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妖刀の長月村正

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7/14~7/27


今までのスペボスの台詞の中で、最も長いです。


弔いの文月村正

―静かな夜だ。しかし、油断はできない。

灯篭に鬼火が宿っている。これは鬼が現れる証拠。

今宵こそ、俺の手で鬼を倒す。その邪魔は誰にもさせない・・・。

・・・今影が揺れたな。誰だ?

おい、そこのお前、何者だ?・・・異国のものか?見慣れない格好だな。



ま、俺にとってはどうでもいい。ここからすぐに立ち去れ。邪魔だ。

灯篭がきれいだから立ち寄っただと?お前は知らないんだな・・・これは鬼火だ。

今からここに鬼が現れる。鬼火はその前兆だ。

俺の名は文月村正。名は名乗った。

一刻も早く立ち去れ。それができなければ・・・容赦なくお前を叩き斬る。



なんだ?「鬼が現れるなら自分も戦う」・・・だと?

それならば余計にお前を斬らなくてはならないな。鬼は俺の獲物だ。

鬼を退治するのが俺の役目。そして宿命。お前は出てくるな。足手まといだ。

・・・ッ、しつこい!何が勝手だ!お前と一緒に戦うなど、ひとことも言っていない。

さっさと退け!お前みたいに遊び半分で来た輩と一緒にするな!



俺は・・・俺はここに出る鬼を何年も何年も追ってきたんだ。

異国の素性もわからんやつと戦うなんぞ、できるわけがない。

早く俺の目の前から消えろ。さもなくばお前の首を俺が斬ることになるぞ?

「あなたはそんなことをしない」だと?何を根拠にそう言うのだ。口が過ぎたな。斬るッ―!!

・・・っ!それに触るなっ!俺が拾う!



