《ストーリーセットコーデ》啜血の欲望
啜血の欲望
完成報酬 | コーデギフトBOX (神奪の血、真の欲望、40ダイヤ) |
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シリーズ1 | シリーズ2 |
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私を見下ろす紅月は、まるで残虐な瞳が真っ暗な星空に吊るされているようだった。
私が見上げた紅月は、まるで残酷な鎌の倒影が静かな湖面に写されているようだった。
『影の城と吸血鬼再来の伝説』と人々は言うけれど、私はそんなものになりたくはなかった。誰からも生まれてくることを望まれなかった存在。そして、私自身もこんな化物として生まれることを望んではいなかった。私は絶対に許さない。私を産んだ白い悪魔と黒い天使のを。
紅月が倒影された波紋の奥底に、この世界とは別のもう一つの世界に通じる扉がある。元々存在していなかった世界であり、私たちが閉じ込められた世界。ここは巨大な墓のような場所だ。辺り一面に古い死体が散らばり、それらは血で濃紅色に染まった地の上で腐敗している。
甲高い笑い声、悲惨な鳴き声、虚ろな祈りの声は鳴り止むことを知らない。そして、飽くことを知らない啜血の音。これらは全部私の心を乱す煩わしい音たち。自分が死んでしまったことを忘れた亡霊たちは紅月の下で彷徨い、『光の世界』に戻る為の出口を探している。死に損ないの吸血鬼たちは餌を探し続け、暗闇に隠れているこの世界に迷い込んでしまった哀れな『光の世界の住人たち』を目を光らせて探している。
この世界の女王は私で、この世界で私の思い通りにならないものはない。なんだって手に入るし、どんな命令も思いのまま。けれど、心が満たされたことなんて一度もなかった。だってこの世界は、私が生きたかった『光の世界』とは二律背反なものなのだから。吸血鬼の王とエルフの女の間に生まれた私。真っ黒な悪魔の羽と真っ白な天使の羽を併せ持つ私。半分は光の世界の血が混じっているというのに、なぜ私は光の世界で生きることが許されず闇の世界に閉じ込められてしまったのだろうか。
(私は一体何者なのだろう?)
生まれた頃からずっと持っていたこの問の答えは、今日も出ない。ただ心を満たす為に、欲望の赴くままに毎日殺戮を繰り返し生きている。その時だけは、ほんの少し心が満たされるから。
「ご主人様ぁ、なにか欲しいものがありますか?」
「ん……?そうね……」
可愛い使用人が甘えた声で私の膝元に擦り寄ってきた。私は何を欲しているのだろう。この暗闇しかない世界には飽きたけれど自分が何を求めているのか分からない。
「そう言えば、エルフの女の子がお城に迷い込んできたらしいですよ!」
「エルフ……?」
「それは絶対に私のモノにしなくてはね」
そうだ。私の欲しいモノはもうこの世界にはない。私の欲しいモノはこの世界の外側にある。エルフの血を自分の中に取り込んだらこの心が満たされるかもしれない。
「エルフのお嬢さんに挨拶をしてくるわ」
「いってらっしゃい、ご主人様」
久し振りに胸の鼓動が速くなるのを感じる。もしかしたら、永遠に欠けていた私の心を貴女が埋めてくれるかもしれない。そんな期待を込め、エルフの元へ向かった。
そのエルフの少女を一目見たとき、今までにないような戦慄が走った。初めて会ったはずなのに、なぜだか懐かしくて、自分の中に流れている血が一斉に騒ぎ出した。
「ヘルシング、私は貴女を救いに来たの」
私を救いに?このエルフは何を馬鹿なことを言っているのだ。私を強く睨みつけるその瞳に、言葉にならない苛立ちを感じた。
「うるさい……」
私は容赦なくそのエルフを捕まえた。聖潔な翼を折り、鞭を振り下ろす。真っ白な肌に牙を深く突き立て、溢れ出た血を舐める。これが、エルフの血の味……。今まで味わったことのない、甘い味が口の中一杯に広がった。身体を捩って逃げようとする彼女を押さえつけ、この高貴な身体に何度も口付けを降らした。彼女の鳴き声を浴びるほど、空っぽだった私の心に潤いを齎していく。これが……これが、心が満たされていく快感なのか。初めて感じる悦びに、脳が麻痺していく。
「もっと、もっと、私を満たして……」
紅月が、まるで彼女の残躯を嘲笑っているようだった。
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