなかったら、そのまま始末しちゃう所だったよ。

でも弱ければ……。結局始末されちゃうんだけどね。

三方を取り囲まれている……。ちょうど君の前方だけが開けている。

突っ切るしかない! と君はわき目を振らず、一歩を踏み出す。


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story6 戦いの混乱



右へ。

わかってるって。

ほらほら、黒猫の魔法使いさん。追いついちゃうわよ。


背後の空間を左右縦横に使って、3人は君を追い立てる。

右にも左も立ち止まることも許さない構えで、執拗な追跡を続けてくる。

「戦い方が手慣れているにゃ。」

一糸乱れぬ統率のとれた行動である。しかもこれほど自在な動きをほとんど3人の呼吸だけで成立させている。

いままでの敵とは一味もニ昧も違うことは、容易に見て取れた。

どこかから『いたぞ!』という叫ぶ声が聞こえる……。

「他の魔道士にも見つかったにゃ。いずれここに大挙してやってくるにゃ。」

どうすればいい? と君はウィズに意見を求めた。

「まずは後ろの厄介な奴らを倒して、身を隠すにゃ。」

君もウィズと同じ考えだった。後ろの3人を討ち、それから――。

と、君は急速に反転して、背後の追手に対して身構える。翻るローブが反転運動の流れに引かれていく。

視界からローブの布が消えてゆくよりも早く、準備していた魔法を、挨拶がてら放とうとするが……。

そこには誰もいなかった。路地の横道や屋根に隠れているようでもなかった。

「消えたにゃ……?」

次第に君の居場所を探し求める声が大きくなり、その数も次々に増してくる。

そして『見つけたぞ!』という声。

どうやら次は、別の問題を考えないといけないようだった。


 ***


騒動を聞きつけてやってきた服道士たちの第一陣を君は素早く打ち倒した。

だが、まだまだやってくるはずだ。訳のわからない3人に追いかけられて、多くの魔道士に自分の居場所を知られてしまった。

君は次の襲撃に備えて、神経を研ぎ澄ます。

しんとした時間が流れてゆく。やけに長い間。

「これは……?」

君もこの感覚を思い出す。先はどの3人が登場してきたのと同じ感覚だ。

と思った矢先、冷たい舌が君の背中をなめるような殺気を感じて、飛びのく。

振り返ると、先はどの3人が君の後ろに立ってこちらを見ていた。


余計な魔道士たちなら始末しておいた。

騒ぎが大きくなると面倒だから始末しておいたってこと。

驚かせたのは悪かったけど……これも私たちの役目なの。

むやみやたらとルベリ様に近づかせる訳にはいかないのだ。

ルベリ……? と君はウィズに小声で訊ねた。

「来る前に言った魔道士ギルドを仕切っている人物にゃ。そういえば特殊な魔道士部隊を連れているとは聞いたことがあるにゃ。」

確かに特殊な連中だ……。


ついて来い……。

君がすぐには一歩を踏み出さないのを見て、3人のうちのひとりが言った。

ついて来いよ。どうせどこ行っても敵だらけだぜ。

それなら、彼らについて行くのも……一緒か。と君は結論付けて、彼らの後を追った。

3人と君はゆっくりと最初に見た白亜のように白い屋敷へと向かって行った。


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story7 月夜に走る



3人についていくと、屋敷の一室に通された。

一室の真ん中には大きな机があり、その奥に誰かがいるのはわかった。

だがその顔は影に覆われていた。

机の上には書類が山積みされており、執務の忙しさは容易に見て取れる。

あれだけの量の仕事をひとりでこなしているのだろうか。

書類の山の後ろの人影は、大回りに机を迂回してゆっくりと君の前までやってくる。

少し見えた横顔は、まだ若い青年の面影があった。

「私はルベリ。ここの責任者のようなことをやっている。」

そう言った人物は、やはり想像していたよりも若かった。

「みんな私を見てそんな顔をする。思ったよりも若いだろ?

