《童話の夢》魔法の香水瓶
魔法の香水瓶
完成報酬 | コーデギフトBOX (空の秘宝、慕情の香り、30ダイヤ) |
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シリーズ1 | シリーズ2 |
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森の小さな魔女は1つだけ持っていた綺麗なガラスの瓶を、自分よりも大事にしていました。月の光で磨いて輝かせ、露を集めては甘い香りを作り出していました。このガラス瓶への愛は、どんなに貴重な宝石とだって交換できません。
通りがかったツバメが尋ねます。「小さな魔女さん、どうしてその瓶が好きなの?」。
「だってこの瓶には、すごく不思議な魔法の薬がつまっているんだもの。愛の香水が作れるのよ!」。魔女は答えます。「この瓶の香水を振りかければ、愛の香りがあなたを取り巻くわ。あなたの愛する人がその香りをかげば、その人は何の迷いもなくあなたを愛してくれるの」
「それはすごいね!」。ツバメは大げさに騒ぎたて、羽をばたつかせました。「愛って、まばたきみするたいに簡単っていう人もいれば、自分の髪の毛を引っ張って地面から体を引き抜くより難しいって人もいるよね!」
「この瓶には不思議な魔法が掛かってるのよ」。魔女は香水瓶を撫でながら微笑みます。「この世にバラがある限り、瓶の中の香水は永遠に枯れないわ!」
おしゃべりなツバメが遠く離れた土地でこの香水のことを喋ったため、森は騒がしくなりました。人々が続々と訪ねてきては、不思議な愛の香水を振りかけてくれと魔女に求めました。
善良な魔女は来る者を拒みません。真剣に愛を求めている人であれば、美しく高貴な令嬢や、貧しく薄汚れた流浪の乞食であろうと、物憂げで惚れっぽい詩人や、不器用で朴訥な学者であろうと、1輪のバラさえ渡してくれれば、気前よく香水を振りかけてあげました。そして、紫色の香水が来訪者の襟にかかると、各人の愛が様々な香りを発しました。
小さな魔女は楽しくて仕方ありませんでした。数えきれないほどの香りを嗅ぎ、愛を得て大喜びする人々の姿を見て、彼女は自分も幸せになったように感じていました。
ある日、魔女がいつものように森で夜明けの露を集めていると、たくさん咲いている花々の中に、見知らぬ人がいました。「きっと王子だわ!」。魔女はつぶやきました。「銀色の月光のような髪に、深い海のような目、大きな松のように背が高いわ」
「そこのハンサムなお方、どうしてこんな所に?あなたも手に入らない愛を成就させたいのですか?」
人間は花々を見ながら魔女のほうへ歩み寄り、お日様のような笑顔を見せました。
「愛を求めているのではありません。私は王子です。私が求めれば、愛などまばたきするほど簡単に手に入ります。とはいえ、私は人を愛したことがありません」
「ではこの森へは何をしにいらしたのですか、王子殿下?」
「ここにはたくさんの種類のバラがあると聞いて、バラを見に来たのです」
魔女はがっかりしてその場を離れましたが、どうしても王子の姿が頭から離れません。自分の心が陥落してしまったのがはっきりと分かりました。彼女は彼を愛してしまったのです。
自分の悩みができてしまった魔女。星や小川や満開のバラに心を打ち明け、1回また1回と香水瓶の蓋を開けます。
「いろんな愛の香りを嗅いできたけど、自分のはないわね」。彼女は困ってしまいました。「でも、このままでいいの?」
彼女が流れる小川を見ながらぼんやりしていたとき、木の上にいたリスが彼女の言葉を聞き、木から下りて彼女の襟に香水を振りかけました。
魔女は大喜びです。すっくと立ちあがると、スカートの裾をつまみながらバラの花園で、恋しい王子を探しました。
王子の鼻にこれまでに嗅いだことのない複雑な香りが届きました。何だかよく分からない香りを嗅いだ彼が振り返ると、こちらへ走ってくる魔女が見えました。
「私はこれまで誰も愛したことがないし、永遠に人を愛することなどないと思っていました」
王子は魔女の手を取って言いました。「私は間違っていました。あなたを愛しています」
魔女と王子は恋に落ち、2人は手を繋いでバラの咲き乱れる森の中をそぞろ歩きました。王子が魔女を連れて盛大な宴に参加すると、街中が歓喜し、王子の愛を祝いました。
ところが魔女は森の家に帰ると、寒い寒い夜を不安におののきながら徘徊していました。
「私どうしちゃったの。夢にまで見た愛を手に入れたのに、こんなに落ち着かないなんて。しかも2人の距離が縮まるほど不安が強くなってる?バラの香りも、前は甘くていい香りだと思っていたけど、今は言いようもなく渋くて苦いわ」
魔女は香水瓶を抱えたまま、一睡もできませんでした。森に朝陽が射す頃、魔女は決心しました。
「あなたに試練を課します。本当に私を愛してくれているのか知りたいの」
王子は柔かい眼差しで魔女を見つめながら言いました。「何度だって試してくれ。私は絶対に諦めない。君を愛しているから」
「では、氷の川でドラゴンが守っている水晶を取ってきて」
王子はうなずくと弓矢を背負い、軍馬にまたがると、腰を曲げて魔女の額にキスしました。
「きっと持って帰るよ」
1ヶ月後、王子が帰ってきました。月光のように輝いていた長髪はドラゴンの鋭い爪で半分ほどに断たれ、駿馬は足を引きずり、弓矢は折れていましたが、彼の笑顔は以前よりも眩しく、目は宝石よりもキラキラと輝いています。
「あの水晶を取ってきたよ。確かに貴重なものだ。君の美貌にぴったりだね」
「いいえ、私はこの宝石には似つかわしくないわ。私は人間じゃないもの」
魔女が帽子を取ると狼のような耳が現れ、彼女が必死に隠してきた牙もむき出しになりました。美しく化粧されている顔も、いまや恐ろしげに見えてきます。これが第2の試練。
「私はあなたを愛している。醜くかろうが美しかろうが、年上だろうが年下だろうが関係ない」
王子は恋しい魔女を抱きしめ、水晶をその手のひらに乗せました。
彼はなおも愛に満ちた眼差しで醜い魔女を見つめています。愛しい人のためなら王冠を捨て、農民の服を着、権杖を鋤に持ち替えて土地を耕しなさい。彼は承諾し、一生をかけて第3の試練を通過しました。
2人は平凡な農民夫婦のように、村で穏やかで幸せに暮らしました。
しかしある深夜、魔女は家を出て森へ向かいました。そして、香水瓶を持ったまま静かに涙を流していました。
かつて彼女を助けてくれたリスが、泣き声を耳にして巣から頭を出しました。魔女だと分かったリスは驚いて言いました。「おい、どうしてそんなに悲しんでいるんだい?幸せに暮らしているのに!」
「だって最後の試練を課さないといけないんですもの。こんなに辛いことないわ」
彼女は大事な香水瓶を捧げ持ち、最後の涙を流しました。
魔法のガラス瓶だって、硬い石に投げつけてしまえば、砕けてただの透明な破片です。
魔法の薬の効果は消え、小さな魔女が家に戻ると、中はがらんとして、テーブルの上には農夫の粗末な服が脱ぎ捨ててありました。
これではっきりしました。魔女は愛する人を失ったのです。王子はやはり王子、そして二度と戻ってはきませんでした。
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