ちっ、命拾いしたな。まさかこれのせいで刀を止めるとは、俺も甘くなったか。

・・・これが何かだと?・・・『遺髪』だ。大事な人の・・・な。

誰のものか教えるわけがないだろう。先ほどあったばかりのやつに。そんな義理はない。

亡くなった人間の髪を持つことがおかしいとでもいうのか?勝手にほざけ。

ちっ、お前は鬱陶しいな。理由を言わない限り、俺から離れないなんて。ふん、愚の骨頂だ。



鬼が現れるまで、時間がかかりそうだな。・・・暇つぶしに話してやるか・・・あくびでもした瞬間に斬る。

ここにいるということは、少しの油断も禁物だ。

―俺には女の師匠がいた。しかもかなりべっぴんの、な。

べっぴんであったが・・・剣の腕は最強。どんな男も敵わなかった。

その美しさ、強さから、何人もの男が弟子に志願したが、彼女は誰も弟子を取らなくて有名だった。



そんなある日、俺の家の道場が鬼に破られ、幼かった俺以外の家族全員・・・命を落とした。

鬼の奴め、「貴様が自分を倒しに来るのを楽しみにしている」と、俺だけわざと生かしたんだ。

俺は・・・一瞬のうちに孤児になってしまったんだ。それを何を思ったか師匠が拾ってくれた。

・・・師匠も同じだったらしい。両親を鬼に倒されてな。だから同情・・・いや、自分の義務だと思ったのかもしれない。

師匠がいつも言っていた言葉がある。「両親や兄弟を倒された悲しみを、力に変える。それが―弔いの力」だと。



立派な剣士になった俺と師匠は、妖怪退治を頼まれ、ふたりで数々の妖怪を退治した。

そして・・・ある日依頼が来た。「町を襲う鬼を退治してほしい」。俺と師匠はハッとした。

今までの恨みや悲しみ・・・いや、違う。強い「憎しみ」を鬼にぶつけるときだとわかったんだ。

師匠はその日に備えて技に磨きをかけた。俺もきつくしごかれたが、それも鬼を倒すためだ。

そこへ行商が道場に来た。鬼を退治するための武器を仕入れてはどうかと言ってな。



俺は刀を買った。今まで使っていたものが古くなっていたからな。しかし、それが失敗だったんだ。

―俺と師匠は、今日のような灯篭に鬼火が宿る夜、鬼退治に赴いた。

してやられたよ。昼に来た行商こそが、鬼が人に化けた姿だったんだ。

俺の買った刀は妖刀。俺の意図とは関係なく、師匠に刃を向けてしまったんだ。

俺は、俺自身の手で、師匠を―。



鬼は笑いながら話しやがった。今までの事の顛末を。そして・・・刀に刺さっていた師匠の魂を喰らったんだ。

―それから数年経った今でも、俺は鬼を倒せていない。それは俺が未熟だからだ。

どんな修練を積んでも、鬼は人の心の隙間を見つけて、そこにうまくつけ込んで逃げていく。

情けない話だが・・・俺は師匠を失ったあの日から、人を信用できなくなってしまった。

剣を売ってきた行商・・・あいつとは顔見知りだったんだ。俺は鬼の正体にも気づかず、笑顔を振りまいていた。



師匠を失ってから、誰も信用できない。それは今も同じだ。

だからこそ俺は―いつもひとりで鬼に戦いを挑んでいるんだ。

え?「共同戦線を張ろう」だと?・・・お前は今までの話を聞いていたのか?

俺はお前を信用していない。どんな人間だろうが信用しない。ましてやお前は今日会ったたばかりの人間だ。

信用できっこない。自分でもそう思わないのか?お前だって、俺のことを簡単に信用はできないだろう?



俺は鬼を恨んでいる。師匠を失った悲しみや恨みを力にして戦っているが、お前は違う。

ただ町や村を守るために戦う・・・それだけの動機だろう。背負っているものが違い過ぎる。

「悲しみや恨みなんかじゃ何も救えない」か。・・・きれいごとだな。お前みたいな何も知らない人間だから言えることだ。

・・・鬼火が増えてきた。来るぞ・・・鬼だ。

お前はどこかに隠れていろ。ここは俺が・・・くそ、待て!今飛び出したら、鬼の思うつぼだ!



「何が一緒に戦おう」だ!これは仲良しごっこじゃないんだぞ!

・・・っ、ふたりバラバラの動きだったら、狙いが定まらない・・・。

このまま仲間割れをしているわけにもいかない、か。仕方ない。

不本意だが、ともに戦ってやる。俺が正面から攻撃を仕掛ける。お前はその隙に・・・。

・・・おい、鬼!俺がお前の首を取って、師匠の弔いにする!



今まで師匠は、俺を弟のように育ててきてくれた!!

俺なんかに愛情を注ぎ、自分の食い物をわけ、戦うすべを教えてくれてっ・・・!!

俺は、俺はッ!!絶対にお前を倒す!!お前を倒して師匠の無念を晴らすっ!!

憎いお前を・・・絶対に、この手でっ・・・!!

ちっ、なんでだ!?・・・何度も斬撃を喰らわせているのに、なぜ鬼は倒れない!?



俺にはまだ何か足りない力があるというのか・・・?

「悲しみ、恨みにとらわれて普段の力が出せない」・・・俺がそうだというのか?

俺は今まで、その感情だけで鬼を倒そうとしてきたんだ。それをいまさら・・・。

危ないっ!・・・間に合ったか、いきなり立ち止まるな!鬼に魂を喰われるぞ!?

っ、鬼のやつの攻撃が激しくなった。―避けろっ!



お、おい!ちょっと待て!お前・・・真正面から攻撃を仕掛ける気か!?

・・・自分がどんなに危ないことをしてるか、わかってるのか!?

お前はなぜそんな真似ができる!実力は俺よりもないくせに・・・なぜそんな勇気があるんだ。

鬼を恐れない一撃・・・。くそ、なんで他人のために、そこまでできるんだよ、お前は・・・。

お前はバカだよ。人のために、自分がボロボロになって・・・武器だって今にも壊れそうだって言うのに。



・・・ハハッ、そうか。ようやく俺にも理解できたかもしれない。俺自身の弱さ。そして・・・それを克服するための力。

俺もお前と一緒に正面から攻撃に出るッ!笑いたければ笑え!今の俺は・・・お前と同じ気持ちだ!

人と「協力」することで、弱さに立ち向かう―。それで鬼が倒せるなら、俺も立ち向かってやるっ!!