……でも誰かがやらなければいけない。

四聖賢が好き勝手なことをしているのなら、誰かが魔道士ギルドをまとめなければいけない。

それが私だった。それだけだ。何も特別なことはない。」

彼はきっぱりとそう言い切った。本当に、何も特別なことはないかのように。

「率直に言おう。私に協力してほしい。」

君はここの魔道士は全て自分の敵だと思っていた、そう彼に返答した。

どうして協力を願い出たのか、不思議だったからだ。

彼の率直な言葉が、君の素直な疑問を引き出したようだった。

「クォとアナスタシアのふたりがここに帰ってきた。それは知っているな?」

君はこくりとひとつ頷いた。

「だから君はここにいる。君はあのふたりを追ってここにやってきた。……だからだよ。」

君の反応を見て、ルベリは続けた。

「敵の敵は……味方だ。

と言ってもこれは一時的なものだ。君はウィズの弟子なんだろ。しかも腕も立つ。

君が四聖賢なんてものに興味を持ったら……。君もやっぱり私の敵だ。」

四聖賢が嫌いなの? と君は返した。

「嫌いだよ。ここの状況を見て、どうやって好きになれるんだ?

あいつらはただ魔法の力が強いというだけで、偉そうにしている性格破綻者だ。

四聖賢なんてものがなければ、世界はもっと良くなっていた。」

ウィズは違うと思う。君はルベリに言った。

「大きな違いはないよ。私たちから見ればね。」


「言い争ったところで無駄にゃ。彼の言うことはある意味では正しいにゃ。」

ウィズは君にだけ聞こえる声で囁いた。

彼を知ってるの? と君はウィズに返す。

「名前だけは知っているにゃ。むしろ彼よりは……」

ウィズが言いかけたところで、ルベリが君に向かって面白そうに問いかける。


「本当に猫を連れているんだね。一体何のために?」

まさか師匠だとも四聖賢だとも言えないで、君が答えに窮していると……。

「人の趣味にどうこう言うつもりはないよ。それよりも計画の話をしよう。」

計画? と君は聞き返してしまう。

「そう計画……。クォとアナスタシアの暗殺だ。」

ルベリは事も無げにそう言い放ったが、その言葉が彼には不釣り合いだった。

やはり、若過ぎる。君はそう感じた。



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story7 怪しく光る月



雲の上の高地から見る月は、遮るものもなく、いつも以上に澄んだ光を放っていた。

それは美しいというよりも妖しい、そんなふうに形容されそうな光だ。

月の光が持つ奇妙な力。怪しい力。

君の胸が、いつもより少し早く鼓動を刻んでいるのも、そんな月の力が原因していたかもしれない。

「緊張しているのかにゃ?」

していないと言えば嘘になる。昼間の喧騒とはうって変わったように静かな路地に君はいた。

そこに集まることになっていたのだ。

「困るな……。そんなことでは。」

声の方を見やると、壁の窪みにできた影だと思い、気にも留めなかった場所に彼は立っていた。

もうふたりも続いて姿を現す。

まさか初めてというわけではないでしょ?

君はその問いに返事をしなかった。


 ***


「何を驚いた顔をしている? 私が変なことを言ったか?

君だってそのつもりでここに来たんだろ。

まさかアナスタシアやクォと会ってお茶でもするつもりじゃないだろ?」

唐突な『暗殺』という言葉は、君を動揺させた。ルベリの言う通り、君は何事かを成すためにここに来た。

クォとアナスタシアを止めるために……。

止めるため……。止める……。恐ろしくうろんな言葉だ。

その言葉が、「暗殺」と言う言葉によって、恐ろしくはっきりとした輪郭を得て、現実味を帯びた。

それは君を戦慄させた。

「今夜、クォに面会を求める。ふたりきりでだ。君は私の部下と共に面会場所まで来てくれ。警備網を抜け、速やかに……。」

アナスタシアの方はどうする? と君は訊ねた。

「クォが死んでも、アナスタシアは何とも思わないそういう関係だ、彼らは。

そして、そういう人間の集まりだよ、四聖賢というのは……。」

『…………。』


 ***


何してる? 置いていくぜ。一気に警備の目を抜けていくんだ。

ぼんやりしている暇はないぞ。

冷静に考える時間もないようだ。




<悩んでいるのかにゃ?



