《童話の夢》硝子瓶の妖精
硝子瓶の妖精
完成報酬 | コーデギフトBOX (心からの誓い、出会いの言葉、瑠璃の檻、30ダイヤ) |
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シリーズ1 | シリーズ2 |
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小さな妖精は花園を自在に飛び交い、陽気に鼻歌を唄っている。
通りがかったコマドリがバラの枝に止まって尋ねた。「妖精さん、何がそんなに楽しいんだい?」
「もうすぐ大好きな人の誕生日なの!」。妖精はパンジーを抱えています。「最高にきれいな花を摘んできたから、彼の家の出窓に置くの!」
「そりゃ珍しい。妖精が人間を好きになるなんて!」
そこへひらひらと飛んできた1匹の蝶が口を挟みました。「妖精は森に住むべきなのに、彼女は花園に居着いちゃってるのさ!」
小さな妖精の羽はぴかぴかと光り輝き、肌は冬の雪、目は夜空の星のようです。
「ワタシは森に行ったことがないの。これまでは小さな黒いガラスの瓶に閉じ込められてたから」
「はあ~っ」。鳥と蝶が溜め息をつきました。
「人間の男の子が助けてくれたのよ」。妖精は続けます。「彼が落ち葉やホコリを払ってくれたから明るい空が見えるようになったわ。そしてワタシを瓶から出して、この花園に連れてきてくれた。だからここがワタシの家」。
「それは違うだろ」とはコマドリ。「君の家は森だ。あそこの花は1年中キレイで、どの花も君が持ってるパンジー以上さ。太陽の光が小川を照らし、まるで金が流れているようだぞ。だけどこの花園は、狭いし荒れてる!」
小さな妖精はそれ以上聞きたくなくて、パンジーを摘みに飛んでいきました。
コマドリは蝶に「ありゃ頑固な子だね。人間となんか永久に一緒になれないのに」と言うと、溜め息をつきながら飛び去りました。
小さな妖精はとてもキレイなパンジーを摘み終えると、頬杖をついて出窓に腰掛け、大好きな男の子が帰ってくるのを待ちました。
ところが、痩せこけた青年が帰ってきたのは太陽が西に傾き、空が真っ赤な夕焼けになってからでした。
「あっ!」。妖精は飛び起き、クルッと体を回転させました。「いっつも忘れちゃう、あの子はもう大きくなってるんだった」
青年は家に入ると、すぐに出窓のパンジーに気づきました。
「綺麗だな。誰が届けてくれたんだろう?今日1番の誕生日プレゼントだ!」
小さな妖精はそれを聞いて、得意になって飛び跳ねます。
しかし、青年には彼女は見えません。人間の目には妖精は映らないのです。
青年はパンジーをガラス瓶に差すと、不意に寂しそうに溜め息をつきました。
「でも花なんて何の役にも立たない。僕の好きな彼女は毎日花に囲まれ、称賛を受けてるんだ。手ぶらで会いに行ったって、扇子をパタパタさせながら、風のように去っていくだけさ」
小さな妖精は慌てました。彼がそんなに悲しんでいるのを見たことがなかったのです。彼女の小さな心も、ひどい悲しみでいっぱいになりました。
「泣かないで。あなたはワタシを助けてくれた。あなたのことはワタシが守るわ」。しかし、青年には彼女の声が聞こえません。
「僕は血も涙もない人を好きになってしまったんだ。彼女は美人だけど、彼女の言葉はナイフみたいだよ。告白したら、その想いを証明しろっていうんだ。ダイヤより硬くて、空気より軽いものなんてどうしたら見つけられるのさ?」
「あるわ、もう心配しなくて大丈夫!」。小さな妖精は興奮して飛び上がり、青年に大声で言いました。「ワタシが見つけてきて、あなたが目覚めるまでに枕元に置おいておくわ」
青年はベッドに入り、悲しみながら眠りにつきました。
小さな妖精は彼の青白い額にキスすると、自分の羽をはずして彼の枕元に置きました。
すると窓辺に生えていながら、これまで一言も発したことのない老木が突然しゃべりだしました。
「小さな妖精よ、羽がなくなったら、お前は飛べなくなるんだぞ」
「そいつの涙と、お前が飛べなくなること、どっちが大事だ?」。小さな妖精が窓辺へ移動すると、老木が枝を伸ばし、彼女をそこに座らせました。
「自分は悲しくないのか?」
小さな妖精は笑いだしました。「ワタシはとっても幸せよ」
青年が目覚めると、枕元に1対の美しい羽が置かれていました。壊れず、宙に浮くほど軽い羽です。驚いた彼は羽を捧げ持ち、嬉しそうに言いました。「きっと天使が僕の願いを聞いてくれたんだ!」
青年がこんなに美しいものを見つけてくるとは思っていなかった貴族の娘は、その羽で耳飾りを作りましたが、それでも満足せず、すぐに新たな要求を突きつけました。
なす術のない青年は花園に座って嘆息しました。小さな妖精は木の茂みから頭を出し、慌てて尋ねました。「ねえ、どうして溜め息をついてるの?」
青年にはそれが聞こえませんから、独りくよくよするばかりです。
「愛って、美しくも残酷なものだな。彼女のせいで魂が抜けたって、きっと彼女はまた奇想天外な要求をしてくるんだ。夏でも溶けない雪を見つけてきたら一緒に舞踏会に出てくれるんだなんて」
青年は苦しみつつも眠りにつきましたが、翌朝には枕元にきらきら光る雪がありました。陽の光にかざすと清らかな光を反射します。
貴族の娘はそれはそれは鼻高々で、その雪で指輪を作りました。ところが彼女はこう言いました。「舞踏会に行くなら、こんな素顔では出歩けないわ。どんな宝石よりも光り輝く、目もあやな首飾りがないとね」
その晩、青年の苦しげな溜め息が、眠っていた妖精を目覚めさせました。彼女は心を病み、疲れ切って脆弱になっていたのです。
「彼が苦しんでる」。老木に話しかけた小さな妖精は、萎れかけの花の蕾のように縮こまっています。「でも、ワタシ何も持ってない。どうしたら助けられる?」
老木は答えました。「お前は寝ていろ。きっと自分で何とかするさ」
「ダメよ。彼はワタシを助けてくれたんだもの、ワタシも彼を助けないと」
そこまで言ってふと方法を思いつき、小さな妖精は急に笑いだしました。そして小さな体から澄んだ光を放ち、残っていた自分の命を燃やしたのです。
青年は幼い頃に森で拾ったガラス瓶のようにまばゆい宝珠をテーブルの上に見つけました。その温く澄んだ光は、この世のどんな宝も敵いません。
貧しい青年から、これほど高価で珍しい首飾りを贈られると思っていなかった貴族の娘は大喜び。その首飾りを身に着け、青年と舞踏会に参加した娘は、光り輝く美しさのお蔭で皆を惹きつけ、注目の的となりました。
しかし、舞踏会が終わる頃、宝珠は急に光を失いました。小さな妖精の命が燃え尽き、首飾りがただのガラス瓶になってしまったのです。
「この嘘つき!」。貴族の娘は首飾りを投げ捨て、振り返りもせずにその場を去りました。
青年は気が動転したまま家に戻ってきました。狭くて荒れた花園は手入れをする者もおらず、パンジーも咲かなくなっています。そして、あのガラス瓶も夜明け前、小さな妖精と同じように、涼風となって消えてしまいました。
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