ッ―・・・。やった・・・か。くそ、お前ってやつは、なんで無茶をするんだ・・・。

はぁ、でも師匠の気持ちが少しわかった。お前は師匠と少し似ている。



師匠は俺が敵に向かおうとすると、「退け」と言った。「お前にはまだ早い」と。

「悲しみを力に変える―それが弔いの力だ」と師匠は言ったが・・・。

弔いというのは、ただ敵を倒すことだけじゃないんだ。

悲しみを越えて、そして未来を見据える。自分の行く新しい道を・・・それこそが大事だったんだ。

いなくなった人は帰ってこない。仇を討ったとしてもな。それを受け入れなくては・・・弔いにならん。



お前は・・・なりふり構わず敵に向かって直進していった。俺に協力すると言った。

師匠の言葉を理解していたなら、最初から協力して戦うべきだったんだ。

俺の力が及ばないところはお前に助けてもらう・・・そうすれば無駄な血は流れないからな・・・。

俺は敵を倒すのには命も惜しまない。しかし・・・自分が死んでしまったら、亡くなった人間を誰が弔う?

師匠はわかっていたんだ。だから、自分の命を投げ打って戦おうとした俺を止めたのだろう。



命を捨てることは・・・誰も望まないことだからな。

ありがとう。ともに戦ってくれて。師匠の無念を晴らしてくれて。そして・・・本当の言葉の意味を教えてくれて。

この遺髪も、ここに埋めよう。ようやく師匠を休ませてやることができそうだ。

ようやく師匠に顔向けできるようになったのかもしれない。・・・なんで?お前のおかげで、だよ。

お前のせいで、うっかり「人と一緒にいること」の心地よさを思い出してしまった。



・・・だが、俺にそんな生ぬるい関係は必要ない。どんなに居心地がよくても、いずれ去らなくてはいけない。

お前はこれからどうするんだ?

ああ、お前も自分の国に戻るんだな。・・・俺?俺は・・・。

鬼を倒すことで悲しみから解放される・・・そう信じていたのは間違いだったみたいだからな。



本当の弔いとは何か。俺はこれからその意味を探しに旅に出る。

見ろよ。鬼火が消えた代わりに、古い灯篭に蛍が入ってきている。

温かい光だな・・・。まるで優しさに包まれた感じだ。

お前とはここで別れることになるが・・・せいぜい頑張れ。

俺も・・・きっとお前のこと。ずっと忘れないでいると思う。だから・・・。

また、会うことがあるかもしれないな。そのときまで―。



剣豪の葉月村正

あっ、君、君も灯篭流しに来たのかい?

今夜はいい夜だな!ここはまだ川の水がきれいだから、蛍も飛んでる。

・・・それにしても君、いい武器持ってるね。ちょっと見せてくれないかな?

ふむふむ・・・へぇ、ずいぶん使い込んでるみたいだね。見ただけでわかるよ、そりゃあ。

ああ!ごめん。オレは葉月村正。名乗ってなかったよな。どうぞよろしく!・・・なんてね。



それにしてもカッコいい武器だなぁ・・・。あ、そうだ。見せてもらってばかりなのも悪いよな。

オレの刀も見せてあげるよ。なに、遠慮なんてしなくていいからさ。

これが俺の刀、『村正』だよ。カッコいいかどうかはわからないけど、剣の道に入ってからずっとこれを使ってる。

自分の名前と刀の名前が一緒なんだ。だから愛着があるのかもしれないな。

ちょっと錆びてる?本当だ。定期的に刀鍛冶に見てもらってはいたけど・・・気づかなかったよ。



もっと大事に扱わなきゃな。あ、そうだ。持ってみるか?ほら、どうぞ?

なかなか重いだろ?まー慣れれば簡単に片手で扱えるようになるんだけどな。よっと!

ところで君、この国の武士とは違うみたいだけど、武器を持っているってことはどこかの戦士なのか?

へぇ・・・異国から来た騎士なんだな。だから立派な武器を持っているのか。

じゃあさ、今までどんな相手と戦ってきたんだ?



狼人間に鳥人間・・・魔女?『まおーぐん』が何かはよくわからないけど・・・面白そうだな。

この国には鬼や妖狐、化け狸なんかがいるよ。ま、オレの敵じゃないけどな!

オレは目の前に敵が現れたら、確実に仕留めるから。それだけじゃない。

強そうなやつがいたら、人間でも妖でも戦いを申し込んでいる。だってそれが剣士としてあるべき姿だろ?

そして・・・絶対勝利する。剣士ならば勝利は当然だろ?



