イベント【静謐な花園】 籠の中の鳥
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(城主府) (揺れる蝋燭の火と、時おり芯が燃える微かな音がする) (仄暗い蝋燭の光が、室内にいる数人の人影を照らしていた) | |
謝家の当主 | |
楽先生、娘の容態は……? | |
楽先生 | |
今は安定しています。朝になれば目覚めるでしょう。ただ……。 | |
謝家の当主 | |
ただ? | |
楽先生 | |
城主様、お覚悟をされた方がよいかもしれません。お嬢様のご病気は……。 | |
帰舟 | |
早く言ってよ、姉さんはどうなの!? | |
(少年が屏風を越えてくると、そう叫んだ) | |
楽先生 | |
お嬢様には心臓に生まれつきの障りがあり、それは手の施しようがありません。 | |
(楽先生は首を横に振り、謝家の当主に小声で何か伝えると、やるせない表情を浮かべた) | |
帰舟 | |
そんな!姉さんはずっと元気だったんだぞ!さてはやぶ医者だな。治せないからそう言うんだろ! | |
謝家の当主 | |
静かにしなさい! | |
(謝家の当主は厳しく叱りつけたものの、その目には深い悲しみが浮かんでいた) | |
謝家の当主 | |
では娘は……楽先生、なんとかならないものですか? | |
楽先生 | |
お嬢様には静養が必要です。あるいは運動を控えれば……。 | |
帰舟 | |
姉さんは良くなるの? | |
楽先生 | |
少しは延命できるかもしれません。それ以外は、私では何とも……城主様、お坊ちゃま、どうか気を強くお持ちください。 | |
帰舟 | |
そんな!踊りが大好きで、元気な姉さんが……そんな、そんな……。 | |
(蝋燭の火が爆ぜて、それから静寂が訪れた) | |
(木製の花窓から斜めに室内に差し込んだ朝日が、キラキラと輝いている) (離笙は寝床に座ったまま、寂しそうに窓の外を眺めていた) | |
帰舟 | |
姉さん、買い物をしてきたよ。ほら! | |
(少年がはしゃぎながら室内に入ってきて、手に持った重箱を離笙の前で広げた) | |
帰舟 | |
見てよ!姉さんお気に入りの、城西の菓子屋の桂花餅だよ。買うのにだいぶ並んだんだ。さ、食べて。まだ温かいから! | |
(離笙は青白い顔をしていたが、帰舟に作り笑顔を向けた。それから餅を小さくちぎり、口に含む) | |
離笙 | |
ありがとう、舟や……わらわは、これが大好きなのじゃ。 | |
帰舟 | |
……でも、ちっとも美味しそうに食べないじゃないか。他に何が欲しい?姉さんが喜んでくれるなら、何でも買ってくるよ。 | |
(離笙は少年の頭を撫でると、優しい笑みを浮かべた) | |
離笙 | |
舟が幸せであることが、わらわにとって一番嬉しいことなのじゃ。他には何も必要ない。 | |
帰舟 | |
(でも姉さんは心から笑ってない……どうすれば、姉さんを喜ばせることができるんだろう?) | |
(帰舟は姉の顔を見つめた。花のように美しかった顔は青ざめ、だが必死に笑顔を作っている) (それから毎日、姉を喜ばせようと少年の努力が始まった。変顔をしたり、笑い話をしたり、目の前でわざと面白おかしい失敗をしてみたり……) (少女は優しい微笑みを浮かべて少年を見つめた。しかし、その瞳の中にある悲しみを少年は見逃さなかった) (離笙はよく窓辺に座り、花の盛りを過ぎた桃の木や、屋根から飛び去る鳥を言葉もなく見ていた) (少年は庭の離笙からは見えないところに佇み、もの寂しげな姉の顔を静かに見守っていた) | |
帰舟 | |
姉さん…… |
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