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旅人エイヴィン

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3/17~3/30


発明と夢の旅人エイヴィン

やあ!ボクはエイヴィン。これでも発明家なんだ。

よかったらボクの思い出話きいて行かない?夢いっぱいの移動遊園地の話だよ。

ボクがまだ幼かった頃のことなんだけど・・・初めて移動遊園地に連れて行ってもらったときは衝撃だったなぁ・・・。

観覧車や機関車・・・それに回転木馬!全部初めて見る者ばかりでさ。

目の前に広がるきらきらした光景・・・ステキだったな・・・。



大人も子どもも皆笑ってて・・・最高に幸せな空間だった!

ボクもあんな乗り物を発明してみたい!そう思ったんだ。

だって皆を笑顔にすることができるんだから!

今まで引きこもってたボクも、発明で皆を笑顔にすることができるかな?

そう思ってボクが何したかわかる?



世界中の遊園地を旅したんだ!そこで乗り物の研究をしたんだよ。

初めて訪れた遊園地は小さいところだったんだけど・・・。

空中ブランコしか乗り物はないのに皆とっても楽しそうで・・・。

乗り物の力・・・遊園地の力ってやっぱりすごいよね!

次に訪れたのは大きなジェットコースターがある場所!



ジェットコースター・・・ボクの作る遊園地にも作りたいと思った。

とっても怖くて刺激的なヤツがあったら皆喜ぶだろうなってね。

だけどその前に回転木馬を作ろうと思ったんだ。

カッコイイ馬がくるくると回る・・・遊園地になくてはならないものだからね!

回転木馬は一番に作ろう!そう決めてた。



馬のデザインはこんな感じで・・・部分を組み立てて・・・。

できた回転木馬がこれ・・・ボクの親友でもあるんだ。

乗り心地もバツグン!ずっと乗っていられるんだよ。

木馬を作ったあとも遊園地を回る旅を続けたんだ。なんでかって?

遊園地は移動遊園地以外にもまだたくさんある・・・どこかにまだ見ぬ発明がある!これは確信!



発明の設計図を描く毎日・・・それだけどもボクは毎日楽しくて仕方なかった。

「皆が楽しめる遊園地」を作ることで頭がいっぱいだったからね。

胸がドキドキわくわくして・・・夢があるだけで生きていられる気がした。

まだ知らない乗り物があるかもしれないと思ってもっと旅を続けたんだけど・・・。

どこの遊園地にも必ずあるものがあった。それが・・・皆の笑顔なんだ!



作っているはずのボクもいつの間にか笑顔になってる。遊園地って皆を幸せにする場所なんだ!

みんながハッピーになれる遊園地を作ろう!そんな場所ができたらきっと皆も喜んでくれるよね?

何度も何度も壊れるまで乗り物に乗ってもらうんだ!

乗るまでに何時間まってでも乗りたいと思うような・・・そんな発明をしないとね!

イメージを膨らませて・・・どこの遊園地にもないような乗り物を作りたい!



アイディアが止まらなくて設計図を描くのに手のスピードが追いつかなくなったよ。

さあ設計図は今ここにある。キミも作るの手伝ってくれる?

さっそくゴーカートを作ろうと思うんだけど・・・どうかな?

あのゴーカートも蒸気の力を使って動いてたな・・・。

よし!やってやるぞ!キミの力も借りられるならボクにできないことはないっ!



この部分とこっちの部分を組み合わせて・・・。

仕組みはあってるはずだからこれで動くと思うんだけど・・・。

わぁっ!すごい!!ちゃんと動いてるっ!!感動だなぁ!

自分の発明品でこんなにわくわくするなんて・・。

もったたくさん発明したら皆も喜んでくれるかな?



きっとボクのひらめきがあれば今までにない面白い乗り物を作ることができるはず!

乗り物をもっとたくさん作って・・・いつかは世界一大きな遊園地を開くんだ!

蒸気の力ですばらしい発明品―乗り物をもっと作らなきゃと思ったんだ!

あれ?ご飯の時間?ゴメンゴメン。そこのパンを取ってくれる?

発明が楽しすぎて食事のことなんてすっかり忘れてた。



すぐ発明に没頭しちゃうんだ。ボクの悪いクセだね!

この設計図の乗り物が全部完成したら・・・とうとう世界一の遊園地を開くことができる!

だだっ広い更地に毎日少しずつ乗り物が増えていく・・・!

さあ・・・これで乗り物は全部完成したよ!

すべての乗り物が設置完了!さっそく試乗してみよう!



ボクが作った発明品・・・すばらしい!やっぱり夢はかなうんだね。

いたるところでプシューッ!という音が聞こえて・・・。

蒸気の音が耳に残って・・・ボクは心底幸せだよ!

夢がかなったんだからな!大きな遊園地を作るという夢が!これぞ研究と努力の成果!

この飽きない乗り物を作ったのはボクたちなんだよ!こんなにすばらしいものを作ることができたなんて・・・!



さあジェットコースターに乗ろう!世界中のあらゆるジェットコースターを見て作り上げた自信作なんだ!

ゴーカートも蒸気機関車も自慢の乗り物だよ!

ボクの遊園地にいる限り楽しいことはずっと続くんだ・・・。

家に帰りたいの?なんで?こんなに楽しい時間を過ごしているのに?

ボクにはわからない。キミもずっと笑顔だったのに・・・?



ここは皆が憧れる場所だよ?どうして帰りたがるの・・・?

明日も明後日もそのあとも・・・朝も昼も夜も関係なくボクと遊ぼうよ!

ほらまだまだ遊び足りないでしょ?家に帰っても待ってる人なんて・・・いないんだよ?

