《至高の宝物》闇夜の挽歌
闇夜の挽歌
完成報酬 | コーデギフトBOX (星空の大河、夜の夢歌、時の銘記、声なき吟唱、時の旅路、純白の時、白夜の影、麗らかな湖、40ダイヤ) |
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シリーズ1 | シリーズ2 |
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あの夜、私は再びイーレンに会った。
樹々の隙間から差し込んだ月の光が、森の開けた場所に鎮座する大きな石碑の影を浮かび上がらせた。彼女の周囲には舞い飛ぶホタルの光が明滅している。
ほのかな月光の中、彼女はお気に入りのカルファのクラシカルなドレスに身を包み、石碑の森を歩いていた。
闇夜のような深く蒼いドレスの裾を引きずり、刻まれた名前の一つ一つをそっと撫でる……。
イーレンはかつて森で一番の医者だった。
いつも熱心に根気強く仕事に従事し、傷ついた者たちを治療していた彼女。
イーレンに比べれば私なんて未熟な子供で、森で一緒に遊んでもらう為に、書物の山に埋もれている彼女に纏わりついてばかりいた。
「かつて」という言葉は、なんと美しく残酷か。
血と精霊の戦いが、全てを奪い去ったのだ。
イーレンは精霊族の戦士とともに戦場へ向かったが、その際に彼女が見せた微笑みは、私にとって何の慰めにもならなかったことをよく覚えている。
やがて戦争は終結する。
今にも死にそうな叙事詩の守護者を護送しながら帰ってきたイーレン。彼女は血の染みついた『時の銘文』を引き継ぎ、林立する石碑にかつての守護者を埋葬した。
その晩、私は彼女が声を押し殺し、すすり泣いているのを聞いた気がする。
「戦争の惨状は許しても、命の冒涜は許すな」
これは『時の銘文』の表紙裏に書かれた言葉で、イーレンが銘文を捧げるたびに、私はそれを目にしていた。
彼女は新たな叙事詩の守護者となり、石碑の守を徘徊する吟遊詩人となった。彼女の歌声は柔らかいが力強く、孤独な人々の心を慰めた。
それでも恐怖はなおも森に蔓延し、絶えず血が奪われ、鋭い刃は魂の奥底で夢魔と化していた。
『時の銘文』は、私が悪夢にうなされ夜中に目を覚ますと、いつも微かな光を灯してくれた。
だが、吸血鬼が姿を消したのと同じように、私たちの別れも突然だった。
イーレンは手を振りほどき、私を安全な場所に押し込めると、微笑みながらポワリー湖の水底へと沈んでいったのだ。
湖に映る星々の影は、その時から影の城の門を永久に閉ざした。
「お姉ちゃん……イーレンお姉ちゃん!」
悪夢にうなされ泣き叫びながら目を覚ましても、イーレンはもういない。
ポワリー湖へ駆けていくと、静かな湖面に月影だけが浮かんでいた。私たちは本当に、この世界の両端に離れ離れにされてしまったのだ。
私は別れの瞬間をくり返し思い出す。
イーレンはどうして安らかに笑いながら、その身を犠牲にして、妹の私を助けたのだろう。
私独りこの広大な森に残されても、叙事詩の守護者なんて務まらないというのに……。
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