トータルコーデ《ストーリートータルコーデ》8
目次 (トータルコーデ《ストーリートータルコーデ》8)
疾きこと風の如く
完成報酬 | コーデギフトBOX (天地攻め、論戦超天、太古の戦意、単騎疾走、疾風迅雷、40ダイヤ) |
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シリーズ1 | シリーズ2 |
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蕭縦はもう長いこと生きている。
彼は気ままに時間を過ごしており、滝の横で一日中、剣舞の練習をしたり、夕方には酒を飲んで山の中で寝てしまったりしている。何故なら彼にとって時間とはこれ以上ないほど意味のないものだからだ。
若い時、彼も天下を股にかけ、マーベル大陸のあらゆる場所を巡った。しかし、見聞が広まるにつれ、世界はどこも同じように思えてきた。ある場所で珍しい綺麗な景色を見たとしても、時間と手間を掛ければ別の場所でも見ることはできるのだ。
そんな蕭縦も他人とは違う人物に会ったことがある。
その少年は、命の息吹に満ちていた。彼はこの世界で最も未知の可能性を持っているようで計り知れなかった。蕭縦は彼の傍で懸命に彼を手伝い、助けた。彼の艶やかな命の花を早く咲かせるために。
ある晩、蕭縦は雨で濡れたのか涙で濡れたのか分からぬ最後の手紙を受け取った。少年は自分の計画と命を諦めてしまったのだ。それも男女の情のために。蕭縦はこのような者は世界で最もつまらないと思った。
巨大な魔法陣が雲上の南境で動き出し、花畑の時間は永遠に六十年前のまま止まることになった。蕭縦はそこに隠居し、次の面白い魂が現れるのを待った。それはまるで彼がこの世に留まる意義のようだった。彼はもう一度あのような強烈かつ熱烈な生を感じられることを楽しみにしていた。
だが、期待しては失望することの繰り返しだった。永い時間を過ごしすぎたせいで、蕭縦の希望と情熱は消耗し尽くしてしまった。彼はもう命の楽しみを感じなくなりやがて、食、酒、美人に興味を持ち始めた。これらは彼の麻痺した神経を、ほんの僅かな間だけ興奮させた。
時間の流れない花畑で待ち続けることは、檻の中に閉じ込められるようなものだった。蕭縦は自分が果てしなく待ち続ける間に意識の死に向かっているのではないかとすら思えた。
七年前、祝羽弦を見つけるまでは。
祝羽弦は面白い人物だった。彼の心は極めて複雑で理解し難かった。それでいながら最も単純な感情も併せ持っていた。彼はまるでこの世界の矛盾を集めてできたような存在で、蕭縦はこのような者は大したことを成し遂げられないと思っていた。しかし、祝羽弦は蕭縦の予想を裏切った。追い詰められた鼠が猫を噛むかのように、祝羽弦は自分の力で新たな境地を切り開いたのだ。彼の笑顔はまるで全てが当然だと言わんばかりだった。
蕭縦の弛み切っていた神経がピンと張りつめ、彼は花畑を出た。初めて時間が惜しく、一刻足りとも無駄にしたくなかった。
祝羽弦も彼を失望させなかった。蕭縦は自分の命の火が若い時よりも激しく燃えていることに気がついた。
しかし、祝羽弦の傍にいる時間が長くなるにつれ、蕭縦はどうしても越えられない壁に近づいているような気がした。彼がもたらす喜びは限界に近付いているのかもしれない。或いはこれくらいのものなのだろうか。
祝羽弦も自分でこの点に気がついていた。
明月楼で蕭縦は、祝羽弦が知りたがっていた忘却と封印に関する秘術を教えた。祝羽弦が不退転の決意で臨む様子が蕭縦にはおかしくてたまらなかった。
だが、蕭縦は思いもしなかったことに、祝羽弦が殺そうとした人物を救った。かつて彼の心にあった人を。
この少女は祝羽弦とは真反対で、全くの純粋無垢の存在だった。
彼女が成長すれば、彼女が自分を通じて見るような姿になれれば、この二人にはきっと面白い物語が起こるだろう。もしかしたら世界の真理、命の真髄もその物語にあるかもしれない。
人間界とはやはり面白い。今死ぬのはまだ早過ぎる。
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徐かなること林の如く