これ、見せてあげるよ。ほら、刀には鍔がついてるだろ?オレと戦って負けたやつの鍔を集めてるんだ。

さすがにこんなに持ち歩いてると、身体が重いんだよな。ハハッ。

・・・あれ?どうしたんだ?オレから離れて。なんか変なこと言ったかな・・・。

もしかして・・・気づいたのかな?オレの正体。そうだよ、オレはね・・・。

「剣豪・葉月村正」―この町で敵なしの男だ。どんな相手だろうが、オレに勝てるやつはいない。



オレの趣味は相手の武器の一部を集めること。つまり、相手を打ち負かすことなんだよ。

こんなに鍔があるのは、みんなオレに勝てないからだ。負けた相手の武器を壊す。それがオレだ。

さあ、オレも君も名乗った。お互いの武器も確認して、ズルなんてできないこともわかってる。

ここから先は、真剣勝負だ。お互い楽しもうじゃないか。

一目見て、気になってたんだよ。その武器。それと・・・君の腕もね。



ぜひ一戦交えたかったんだ。だから声をかけたってわけだ。わかったか?それじゃ・・・。

行くぞ!一の型、氷雨ッ!!

防御するだけじゃオレには勝てないぞ?二の型、凍雨!

どうだい?オレの技。なかなかだろ?これに勝てた人間はいないんだ。

だけど気は抜かないぞ?三の型、半夏雨!



あーあ、やっぱりそうか。気になっていたけど、ちょっと踏み込みが甘いみたいだ。

君の武器の鍔を手に入れるのが楽しみだったけど・・・少し残念だな。

もう少し戦い方を工夫したら、もっとオレのことを楽しませてくれたかもしれないな?

今の君でも十分強い。でも、さらに強い君と戦いたかった・・・。

・・・悪いね。ここで手を抜いて、君にもっと修行してもらうっていう手もあるんだけど・・・。



そこまで待ってあげるような優しい奴じゃないんだ、オレは。

さあ、負けを認めて武器を差し出せ。オレの才能に負けたと認めるんだ。

へぇ、武器を渡したくないのか?じゃあ、命を奪われてもしようがないよな?

なんだ?いまさらオレに何を言いたいんだ。まあいいか。聞いてあげるよ。

・・・オレがなんで戦うか?言っただろ?剣士、いやただの剣士じゃない。「剣豪」だからだ。



それに―オレには才能があるからだ。戦う才能ってやつがね。

オレが幼い頃から一緒に戦ってきていた剣士たちは―

「剣道道場の師範」や「お抱えの剣士」みたいな無難な道についてしまった。

だけどね、本当に剣の道を極め、名を残したいのなら・・・戦いの場で生きるしかないんだよ。

オレは人と戦うことで、剣豪としての自分の名前を残したいと考えている。



「才能とは何か」?ハハッ、君は面白いことを聞くな。今のオレの攻撃でよくわかっただろ?

オレの技は全部自分自身で作り上げたものだ。しかもこれらを破られたことはない。

オレは今まで負け知らずだ。名だたる剣豪を打ち負かしてきた。これって才能だとしか言いようがないだろ?

「才能があっても、仲間はいない。君はひとりじゃないか」・・・それ、本気で言ってるのか?

は・・・ハハッ!そんなの負け犬の遠吠えだ。みんなそうやって言うんだよ!



仲間?そんなもの、一番あてにならない!自分に能力がないやつほど群れたがるんだ!

