ハリム・思い出

ハリムの思い出とボイス

思い出1

ハリム

…………

布で口元を隠した青年が、

じっとこちらを見つめている。

ぞぐり――と。

ナイフを突き立てられるような

冷たい威圧感……

アイリス

あなたは……？

ハリム

……ハリムだ。

アイリス

ハリムさん？　はじめまして－―

ハリム

なれ合う気はない。

ぴしゃりと言い捨て、

ハリムはその場を去る。

キャトラ

何よアレぇー！？

失礼しちゃうわ～！

アイリス

怖そうだけど……

なんだか悲しそうな人……

思い出2

―ぞぐり、と、

またあの威圧感が襲った。

次の瞬間、

頬をかすめて飛んだナイフが、

近くの木の幹に突き刺さる。

キャトラ

あ、あ、あ、あっぶなぁ～っ！？

何よいきなりぃ～っ！？

ハリム

……危ないところだったな。

キャトラ

あ、危ないどころじゃないわよ！

（主人公）、

大丈夫ぅ！？

ハリム

危うく蚊に刺されるところだった。

キャトラ

は？　今のアンタが投げたわけ！？

蚊をやっつけるためにぃ！？

ハリム

そうだ。

キャトラ

し、信じらんな～い！

ハリム

そうか。だが事実、

俺のナイフは蚊を仕留めた。

キャトラ

そっちじゃなくて！

そんなことでナイフを投げる神経が

信じられないって言ってるの～！

ハリムは答えず、

ナイフを回収して去っていく。

アイリス

すごい腕ね……

あの人、何者なのかしら

キャトラ

ただの危険人物よ、もぉーっ！

思い出3

ハリム

（主人公）……

といったか。

ぞぐり―威圧感と共に、

ハリムの声がかかる。

ハリム

空を飛ぶ島……大したものだ。

うまく使えば、

一財産を稼げるだろう……

キャトラ

な、何よ！

まさか奪う気じゃないでしょうね！

ハリム

今のところ、そのつもりはない。

だが……

ハリム

（主人公）。

おまえに聞いておきたい。

ハリム

おまえたちは、

なんのためにこの島を使う。

ハリム

この島を使って何を得る―？

富か……栄誉か―

ハリムの瞳に冷たい光が輝く。

返答次第で、

それは刃と変わるのだろう……

キャトラ

ふんだ！

（主人公）は

そんなこと考えてないわよ～だ！

ハリム

なら、

純粋な冒険心、というところか……

ふと、ハリムの放つ威圧感が緩む。

……笑ったのかもしれない。

ハリム

ならばいい。お前の欲望が

それだけで済んでいるうちは、

まだ……な。

思い出4

アイリス

あの、ハリムさん……

ハリム

……なんだ。

アイリス

ハリムさんは、

どうしてこの島に……？

ハリム

……正義のためだ。

キャトラ

せ、正義ぃ～っ！？

ハリム

どうした。

俺はおかしなことを言ったか？

キャトラ

アンタがそういうコト言うタイプ

だなんて、思ってもなかったわ……

ハリム

あいにく、俺は常に正義のために

戦ってきた。弱者をしいたげる、

金持ちどもを相手にな。

キャトラ

金持ちと戦う、って……

泥棒ってこと！？

ハリム

まあな。民を苦しめ、私腹を肥やす

連中から、金を奪って民に配る……

犯罪者には違いない。

ハリム

だが、それでもやらねばならない。

泥に沈んだ正義を拾い上げるには、

汚名をかぶるほかにない……

キャトラ

じゃあ、

アンタがこの島に来たのって……

ハリム

そこから先は自分で考えるんだな……

思い出5

―ぞぐり、と、

ナイフでえぐられるような威圧感が

全身を襲う。

アイリス

（主人公）……？

どうしたの……？

ハリムだ。姿はない－だがいる。

どこかに。

隠れてこちらを見つめている―

この気配は、殺気だ。

ハリムがこちらを狙っているのだ。

冷たく凍える刃の瞳で……

ハリム

…………

こちらを一撃で仕留められる瞬間を

……探している……！

思い出6

―飛び出たハリムが、

こちらの首筋に伸ばした指先を、

寸前で止めた。

ハリム

……気づいていたか。

ハリム

それに、この光。穏やかで尊い……

これが、お前のなかの

光だというのか？

キャトラ

ハリム、アンタ……

ハリム

……かつて俺は、

ある男の命を奪った。

ハリム

金の亡者だった。弱者を苦しめる

最悪の存在だった。ヤツのせいで、

多くの民が命を落とした……

ハリム

警告はダメだった。命を奪うしか

止める手立てがなかった。

だから俺が手を下した……

ハリム

だが……今でも疑っている。

本当にそれしかなかったのかと……

他に方法はなかったのかと……

アイリス

ハリムさん―

ハリム

……俺は見極めなければならない。

おまえが、この島を使って、

善を保つか、悪に堕するのか……

ハリムは手を引き、

口元の布を下した。

あらわになった素顔で―彼は、

しっかりとこちらを見つめてくる。

ハリム

悪となるなら、

俺はおまえを討つだろう。

ハリム

だが……それまでは―

ボイス

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