完成報酬 | コーデギフトBOX (寒林の蒼雪、雲海の自由、跡残さぬ羽、太陰の青磁、破竹之勢、40ダイヤ) |
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シリーズ1 | シリーズ2 |
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父親のことを「お父さん」と呼ぶことも許されず「父王」と呼ばなければならなかった。一緒に居てくれた母親もいつの日からか居なくなった。少女は繰り返し乳母に母の行方を尋ね、よく泣いたが、徐々にこの事を忘れていった。それ程にまだ、幼かったのだ。
庭くらいの大きさしかない彼女の世界には、乳母と侍女以外は誰も居なかった。だからあの白髪の少年が現れた時、彼女は不意を突かれた。少女は慌ててカーテンの裏に身を隠して、乳母に話しかける少年をこっそりと見ていた。
「このお兄ちゃん、とても恐そう。表情が全然ない。」少女は胸の中でこう思った。
少年が乳母に何を話しているのかは聞き取れなかった。或いは、幼いので分からなかったのかもしれない。彼女には乳母がとても緊張しているように見えたし、乳母は遂に地面に跪いてしまった。
少年は隠れている少女が見えたようで、こちらに歩いてくる。彼女は慌ててしゃがみこみ、頭を隠した。心臓がドキドキと脈打つ。足音が彼女の近くで止まった。しかしカーテンは開かれず、ポンポンと頭を撫でられただけだった。きつく閉じていた両目をパッと見開くと、我慢していた涙が零れ落ちた。
少年が去っていく。少女が恐る恐るカーテンの裏から覗くと、彼の離れていく後姿が見えた。
その後、大勢の人が様々な物を持って少女に会いに来たが、全て乳母に門前払いされてしまった。それは義王の言いつけだった。その後「義王」と呼ばれる白髪の少年が、少女を迎えにやって来た。彼の手は温かかった。母親が居なくなってから感じたことのない温かさだった。
義王は少女に言った。彼女は皇帝になってこの国は自分のものになるのだから、しっかりと治めるように、と。彼女にはよく分からなかったが「あの高い椅子に座って良い子にして、どうやって国を治めるのか勉強してさえいれば、義王兄さまはずっと私のそばにいてくれる」とういことだけは分かった。
義王は大変そうだった。夜中まで文英殿に明かりが灯っていたし、昼間も読み切れない量の書類を見ていた。
「もし私が義王兄さまの言うような『立派な皇帝』になれれば、こんなに苦労しなくて済むのかな?」彼女はそう思いながらも口に出して聞くことはしなかった。彼女は黙って努力を続け、一生懸命頑張った。
しかし、彼女はまだ子供だったので、本に書いてあることが分からず義王に三回聞いた。それでもまだ分からなかったが、彼女はもう義王の邪魔をしたくなかった。
少女が困っていると、仙人風の非凡な少年が門から入って来た。
「仙人兄さま、やっと来てくれたの!」
少女は喜んで椅子から飛び降り、本を持ったまま彼の傍に駆け寄った。
「この言葉も意味が分からないの、教えてくれない?」
少年は微笑んで少女を抱きかかえると玉座に座らせ、自分も彼女の横に腰を下ろし丁寧に本の言葉の意味を教えてあげた。少女は説明を聞きながら呟くように頷いた。
「仙人兄さまがいつも来てくれたらいいのに!物知りだし……でも義王兄さま程ではないけどね!」
一日また一日と、少女はこのような平凡な日々が過ぎていくと思っていた。
しかし、このような平凡さこそ、彼女が晋林宮の暗い部屋の中で最も取り戻したかったものだった。
彼女が泣いても返ってくるのは外で武器が激しくぶつかる音だけだった。「仙人兄さま」が扉を開けて入って来た。いつもと同じようだが、どこか違うようでもある。彼は傷だらけだった。服は血に汚れて見るに堪えないほどボロボロだった。少女は彼が伸ばした手を力強く握りしめた。次の瞬間に彼が倒れてしまうのではないかと心配だった。少年は少女を入口の方に押しやった。彼女は振り向きながら部屋を出ていった。目には涙が溢れ、世界がぼやけて見えた。
