闇のルビアと光のルイカ
2/26~3/10
光宿る癒しのルイカ
あの、私、魔女のルイカです。こっちは白ウサギのポポ。
3級の魔女で、今、準二級の昇格試験中なのです。今日一日、あなたのお手伝いをするのが今回の試験なの。
白ウサギのポポはこう見えても上級の使い魔なのですよ。怒らせると怖いのです。ねー、ポポ?
ポポも、どうぞよろしく、って言っています。
さてさて、何か困っていることはないですか?私の魔法で何でも手伝っちゃいますよー!
お腹が空いていますか。それではお食事の用意をしましょうね。・・・私のー・・・ミラクルな魔法でー!
では、このパンをトーストしておみせしましょー!火の魔法は得意中の得意なのです!見てください。ちちんぷぷいぷぷいぷぷい・・・
あら不思議!一瞬で黒炭に!・・・ぐあー、調子にのって燃やしすぎちゃったにゃー!うひーいいい!ごめんなさいー!すいませんー!
火加減の調整とか超難しいのですよねー・・・あと、私、家じゃ料理とかあんまりしないので・・・ごめんなさいー!
料理のほかに何かお手伝い出来ることないですかねー・・・なにかこう、イージーな感じの・・・
白状しますと、私、前は宅配便をしていたのですが雨の日や雪の日に重いものを運ぶのが辛くって、やめちゃったのです。
最近は時間指定も厳しくなって本当大変だったのですよ。時間内に配達しないと、お客様にものすごく怒られたり、それはひどく。
それで、資格とって、もっと魔女らしい働き方をしようと思って、火を起こしたり、そういう魔術的な、それで喜んでもらえる・・・
そうそう!魔女だから魔術をやらないと!そう思ったのです!それでみんながハッピーになれるようなお仕事をしたいの。
あ、スプーン!私、スプーン曲げが大得意です!見て下さい!左手で柄の先を持って、右手の人差し指と親指で根元をつまんで・・・
テコの原理で思いっきり力を入れながら念じるのです・・・まがれ・・・まがれ・・・
びくともしない・・・あれー・・・おかしいな。まっがーれ!まっがーれ!うぎぃいいい!ふんぬー!ぬがー!うおー!
このスプーン頑丈・・・安物じゃなくて結構いいやつですね。最後の方、魔力じゃなくて力任せにやってみたんですけれど無理でした。
あとは、洗濯!そう、私は洗濯の魔法が得意中の得意です!
この小兎のポポは、元々は黒兎だったのです。それが、私の漂白の魔法で驚きの白さに!えっへん!
まず、大きな樽を用意します。そこに、洗濯物と、洗剤とお水を入れて・・・
この樽ごと魔法で超高速回転させるのです!すると、汚れが落ちるのです。遠心分離という原理です。
これで、どんな服も綺麗に白くなりますよ!ポポはこの方法で真っ白になりました。
あの時はひどい目にあったとポポが言っています。でも、ポポはこの白さのおかげで黒兎の女の子たちからモテモテなのですよ。
やっぱり身だしなみの清潔感がモテには大事ですよねー。あなたの服も洗濯しましょう!全部真っ白にして差し上げます。
ぐるんぐるん・・・あっという間に驚きの白さに・・・あれ、服が全部まっ黒い?なんでだろう?
くんくん・・・このにおい・・・こんなところに真っ黒い墨を吐くイカが・・・イカぁ!?なんでなんにゃー!?海も近くにないのにー。
ポポのいたずらですか!?なんでこんな変ないたずらするのですよ!え、違う?でも、こんなの魔法じゃないと説明つかないじゃないの。
仕方ないなぁ、もう1回お洗濯します!イカ墨の汚れは早く水洗いしないと染みになって落ちなくなっちゃいます。
汚れが落ちないー、イカ墨の汚れってぜんぜん落ちないよー。水、魔法で水を出しましょう。大量の水で洗い流せば・・・
どひー、水が多すぎたー!汚れは落とせたけれど、一面水浸しになっちゃった・・・
火の魔法で乾かします!!と思ったら火が強すぎたー!これは危ないー!
水、水で消さないと・・・と思ったら、ふぇえ、また水浸しに・・・
なんだか家の中が大変なことになってしまいました・・・ごめんなさい。本当にごめんなさい。
うう・・・疲れた・・・元はといえば、ポポの意地悪のせいで・・・ポポ!何か喋ったらどうなの?