・・・面白くないよ、そんな話は。仲間だなんだの、甘っちょろい考えを聞くほど暇じゃないんだけど。

・・・何?オレの顔見て。なんで君が辛そうな顔するんだよ。

ひとりで何が悪いんだ?才能がある人間は孤独だ・・・どの世界でもな。

それをいまさら!一体どうすればいいんだよ!・・・ひとりになることは仕方がないことなんだ。そう思っていたのに・・・。



強いものに仲間はいらない。オレは昔からそうだった。

オレは昔から剣術に秀でていた。そのせいと道場の大人たちから疎まれていたんだ。

友人だと思っていた連中からも、仲良くするフリをして裏では悪口を言われていた。

オレは「自分に何か非があるから嫌われる」と自らを追い詰めた・・・でも。

どんなに考えても自分に悪い点はなかったんだよ。



オレはすべてが嫌になり、偽の友人たちや大人たちと距離を置き、旅に出た。

周りが自分をないがしろにするのは、嫉妬からだ。

だからオレは、「自分を嫉妬させるような強い人間と対峙すれば、何かが変わるのではないか」と考えた。

それからだよ。強そうな人間と見受ければ戦いを申し込むようになっていたのは。

・・・君はどう思う?オレはまだ答えが見つかってないんだ。



どんなに強い相手と戦って勝ったところで、何も変わらない。

でも、オレが信じられるのは・・・剣士としての腕ただけだったから。

え?君はオレの強さを認めてくれるのか?あ、ありがとう・・・。

なんだよ、ニヤけて。あんまりこうやって素直に褒めてもらうってこと、なかったから・・・あ。

そうか。オレに欠けていたもの・・・やっとわかった気がする。



今までのオレは、褒められて当然だと思っていた。それだけの剣の腕があるんだからと自負して。

だけどそれは、自分のさ剣に才能にうぬぼれ過ぎていたんだ。

確かに嫉妬もあったかもしれないけど・・・周りはきっと、そんなオレの心の奥底の気持ちを察していたんだろうな。

・・・オレはひどい人間に育ってしまった。自分のことながら情けないよ。

自分や他人の存在意義を『剣術』や『才能』でしか計れないような、そんな人間だ。



君は、今からでもオレは変われるというのか?

オレの剣の才能を、「人を守ること」で生かす―。今まで考えたこともなかったな。

オレの剣術も、相手を倒すだけに使うんじゃもったいない。もっと違うやり方を試しても悪くない、か。

だったらオレは化け物退治でもするかな。村人たちを襲うやつらを片っ端から倒す。

・・・そういう剣豪がいてもいいよな?この世界には妖怪がうじゃうじゃいるから。



君と約束するよ。オレは自分の強さを他人のために使う。

ありがとな。気づかせてくれて。君のすごいところは、武器や強さじゃない。優しさなんだな。

あーあ、剣術以外のところで負けたかも。え?どういう意味かって?それは自分で考えてくれよ?

・・・ほら、手。いつまでもここに座ってるわけにはいかないだろ?

オレも手荒な真似をして悪かった。あと・・・感謝してる。

自分では気づけなかったことに気づかせてくれたことに・・・な。



妖刀の長月村正

リン、リンという玉の触れ合う音―

人の魂の音色はなんと悲しく響くものなのか―。

おやおや、こんなところに客人ですか。珍しいですね。

何年振りでしょう。このような辺鄙な・・・いえ、闇に封じられて幾年も経った世界への来客は。

あなたは何者です?この世界の人間ではありませんね?妖の類でもない・・・。



ほう・・・異世界から来た騎士ですか。それは興味深い・・・。

この刀もきっと、珍客の血を吸えることに喜びを覚えるでしょう。―いざ!

・・・意外と動けるのですね。しかしそれも一度だけです。次の攻撃は避けられない・・・。

ッ!!・・・フフ、面白い。じたばた暴れる様は、まるで猫にもてあそばれてるネズミ・・・。

そうやって僕の刀から逃げれば逃げるほど、絶望しか見えなくなる・・・。



「異世界からの騎士」・・・一番僕たちの「世界」には必要のない人物です!

・・・名乗り遅れました。僕は長月村正・・・この刀に選ばれた戦士・・・。

僕を倒したところで、辛い現実が待っているだけです。

あなたにこの世界を本当に救うことはできない。もとの世界へ戻りなさい。さもなくば―。

この刀の錆にするだけ・・・。この刀は相手の血を吸って磨かれるものなのですから。



フフ・・・見えますか?刀に宿った魂が・・・。これは呪いの剣。何百、何千人の血を吸って進化した刀。

あなたには「僕」を倒すことはできないのですよ。数千人の魂の力が、ここにあるのですから。

怯えるといい。泣き叫んで、逃げようとわめくといい。その恐怖におののく声はたまらなく美しい・・・。

さあ、「僕」の錆になるがいいッ!!覚悟―!

ッ!?あ・・・あっ・・・面が・・・。貴様ッ!何をしたッ!!



・・・石?これを咄嗟に蹴ったのか?だから面が破れて・・・うぅっ・・・。

う、うぐっ・・・くそ、このままでは「あの子」に戻ってしまう・・・ぐわああっ!!

