《ストーリーセットコーデ》侵掠すること火の如く
侵掠すること火の如く
完成報酬 | コーデギフトBOX (世界を燃やす火、万里をゆく神、通天の角、天を狩る太陽、紅蓮業火、40ダイヤ) |
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剣が体を貫いた。夜風が骨身に染みるほど冷たくなり、彼女は両手で剣を握りしめた。掌に食いこみ痛くなってもお構いなしに。剣が抜かれないうちに、同じような剣が四方八方から彼女の体に突き刺さる。目の前の見知った顔が軽蔑するような笑い声を出す。手を挙げて息も絶え絶えの彼女を深淵の底に落とす。
冥水苑が夢から覚めると、汗をびっしょり書いていた。剣はない。周囲は深い夜の色合いに包まれている。包帯が巻かれた傷口からは血が滲み出ていた。冥水苑は起き上がって服を纏うと、机の前に腰掛けた。月が空高く上り、微かに庭を流れる水の音と蝉の鳴き声が聞こえる。
からくり玄武は分解され、内部の複雑な構造が露わになっている。伸縮自在の装甲を一層一層直していき、様々な精巧な暗器を取り付けると、優れた武器となり、風をも通さぬ盾にもなる。組み立てたばかりの装甲蛇が緑色の目を開けて冥水苑の体の傍を回っている。
数日前、彼女は目覚めた。侍女は目覚めた彼女を見て、抱き着いて手をとって泣き喜んだ。家に戻ると、何も起こっていなかったかのようだった。薬を変える時だけ、その傷口を目にする。薬を塗る時は突き刺すような痛みが走り、あれが夢ではなかったことを教えてくれる。しかし、あのリアルな夢を毎晩見るわけではない。
日中のちょっとした時間、或いは深夜の眠れない時、彼女はいつでも何かを考えていた。数日間昏睡していたせいか、簡単に見えるようなことも彼女には複雑に映り、絡み合った糸がほどけない。或いは考えることを止めたくなかっただけかもしれない。
昨晩、部屋に戻ると、かつて彼女が助けたあの白髪の男が窓際に立ち、月を眺めながら酒を飲んでいた。彼らは夜が更けるまで語り合った。
蕭縦が帰ろうと動くと風が起こり、カーテンが揺らめいた。冥水苑の心は澄み切った湖面のように静かだった。
祝羽弦はもうあの暖かな花畑で彼女に美しい笑顔を見せる少年ではなかった。彼女はこれまで彼を放任し、庇っていた自分がおかしく思えた。彼女こそが彼の共犯者だと言ってもいいだろう。
何故、他人がわざわざこんなことを言うのか、彼女には分かっていた。だが、白永義も信頼できる人物ではなかった。南境で反乱が起きたとはいえ、現在のように完全に分断するまでには至らなかったはずだ。白永義が見て見ぬふりをしていたからだ。冥水苑はその理由を知らなかった。彼女には白永義が南境を放棄するに足る理由が思いつかなかった。彼が南境と何かを交換した場合は別だが。
人の隠された心は分かりにくい。冷たい機械が人の気持ちの温かさを知らぬように、冥水苑も軽々しく他人を信用しなくなった。
玄武の部品を一つずつ取り付け、巨大なからくりが動き出す。音は殆どしなかったが、一瞬のうちに鉄製の工具を噛み切ってしまった。
もし雲上を彼等がしっかり守らないのなら、彼女が守るまでだ。彼女には自分のやり方があり、他人が手を差し伸べる必要も、他人に理解してもらう必要もない。南境はその第一歩に過ぎないのだから。
しかし、彼女が大晦日の雲錦城に着いた時には、既に遅過ぎた。越千霜は命からがらといった様子で、冥水苑は越千霜を庇って矢を食い止めることしか出来なかった。からくり玄武が越千霜の体を覆い、彼女を助け出そうとしていると、冥水苑の脇から無数の囁き声が聞こえた。懐疑、猜疑、中傷、貶め、そして数は少ないながらも見分けのつかない反駁。
彼女は構うことなく、そっと越千霜を地面に下ろした。誰も彼女の来た理由を知らない。誰も彼女の目的を知らない。誰も彼女に近づこうとしない。誰も彼女を理解しない。彼女は静かに南境への帰路についた。玄武が彼女の背後で鋭い爪と牙を収めた。
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