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囚われの天使ユラ

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12/28~1/11


哀色の天使ユラ

あなたも捕られられてしまったの・・・?そう、私と一緒ね・・・。

私はユラっていうの。あるとき、目が覚めたら大勢の人に囲まれてこの鳥籠へ入れられたの。

どうしてなのかはわからないの。でも、みんなが私を危険な存在なんだって言うの。

心当たり?・・・ううん、何も。というより、何も思い出せないの・・・ここに入るまでのこと全部。

記憶喪失っていうのかな・・・。だから閉じ込められているのも仕方ないのかなってね。



本当の私はとても凶暴で・・・とても悪い人なのかもしれない。たくさん悪いことをしてたのかもしれない。

誰も教えてくれないから・・・。ただそうだって言われて・・・よくわからないままここにいるの。

いつからだって?・・・うーん、いつからだろう?あの日からどれぐらい経ったのかはもうわからないの。

ただ、かなりの月日を経ったと思うの。私を監視してる人がみるみる年老いていくの。

例えばあそこに立ってる人ね。初めて会った時はまだ黒髪だったのに、今じゃ白髪になってるでしょ?



きっと私とは違う時間の流れで生きてると思うの。私自身はまだ何も変わってないしね。

しいて言うなら、この羽が少し大きくなったぐらいかな?本物だよ。触ってみる?

ちょっとくすぐったいかな。私は天使っていう存在みたい。本来は神様の使いなんだって。

そんな私のはずなのに危険だって・・・やっぱり何かしたんだよね・・・。それがわかれば苦悩しなくてすむのにね。

なんか暗い話ばかりしてごめんね。私のことより、あなたのことを聞かせてよ。こんなふうに話すの久しぶりだから。



へー、色々旅をしてきたんだ。ならどうしてここへ?何か悪いことでもしたの?

してない?うーん、じゃあなおさら不思議。まさか私の相手を頼まれたとか?

そうでもないんだ。うーん、なんだろうね?ここの王様が考えてることって、よくわからないよね。

まぁせっかくだし遊ぼうよ。こんな鳥籠の中で出来ることなんて少ないけどね。

何して遊ぶ?私はさっき話した通りに記憶がないから、これがいいとか何も言えないよ?



だから遊び方まで教えてくれるのがいいの。あと、わかりやすくて長く楽しめるのがいいかな。

人形遊び?なになに、どんなやつなの?・・・へー、触ったら私の分身みたいになってきた!

あなたもあなたの分身みたいになってるね。こんなのがあるなんて、不思議な物があるものね。

設定?私があなたの前に立ち塞がって相手をするってこと?なんか少しヘンだけどいいよ。

じゃあ、やるよ・・・って、こういうときは少しなりきったほうがいいの?普通にしても面白くないよね?



ふはははは!さぁ、かかってこい冒険者たちー!私を倒せるかー!・・・こんな感じでいいの?

うん、わかった。教えてもらった感じでやっていくからね。おかしかったらまた教えて。

ふふふ、そのような攻撃は効かないぞ~!もっと頑張る(?)がいいぞ~!

うへ~、今のはなかなかだったぞ~!よーし、私もそろそろ本気をだすとしよーかー!

えい!それ!あい!どうだどうだー!今のは効いただろ~?膝が地面についたではないかー!



あ、そういえば必殺技とかあったほうがいいのかな?なんかこうスババーンにみたいなの。

わかった。くらえー!ハウリングブリザードぉぉぉ!ゴゴーッ、プシュゥー!

なんだとぉー!?私の技を避けるとはやるなー!さすが人間だー!油断できぬー。

うわぁ~、はぅ~、ああぁ~、この神の使いである私がぁ~、やられるなんてぇ~!

ぐはぁ~、やーらーれーたー、バタッ・・・。そして私は天に還った。天使だけに。



え、これで第一章が終わり?へー、結構続くお話なんだ。二章はどうなるの?

冒険者はまた次の天使と戦い、最後は神様を倒して終わる・・・なるほどー。

ねえねえ、そもそもなんで冒険者は神様を倒すの?ちょっと気になったんだけど。

天罰を下そうとした神様を止めるために天界へ昇るって話だったんだ。

なんだか神様も人も大変だね。もっと仲良くできたらいいと思うのに。



この国も最近すごく慌しいんだよ。監視者の人たちもバタバタしてたし。

なんでかわからないよ。私より最近ここへきたあなたのほうが詳しいんじゃないの?

