滑稽な大道芸ピカロ
2018/12/28~2019/1/10
リベルタ王子は、こちらのページを参考にして下さい→享楽の王子リベルタ
縫い子アン・ポアンは、こちらのページを参考にして下さい→利欲の笑声アン・ポアン
あらすじ
時は少しさかのぼって、リベルタ王子がお見合いの席から姿を消したとき…
宮中ではお見合い相手のイザベラさんをもてなすために、道化師さんが話芸を披露していたんですのよ。
滑稽な大道芸ピカロ
いつになったら平和になるのダロウカ？コワくて街の外に出ることもできナイ！
我が王の頼りない騎士に国は守れナイ。魔王軍を牽制するには、早急に結婚を済ませ、この国をイザベラ様の騎士に任せなくてワ。
ピカロ、いくら本当のこととはいえ、少し言い過ぎですわよ？ウフフ……。
っ……！
そもそも……本当に魔王なんているのダロウカ？
税金を食いつぶす騎士こそが……実は魔王なのではないダロウカ？
一体、何を……！？
近頃まったく魔王軍を見てイナイ。魔王が実在するというのなら、その証拠を見せて欲しいモノダ。
ウフフ、ピカロったら……。
……リベルタ王子の姿が見えませんので、探してきますね。
言い返さないのカイ？もしや、本当だから言い返せないのカナ？
っ……！
おお、コワイコワイ！睨みつけるその目、まるで獣のヨウダ！
……はぁはぁ、リベルタ様……一体どこに……！
あっ、マーリン！ちょうどいいところに……
どうしたの？そんなに息を切らして。
今、リベルタ王子を探しているのだけど……
リベルタ王子？……ええと……あ！王子なら、街の酒場の近くで見かけたよ。
ありがとう、マーリン！
王子に何かあったの？
事情はあとで説明する。今はちょっと急いでいて……。
わかった。気をつけていってらっしゃい！
……街の酒場、ここか。
……いない。もう他の場所へ移動した……？
ポンコツ王子にイザベラ様はもったいナイ！王子が寝ている間にイザベラ様が公務を行ったほうが効率がいいのではないダロウカ？
アハハハ！違いないな。
なかなかセンスのいい道化だ！
ピカロ、なぜここに……。
ワタシは神出鬼没の道化師ダ。どこにでもいるし、どこにもいないノサ！
いくらなんでも言いすぎている……リベルタ王子を悪く言うだなんて。
オヤオヤ。騎士であるキミを悪く言うのは我慢できても、リベルタ王子への悪口は我慢ならないのダロウカ？
けれどこれがワタシの仕事。道化師に本気で怒るなんて無粋ではないダロウカ？
そろそろ行かないと。リベルタ王子を探している途中だから……。
フフフ。早く見つかることを祈ろウ。
……はぁはぁ、今日も撒かれてしまった……王子、どこに……。
……あれ、どうしたの？そんなに慌てて。
リベルタ王子を見なかった？結婚式の段取りを決める大切な会議があるのだけど……姿が見えなくて。
王子なら、街の外へ向かうのを見たよ。
ありがとう！撒かれちゃって困っていたんだ。迎えに行ってくる！
……あれはなんだ……？
キャアッ！誰カ……誰カァァ！
！？
あれは……ピカロと……魔王軍の者！？襲われている……！？
誰カァ！ワタシを助けてくれないダロウカァァァ！？
……仕方ない……っ！
……あれ？ああ、キミが助けてくれたのダロウカ？
フヒヒ、キミの勇敢さには感服シタ！キミは他の騎士とは雰囲気が違うと思っていたンダ！まさか魔王軍が実在していたナンテ……！
……調子がいいな。
そういえば……ピカロは街の外には怖くて出られないと言っていた……。
それに……よく見れば、服はボロボロだというのに、まったく怪我をしていない。
……思ったより賢いのではないダロウカ？
！？
フフフ、キミの溜飲を下げるために、わざと襲われてやったノダ。ご満足いただけたダロウカ？
ここまで見抜く人は本当に稀ダ。キミと……リベルタ王子くらいダロウカ……ナンテネ。
どうしてこんなことを……。
だってワタシは道化師なのダカラ。
遊戯な大道芸ピカロ
おっとット、また転んじゃッタ！
アハハハ！馬鹿で間抜けな道化師だ！
エヘヘ！ピカロはドジで仕方のないやつなのデス。
バカにされて笑われて、平気……？
……キミはとても失礼なやつダネ。
笑われているんじゃナイヨ。笑わせているンダ。それが道化師の仕事サ。
それにね、ワタシを馬鹿にして笑っている連中を、ワタシは腹の中で笑っているノサ。
……もし、これからも同情するって言うナラ……容赦はシナイ。
よく知りもしないで、ごめん……。
フフフ、わかってくれればいいノサ。そうだ、キミにだけ特別にいいものを見せてあげヨウ。
とっておきの新作マジックショーをご覧アレ！取り出したるコチラの帽子、種も仕掛けもございまセン！
帽子？帽子を一体どうする……。
なんだなんだ！ココは外かぁ？
小さなピエロが帽子から……！？
可愛らしい小さなピエロが、次から次へと出て来ル！目が離せないでショウ？
こんな暗いところに閉じ込めやがって！
おい！許さないからな！この野郎めっ！
痛っ！……攻撃してきた！？
キャッ！こ、コラ……やめロ！ああっ、服が！
