白黒のチェス盤 沈黙の対峙
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あらすじ | |
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あのお方に誓ったことは必ずやり遂げねばならない。しかし、目の前の人と対峙した時、クローカの短剣は初めて躊躇いを見せた。 | |
(闇夜に鋭い光が閃く。クローカの背後の兵士たちが、一斉に剣を抜いていた) (クローカは動くことができず、背筋は硬直し、絞るように声を発した) | |
クローカ | |
殿下……な、なぜ、あなたがここにいるのですか? | |
ロイス | |
約束通り、急いで帰ってきたんだよ。 それで、かわいい子猫ちゃん。君はここで何をしているのかな? | |
クローカ | |
私は……。 | |
(ロイスは椅子から立ち上がると、クローカに詰め寄った。彼の王冠が美しい輝きを放ち、度を過ぎたクローカの行いに警告を発している) (クローカの瞳の中で煌めくその輝きはまるで涙のようで、彼女の心臓は狂ったように跳ね続けていた) (彼女は一言の嘘も言えなかった) | |
クローカ | |
私は……あるものを取りに来ました。 | |
ロイス | |
ここにあるものは、全て王室の所有物だよ。君に持ち去る資格など、恐らくないよね? | |
(ロイスは一歩踏み出した。クローカは短剣を握りしめながら、無意識のうちに後ずさりする) | |
クローカ | |
……はい。 | |
(クローカの手は汗で濡れていた。こんなところでロイスに鉢合わせするとは思いもせず、重苦しい空気は鮮血よりもさらに恐ろしかった) | |
クローカ | |
……しかし、これは私の任務です。あなたに阻止されようとも、私は完遂させなければなりません。 | |
ロイス | |
つまりこの瞬間、僕とは反対側の立場を選択したわけだね。 | |
クローカ | |
……。 はい。 | |
ロイス | |
その答えを聞いてとても残念だよ、クローカ。通りたければ、君は僕の死体を踏み超えて行くしかない。 | |
(クローカはどうすることもできずにロイスを見つめた。彼の金髪は月光を浴び、触れてはいけない神聖な光を帯びている) | |
クローカ | |
私は……。 | |
(振り返ると、背後に控えた全身武装の兵士が自分を見ていた。彼らは、あのお方の最も鋭い剣が、任務を遂行するのを待っているのだ) | |
(呼吸音が、次第にハッキリとしたものになっていく。クローカは短剣を握るその手を押さえつけたが、それでも震えてしまった) (あのお方の任務に対して、クローカが躊躇うのはこれが初めてだ) | |
クローカ | |
もうどんなミスも犯しません。 | |
(突然、あのお方とのかつての約束が脳裏に蘇った。カッと燃えるように、衝動と勇気が「血の契りの印」に沿ってクローカの全身を駆け巡る) (思考を凌駕し、クローカの体が勝手に動き出す) (クローカは妖しげな足取りでロイスに突進すると、鋭利な切っ先をその喉元に突き付けた。ゴクリと喉ぼとけが上下に動く) (耳鳴りがして、心の奥底で狂ったように増幅した欲望が、世界を呑み込んだ。クローカの顔は歪み、鮮血を求めて自我が暴走しようとしている) (その時、クローカの心の中にある真っ暗な深淵から、小さな声が聞こえてきた) | |
クローカ、君は?君の理想は何だい?これが、自分のために選択した君の人生なのかい? | |
クローカ | |
(……これが、自分のために選択した人生?) | |
もしそんな日が来るのなら、君の見つけた道が後悔しない道であってほしいよ。 | |
(その声は揺らめくロウソクの火ような、微かな光だった。しかしそれは、衝動を抑えつけるクローカの勇気に少しばかりの火を灯す) | |
クローカ | |
(あのお方の最も鋭い剣になり、影に潜んで自我を捨てる……これが自分のために選択した人生?) (これが後悔しない道……?) | |
(その瞬間、ロイスがクローカの頭を撫でた。それは相手を安心させる魔法のような温かい手だった) (かつて数え切れないほどの夜に、彼女は内に秘めた感情を自分で慰めてきた) (数え切れないほどの夜に、彼女は明日を迎えることはないかもしれないと思っていた) (不思議な力がクローカの心を宥め、破壊衝動は血の契りの印へと引いていった。世界が彩りを取り戻していく) | |
クローカ、 | |
(ロイスの声は遥か彼方から聞こえてくるようだった。それは、クローカの耳に朝日のように優しく届く) | |
君が全てを捨て去ることができないのは、わかっているよ。 | |
(クローカは唇を噛みしめ、必死にロイスを見つめた。彼女の爪は手のひらに深く埋まり、短剣はついにゆっくりと床に置かれた) | |
兵士 | |
プランBを実行する。 | |
クローカ | |
(プランB……どういうこと?) | |
(訝しんでいると、ロイスがクローカを強く引き寄せた。直後、放たれた剣撃が彼の腕を深く刺す。そこはクローカが立っていた場所だった) | |
クローカ | |
殿下……なぜ……。 | |
(兵士たちが手にしている剣は冷たく光り、ロイス、そしてクローカにも向けられていた) | |
ロイス | |
これまでは、いつも君が僕を守ってくれたから、今度は僕が君を守る番さ。 | |
(鮮血が視界に広がる。ロイスの手がクローカの顔を覆うと、懐かしい温もりと不思議な花の香りに包まれて、意識が遠ざかっていった) | |
ロイス | |
ゆっくりおやすみ、僕のクローカ。君が目を覚ました時には、全てが良くなっているよ。 その時、君はやりたいことが何でもできるようになっている。この僕が保証するさ。 | |
クローカ | |
(殿下……) | |
(クローカの意識は、深層へと落ちていった) |
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