デート・届かない声
届かない声
特殊遺伝子保有者に関する偽りの情報をネットで流し、私は単身、旧生命科学研究所に乗り込んだ。まさか、彼の方が先に到着して待ち構えていたなんて。
シモンは依然として近寄りがたい雰囲気だった。それに対して私はかつて彼が言った言葉で問いかけたけれど、全く反応がないうえに、私のことを赤の他人のように扱い続けた。
ふと私は、目の前の壁に何も書かれていないことに気付いた。初めてシモンとここに来た時に刻まれていた文字が存在していないのだ。全ては私が思うより単純ではないことを、痛む頭が訴えている。そして私はシモンの質問にわざとそっけなく答え、お互いに態度を譲らずにいると、外から不穏な者たちの気配がして―――
シモンとは別のBLACK SWANたちも私が流した情報を追って現われ、攻撃をしかけてきた。シモンのEvolでなんとか危機を脱するも、その戦いの最中、私は彼をかばって頬に怪我を負ってしまった。そんな私に彼は手を差し伸べかけ、私の存在について改めて疑いを持ったようだ。「きみは、一体何者なんだ?」と言われた私の心は凍りつく。そして私たちは約束を交わした。次に会った時に彼は今回のお礼を私にすること、そして私は彼の問いかけに答えることを……