あれ、ポポが喋らなくなっちゃった。具合も悪そうだし・・・魔力も弱まっているみたい・・・なんで?魔力を使いすぎたのかな?
うう、試験中なのにどうしよう。
魔力を高めるには、使い魔と契約するの。私の魔力はほとんどポポの魔力といってもいいぐらい。
ポポは白くなった時に、強力な魔法を手に入れたの。その魔力が弱まっている・・・
心なしかポポの具合が悪そうです。いつもよりアンニュイな表情をしています。
どこか、この近くに動物を見てくれる病院はありませんか?試験のことよりも、ポポが心配になってきた・・・
向こうに病院があるのですね!・・・ポポ、お医者さんに見てもらおうね。
お医者さんに見てもらったところ、食あたりだったみたいです。ポポは生のイカを食べようとしていたみたいで・・・
ねぇ、ポポ。何でイカなんて食べようとしたの?
ふむふむ・・・ポポが言うには、イカを食べたかったわけではなくて、イカ墨で、もう一度黒い姿に戻りたかった、と。
え-!!ポポ、白くてモテモテになったのに、黒く戻りたかったの!?
黒い姿で、以前の普通の生活に戻りたいと・・・ポポにそんな悩みがあったなんて。
私、ポポにそのままでいて欲しいなぁ・・・白い方がかわいいよー。
うーん、ポポは調子が悪そうですし、誰か他の使い魔や精霊と契約しようかしら。私の魔力も強くなるかもしれないし。
誰か精霊さんに頼んでみますか。誰がいいかなぁ。
前に火の精霊のサラマンダーさんには契約を頼んで断られちゃったのよね・・・面倒くさいって。
ウンディーネさんの所に契約してくれないか頼みに行ってみようかなぁ。
という訳で、頼みにいったところ、ドラゴンの首の玉を持ってきたら契約してあげるよって言われました。
魔女の資格のためとはいえ、ドラゴンを倒すのはちょっと無理です・・・
正攻法じゃ無理なので、こっそり貰ってくるというのはどうでしょうか。
私とポポがおとりになっている間に、あなたがこっそり・・・あなた足速そうですし。
嫌ですか。そりゃそうですよねー・・・ずるをしたら試験も認めてくれないかもだし。
うーん、そういえばドラゴンの首の玉って、ポポの首についていた石に似ているよねー。バッグに入ってなかったけ。
あれ?あれって本物なの?なんでそんなものをポポが持っているの?
えっ・・・ポポの先祖はドラゴンだったの・・・?ウサギだと思っていたのに。
とにかく、ドラゴンの首の玉ゲットしちゃった!
こんなに簡単でいいのかな・・・拍子抜けだね。
ウンディーネさんに持っていってみます。これで契約してくれるかなー。
もっていって頼んだ結果・・・
ウンディーネと契約してもらいました!今の私の魔力ならあなたの望みをかなえられるかもしれません!
何か、かなえて欲しいお願いはありませんか?
のどが渇いていますか。それでは飲み物の用意をしましょうね。・・・私の新しい魔法で!
ウンディーネさん、私に力を貸してください!魔法の力でこのコップに美味しいお水を!
さぁ、どうぞ!不純物が全く入ってないからとっても美味しいですよ。
やっとあなたの願いをかなえられました。これで試験通してもらえるかな。
もうちょっとポイント稼いでおこうかな。お水ももう一杯お変り差し上げます。他にもお願いがあったら言ってくださいね。
あら・・・魔法の枝がピカピカ光っている!お知らせがあるとこの枝が光るの。これは試験の結果が出たみたいですね。
結局失敗ばかりだったけれど、どうだったのだろう・・・
結果を聞きに行ってきますね。ちょっと失敗しすぎたなぁ。まぁ、駄目でも次があるし・・・でも、受かっていて欲しいなぁ。
戻ってきました。試験の結果は・・・
合格でした!あなたのおかげです。ありがとうございます。
さて、次の2級の試験に向けて、また勉強しないと。
2級の魔女になると、日常生活に役立つレベルの魔法を許可申請なしで使えるようになるの。
そうしたら、自分のお店を開いて、みんなの役に立てるような魔女になってみせます!