遊園地にはボクがいる。家に帰っても寂しいだけだ!そんなの嫌でしょ?

もしかしてこの遊園地に飽きちゃった?だったらまた新しい乗り物を作るよ!いくつも・・・いくらでも・・・ね。

だから・・・ボクと一緒に永遠にこの遊園地で遊び続けよう!ずっと・・・ずっとね!



鉄屑と時の旅人エイヴィン

・・・キミは?こんな廃墟に何の用?

道に迷ったのか・・・そうだよね。そうじゃなかったらこんな場所に来るわけがない。

少しばかりボクの話を聞いてくれるかい?歩きながらでもいいから・・・。

ボク?ボクはエイヴィン。この廃墟に暮らしている発明家だけど今はほとんど何も作っていない。

この世界最大の廃墟は遊園地だった場所・・・作り出したのはボクなんだ。



ボクが作ったボクだけのための遊園地―夢のつまった世界―

それもすべてボクが見た夢だった。

夢は目が覚めたらすべてなかったことになる。ボクの夢もそうだ・・・いつの間にか消えていた。

残ったのは廃墟・・・たくさんの鉄屑・・・刺激的な遊具の成れの果て。

せっかく作った乗り物も・・・今は動かない。



雨に濡れ風に吹かれ錆びついて―ただの大きな鉄屑になってしまった。

―ここは大きな墓場だ。ギーギーと風で動く鉄屑の音が耳に響く。・・・こんな音もう聞きたくないよ。

錆びた鉄と油のにおいにまみれた遊園地。せめてボクの手で解体しよう・・・。

もう―これですべて終わりだと思った。

悲しい気持ちを押し込めてボクは乗り物を崩していった。夢中で作った発明品も今じゃただのゴミだから。



ボクの夢はすべてスクラップになり心はズタズタに切り裂かれたんだ。

一通り解体が終わるとボクはまた虚しくなった・・・。

乗り物を発明しているときは楽しかった・・・それこそ寝食を忘れて夢中になれたのに。

・・・心にぽっかりと大きな穴が開いた気分だった。

ボクが費やした時間やエネルギーのすべてが無駄になったんだから。



この巨大な遊園地にもっと人を呼んでいたのなら―違う結末になっていたのかもしれない。

・・・今ならできるだろうか?ポンコツになってボクでも新しく発明品を作ることが・・・。

集めた鉄屑を手にしてボクは立ち上がった。もう一度だけ・・・もう一度だけやってみることにした。

できるかわからない。でもやらないで終わるよりも、やって自分の気持ちに整理をつけて終わらせる方がましだ。

ボクは解体した鉄屑を拾い集めて新しい発明をしようと考えた。



だけど・・・うまくいかない。昔みたいに情熱的に狂ったように発明し続けることができない。

皆が喜んでくれるような乗り物を・・・!そう考えれば考えるほどアイディアは浮かばない。

結局鉄屑を組み合わせては壊しての繰り返し。こんなことやるだけ無意味なのかもしれない・・・。

そこに新しい発想がなければ、鉄屑ばかり集めてもなんの意味もないことを知っている。

自分に発明の才能があると勝手に勘違いしていた・・・。



ボクの発想はこの山となったスクラップと同じだったんだ。

ああ、雨が降ってきたーまた鉄屑が錆びていってしまうね。

ボクの涙も落ちて・・・止めることはできない。

どんなに手を尽くしても新しい遊園地はできない。この廃墟を皆の夢の国に戻すことは不可能だ。

雨が止むと今度は乾いた風が吹く。ボクの心とともに・・・だんだんと鉄屑は風化していく。



ボクの身体も・・・心も錆びてしまった。

くるくると時計の針が回る間ボクはただ立ち尽くすことしかできなかった。

二度と前に進むことはできない。夢がなくなったボクにできることは―ひとつたりともない。

このまま立ち止まっていたら・・・ボクもこの廃墟と一緒に風に吹かれてちりになってしまうのだろうか。

―ちりになってしまってもいい。ボクの見た夢とともにボク自身も消えてなくなればいい。



・・・夢なんて見るものじゃないね。

夢を見ることは破滅につながるってわかったから・・・。

ボクがここを立ち去ったらすべてなくなるのだろうか。夢を見たこともなかったことになるのだろうか。

ボクが見た夢・・・憧れたあの風景・・・発明に燃やした情熱・・・。

全部ボクの記憶から消えるのか。



消えてしまうならいっそ―ここから出ていこう。

こんな廃墟でもボクの思い出の地なんだ。その思い出を捨てよう。

―ゴミを捨ててここから旅立とう。

回転木馬はボクと一緒に夢を見てくれた友達だ。

ボクは友達に乗ると廃墟から出ていく決心を固めた。



ボクの心と同じように・・・ここもいつ崩れるかわからない。

寂しいけれどこの廃墟とはお別れだ。

二度と戻ることができない夢のない時間の旅へ出発する。

ボクの感情も記憶もすべてこの廃墟に置いていく。

心を失くしたボクはどこへ行くんだろう?



・・・どこへ行っても同じか。そんなことどうでもいいんだから。

さようなら、ボクのすべて。ボクの希望。ボクの・・・夢。

涙は流さない。枯れてしまったからね。

いつかまた夢を見ることができるようになったら・・・今度こそ素晴らしい遊園地を作るよ。

それが最後の・・・ボクに残された夢の欠片なのかもしれないね。



そのいつかのために夢の欠片は大事にするよ

もう二度とキミに会うことはないと思う。

ボクのことは忘れて―キミはキミ自身の夢を見て。

キミは・・・前に・・・未来へ向かって進むんだ。



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