イベント【9日間夜話】 薔薇の宿命
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あらすじ | |
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薔薇園の中のアイリは、過去を捨てて力を手に入れた。しかし、彼女が執着しているものは、既に当初の理想ではなくなっていた。ニキが薔薇の宝箱を開けると、その中の光が歳月を越えてアイリとニキを包み込んだのだった……。 | |
(大きなスクリーンに映るスコアがまた目に止まった。結果は何も変わっていなかった) (ニキにはすでに周囲の騒がしい声が聞こえなくなっていた。額の細かい汗は頬を伝い流れ、固く握った拳はわずかに震えている) | |
モモ | |
ニキ……。 | |
ニキ | |
私は間違っていた……。 | |
モモ | |
ニキ、何か言った? | |
ニキ | |
私は間違っていたんだ。 人生は一人ひとり違うもの。境遇や立場を理解することは難しい。身をもって経験していない私が語ることはできない……。 つらい時にだけ誰かが助けたとしても解決には至らない……苦しみを忘れることを弱いと責めることは、誰にも許されない……。 | |
ニキ | |
私は暗闇の中にいる人の一筋の光になりたかったけど、とても難しかった。私は何もわかっていない、ただの身の程知らずだった……。 | |
モモ | |
ニキ、動揺しちゃダメ!テーマは変だし、ここに来てから色々あったけど……嵯耶王の遺作はポポを探す手がかりなんだから!ボクたちの希望だよ! ……もしかして、諦めるつもり? | |
ニキ | |
私……。 | |
アイリ | |
諦める?やはり強者に出会うと、逃亡を選択するのね? | |
(ハイヒールの音が一歩一歩、ゆっくりと鮮明になっていく。アイリがニキの目の前まで歩みを進めた) | |
アイリ | |
例えあなたが諦めなかったとしても、結果は同じよ。 | |
(アイリの後ろにいるスタッフは、彼女が勝ち取った二つの宝箱を捧げた。ステージ後方にある最後の宝箱は、まだ照明の下に鎮座している) (最後の宝箱に施されている薔薇の花は、先ほど記憶の中で見た、アイリの周りで狂い咲く薔薇とよく似ていた) | |
司会者 | |
第3回戦バトルスタート、テーマは闇夜の薔薇! | |
「薔薇の宝箱が何を意味していると思う?」 | |
ニキ | |
薔薇の宝箱……その意味……? | |
「それは神の証、もう一つの世界に通じる鍵」 「それを手に入れるということは、神に代わってマーベル大陸全土の宿命を背負うということ。全ての人間の苦痛もまた、その身に受けるということ」 「お前が見てきたものなど、その1万分の1にも満たない。誰もが平等に幸せを得るなど、ただの幻想であり、実現することはない。ただし……」 「お前が代わりに、この世界の絶望をその身に受けるというのなら……」 | |
ニキ | |
私……。 | |
「マーベル大陸がお前を選んだのかもしれないが、俺はいい選択だとは思っていない」 「本当の救世主とは、絶望を含む全てを背負い、神に代わって世界を救うことができるはずだ。もちろん、仲間も救えるだろうさ」 「誰も傷つくことはなく、そしてお前も、道徳と良心の呵責から抜け出すことができる」 「神の証は、神の力を有する者に与えられるべきだ」 | |
ニキ | |
……神の力を有する者? | |
(笑い声が雲を抜けて、ニキのすぐ傍まで近づいてきた。現れた大きな人影は見覚えのある顔だった) | |
蕭縦 | |
例えば、俺だ。 | |
ニキ | |
……あなたなら、本当にこの世界を救えるの? | |
蕭縦 | |
お安い御用だ。 | |
ニキ | |
本当に誰も傷つかないし、誰も苦痛を感じない? | |
蕭縦 | |
当然だ。 | |
(ザザーッ!) (突如、波のような水の音が耳に響いた。蕭縦が何かを言っているのは見えたが、その声は聞こえなくなった) | |
(透き通る日差しの中、あの二人の少年が海辺にいる姿が見えた。彼らの手に握られているのは……二つのデザイン図だ) | |
「最も偉大なデザイナーになる?それはいい考えだ」 | |
「じゃあ、どっちが先になれるか勝負だ!」 | |
(波が全てを覆って引いた後、現れたのは宣言通りに対峙する二人の姿だった) | |