「仙人兄さまの言う通りにしていれば、きっとよくなるよね?義王兄さまが私たちを助けに来て、越将軍が勝つんだよね?そうだよね?そうでしょ!」眩しい光が小さな体を覆い、少女は唇をかみしめながら目を閉じた。
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侵掠すること火の如く
完成報酬 | コーデギフトBOX (世界を燃やす火、万里をゆく神、通天の角、天を狩る太陽、紅蓮業火、40ダイヤ) |
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シリーズ1 | シリーズ2 |
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剣が体を貫いた。夜風が骨身に染みるほど冷たくなり、彼女は両手で剣を握りしめた。掌に食いこみ痛くなってもお構いなしに。剣が抜かれないうちに、同じような剣が四方八方から彼女の体に突き刺さる。目の前の見知った顔が軽蔑するような笑い声を出す。手を挙げて息も絶え絶えの彼女を深淵の底に落とす。
冥水苑が夢から覚めると、汗をびっしょり書いていた。剣はない。周囲は深い夜の色合いに包まれている。包帯が巻かれた傷口からは血が滲み出ていた。冥水苑は起き上がって服を纏うと、机の前に腰掛けた。月が空高く上り、微かに庭を流れる水の音と蝉の鳴き声が聞こえる。
からくり玄武は分解され、内部の複雑な構造が露わになっている。伸縮自在の装甲を一層一層直していき、様々な精巧な暗器を取り付けると、優れた武器となり、風をも通さぬ盾にもなる。組み立てたばかりの装甲蛇が緑色の目を開けて冥水苑の体の傍を回っている。
数日前、彼女は目覚めた。侍女は目覚めた彼女を見て、抱き着いて手をとって泣き喜んだ。家に戻ると、何も起こっていなかったかのようだった。薬を変える時だけ、その傷口を目にする。薬を塗る時は突き刺すような痛みが走り、あれが夢ではなかったことを教えてくれる。しかし、あのリアルな夢を毎晩見るわけではない。
日中のちょっとした時間、或いは深夜の眠れない時、彼女はいつでも何かを考えていた。数日間昏睡していたせいか、簡単に見えるようなことも彼女には複雑に映り、絡み合った糸がほどけない。或いは考えることを止めたくなかっただけかもしれない。
昨晩、部屋に戻ると、かつて彼女が助けたあの白髪の男が窓際に立ち、月を眺めながら酒を飲んでいた。彼らは夜が更けるまで語り合った。
蕭縦が帰ろうと動くと風が起こり、カーテンが揺らめいた。冥水苑の心は澄み切った湖面のように静かだった。
祝羽弦はもうあの暖かな花畑で彼女に美しい笑顔を見せる少年ではなかった。彼女はこれまで彼を放任し、庇っていた自分がおかしく思えた。彼女こそが彼の共犯者だと言ってもいいだろう。
何故、他人がわざわざこんなことを言うのか、彼女には分かっていた。だが、白永義も信頼できる人物ではなかった。南境で反乱が起きたとはいえ、現在のように完全に分断するまでには至らなかったはずだ。白永義が見て見ぬふりをしていたからだ。冥水苑はその理由を知らなかった。彼女には白永義が南境を放棄するに足る理由が思いつかなかった。彼が南境と何かを交換した場合は別だが。
人の隠された心は分かりにくい。冷たい機械が人の気持ちの温かさを知らぬように、冥水苑も軽々しく他人を信用しなくなった。
玄武の部品を一つずつ取り付け、巨大なからくりが動き出す。音は殆どしなかったが、一瞬のうちに鉄製の工具を噛み切ってしまった。
もし雲上を彼等がしっかり守らないのなら、彼女が守るまでだ。彼女には自分のやり方があり、他人が手を差し伸べる必要も、他人に理解してもらう必要もない。南境はその第一歩に過ぎないのだから。
しかし、彼女が大晦日の雲錦城に着いた時には、既に遅過ぎた。越千霜は命からがらといった様子で、冥水苑は越千霜を庇って矢を食い止めることしか出来なかった。からくり玄武が越千霜の体を覆い、彼女を助け出そうとしていると、冥水苑の脇から無数の囁き声が聞こえた。懐疑、猜疑、中傷、貶め、そして数は少ないながらも見分けのつかない反駁。
彼女は構うことなく、そっと越千霜を地面に下ろした。誰も彼女の来た理由を知らない。誰も彼女の目的を知らない。誰も彼女に近づこうとしない。誰も彼女を理解しない。彼女は静かに南境への帰路についた。玄武が彼女の背後で鋭い爪と牙を収めた。
