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快活な少女の夢リチェルカ

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12/14~12/27


あらすじ

あなたは旅の途中に立ち寄った村で、少年から行方不明になっている少女の捜索を依頼されたんですのよ。

でも全然見つからなくて探し疲れてしまったんですのよ…



快活な少女の夢リチェルカ

君は誰?見ない顔だっちゃ。

……っ!?空から女の子が落ちて……!?

私はリチェルカ。よろしくだっちゃ。おっと、自己紹介してる場合じゃなかっただっちゃ。

そうだ、バクに襲われて……そうしたら、君が突然空から降りてきて……

まずはこの状況をやり過ごすっちゃ!手を掴んで!



一体何を……わわっ、傘でバクの攻撃をかわした!?

あの子は君に驚いただけだっちゃ。本当は悪い子じゃないし、怖がらなくてもいいっちゃよ。

って言っても、こんなに攻撃されたら……!

あそこだっちゃ!雲と雲の間に隠れるっちゃよ!

……行ったみたいっちゃね。ふぅ、これでもう安心だっちゃ。



そうだ、君……どこからきたっちゃ?夢の世界の住民なら、知ってるはずっちゃけど……。

旅人だから、この辺に住んでるわけじゃなくて……。というか、夢の世界って?

どうしたっちゃ?そうっちゃ。ここは夢の世界っちゃよ。知らなかったちゃ?もしかして、迷子っちゃ?

いや、迷子ではなくて……アルベロ村のクレーデレって男の子から依頼を受けて、人探しをしている途中。

ふぅん?



探している女の子の名前は、リチェルカ。……あれ。さっき自己紹介したとき、確か……リチェルカって……。

そうだっちゃ。私の名前はリチェルカだっちゃよ。

ああ、思い出してきた。クレーデレに見せてもらった女の子の写真と、君はよく似ている……。

ってことは、君が探している女の子ってのが私……なんだっちゃ?

でも、アルベロ村なんて知らないし、クレーデレって名前の男の子も記憶にないっちゃ。



そんな……。

クレーデレとリチェルカは、凄く仲が良い幼馴染だったらしいんだけど……。

記憶にはないけど……そんなに必死になって探してくれているなら、一度会ってみてもいいっちゃ!

本当に!?

嘘なんてつかないっちゃよ。キョーミホンイってやつだっちゃ!



クレーデレって子が探しているリチェルカが、私と同一人物なのかはわからないっちゃけど……。

もし違ったとしても、気持ちだけでもありがたいな。

じゃあ、早速クレーデレくんのところへ向かうっちゃ!

あっ!さっきのバクが戻ってきた……!?

見つかっちゃったみたいっちゃね。仕方ないっちゃ!



っ!?

しっかり私の手に捕まってるっちゃよ!

ーーーっ!

結構しつこいっちゃね。私の傘の速度についてこれるなんて、なかなかやるっちゃ!

感心してる場合じゃ……っ!?



危ないっちゃよ!喋ってると舌を噛むっちゃ!

フフフ、このリチェルカちゃんの傘さばきを舐めてもらっちゃ困るっちゃ!

加速するっちゃ~!

ーーーっ!

ふぅ……ここまで来たらもう大丈夫っちゃ!



それにしても……なんであんなにしつこかったっちゃ?

……もしかしたら、間違えてしっぽを踏んだのを根に持っていたのかも……?

それは運が悪かったっちゃ!

でも、よかった……逃げ切れて……早くこの夢の世界から現実世界へ戻ろう……。

そうだっちゃね!……で、どうやって戻るっちゃ?



え?……リチェルカが知っているんじゃ……?

知らないっちゃよ?私、戻り方を知っているなんて、ひと言も言ってないっちゃ!

そういえば、確かに言っていない……。

私、ずっとこの夢の世界にいたから、その他の世界のことなんて何も知らないっちゃよ!

……現実世界への戻り方がわからないだなんて……。

アハハ!そんな顔しなくても大丈夫だっちゃ!きっとなんとかなるっちゃ!



忘却とバクの夢リチェルカ

難しい顔してると、シワが取れなくなるっちゃよ?

……今、どうやって現実世界へ戻ればいいのか考えているから……。

うなっていても、いいアイデアは生まれないっちゃ!リラックス、リラックス……だっちゃ!

