トータルコーデ《ストーリートータルコーデ》7
啜血の欲望
完成報酬 | コーデギフトBOX (神奪の血、真の欲望、40ダイヤ) |
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シリーズ1 | シリーズ2 |
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私を見下ろす紅月は、まるで残虐な瞳が真っ暗な星空に吊るされているようだった。
私が見上げた紅月は、まるで残酷な鎌の倒影が静かな湖面に写されているようだった。
『影の城と吸血鬼再来の伝説』と人々は言うけれど、私はそんなものになりたくはなかった。誰からも生まれてくることを望まれなかった存在。そして、私自身もこんな化物として生まれることを望んではいなかった。私は絶対に許さない。私を産んだ白い悪魔と黒い天使のを。
紅月が倒影された波紋の奥底に、この世界とは別のもう一つの世界に通じる扉がある。元々存在していなかった世界であり、私たちが閉じ込められた世界。ここは巨大な墓のような場所だ。辺り一面に古い死体が散らばり、それらは血で濃紅色に染まった地の上で腐敗している。
甲高い笑い声、悲惨な鳴き声、虚ろな祈りの声は鳴り止むことを知らない。そして、飽くことを知らない啜血の音。これらは全部私の心を乱す煩わしい音たち。自分が死んでしまったことを忘れた亡霊たちは紅月の下で彷徨い、『光の世界』に戻る為の出口を探している。死に損ないの吸血鬼たちは餌を探し続け、暗闇に隠れているこの世界に迷い込んでしまった哀れな『光の世界の住人たち』を目を光らせて探している。
この世界の女王は私で、この世界で私の思い通りにならないものはない。なんだって手に入るし、どんな命令も思いのまま。けれど、心が満たされたことなんて一度もなかった。だってこの世界は、私が生きたかった『光の世界』とは二律背反なものなのだから。吸血鬼の王とエルフの女の間に生まれた私。真っ黒な悪魔の羽と真っ白な天使の羽を併せ持つ私。半分は光の世界の血が混じっているというのに、なぜ私は光の世界で生きることが許されず闇の世界に閉じ込められてしまったのだろうか。
(私は一体何者なのだろう?)
生まれた頃からずっと持っていたこの問の答えは、今日も出ない。ただ心を満たす為に、欲望の赴くままに毎日殺戮を繰り返し生きている。その時だけは、ほんの少し心が満たされるから。
「ご主人様ぁ、なにか欲しいものがありますか?」
「ん……?そうね……」
可愛い使用人が甘えた声で私の膝元に擦り寄ってきた。私は何を欲しているのだろう。この暗闇しかない世界には飽きたけれど自分が何を求めているのか分からない。
「そう言えば、エルフの女の子がお城に迷い込んできたらしいですよ!」
「エルフ……?」
「それは絶対に私のモノにしなくてはね」
そうだ。私の欲しいモノはもうこの世界にはない。私の欲しいモノはこの世界の外側にある。エルフの血を自分の中に取り込んだらこの心が満たされるかもしれない。
「エルフのお嬢さんに挨拶をしてくるわ」
「いってらっしゃい、ご主人様」
久し振りに胸の鼓動が速くなるのを感じる。もしかしたら、永遠に欠けていた私の心を貴女が埋めてくれるかもしれない。そんな期待を込め、エルフの元へ向かった。
そのエルフの少女を一目見たとき、今までにないような戦慄が走った。初めて会ったはずなのに、なぜだか懐かしくて、自分の中に流れている血が一斉に騒ぎ出した。
「ヘルシング、私は貴女を救いに来たの」
私を救いに?このエルフは何を馬鹿なことを言っているのだ。私を強く睨みつけるその瞳に、言葉にならない苛立ちを感じた。
「うるさい……」
私は容赦なくそのエルフを捕まえた。聖潔な翼を折り、鞭を振り下ろす。真っ白な肌に牙を深く突き立て、溢れ出た血を舐める。これが、エルフの血の味……。今まで味わったことのない、甘い味が口の中一杯に広がった。身体を捩って逃げようとする彼女を押さえつけ、この高貴な身体に何度も口付けを降らした。彼女の鳴き声を浴びるほど、空っぽだった私の心に潤いを齎していく。これが……これが、心が満たされていく快感なのか。初めて感じる悦びに、脳が麻痺していく。
「もっと、もっと、私を満たして……」
紅月が、まるで彼女の残躯を嘲笑っているようだった。
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揺落の蕾
画像 | 完成報酬 |
