イベント【静謐な花園】 月祭の日
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(春が去り夏が過ぎ、草木の葉が落ち始め、あっという間に月祭の日がやって来た) (その夜は、月下城下の人々にとって大切な日だ) (街角には提灯や絹飾りを吊るし、川面に映える夜空の月のような円満を祈りながら、人々は家族と団らんの時間を過ごすのだ) (月光は優しく出窓に降り注ぐが――もう何ヶ月も、離笙は部屋から出ていなかった) (彼女は窓辺に座り、ぼんやりと天上の清らかな月を眺めていた。かつて光に満ちていた瞳は、今や重苦しく濁っている) | |
帰舟 | |
姉さん! | |
(帰舟は窓の下から頭を覗かせた。その懐には袋を抱えている) | |
帰舟 | |
姉さん、何を見ているの? | |
離笙 | |
お月様じゃ。 | |
帰舟 | |
月なんてつまらないよ、毎年同じじゃないか。ほら、楽しい場所に連れて行ってあげる! | |
離笙 | |
しかし……楽先生は、わらわに休んでおるようにと……。 | |
帰舟 | |
大丈夫だよ、僕が背負って行くから! | |
(離笙はしばらく考えていたが、首を横に振った) | |
離笙 | |
ありがとう舟や……でもわらわはどこへも行きたくないのじゃ。 | |
帰舟 | |
そんな……今日は月祭だよ、一緒に提灯を見に行こうよ。毎年そうしてたじゃないか。 | |
(離笙は少年のがっかりした様子を見て、不承不承に頷いた) | |
離笙 | |
あいわかった。 | |
(帰舟は離笙を背負って城主府を後にし、月下城の堀端に来てようやく下ろした) | |
離笙 | |
舟や……何をするつもりじゃ? | |
帰舟 | |
姉さんはここで待ってて。すぐに戻ってくるから! | |
(離笙は呆気に取られたが、その場に座って弟を待つことにした。そして堀の澄んだ水面や、そこに反射する光を静かに眺めた) (月下城下全体が祭りの雰囲気に包まれている。どこの家にも提灯が吊るされ、時おり聞こえるはしゃぎ声) (すると、蝶の刺繍が施された衣装を纏った何者かが、軽やかに木陰から現れた。こちらには背を向けている) (その影は舞い始めた。見覚えのある姿に、広がる長い袖。拍子に合わせた回転と跳躍……自分とそっくりだ) (離笙が言葉を失って見ていると、視界にもやがかかったようにぼやけてきた) (まるで自分を見ているようだ。かつて踊りに専念し、我を忘れて踊っていた自分) (彼女は自分が踊っていた頃を思い返していた。天地が一つになり、体が風に溶けていったあの感覚を) (全身全霊で踊り、雑念は捨て、ただ喜びに身を任せていたあの瞬間) (離笙はじっと見ていたが、突然笑い出した。まるで厚い雲の中から差す光のような、本物の笑顔だ) | |
帰舟 | |
姉さんが笑った! | |
(音楽が突然止まり、人影も動きを止めて振り向いた。それは衣装を纏った帰舟だった。髪も離笙がよくしていた髪型で、まるで瓜二つ) | |
帰舟 | |
姉さんが祭りのために準備していた祈りの舞だよ、ずっと練習してたんだ……姉さん、どうかな? | |
離笙 | |
舟はとても上手じゃな。わらわは嬉しいぞ。しかし、なにゆえ……。 | |
帰舟 | |
姉さんが何より好きだったのは踊りだよね……今は踊れなくなってしまったけど、僕がいるよ。 | |
離笙 | |
舟……。 | |
(離笙が腕を広げると、帰舟はかがんで頭を姉の腰にうずめた。離笙は弟をしっかりと抱き締める) | |
帰舟 | |
姉さん、どうか悲しまないで、これからは僕が代わりに踊るよ。姉さんと同じように、ね? | |
離笙 | |
……あいわかった。 | |
(離笙は笑いながら、弟の頭を撫でてやった) | |
帰舟 | |
でもこの踊りは未完成だよね。一緒に完成させようよ。 | |
離笙 | |
そうじゃな。 | |
帰舟 | |
じゃあ、姉さんも華麗で優雅な衣装に着替えてよ!もっとインスピレーションが湧くかもしれないよ。 | |
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