ザマァ見ろ！いい気味だぜ。そんなボロボロの服じゃ、道化師じゃなくてまるで浮浪者だなァ！アハハハ！
早く行こうぜ！俺たちはもう自由だ！
お……お楽しみ、いただけダロウカ？
服が……。
最新鋭のファッションと思えなくもナイ……。
……。
そうだ！街にアン・ポアンという縫い子がいるンダ。そいつに頼めば、アルイハ……。
修繕費用は……？
っ……おや？ああ、ちょうどいいところに来てくれたネ。キミを探していたんだ、アン！
誰に話しかけて……誰もいない？あっ、ピカロ！……っ、待て！！！
はぁ、はぁっ……速くて、追いつけない……！
アレレ？こんな所まで追いかけてきたのダロウカ？
あ、さっきの道化師じゃないか！また面白い芸を見せてくれよ！
クソッ！そこをドケ！邪魔ダ！！！
わあっ！？なんだ！？
ギャッ！……く、くそ。気を取られたせいデ……ワタシが捕まるだナンテ……油断シタ……。
ピカロ、さっきの小さなピカロたちは一体……？
フフフ……あれはゲェムに負けたやつらサ。
逃げ出したところで、契約は簡単には覆せやしないのダケド……。
？
っ！？……風が！
ゲェムの敗者は永遠にワタシのオモチャ……
助けてくれ！イヤだ、自由にしてくれぇ！
あれは、さっきの小さなピエロたち……ピカロの帽子の中へ、みんな吸い込まれていく……。
逃げ出せるはずがないのダカラ。おとなしくしれいればよかったノニ。
……キミもワタシとゲェムをするのダロウカ？
！？
フフフ、冗談ダヨ。そんな青い顔をしなくても大丈夫サ。
でも、予想通りの反応で少しつまらないナ。もっと楽しませてくれるかと思っていたノニ。
そんなことは……！
……サヨウナラ、弱虫サン。
真正な大道芸ピカロ
オットット！転びそうデ……でも転ばナイ！ピカロの超バランス感覚をご覧アレ！
おおー！凄いぞ！
アララ！？スッテンコロリン！アイタタタ！
アッハハハハ！やっぱり道化師はこうじゃなくっちゃなぁ～アハハハハハ！
コレニテ、ピカロのショーはひとまずオシマイ。また会う日までお達者デ……！
あ～面白かったなぁ！あの道化師、間抜けで凄く笑えた！
面白かったよ、ピカロ！
……オヤ、誰かと思えば……キミだったノカ。
ピカロはどうして道化師になろうと……？
急に質問カイ？答えてやる義理はナイネ。
……フフフ。でも、今日は気分が良いカラ、特別に教えてあげヨウ。
ワタシには病気がちな妹がいたンダ。とても重い病で、長い間苦しみ続けてイタ。
あらゆる治療をして、薬を試して、それでも効果が出ずに塞ぎ込む妹を見テ、居ても立ってもいられなかったノサ。
じゃあ、病気の妹を笑わせるために道化師の道へ……？
アァ、そうダ。でも……ワタシには妹を笑顔にすることができなかッタ……妹は笑うことのないまま、天国へ……。
……。
クスクスッ……フフフッ……。
？
アーッハッハッハ！もうだめダ！耐えられないヨ！
！？
こんなに簡単に騙されるだナンテ……キミ、本当に騎士なのカ？
嘘……！？
ヒヒヒッ……病気の妹なんテ、いるわけないダロ！
っ……！
怒ることがないダロウ？だってワタシは道化師なのダカラ。嘘をつく生き物なのサ。
道化師じゃないピカロのアイデンティティ、ピカロの素顔は……？
……素顔のワタシナンテ、存在しナイ。
存在、しない……？
素顔のワタシが歩いていてモ、誰もワタシだと気づかないカラ。
道化師のワタシは王様から庶民まで知らない人などいナイ、ケレド……。
素顔のワタシには友達も知り合いもいナイ。
ダカラ素顔のワタシなどいないも同然。ワタシは道化師としてしか生きられナイ。
昨日、道化師の化粧をしていないピカロを街で見かけて……。
……街デ？ワタシを？……ハハッ！それはワタシではナイ！
ワタシはあんなに醜くナイ！
醜い？醜くなんてなかったけれど……。
嘘ダ！！！
ワタシの故郷では、ミンナでワタシの姿を見て笑ってイタ！
ダカラ、ワタシはわざとおどけて振る舞うようになッタ。そうすれば、一時だけでも惨めさを忘れられたカラ。
でも……つらかッタ。ワタシはずっと無理をしてイタ。だから生まれ育った街を出てここへ来タ。
ここへ来てからは化粧をして仕事として道化を演じることを選んダ。仕事だと割り切ればどんなことでも耐えられタ。
何もかも捨てて新しくて違う自分になれた気がシタ。
……ワタシの暗い過去を聞いて少しはお楽しみいただけたダロウカ？
さぞ優越感に浸れたのではないダロウカ。
優越感だなんて……。
アハハ、ワタシの素顔ナンテ、もうどこにも残っていナイ。
君はピカロだ。道化師でも素顔でも関係ない。
でも、できれば無理をしていない素顔のピカロと友達になりたい。
ッ……ヤメロ、営業妨害ダ……。
観客を笑わせて嬉し涙を流させるのはワタシの仕事だが、泣くのは……ワタシの仕事では……ない、のダカラ……。
だってワタシは……。
私は……。
っく……ひっく……。
ふぇっ……うわぁぁんっ……！
涙で化粧が……。
せっかく綺麗にお化粧したのに、台無しだわ……いや！こんなの私じゃない……見ないで……！
っ……ぐすっ……ねぇ、友達に……本当になってくれるの……ダロウカ？