そっか・・・。もしかしたら、私に関わりのあることなのかもね。天使って私だけじゃないみたいなの。

うん、そうなの。もうひとりいるみたいだよ。私と同じ名前のユラって子がね。

違い?会ったことも見たこともないからわからないの。ただ、聞いた話だと色が違うっぽい。



例えば羽の色とか髪の色とか?あとのことは監視の人に聞いたらいいと思うよ。

あ、それと私はこの国の人たちからは哀色の天使って呼ばれてるけど、その子は宵色の天使って呼ばれてるみたい。

なんでだろうね。もしかしたら姉妹だったりするのかな?記憶が戻ればわかるかもしれないんだけどね。

でももう無理かな・・・。これだけ長いときが経っても何一つ思い出せないの。まるでごっそり抜け落ちてるみたいな感じ。

もしかしたら、もうひとりのユラと会ったら何か思い出せるかもね。ここから出られればの話だけど。



連れ出す?ううん、気持ちだけ受け取っておくね。無理に抜けだしても、すぐにまた捕まっちゃうと思うの。

それなら最初からここにいたほうが私は楽かな。飛べる羽があっても自由な空じゃないなら意味ないしね。

それよりもさ、また旅のお話を聞かせて。今はそれだけで私は十分だから。

へー、この世界じゃないところまで行ったんだ?悠久の図書館ってとこ、なんだか面白そうだね。

文字は読めないけど、読めるようになったら好きになるかも。他にはどんなことがあったの?



棺桶開けたら女の子が目覚めたって、それはまたすごいね。棺桶って死んだ人を入れる箱なんでしょ?

聞いただけだからわからないけど寝心地いいのかな。箱っていうから、ここよりは狭そうだけどね。

他には?怪盗や医師に、月兎と歌姫って・・・本当にいろんな人と出会ってきたんだね。羨ましいな。

そこに私の天使も入れてね。そしたら種々様々でまた話のタネになるね。また会ったときにはどれだけ増えてることやら。

その頃には出れたらいいなー。王様の許しでないかなー。少しぐらいは許してくれてもいいのにね。



あ、そうだ。さっき借りた人形って、形を固定することってできないの?そしたら交換して遊ぼうよ。

お、できるんだね。じゃあ、私はあなたになりきるから、あなたは私になりきってね。いくよ。

このキレイで可憐な天使め!俺がやっつけてやる、覚悟しろ!うりゃ~~~~!!!

ふっ、その程度の力で数々の困難を乗り越えてきた俺には勝てまい!そりゃ~~~~!!

全く手ぬるい天使め。俺に勝つには100年早かったな~!お前みたいなやつは鳥籠に入れて飼ってやろー!



お前の自由は俺のものだー!さぁ、ついてこいー!・・・って、そんなこと言わないって?あはは、あなたならそうかも。

なんか自分で言っててちょっと虚しくなっちゃった。やめましょう。これはもう。

とりあえず、この人形はもらってもいい?私のはそのまま持ち帰ってもいいから。・・・うん、ありがとう。大事にするね。

ひとりでまだぼけーっとするのもつまらないからさ。何かひとりでも時間が潰せるものが欲しかったの。

寂しいと聞かれれば寂しいかな?でも、そうやって今までやってきたし、これからもそうだろうから気にしないよ。



もちろん一緒に居てくれたら嬉しいけどね。まぁ、一番はここから出られることに変わりはないけど。

うーん、もし出られたら何しようかなぁ~。ここに長く居すぎて何も思いつかないかな。とりあえず、自由に飛びたいぐらい?

それだけって、記憶が戻ればもっとしたいことがたくさんあったかもね。でも今の私じゃ、何したらいいのかわからないの。

出たら出たで困るとか、それは贅沢な悩みだよね。こういうとき、誰かと一緒にいければいいんだろうけど。

誘ってくれるのは本当に嬉しいよ。でもやっぱり気持ちだけかな?私は天使で、あなたは人だもの。



だから一緒には行けないの。それにきっと、そのほうがお互いのためだと思うからね。

ここから出たら、この町から出たら私のことは忘れてね。あ、思い出話にはちゃんとしてね、あはは。

そしたら忘れるにはならないかー。うーん、やっぱり覚えてて欲しいかな?

そういう天使がいたって話を誰かに伝えてもらえたら、数十年が数百年後に私の元へ回ってくるかもしれないしね。

気の遠くなるようなことだけど、ちょっとだけ楽しみにしてるね。いつかまた会えたらいいな。



まだお別れは早いって?そんなことないよ。もう少しで監視の人が・・・ほらきたよ。

ね、言ったでしょ。私ね、こういうのわかるの。なんでって言われても、なんとなくって感じかな?