「……もう一つの世界が本当に存在したとして、どうやって行くんだ?兄さん、変な幻想に囚われないで!」 | |
「お前は何もわかっていない!いや……わかる奴なんていない!」 | |
「確かに俺にはわからない。どうして兄さんが、こんな風になってしまったのかもわからない……」 | |
「それはお前が凡人だからだ。いや、世界中みんな凡人だ!私の相手になる者は存在しない!このままではもう一つの世界に行くことさえ……」 | |
「兄さん……」 | |
「明日、出発する」 | |
「……何だって!?」 | |
「お前みたいな人間と一緒にいても、私の見識は狭くなるばかりで、インスピレーションは命を失ってしまう。だから、明日ここを去る」 | |
「今まで、上手くやってきたじゃないか。どうして急に去ろうとするの?俺たち、兄弟弟子で一番の友達じゃなかったの?なにかの……冗談だよね?」 | |
「友達?……これからは違う」 | |
(夜の帳が下り、炎が闇を照らした。投げ入れられたデザイン図は一瞬で灰と化したが、それでも少年の瞳を明るくすることはできなかった) (そのデザイン図が燃え尽きる前に、ニキは水色のスカートの図を見た。海中を泳ぐ魚、夏を感じるデザート。それは深海のお茶会だった) (右下には小さな文字で「不思議なお茶会、嵯耶に贈る」と書かれている) | |
(炎は消え、再び夜の闇になる。山頂から降り注ぐ月明りが、ニキの瞳にぼんやりと映った。その光景は、ここにくる前の竹林と同じだ) (山頂には、酒を飲む蕭縦の姿があった。その背後から現れたのは、海辺で見た少年の一人、弟弟子の方だった) (蕭縦が頭を傾けて酒を一口飲むと少年の姿は消え、一枚のデザイン図がニキの足元へと舞い落ちてきた) (ニキは埃を被っていたデザイン図を拾い上げて、軽く払った。すると雲の上でティータイムを楽しむ少女の絵が現れた。雲海のお茶会だ) (右下には小さな文字で、「不思議なお茶会、兄さんに贈る」と書かれている) (その瞬間、ニキは何かを閃いた) | |
ニキ | |
どうしてこんなことに……。 あのデザイン図は焼かれるべきではなかったし、このデザイン図も忘れ去られるべきじゃない……どちらもこんなに美しい記憶なのに……。 私……。 | |
(ニキはデザイン図をしまい、今にもこぼれ落ちそうな涙を拭った) | |
ニキ | |
私は諦めないわ。ポポ、私は諦めないから! | |
コーデバトル | |
(初めてニキがバトルに勝つと、戻ってきたのはあの緊迫した空気のコンテスト会場ではなく、宮殿の前だった) (この宮殿を、ニキは覚えていた) | |
ニキ | |
……カルファの王宮。 | |
(かすかな香りが風に漂ってくる。導かれるように、ニキは王宮内の薔薇園へと足を踏み入れた) (花園の真ん中で座っているのは、待ちくたびれた様子のアイリだった) | |
ニキ | |
アイリ女王……。 | |
アイリ | |
私がなぜ王宮内に薔薇園を作って、毎日来ているか知っているかしら? | |
(突然の質問にニキはうろたえ、答えるべきかどうかわからなかった) | |
アイリ | |
薔薇が好きなわけじゃないわ。かつて9日間戦争で受けた屈辱を忘れず、カルファのために薔薇の宝箱を奪い、全てを倍にして仕返しするためよ。 | |
(アイリの声に勢いはなく、弱々しくてどこか独り言のようだった) | |
ニキ | |
薔薇の宝箱に何が入っていたか、知っていますか? | |
アイリ | |
……そんなことは重要ではないわ。力さえ手に入れることができれば……。 | |
ニキ | |
違います!とても重要なことです。 | |
(アイリの前で、ニキは薔薇の彫刻が施された宝箱を開いた) (紫色の髪をした小さな女の子が、宝箱の傍に現れた。そして目の前に次々と情景が映し出されていく) (小さな孤児院、貧しいクルゴの町、薄暗い聖堂、先代国王のベッドサイドにいる二人の女の子……それはアイリが忘れてしまった記憶だった) | |
「いつの日か私は権力を手にし、カルファの国土から涙と不公平をなくす」 | |
アイリ | |
いつの日か私は権力を手にし……。 | |
(アイリは目に涙をいっぱいにため、手を伸ばして小さな女の子の幻影に触れようとした。その瞬間、女の子は消えてしまった) | |
アイリ | |
……カルファの国土から涙と不公平をなくす。 | |