そうなったら、また会いにきますね。ではでは!
闇操る恢復のルビア
私はルビアといいます。ルイカという私に似た魔女の格好をした女の子を見ませんでした?
見覚えがある?・・・まったくあの子は配達の仕事を抜け出してこんな場所まで。・・・ここで何をしていたか教えてくれませんか。
お恥ずかしい話ですが、使い魔の猫のルイカと白ウサギのポポの二人が逃げてしまいまして。
猫のルイカはウサギのポポの魔力を借りて私の姿に化けて、街に出てきているようなのです。
悪い子ではないのですが・・・なんというか、好奇心が旺盛すぎるというか・・・元が猫なので気まぐれで。
私が宅配の仕事を頼みすぎたのがいけなかったのかしら・・・人手が足りなくって、猫のあの子にも随分と手を借りちゃったし。
聞いた話では私の姿に変身して、この町で仕事探しをしていたとか。もう仕事を見つけて住み着いているのかもしれません。
単純に迷惑をかけているわけじゃないみたいだけれど・・・とはいえ、魔法の力を安易に使うのも容認しがたいのです。
本人に悪意はなくても、他の者に利用されたり、力におぼれて道を誤ったり・・・それで落ちぶれていく魔女を沢山見てきました。
まだ、あの子には魔力をつかいこなすだけの知恵が足りないのです。
魔術の大半は実は仕掛けがあります。種明かしを知ってしまえば、ほとんどは手品のようなものです。
それを隠れ蓑にして、本当に限られた場面でのみ、使い魔の奇跡を使う。あの子にも教えていたつもりだったのですが・・・
国によっては上級の魔法の使用は禁じられていて、処刑される例もあります。
決して自分の正体や魔法の力を知られないように、そう注意したのを、よりによって私に化けて誤魔化そうとするなんて。
見つけだしたら、もう一度教育してやる・・・
そうそう、あの子をどこで見かけたかを教えてください。
魔道士の館のあたりで見かけた、と・・・
何かの装備で魔力を強化しようとしていたのかしら・・・?
もう少し詳しく調べてみたところ・・・
どうやら、街の魔導士に気に入られて、そこで働いているらしいのです。
魔法を使って、怪我した人や病気になった人達を癒している、と。それも随分と好評のようで。
そういえば、あの子は怪我を治すような癒しの魔法と料理は昔から得意だったわね。
あの子が自立して暮らせるようになったのは立派で良いことだけれど・・・
私のところに連れ戻すつもりだったのに、出鼻をくじかれた気分だわ。
うーん、ここで見ている限り、まじめに働きながら、魔法の試験勉強をしているみたいですね。
私はまだあの子の事を未熟だと思っていたけれど、街での生活で成長したのかもしれません。本当に複雑な気分だわ。
おや、黒ウサギのぺぺが何か言っていますね・・・
この子は、ルイカが連れているウサギのポポの恋人だったのです。
ルイカがポポを連れて私のところから逃げてしまったので・・・この子も困っていたのです。
私が直接会いに行くのはあの子が嫌がるかもしれないけれど・・・ペペが一人で会いに行ったら何か話しが聞けるかもしれません。
ペペ、お願いできるかしら?・・・乗り気のようですね。
では、ペペにこっそり会いに行ってもらうことにしましょう。私が近くに隠れていることは内緒でね。
・・・・・・・。
・・・ペペが戻ってきましたね。なんだか複雑そうな表情ですが・・・どうでしたか?ふむふむ・・・
ペペの話だと、どうやら、ルイカは前々から街に行きたかったようで、ポポは勝手につれていかれて最初は迷惑していたそうです。
ただ、ルイカは街での生活の中で少しずつ成長していて、それを見ているのは面白い、もう少し見守りたいと言っているようです。
ルイカの魔法の大半はポポの魔力を借りてやっているので、ポポがいないとまだ一人前とはいえない。ポポも悩んでいるようです。
もう少し、ポポは見守りたいといっているようですが・・・ペペとしては早く戻ってきて欲しいようですね。
私も二人を連れ戻すつもりで来たのだけれど、思っていたよりも二人が活き活きしているのをみると、考えさせられちゃうわ・・・
うーん・・・あの子の魔法試験の様子だけでも見守ろうかしら。
それで、試験の結果が良かったら、あの子がこの街に残るのを許可しましょう。悪かったら二人とも連れ戻します。
ペペとしてはポポが戻ってきてくれればいいのね?うーん、この子にも困ったものだわ。
ただ、試験は公正よ。試験の内容も難しくなっているし。
私の頃だと、ほうきで空を飛べるかどうかの試験だったのだけれど・・・
最近は家事手伝いの試験が多いみたいね。時代の変化で魔女の仕事も家庭的になってしまったのよね・・・
料理や掃除の仕方も教えておけば良かったかしら。ほとんど魔法の修行というより花嫁修業に近いのよね。
あらあら、試験で次々と失敗しているわ。いつもどおりね・・・
あの子、魔力を操る天性の素質はあるのに、そのコントロールが出来てないの。
だから最初は力任せでできる荷物運びの仕事をさせて、そこで力のコントロールを学ばせようと思っていたのだけれど・・・
さて、試験の様子は、と。料理で失敗して、次は洗濯物のようね・・・
あ、また失敗している。何で洗濯物の中にイカが・・・って、ペペ、あんたが意地悪してイカを召喚したわね。悪い子ね・・・。
ペペ、試験に失敗したら二人が戻ってくるからって、試験の邪魔するのはいけないわよ!