鍵を持ってるし、きっとあなたを出してくれるはずだよ。私もって、そんなことはありえないよ。

さっ、短い間だったけど楽しかった。ありがとね。今度は捕まらないようにね。

それじゃあ、バイバイ。この鳥籠の中からあなたの無事を祈ってます。



宵色の天使ユラ

私の邪魔は誰にもさせない!立ち塞がるというならあなたも容赦しないから!

それでも止めるって?無駄よ、人間のあなたが天使の私を止めるなんて無謀なこと。

くっ、思ったより手強いじゃないの。こんな人間がまだ残ってたなんて・・・!

あなたはなぜ私を止めようとするの!?私が何をしようとしてるのか知ってるの!?

知らない?なら止めないで。あなたにはきっと関係のないことだから。



私には果たさなければいけない使命があるの!だからお願い。そこをどいて!

話してもわからない人間ね・・・。なら仕方ないわ。知からづくでも通らせてもらうから!

あと少しなのに・・・、なんでここにきて強い人間が出てくるの・・・。やらなくちゃダメなのに!

本当に私を止めるなんて・・・、あなたどこからきた人間なの?この国にいた人じゃないよね?

そう、やっぱり。なら知らないのも無理はないね。これは私とこの国との問題だから。



知りたいって?いいよ、教えてあげる。それでもし納得できたならもう邪魔しないで。

私はユラ。人間からは宵色の天使と呼ばれてる。たぶん、この髪とドレスの色から取ったんでしょうね。

私の目的は天界に仇をなす者を排除することよ。神様からそう使命を与えられてここにいる。

使命を果たすことが私の役割。だからやり遂げないといけないことなの。これでどう?わかった?

焦る?それは当然よ。唯一の役割は、私にとって生きがいという意味だからよ。



他には何もない。ただひたすら使命を果たしていかなければ・・・天使の価値はないから。

気づいたときにはずっとそうしていた。昔はもっと楽しく生きていたはずだったのにね。

まるでそのときの記憶が全て抜け落ちたみたいよ・・・。空いた穴を埋めるようにして今の私があるの。

本当ならこんなことはしたくない。でも逆らえない。成し遂げるこそが私の価値だから。

・・・さ、もうわかったよね?わかったならそこを開けて?関係ないあなたまで巻き込みたくない。



・・・それでも止めるというのね。わかったわ。ならもう何も言わない。力づくで押し通るのみ!

本当にあなたは・・・ほかの兵士たちと違うのね。私に協力してくれる人間だったらよかったのに・・・。

このままじゃ勝てる気がしない。でも諦めたくない。ねえ、試しに私の仲間になってくれない?

仲間になってくれたら天使の加護を与えてあげるよ?きっとこれから先も役立つことだよ?

そうだ、神様の守護も与えてもらえるように頼んであげる。そしたら何も怖くなくなるよ?



どうかな?いい話だと思うんだけど?今回だけでいいからさ、ね?やってみない?

・・・興味ないって、普通に生きてたらこんな誘い受けられないんだよ?すごくもったいないんだよ?