(アイリの涙はついに流れ落ちることなく、王杖だけが地面に落ちて冷たい音を鳴らした) | |
アイリ | |
私は……自分の誓いに背いて、エリスの理想を忘れた……私にこの権力を持つ資格はない……。 | |
(ニキは思い切って、アイリの手を優しく握った) | |
ニキ | |
大丈夫、大丈夫です。 過去を取り戻すことはできません。その悲しみを原動力にして、初心に返りましょう。そして、これからの時間を使い、償いをしませんか? これはあなたの人生よ。忘却や逃避では他人を欺けても、自分の心を騙すことはできないわ。自分に誇りをもって生きなくちゃダメ。 | |
(ニキが薔薇の宝箱を手渡すと、アイリは空っぽの宝箱をぼんやりと見下ろして、少ししてから突然笑い出した) (そして彼女は宝箱を抱きしめ、薔薇の花園へと消えていった) (アイリが消えると同時に、宮殿もバラバラに崩壊を始めた) | |
ニキ | |
この言葉は、あなたにも言っているのよ、ニキ。 | |
モモ | |
ニキ!やっと戻ってきた! | |
ニキ | |
ここは……。 | |
モモ | |
忘れたの?ボクたちはここから9日間戦争へタイムトラベルしたんだよ! | |
ニキ | |
9日間戦争……そうよ、最後だけ勝てたんだった!薔薇の宝箱を手に入れて……。 | |
蕭縦 | |
その通り、お前は勝った。だが惜しいことに選択を誤った。 | |
モモ | |
またお前か!お前は一体何がしたいんだよ! | |
蕭縦 | |
小娘、救世主はお前が想像しているほど甘くない。お前は神の力を持っていないし、自分を傷つけ、全ての者を傷つけることしかできない。 | |
ニキ | |
少なくともアイリを助けることができたわ。彼女は過去を思い出して、昔の自分を取り戻して……。 | |
蕭縦 | |
フンッ、助けただと? もしかしてお前、本当に9日間戦争に参加したと思っているのか? | |
モモ | |
なにっ!?あれは本当の9日間戦争じゃないの? | |
ニキ | |
……あなたの罠だったの!? | |
蕭縦 | |
あの程度で苦しむなら、現実世界はお前にとって絶望でしかない。今ならまだ間に合う。9日間戦争に戻り、宝箱を俺に渡せ。これが一番いい選択だ。 | |
モモ | |
このおじさんは何言ってるんだ!?ニキがお前なんかに薔薇の宝箱を渡すもんか! | |
(ニキは夜の竹林で拾った、例のデザイン図を取り出した) | |
ニキ | |
これはあなたのでしょ? | |
蕭縦 | |
……こんなもの、この俺に相応しくない。 | |
ニキ | |
あなたのでしょう?幻の世界で拾ったものよ。あの海辺の波の音も……あなたが忘れたいと思っている記憶なんでしょう? これは苦しみの始まりの象徴なのかもしれない。でも、美しい記憶の証拠でもある。こんな素敵なデザイン図は忘れ去られるべきじゃないと思うの。 | |
蕭縦 | |
役に立たないものは捨てるべきだ。役に立たない人間が、捨てられるようにな。 小娘、お前はまだこの道理がわかっていない。だからここで敵意をむき出しにして、自分が正しいと主張する。 | |
ニキ | |
ええ、わからないわ。でも苦しみも自分の一部だもの。受け入れられるかどうかは別として、私に原動力をもたらしてくれるわ。 苦しむことで成長できたわ。その経験から、苦しみから抜け出す方法も覚えた。忘却と逃避では意味がないの。 美しい記憶は捨てられるべきではないわ。私は記憶と夢を、この大陸全ての人に返すって決めたの! 薔薇の宝箱は渡さない!これはポポを見つけるカギ。マーベル大陸の夢、希望。そして、私の宿命。これが背負うべき苦しみなら、私は受け入れるわ。 | |
蕭縦 | |
本当にそうなのか?宿命の苦しみに息ができなくなるほど押し潰された時、後悔しても間に合わんぞ。 | |
ニキ | |
私は後悔しないわ。たとえ選択を誤っても、またやり直す。だから、私は後悔しない! | |
(ニキが薔薇の宝箱を開けた瞬間、光が溢れ出し、幻の世界に亀裂が生じた……) (ニキは苦しみを抱える選択をし、1万分の1……いや、1億分の1のチャンスを選択した) (果てしなく長い未来への道のり。荊を切り裂き、道を作ることを選択したのだ) |
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