なんにしても、二人にしては大ピンチね。もうこれ以上ないぐらい失敗して、パニックになっているわ。挽回できるかしら。
あら、ポポの様子がおかしいわね。魔力が切れているみたい。
ポポが頼れないとなると、あの子、誰か他の使い魔か、精霊の力を借りるしかないかしらね。
精霊と契約すれば、ポポの力を借りなくてもある程度強力な魔法が使えるようになるわね。しかし頼る精霊なんているのかしら。
あの子、ウンディーネと契約しようとしているわ・・・だいぶ前にサラマンダーを怒らせて断られたので懲りているみたいね・・・
契約したければ、ドラゴンの首の玉を持って来いと言われているわ。ウンディーネもやる気がなくて無理難題を言っているわね。
んー?・・・って、あれ、なんであの子、その玉をもっているの?
え、ポポの先祖ってドラゴンだったの?道理でウサギにしてはあなた達、魔力が強すぎると思ったわ。
それにしたって、ドラゴンって外観じゃないじゃないの。ペペも変化の魔法とか使えるタイプなの?
ペペが言うには、これは世を忍ぶ仮の姿で、まだ2種類の変身がある・・・てきとうなことを言うわね。それ嘘でしょ。
まぁ、何にせよ私たちの魔法の力は見せびらかしてもいいことないのよ。
能ある鷹は、っていうじゃない。弱そうだと思っていたモンスターが意外と強いって事よくあるから・・・
で、ウンディーネもしぶしぶ契約しちゃったみたいだけれど・・・
そのウンディーネの魔力を借りて何をやるつもりなのかしら・・・
のどが渇いたのでコップに水を出す・・・精霊の力を借りてわざわざ飲み水を・・・贅沢というかなんというか。
本当に水を出しただけみたいね・・・それだけ。
うーん、試験終わっちゃったみたいだけれど、これだけでいいのかしら。
そもそも、この魔法の試験の合否の判断基準ってどうなっているのよ。ペペ、ちょっと調べて頂戴。
準2級の実技試験・・・魔法を使って人助けをして、感謝の言葉をもらうこと。
まあ一応はこれでOKなのかしら。いい加減な試験ね。
私がやっていた頃はほうきで30秒以上浮く、とか、石を割るとか、そういう感じだったのに。
でも、どっちが実用的かって言ったら難しいところね・・・
試験の結果が出たようね。どうだったのかしら。
どうやら合格したようね。まぁ、魔法が使えれば誰でも受かるような試験だし、これまで合格しなかったあの子がおかしいのよ。
じゃあ、帰りましょう。ペペは少し残念そうにしているけれど。ポポは、もう少ししたら帰ってくるわよ。家で待ちましょう。
ルイカを私の姿に化けたままで好き勝手にさせておいていいのかって?あー、それは確かに問題ね・・・。
まぁ、今回は見逃してあげようかしら。私もこの姿が本当の姿じゃないしね。
次に会う時は別の姿だったりしてね。それじゃ、またどこかで会いましょう。