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story8 眼下の敵


(あそこにクォとルベリがいるはずにゃ。行くにゃ。)



君は妖しく月が照らす闇の中を駆け抜けていた。警備に立つ魔道士との戦闘はできる限り避けつつ目的の屋敷へと向かった。

クォとルベリはそこで面会する手はずなのだ。


「ん? ……なんだ? ……こ……れは……。」

警備の魔道士が力なく君の方へと倒れ込む。その体を受け止めて、ゆっくりと地面へと寝かせる。

それを見て、

やさしいのね。

決してほめたような口調ではなく、やや侮蔑的な響きさえあった。

けれども、まだ君の中にも迷いはあった。迷いがあるだけに……。

余計な争いは避けたかった。


ここから先は四方に分かれる。各自説明した通りの経路で、目的地に辿り着け。

障害になる者は、適宜殲滅しろ。

彼らはずっとこんなことをしていたのだろうか。声から察するに、まだ若い者もいる……。

なんだよ? 何かわからないことがあるのか?

君は何も言わず、首を横に振る。

では、各自、進め!

その声を皮切りに、彼らは君の前からいなくなる。


「さ、私たちも行くにゃ。遅れを取るわけにはいかないにゃ。」

動こうとしない君を見て、ウィズは珍しく厳しい口調で言った。

「クォ相手に、同情するほど君は強いのかな?」

……そうだった。まずはクォの喉元にたどり着く。そして……。

決着をつける。そのことに集中しなければ……。こちらがやられる。

君は拳に力を込め、一瞬の遅れを取り戻すべく走り出した。


お前は奴の後を追え。

はい……。


クエスト

迷いは残る

 改めて出発にゃ。

 休息が恋しいにゃ。

何も考えず

 守りが堅くなってきたにゃ。

 クォに近づいた証拠にゃ。


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story9 正しさを信じる


「なんですか? 用と言うのは。また……噛みつきに来たんですか?」

「違う。あの時は私もどうかしていた。……頭に血が上っていた。」

「成長の跡が見えますね。それでいいと思いますよ。

こうしてあなたがギルド本部を統率している姿を知れば、亡くなられたお父上もお喜びになるでしょう。

まさか、魔法の使えないあなたが、こうなるとは思いもしなかったでしょうしね。」

その言葉にルベリは悔しさを押し殺すように歯噛みした。

「…………。」

「魔道士ギルドを統括している者が魔法を使えない。皮肉が効いていて面白いじゃないですか。」

「……そんなことよりも知りたくないのか? 〈鍵〉の在り処を……。」

「ほう……。」

「知りたい、と顔に書いているぞ。こちらの条件を呑めば教えてやる。」

クォは顎を撫でながら、ルベリに流し目を送る。

「……お断りします。私がいつまでもそんなことに拘泥しているとは思わないで下さい。

その情報が欲しければ、あなたを尋問すればいいだけです。……いますぐにでも、ね。」

「…………!」

「ところで黒猫の魔法使いの件はどうなっていますか?

何もなく、そんなことで私を呼び出したのなら、覚悟はしてもらいますよ。

私も、アナスタシアも、無能は嫌いなんですよ。……坊ちゃん。」

「待て。いま部下がその魔法使いを捕まえて連れてくるはずだ。

もうしばらく待ってほしい……。」

「いいでしょう……もうしばらくは待ちましょう。」


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story10 最後の壁


<そろそろにゃ。
 他のみんなも到着してるかにゃ?