あっ!そういえば……。

何か思い出した!?



バク!だっちゃ!

……バク?

夢の世界にはたくさんのバクが生息しているんだっちゃ。

まぁ、それは……見ればわかるけど……。

その中に、知能がとーーっても高いバクがいるんだっちゃ!



つまり……その頭の良いバクなら……。

現実世界への戻り方も、きっと知っているに違いないっちゃ!早速、頭の良いバクを探すっちゃ!

でも、どうやって……?

とにかく見かけたバクに話しかけて情報収集するしかないっちゃ!地道にいくっちゃよ~!

……なかなか見つからないっちゃね……。



夢の世界にはとにかくたくさんバクがいるから、全部に話を聞くとなると……相当時間がかかるっちゃ。

はぁ……そろそろ休憩にしないっちゃ?私、くたくただっちゃ……。

そうですね、長丁場になりそうですし……ってあれ?バクがこっちに近づいてくる。

丁度いいちゃ。あのバクにも聞いてみるちゃ!

突然ごめんちゃ。あなたに質問があるちゃ!現実世界への戻り方……知ってるちゃ?



私に質問……ですか?すみません、私にはそのような知識は……。あれ、あなたは……どこかで見覚えがあるような。

見覚え?……うーん、ごめんね。私はあなたのこと、わからんちゃ。

そうですか。いえ、お気になさらず……邪魔をしてすみませんでした。

……。

リチェルカ?どうかした……?



なんでもないちゃ!休憩が終わったら、また次、聞いてみるっちゃ!

……今までの記憶で、何かひとつでも覚えていることは?

え?どうしたんだちゃ?急に……。

ちょっと、気になって。

……なにも。



何も……?

覚えてないっちゃ。何も……!

本当に、何も?

君と出会う前のことは、記憶にないっちゃ。

自分の名前とか、バクについてとか、一般常識……物の名前なんかは覚えてるっちゃ。でも……。

家族、とか……自分がどこから来たのか……全部わからないちゃ。



それって、もしかして記憶喪失なんじゃ……

かもしれないっちゃね。

……探そう。現実世界への戻り方と一緒に、リチェルカの記憶も探そう!

いいっちゃ?私の記憶は君には無関係っちゃ……。



そんなことない。依頼人のこともあるけど……リチェルカを助けたいって気持ちがあるから!

ありがとうっちゃ……嬉しいちゃ!

話は聞かせてもらったよ。

あ、あなたは……さっきリチェルカに話しかけてきたバク!?

それはもしかしたら『記憶を食べるバク』の仕業じゃないだろうか?



記憶を……食べる、バク……ちゃ?

もしかして、心当たりが……?

わからないちゃ。でも……心が少しザワついたっちゃ。

……よし、現実世界への戻り方を探す前に、その記憶を食べるバクを探そう。

記憶を食べるバクは、妖気でできた迷路の中に隠れ住んでいると聞く。もし向かうなら、気をつけて……。



バクの中でも夢ではなく記憶を食べるのは異端。そのバクは爪弾きにされ、ひっそりと隠れ暮らしているのです。

情報ありがとちゃ!……早速、向かうっちゃよ!

……はぁ、はぁ。この迷路、どこまで進んでもゴールが見えない……。

頑張るっちゃ!どこかにヒントが落ちていないちゃかね……。

そんな都合の良いこと……。



あれ?何か地面に落ちてるっちゃ。これは……花びら?あ、道の先にも落ちてるっちゃ。

まるで道案内しているみたいちゃ……この花びらを辿って行けば、もしかしたらバクに会えるかもっちゃ。

でも、罠かもしれない……。

行ってみなくちゃわからんちゃ!

それに……この花びらは、なぜだか嫌な感じがしないちゃ。信じて良い気がするんちゃ。



わかった。リチェルカを信じる。

そうと決まれば、急ぐちゃ!……あ、あれが最後の花びらちゃ!

わっ!?強い光が……あれ、小さな女の子と……男の子が見えるちゃ。たくさんの花びらが降り積もって……。

誰だね。私の眠りを覚ます者は……。

あなたが……記憶を食べるバク……ちゃ?あれ?女の子と男の子がいなくなってるちゃ……。



リチェルカ、目から涙が……どうしたの?

