【ウィズダフネ】アルボリスの性能評価とステ振り・継承優先度【ウィザードリィダフネ】

当時の人々は隕石に関する知識を持たなかった。

それゆえ天から落ちた星を恐れ、あれは樹海に捨てられた者たちの恨みだと考えた。

実際に星を目にしたはぐれエルフにはわかっていた。

それが人を魅了する強大な力を持つことを。

皆が星を見て奪い合う前に、手を打つべきだ。

彼は星が恐れられていることを知り、考えた。

恨みの星を掲げ、はぐれ者を募る。

星が落ちた樹海を、弱者の墓場ではなく居場所にする。

そして集まったはぐれ者たちを自分が率いる。

「そうすればこの星はオレのものだ。誰にも奪わせん」

はぐれエルフは訴えて回る。樹海には誰がいてもいい。

誰も邪魔者扱いはされない。あらゆる者を受け入れる。

恨みの星は見捨てられた者に味方するのだから、と。

そして樹海は変わり始めた。

アルボリス。樹海の統治者を意味する名だ。

樹海で死ぬ前に彼の訴えを聞き希望を抱いた者、そして各地を渡り歩いた彼を慕い集ったはぐれ者たちは

打ち捨てられ死ぬだけの運命を変えたアルボリスを

指導者として仰ぎ、名を呼び讃えた。

樹海で生きる者は増えていった。

やがてアルボリスが自ら探し歩かずとも、樹海に居場所があるという噂を信じたはぐれ者たちが集まってくるようになった。

やがて樹海はアルボリスティアと呼ばれ始めた。

ここにアルボリスという王を戴く王国が誕生した。

誰がいてもいい、弱者も生きられる場所。

捨てられた者たちの恨みの星が守護する国。

国の礎を築いた王が星を持つことを、誰が責めよう?

「計画通り。この星はオレのものだ」

星を手にするという当初の目的を達成しても、アルボリスの始めた国は成長を続けた。

住人が増えれば、必要な糧も増える。

傷病者の多いこの国にできることは限られている。

そしてアルボリスは本来盗賊だ。

足りない分は奪う。それが当然の選択だった。

動ける国民は多くない。だがアルボリスには、人員不足を補う戦略の素質があった。

各地から集めた多種多様なはぐれ者を、能力にじて働かせ、少人数で多くの糧を奪う。

少ない労力で多くの成果を手にしてみせる王の手腕に民はより一層アルボリスへの支持を高めた。

一方で近隣の地では、樹海の王アルボリスは大盗賊団の首領として恐れられるようになった。

樹海の王の勇名と恐怖は数百年に渡って続いた。

アルボリスティアは永劫栄えると、誰もが考えた。

時は流れ、長きに渡り樹海の近隣に住む者たちを震え上がらせたアルボリスティアにも終わりが訪れた。

かつては存在しなかった国家が次々に台頭し、団結し戦略を駆使して戦うのは樹海だけではなくなった。

やがてアルボリスティアは大国との戦いに敗れ、アルボリスは処刑された。

勝者が敗者から奪うのは自然の摂理だ。

大国の兵たちは略奪のためアルボリスティアに押し入り大盗賊団の宝を探し回った。

だがそこに彼らが想像した宝の山はなく、数百年続いた王国があったはずの場所は廃墟のように静まり返っていた。

アルボリスティア建国の礎で特別な力を持つとされる隕石も、どこにもなかった。

永久の繁栄はない。樹海の王国も例外ではなかった。

だが星を誰にも奪わせないという1人のはぐれエルフの最初の決定は、とうとう誰にも覆せなかった。