それでもいい・・・だなんて。人間なら喉から手が出るぐらい欲しがるものだと思うのにな・・・。

やっぱり一筋縄じゃいかないのね・・・。どうやったらあなたを退けれられるのか、また悩まなくちゃ・・・。

天界へ帰ってほしいって・・・そんなことできるわけない。さっき説明したでしょ?私がここにいる理由を。



例え羽が朽ちて飛べなくなっても・・・私はね。やらなくちゃいけないの。

今までそうしてきたように。この先もずっと・・・役目を終えるその日までずっとね。

役目を終える日は神様が決めるものなの。私が決めていいはずがない。私を創ったのは神様なんだから。

自由?もし私が使命から解放されたらどうなるのかって?・・・考えたこともないからわからないよ。

きっと何をしたらいいかわからなくて困るかな・・・。好きなだけ自由に飛び回れる時間には憧れるけどね。



でも私にとっては、それは本当の自由じゃないの。天使として生まれた以上、神様に仕える者だから。

あなたたち人間にはわからないことよ。天使には天使としての義務があるの。それを全うするだけ。

多分、あなたにもあなたなりの事情があるんだろうけど・・・、そこまで考えてあげることはできないわ。

私には私の、あなたにはあなたの目的を果たすのみ。さ、お話はこのへんにして戦いましょう。

まだ何かあるの?これ以上、話すことなんて何もないのに・・・。とりあえず聞くだけ聞くよ。



ただし、答えられる範囲でね。まぁ、全部答えたら私の仲間になってくれるというなら話は別だけど。

そうね。さすがにそれは無理だって知ってる。なるべく手短にね。これでも結構急いでるんだから。

ユラを知ってるかって?ユラは私の名前だよ?さっき教えたじゃないの。

え、私じゃない天使のユラ・・・?哀色の天使ユラ・・・知らない。聞いたことも見たこともない。

でも・・・なんでだろ・・・。どこか違和感のある名前・・・。私と同じ名前だからとか、そういうことじゃない感じがする。



もちろん、会ったことなんてない。私はずっと天界にいて、使命を背負って初めてここに来たんだから。

ここへ行けと命令したのは神様だったし、私の意志で来たわけじゃないからなんの関係もないはずだよ!

もしかして・・・もうひとりのユラを助けるために私を差し向けた・・・?そんなことってあるのかな・・・。

私はただこの国をと言われただけ・・・。他には何も聞いてない・・・。言われてないだけ?教えられてないだけ?

そのユラはどこにいるの?私と同じ天使であるなら、何かしらの使命を与えられるはずでしょ?



ずっと鳥籠の中にいる・・・?どういうこと?天使が捕らえられているというの?

しかも記憶がないって・・・。おかしなぐらい私と共通してるじゃない・・・。とても他人とは思えない。

そのユラと私はもしかして・・・ふたりでひとりだったりするの?そしたら抜け落ちた記憶も戻る・・・とか・・・。

そんな話ありえるのかな・・・。でも、そしたら神様が私をここに送ったわけも、指示したわけもわかる。

囚われ続けている私の半身を救い出せば・・・、ひょっとすると・・・失われた記憶が蘇るかもしれない。



ねえ、あなたはその子がどこにいるのかわかるんでしょ?教えて、いますぐ救いにいくから!

そっか・・・、通路は目隠しされてたんだ・・。でも、この国のどこかにいるのは確かなのよね?

それだけでもわかればいいの。なんとかして見つけ出すわ。終わればもうこの国は用済みね。

新たな目的が出来て嬉しい・・・。ありがとう、あなたと出会えてよかった。

久しぶりにドキドキしてきたの。例え記憶を取り戻せなかったとしても、自分と同じ天使に会ってみたいから。



長くずっと心に渦巻いていた喪失感はきっとその子に違いない。そんな気がしてならないの。

早く全てを終わらせて天界へ戻って報告したい。あなたもわかってくれるよね?だからそこを退いて?

あなたは恩人だもの。何も危害を加えたくないから早くこの場から去って。じゃないと巻き込んじゃう。

ええ、そうよ。用済みになったこの国を終わらせるの。私の半身を閉じ込めていた酷い国でもあるんだし。

どこでユラを捕らえたのかは知らないけど許せないわ。さぁ、早くお願い。私を先に行かせて!



なんで・・・、どうしてダメなの?救うためには犠牲はつきものよ?じゃないとあの子を救えない!

そこまでしてこの国を守りたいなら、私の代わりにあなたが半身を探してきて!

ちゃんと見つけて連れて来てくれれば・・・、今回だけは見逃してあげる。神様にもお願いしてみるから!

それならいんだよね?・・・うん、わかった。さすがにこれもダメだと言われてたら・・・。

私はあなたも倒さなければいけなかったから。本当によかった。じゃあ、頼むよ?ウソつかないでよ?



ここで大人しく待ってるから、ちゃんと連れだしてきてね。約束するから、手はださないって。

うん、ありがとう。それじゃあ、待ってるね。ちゃんと、ちゃんと連れて来てよ!

(約束・・・絶対守らなくちゃ・・・。もうひとりのユラに会わなくちゃ・・・!)

(どこか隠れておかないと。兵士に見つかった・・・さすがに手をださずにはいられなくなっちゃうし)

(ああ、早く会ってみたいな・・・。きっと何かが変わるに違いない。私はそう信じてる)



(神様は何も言わなかったけど・・・多分知ってるんだよね。私はふたり存在するって)

(何も起きなくても話し相手ぐらいにはなってくれるよね。遊び相手ぐらいしてくれるよね)

(もっと違う形で再会したかったけど仕方ないか。知り得ただけでも感謝しないと)

(あの冒険者は・・・上手くやれてるかな?本当に連れてきてくれるかな?)

(あなたが言ってくれた言葉を私は信じてる。ふたりとも無事でいてくれることを私は祈ってる)



天界へふたりで帰れたら・・・まずは何しようかな。今から考えるのがちょっと楽しみになってきた。

あーあ、早くこないかなぁ・・・。



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