え?……あ、本当ちゃ……どうして?悲しくなんてないはずなのに……勝手に涙が出るっちゃ……。



追憶の過去の夢リチェルカ

あなたがリチェルカの記憶を食べたバクですね?

……ああ、そうだ。

私は……現実世界へ帰るちゃ。あなたが食べた記憶、私に戻せるちゃ?

造作もないことだ。

本当ちゃ!?



ああ、それから……君たちが随分と探している、現実世界への戻り方も私は知っているよ。

やったちゃ!一気に全部解決ちゃ!

……だが、君は本当に戻りたいのかね?

えっ?……それは、どういう意味ちゃ?……あっ、さっきの花びらが、また……。

自分の心に尋ねてご覧。……この花を見れば、記憶が少し戻るだろう。君にとってはとても大切な花だ。



……昔、とある村で……魔王軍の攻撃による混乱の中で大切な家族を失った少女がいた。

少女は現実を受け入れられず、毎日泣いて過ごしていた。

『そんなに辛いのなら君の悪夢を食べてあげよう』

悲痛な泣き声を放っておけなくなったとあるバクが、少女に声をかけた。

そうして少女の悪夢を食べたバクは、彼女を夢の世界へ連れ帰った……。



少女は夢の世界で過ごすうちに、笑顔を取り戻していった。

けれど悪夢はなくなっても記憶は彼女を苦しめ続けた。

だから私はリチェルカの記憶を食べたのだ。

今の話は……。

……そう、だっちゃ。少しだけ、思い出したちゃ。バクの言う通りちゃ。



そんな……。

君自身が望めば、現実世界へ続く扉が現れる。扉を通れば、現実世界へ戻ることができる。

私、は……。ああ、また花びらが……懐かしいちゃ……。

……。

……私、ここに残るっちゃ。



そんな、どうして!?

思い出の中で、私もクレーデレも笑っていたっちゃ。

アルベロ村での美しい思い出は、いつまでも大切にしまっておきたいって……そう思ったっちゃ。

戻れば、悲しいことも思い出して……すべて抱えながら生きなくちゃいけないっちゃ。私には……その強さはないっちゃ。

きっとまた泣きながら暮らして、楽しかった思い出も色あせてしまうっちゃ。



それに……クレーデレに悲しい思いをさせたくないちゃ。クレーデレの中にある、私との楽しい思い出を……壊したくないちゃ。

だから私は……戻れないっちゃ。

クレーデレには、私は遠い所で元気にしているって……伝えて欲しいっちゃ。

もう会えないけど、私はいつだってあなたの幸せを願っているって……。

これを……クレーデレに……。



リチェルカ……。

さぁ、扉を開いたちゃ。あそこを通れば現実世界へ戻れるちゃ。

……わかった。ありがとう、リチェルカ。

ねぇ、バクさん。お願いがあるちゃ。

なんだね。



また……過去を思い出してしまったこの記憶も全部食べて欲しいちゃ。

リチェルカ!?

いいのかね?この子との記憶もすべてなくなってしまうのよ。

いいんちゃ。……せっかく出会えたのに、ちょっと寂しいけど……でも、君が私を覚えていてくれたらそれでいいんちゃ。

リチェルカ……。わかった、ずっと君を覚えているから……。



フフ、頼むちゃよ!もしどこかでまた出会えたら……きっと声をかけてちゃ。多分、また友達になれるちゃよ!

さぁ、そろそろ行きなさい。扉が閉まってしまうよ。

はい。……さようなら!また……どこかで!

バイバイ!元気で……!

あ……花びらが、また。すごく、綺麗……。



……リチェルカは戻らないと?

ごめん、連れ帰れなくて……。

信じられない。適当なことを言ってるんじゃないのか?

『もう会えないけど、私はいつだってあなたの幸せを願っている』そう伝えて欲しいと頼まれたんだ。

彼女は遠い場所で幸せに過ごしているよ。



リチェルカがそんなことを言うはずがない……!

これを君に渡すようにリチェルカから言われた。

……勿忘草。

勿忘草?

泣いて過ごしていたリチェルカに、俺が毎日摘んでいった花だ。



花束を目にした瞬間だけは、あいつは嬉しそうに笑って……。

その一瞬だけ、悲しみを忘れているように俺には見えたんだ。

だから、俺は……。

ありがとう、リチェルカの言葉を届けてくれて。



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