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コーデギフトBOX (贖いの月、堕天の蕾、幽閉の花、折れた翼、血色の星軌、挫折の地、錆びた檻、悲願の歌、40ダイヤ) |
ページ名 | カテゴリ | 入手方法 |
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贖いの月 | ヘアスタイル | セットコーデ任務達成「《ストーリーセットコーデ》揺落の蕾」 |
堕天の蕾 | ドレス | セットコーデ任務達成「《ストーリーセットコーデ》揺落の蕾」 |
血色の星軌 | アクセサリー | セットコーデ任務達成「《ストーリーセットコーデ》揺落の蕾」 |
幽閉の花 | アクセサリー | セットコーデ任務達成「《ストーリーセットコーデ》揺落の蕾」 |
折れた翼 | アクセサリー | セットコーデ任務達成「《ストーリーセットコーデ》揺落の蕾」 |
挫折の地 | アクセサリー | セットコーデ任務達成「《ストーリーセットコーデ》揺落の蕾」 |
錆びた檻 | アクセサリー | セットコーデ任務達成「《ストーリーセットコーデ》揺落の蕾」 |
哀願の歌 | メイク | セットコーデ任務達成「《ストーリーセットコーデ》揺落の蕾」 |
シリーズ1 | シリーズ2 |
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番外(挫折の地) | 番外(錆びた檻) |
その日もいつものようにポワリー湖は鏡のように静かで湖面には無数の星々が映し出されていた。風は吹いていないはずなのに湖面には奇妙な波紋ができ、波紋の奥からは低い唸り声が聞こえてくる。この下に広がるのは光の世界とは相反する闇の世界。一度足を踏み入れると、二度と帰ってくることはできない。
「いってまいります」
私が湖面の上に降り立つ瞬間、倒影の星々は純白な花海になり、花弁は羽のように舞い落ちた。そしてそれらは少しずつ濃紅色に染まる。私を見送る紅月が怪しく光ると共に、ポワリー湖の星が消えた。
闇の世界に着いてすぐ、私は影の城の女王に囚われた。巨大な籠、重い手錠、止まない痛みと注視される屈辱。滴る血が牢獄の中の時間を記録し、冷たい風が骨の間を通り過ぎる。聞きなれた足音が聞こえてきた。そろそろ拷問の始まる時間だ……。籠の扉が開かれると同時に、私は彼女に頭を掴まれ、乱暴に視線と視線が絡み合う。
「まだまだ貴女は死なせないわ」
無理やり背後から抱き締めてきたかと思うと、細くて冷たい指先で昨日出来たばかりの傷口をなぞってきた。そして、私を抱きしめる力は徐々に強くなり、だんだんと呼吸が苦しくなってくる。彼女の爪が、彼女の牙が、私の身体に食い込んでくる。まるで彼女は自分の心の中に開いてしまった穴を埋めるように、激しく身体を求めてくる。血を吸わる度に、彼女の体の中に私は取り込まれていく。
意識が遠くなるその瞬間、彼女の牙が私の首元から離れた。そして彼女は耳の後ろから順に私の身体を舐めまわした。優しいキスを落としてきたかと思うと、時折噛み付いてくる。全身を愛撫してきたかと思うと、傷口に舌を這わされ激痛に声が漏れる。彼女から私に向けられる感情は、一体何なのだろうか。
「貴女のその高貴で聖潔な眼をこんなにも愛しているのよ!抉り出したいほどに!」彼女は叫ぶ。
「こんな目にあっても、まだ貴女は私を救いたいのかしら?」彼女は問う。
「貴女が私を救うのが先かしら?それとも私が貴女を無限の深淵に引き下ろすのが先かしら?」彼女は囁く。
私は別に彼女の為だけに彼女を救いたいわけではない。私が彼女を救おうとしているのは、贖罪の為だ。嘗て、私たちエルフと吸血鬼は争いを起こした。私の魂はその罪を償う為のものなのだ。
勝利したエルフたちの為。ここで自我を失った幽霊たちのため。ここに囚われているすべての吸血鬼のため。そして、殺戮後の残骸しか残っていない戦場のため。私が唯一できることは、この闇の世界へと通じる扉を閉ざし彼女たちと共に永遠に影の城で暮らすことなのだ。籠に入り、自分の体を献上し、痛みに耐え続けること。やがていつか、血が喘ぎの中で渇き、純白の花海も枯れる。しかし彼女はずっとこのまま、光の世界へ出ていくことを切望するだろう。彼女の為にも、光の世界の為にも、彼女をここから出すわけにはいかない。
だから私は何をされようとも、永遠に彼女の心を埋める役割を担うのだ。