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動かざること山の如し
完成報酬 | コーデギフトBOX (計り知れない万物、日月同舟、十方天地、陰陽太極図、雲海仙境、40ダイヤ) |
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シリーズ1 | シリーズ2 |
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夜が深まり、湛家は誰もいないかのように静まり返っていた。離れの小部屋の中で湛秋明は月明りを頼りに、ややぼやけた鏡と向かい合っていた。勢いよく顔の皮をはがすと祝羽弦の美しくも危険な顔が現れた。
今夜は満月の夜。雲上の人々が信仰する平和の夜だ。彼等は、満月は家や国の平和だったり、旅人を守ってくれるものだと信じている。満月の夜は無病息災が訪れるのだ。しかし、祝羽弦だけは知っていた。今夜の雲上はいたるところで戦火があがることを。そしてこれは全て彼の手による計画であることも。
今夜はきっと眠れぬ夜になる筈だ。
遠く離れた宮中の文英殿にも明かりが灯されていた。
白永義の机には、書類や報告書が所狭しと広げられていた。だが、彼は薄い紙を通してもっと多くの物事を見ており、心はここになかった。
今夜の戦乱は避けられなかった。彼が止められないからではなく、この騒乱をそのままにしておくことで、その背後にあるもっと大きな陰謀を明らかにできるからだ。陰謀の核心に迫ることと、目の前の小さな利益を天秤にかけた時、彼は当たり前のように前者を選んだ。だが、それにより今後の状況はもっと複雑になるだろう。彼は冷静に考えなければならなかった。決して道を誤ってはならない。
時の流れは滝を流れる水のごとく、瞬く間に過ぎ去っていく。大晦日に雲上の各地で起こった騒乱はようやく平和に向かう兆しを見せた。
だが、白永義は警戒を緩められなかった。のどかな晴れ空でも、やがて大雨が来るのを彼は知っていた。彼は雲錦城の方を眺めた。遠くの空には濃い雲があり、こちらに向かってきている。
この時、巷では天上の神殿の噂が広まっていた。最近その姿を現した「登雲楼」と呼ばれる神殿では、女神・碧霄が雲上を守っているのだという。
祝羽弦は失笑するしかなかった。登雲楼は雲上を守るのではなく、戦火が人間界に蔓延しようとする象徴だからだ。このような噂が広まるのは、人間が自らを欺いているからだ。彼らは運命と人生を空虚ではっきりしないものに託しているが、自分の無能さの為に踏み台を探しているに過ぎない。
しかし、血脈の呪いは頑丈な枷だ。人間に「天命」に抗うだけの能力を失わせ、囚われの身に変えてしまう。呪いは繰り返しまとわりつき、人間を袋小路に追い込む。このようなものはさっさと取り除かなければならない。この悪循環から抜け出してこそ、世界の秩序を再建できるのだ。白永義の反応も彼の計画の一部だ。全て予想の範囲内である。
もう未明だというのに、文英殿の中は漆黒に包まれている。障子を透かして入ってくる月の光もぼんやりしている。扉を閉じたその時、祝羽弦は微笑みを見せた。
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天下泰平
完成報酬 | コーデギフトBOX (心ない女神、鳳凰の羽衣、鳳羽の神冠、朝歌夜弦、40ダイヤ) |
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シリーズ1 | シリーズ2 |
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私は碧霄。人間界の平和と希望の化身。赤霄は私の妹で最も親しい人。彼女の無邪気で可愛い顔が見られるのなら、私は自分の光が無くなっても構わない。彼女の笑顔はこの世で最も美しい、言葉では表せないくらいに。彼女が望むなら私は持っている全てと彼女を交換しても構わない。彼女が毎日私に笑いかけてくれるなら。