・・・―ぐすっ、何が・・・―一体何が起きたの?

痛い・・・あ、あれ?僕は・・・?今まで何を―刀から手が離れない・・・。

そ、そうだッ!!お、お父さんとお母さん、お兄ちゃんがやられたんだ!!怪しい刀を持つ、面の男に!!



あ、あなたは?僕は長月・・・村正。ごめん、さっきまでの記憶がない・・・。なんだか混乱してるみたい。

はぁ・・・深呼吸したら少し落ち着いた。ありがとう。

僕の話―聞いてくれる?まだ自分でも冷静になれてないけど・・・。

僕の父さんと兄さんは武士としてこの世界で暮らしていた。母さんも道場で剣術を教えていた。

しかしある日、世界が暗闇に包まれ、妖怪たちの世界が訪れたんだ。



鬼や妖怪たちは、人間を襲った。盗みだけだったらまだしも・・・やつらは人の魂を喰らうんだ。

僕の家族は、他の町のみんなとともに、妖怪に立ち向かおうとした。だけど・・・。

ある日道場に、面の男が現れた。そいつは両親と兄さんを・・・うっ・・・。

男は残された僕に、刀を握らせた。僕が震えながらその刀を持つと、男はにやりと笑ってー。

・・・それからの記憶は今の今までないんだ。



子ども時代に起きた出来事なのに、僕の身体は大人になってる・・・。それだけ年月が経ったんだね。

僕は、僕は家族を守れなかった!ただ怯えて、道場の隅っこで泣いているだけだったんだ!

それに僕は・・・ずっとこの刀に操られていたみたいだ。自分の意思じゃなかったとしても、たくさんの人を―。

もう嫌だ・・・僕はこんなことをしたくない。ただ・・・ただ家族楽しく暮らしたかっただけなのに・・・。

なんでこんなことになったんだ・・・。いや、僕もみんなと一緒に戦っていれば、きっとこんなことには・・・。



あなたにお願いがある。僕が刀を手にしたら・・・僕ごと刀を壊してくれないかな。

この刀は人を操る力があるから、きっと放っておくとまた他人を操って生き延びる・・・。

人を襲うことを止めず、負の連鎖は続く。だから―。

さあっ!僕が刀を持っているうちに、倒して!!早くっ・・・うわぁぁっ!!!

・・・―はぁはぁ・・・まったく。子どものくせに小賢しい。



僕を倒すなんてバカな考えは捨ててください。所詮は子どもの虚言に過ぎません。

それでも僕を倒すというのなら、・・・こちらから攻撃させていたきだますよ!?

ッ!!先ほどよりも強い力・・・ッ!少しばかり侮っていたようですね。

こちらも本気を出すことにいたしましょう。ハァッ!!

ぐっ・・・まさか追い詰められるとは・・・。仕方ありません。それならば奥の手を!!



「僕だよ!これ以上攻撃するのはやめて!!僕も・・・刀とともに倒されちゃうよ!!」

なっ!?今のが偽物の声だと?本当ですよ。僕があなたに倒されたら、村正も・・・。

いいんですか!?村正ともども私を倒して!!あなたは絶対に後悔する!!

何の罪もない少年を手にかけるんですから・・・っ、ぐわああぁっ!!

・・・―はぁ・・・あれ?刀は・・・?



砕けてる・・・。あなたがやってくれたの?ありがとう。これでもう妖刀は復活しないはずだよ。だけど・・・。

僕は・・・僕は人をたくさん―その過去は変えられない。

妖刀がどんなにひどいことをしてきたのか・・・ぼんやりとだけど覚えてるんだ。

例え妖刀がしたことだって、やったのは僕に変わりない。だから・・・僕も始末してくれないかな。

あはっ、僕は自分のしたことに向き合う強さがないんだ。情けないよね。



だからさ、命で償うしかない・・・そういう方法しか、僕には残されていないんだ。

え?あなたは他に僕が罪を償う道があるっていうの?

「君は操られていただけだ。それに本当の君は、強いはず。だから生き延びて、みんなの役に立ってほしい」・・・。

そうだね。生き残ることこそ最大の報いだ。僕は、みんなを守るために生き延びる。

今までの罪を背負ってね。・・・ふふっ、やっと苦しみから救われた気分だよ。

ありがとう、異世界の騎士さん。僕を救ってくれて―。



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