イベント【静謐な花園】 春の盛
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(新暦677年、月下城) (春の盛り、城外は翡翠色の山々に取り囲まれ、城内は柳が芽吹いて霞がかかったようだった) (城主府の花園では、桃が見頃を迎えていた。梢は美しい色に染まり、春の息吹に満ちている) (春風が桃の枝先をかすめ、微かな響きを残していった。震える花の間を縫って暖かい光が差し込む) (庭からは、澄んだ笑い声が微かに聞こえていた) (少女は蝶の刺繍が施された桃色の衣装を纏っている。黒く豊かな髪を折れそうなほど細い腰まで垂らし、それは体の動きと共に揺れていた) | |
帰舟 | |
姉さん、上手だね! | |
(少年の声に、少女は動きを止めて振り返った。ほど近い場所から、少年がその美しい顔に笑み浮かべてこちらを見ている) | |
離笙 | |
また逃げ出したのか。父上に言いつけられた宿題はどうしたのじゃ? | |
帰舟 | |
つまらない宿題より、姉さんと遊びたいよ……それ、新しい踊り?姉さんが考えたの? | |
離笙 | |
そうじゃ。舟はどう思う? | |
帰舟 | |
綺麗だよ!ほら、『彷彿として軽雲の蔽月の如く、飄ようとして流風の回雪の如し』……まるで姉さんのためにある言葉だね。 | |
離笙 | |
お世辞が巧いことよ。 | |
(少女は笑いながら帰舟のおでこをつついた。化粧っ気もないのに絵のように美しい顔。綻ぶ笑顔は春風のようだ) | |
帰舟 | |
本当だよ。月下城下広しといえど、姉さんほどの舞い手はいない!そうだ、この舞の名前は? | |
離笙 | |
まだ決めかねておる。年末に行われる祈りの舞なのじゃが、未完成で……完成したら、舟が考えてくれぬか? | |
帰舟 | |
よーし、月下城中を驚かすような名前をつけてあげるよ! | |
離笙 | |
「天下にその名を轟かす」ような名前じゃな。しかし、宿題もちゃんとやらねばな。父上に見つかったら、またお叱りを受けるぞ。 | |
帰舟 | |
わかったよ……じゃあ、姉さんもう一度踊ってみせてよ。まだ最後まで見てないんだ! | |
離笙 | |
よいぞ。では、見終わったら戻るのじゃぞ。男に二言はないな? | |
帰舟 | |
わかったよ! | |
(少女は長い袖をひらめかせ、身を傾けて踊り始めた) (舞う長い袖、烏のような黒髪、揺らめく袂。たおやかな姿が躍動し、活き活きとした動きはまるで天女のようだった) (少女は桃の木の下でクルクルと回った) (吹き抜けていく春風が桃の枝を揺らし、庭に花の雨を降らせた) (天地の間を舞う桃色の花びらの中、少女は踊りに没頭した。その姿は、まるで花の間をひらひらと舞う蝶のようだ) (傍らの青い服の少年は心酔し、拍手喝采を送る) (拍手や笑い声は高い壁を越え、暖かな春の日差しの中に長く響いた) |
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