彼女が戦争の化身だなんて誰が思うかしら。
私と赤霄はそれぞれ一日の半分ずつを、天を見守り、大地を見下ろし、人々を管理していた。彼女は夜の神秘さと静けさが好きだし、夜の人間たちの苦楽を見るのが好きだから、私は夜を全て彼女にあげた。昼と夜が繰り返されるから、私たちはなかなか会えない。でも太陽か月が蝕まれれば、いつもの規則を守らずに済むから半日一緒にいられる。人々は半日光が見えないだけで酷く不安になるけれど、私は勝手にそんな日が来るのを楽しみにしていた。
私たちはずっとこのままこうしていく、時間が尽きるまで。そうなると思っていた。
初めは人間界の変化を見つけただけだった。人間はまるで平和を嫌うかのように、軽薄で衝動的。暴力がもたらす傷を恐れず、理由もなく戦争を起こしている。戦火が狂ったように広がっていくのを見ていると人間は理性を失ったかのようだった。心には戦意と怒りが満ち、人間界は混乱の渦に陥っていた。
赤霄も彼らの変化に気づいたかどうかは分からない。もう長いこと会っていないから。
ようやく日食がやって来た。月が上る時、私は待ちきれずに赤霄の元へ走っていった。彼女が人間界の変化に気づいているか聞きたかったし、それ以上に私が彼女を恋しく思っていることを伝えたかった。彼女が最近どうしているのか知りたかった。
赤霄は深い霧の奥で私に軽く微笑んだ。それはまるで見知らぬ相手のような感覚だった。
「お姉様、会いたかった」
赤霄の吐息は花の香りの様だった。彼女は私の腕を掴んで甘えてくる。先程の感覚は錯覚だったのだろう、彼女は相変わらずこんなにも可愛いのだ。彼女は日々の不満を漏らし、私は笑いながら慰めた。しかし、彼女が次に発した言葉に、背中をさする私の手は固まった。
「お姉様、戦火の味って知ってる?」
彼女の顔に浮かぶ楽しそうな表情は本物で、私は呆気にとられてしまった。
「あの感覚は凄いのよ!今は戦火くらいしか満足出来るものがないの。もうこれで退屈せずに済むわ!」
彼女はそう言いながら腕を振った。すると人間界から強烈な振動と物音が伝わってきた。赤霄は顔を覆いながら私の体に突っ伏して笑い声をあげた。私の心は震え、涙が出そうだった。私が彼女を諫めると、彼女は顔色を変えて私を振り払い、思い切り私を石柱にぶつけ、叩き落した。私は地面に横たわり、鮮血を吐き出した。
そう、彼女は戦争そのもの。本性と力が覚醒したのだ。
たった一撃で私の体は原型をとどめられなくなり、風、林、火、山の四つの戦意に分裂した。私の覚醒した体が狂ったように喚き立てている。自分にこんなにも激しい戦争への渇望があるとは思わなかった。そう、これが私の唯一の力。赤霄が本性を覚醒させると、私も続いて覚醒し、戦争の力を得る。それによってしか彼女の力を抑えられない。そう。戦いで戦いを止めるのだ。
私は赤霄を止めなければならない。彼女の意識を奪い、彼女の体を天と地の間で消滅させなければならない。でも私には出来なかった。彼女は私の最愛の妹。世界が彼女に滅ぼされたとしても私には出来なかった。私は天上に魔法陣を隠し、四つの戦意を使い彼女を封印した。私の意識、私と彼女の思い出も中に入れて、彼女と一緒に永い眠りについた。
かつて彼女が一度目覚めたことがある。戦乱が各地で起こり、不思議な呪いが大地を覆っている時だった。帝王の気質を備えた少年が私を呼び覚まし、私の意識は天上に現れ、再び赤霄を封印した。少年は人間界の王で、卓越した見識を持っていた。私は彼と約束した。人間界に戦意が満ちた時、血の契約によって私は再び召喚に応じると。そして私は天上に戻り、再び深い眠りについた。
私は碧霄。赤霄は私の妹。私の最も親しい人。でも私はこの手で彼女を天上の魔法陣に封印した。私の体が分裂した四つの戦意を使って。いつか私たちがまた目覚める時が来るかもしれない。その時はまた一緒に、深い霧の山や空いっぱいの雨の中で遊びたい。一緒に星や月を見て、太陽の光が雲から差しこむ景色を見るの。広大な大地で、清らかな風の中で手を取り合い、寄り添い、長い年月を過ごしたい。
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