君はふと立ち止まり、夜空を見上げる。

落ち着いて見ると、その建造物がどれほど異様なものか、改めて感じる。

本部の中心地にでかでかとそびえ立つ塔。のようなものは空の彼方に消えるまで伸びている。

「〈ノクトニアの柱〉。なんでこんなものがあるのか、一体何のためにあるのか。

私たちの誰も知らないにゃ。

伝説では古代の人々と、ノクトニアとの世界を繋ぐものだと言われているにゃ。」

そして、古代の人々の過ちから、その柱は創造主ノクトニア自身がへし折った。

以来それは半ば崩壌した姿のまま、天から垂れ下がっている。

それが〈ノクトニアの柱〉だとウィズは語った。


これまで、色々な場所を回り、色々なものを見たし、聞いた。

ロレンツィオの禽獣の話。オウランディの風の秘宝。アユ・タラのオベルタワー。

そのどれよりも、不思議で、常識はずれなもの、それが〈ノクトニアの柱〉だ。

そう感じざるを得なかった。


「この中央本部のもうひとつの目的は、〈ノクトニアの柱〉の再建にゃ。

柱の周りを囲むように立つ塔を見るにゃ。あれが三属性の塔〈ドライ・エレメンティア〉にゃ。あそこから恒常的に放出されている魔法の力によって、年々崩壊が進む柱を維持しているにゃ。」

壮大な計画だね、と君は素直に感想を言った。

「人間にはそういう大きな計画が必要らしいにゃ。この計画を考えた人が言うには。」

ウィズは補足するように、君に言う。

「言ったのは……。あのルベリの父親にゃ。私の前の四聖賢にゃ。」

だから……ウィズはルベリの名前だけは知っていると言ったのか。

「……でも〈ノクトニアの柱〉には別のバターンの伝説もあるにゃ。」

どういうこと? と君は聞き返した。

「ノクトニアの地まで届こうと目指し人間たちがこの塔を作り、

その傲慢さに怒ったノクトニアが柱をへし折った……。」

まさしくいま計画していることそのものだ

「アナスタシアにしても……そうだけど、人間の分を越えたものは、過ちに限りなく近いものにゃ。」


気配がした。異様な殺気が混じった気配だった。おそらくただの警備の魔道士ではないだろう。

少しおしゃべりが過ぎたみたいだ。そろそろ仕事に戻らなくていけない。

そして、クォを、アナスタシアの計画を、止めなくてはいけない。

もはや過ちとしかいいようのない、彼らの計画を。

「あまり派手にはいけないにゃ。騒ぎが広がる前に決着をつけるにゃ。」




<いまは目の前のことに集中するにゃ。
 迷っていたとしても、負けるわけにはいかないにゃ。



警備の要である魔道士を倒し、君は目的の屋敷に忍び込む。

指定された部屋のベランダに入り込むと、窓越しに中を覗いた。


「そろそろ時間としましょうか。もう十分待ったでしょう。」

「チィ……。」

「私に無意味な時間を費やさせた罪は重いですよ。」


「どういうことにゃ!」

計画が狂っている……。君がどうしようか考えていると、

背後で誰かが囁いた。

3ルベリ様を助けるぞ。

見ると、別れたはずの彼が君の後ろに立っていた。

だが、まだ襲撃の時間ではない……。他の経路からやってくる者がすべてそろっているとは限らない。

「見殺しにはできないにゃ。」

君はウィズの一言に頷き、窓に手をかける。

押し開け。飛び込む。クォ目がけて、魔法の一撃を叩き込もうとした瞬間、

君は動きを止める。いや止められた。

君の両足は、自分の影の中から伸びる手に掴まれて、首筋には背後から冷たいものが押し当てられていた。


ルベリ様。問題の魔法使い……。ここに捕らえました。

「……よくやった。クォ、これでも私は無能か?」

その言葉を聞いて、クォはパチパチと嫌味ったらしい音の拍手を打つ。

「……いいえ。お見事です。よくできましたね。坊ちゃん。」

裏切られた……!? 君は目の前の光景に、ただ拘束された体を揺らすしかできなかった。




(にゃ……!? 裏切られたにゃ?)


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