セノーテの妖精カノン
4/16~4/29
カノンくんの仲間かな?→愛求める人形エファル
第二回スペボスバレンタイン4位 チョコ4393個
優艶な妖精カノン
こんにちは。
あれ?挨拶は種族に関わらず、したら返すものだよ?君の声、僕に聞かせて?
うん、素敵な挨拶だね。それに、とても綺麗な声。君が歌うと、この泉に集まる者たちの心が奪われてしまいそう。
ふふっ、「歌って」って言ってないのに、どうしてそんなに恥ずかしがっているの?不思議な人間だね。
ここは歌と精霊、妖精が集う、聖なる泉の入り口。セノーテの泉の入り口。
人間がここに来るなんて、なかなかないのに。でも、とっても面白そうだから、僕が出迎えてあげる。
そうそう、あのね。僕たちがここにいるのは人間には内緒なんだ。だから、君が元の世界に戻るときに、記憶を消させてもらうね。ごめんね・・・
自己紹介が遅れちゃった。僕の名前はカノン。この泉に住む妖精なんだ。
妖精なのに、羽がないのって?ふふっ、今は教えてあげないっ。
ねぇ、僕、かわいい?
人間は僕みたいな見た目の子、好きでしょう?
ふふっ やっぱり、人間はみんなかわいいって言ってくれるよね。今まで、ここへたまたま足を踏み入れてしまった人達もそうだったよ。
人間は、みんな僕のこと、とっても好きになってくれるんだ。誰かに好かれたり、愛されることは、悪くないことだよね。
んー、僕はこれでも、れっきとした男の子なんだけど・・・。人間の中には僕のことを女の子だと思うものもいるんだよ。君は僕を初めて見た時はどう思った?
くすくすっ 別に君が、僕を女の子って思ったとしても咎めたりなんかしないのに。面白ね、君。
僕は、この泉の中でしか過ごせないから、今この時間がとても新鮮だよ。もっと君の声をきかせてちょうだい?
どうしてここでしか過ごせないか?んー、そうだね・・・。それが僕たちの一族の約束になっているんだ。
君の世界・・・、人間が生活してるところにもね、見えないだけで妖精はたくさんいるんだ。でも、僕たちの一族が他の妖精より特殊なせいで・・・ここから出られないんだ。
君はギリシャ神話の「ナルキッソス」を知っている?彼はね、とても美しい少年で、多くの女性や男性から愛されていたんだ。
でも、彼は泉に映る自分の姿に恋をして・・・。そして・・・そのまま水面にうつる自分の姿から離れられなくなり・・・、最後にはやせ細って死んでしまったんだ。
彼が、死んだ後にね、その泉の近くに咲いた花があったんだ。とても綺麗なスイセンだったんだけど・・・。僕の一族は、そのナルキッソスのスイセンの妖精なんだ。
「彼のスイセン」の妖精だからかね、僕たちの一族は容姿や羽が他の妖精よりも群を抜いて美しいんだよ。自分で言うのはちょっと恥ずかしいね。
そんな僕に逢えた君は、とってもとっても幸運な人間なんだよ。ふふっ
でも・・・だからこそね、僕たちの一族は他の妖精よりも目立ってしまうんだ・・・。
気配を消そうと思っても、人間たちにすぐ見つかってしまうし・・・。見つかってしまうと、人によっては僕たちを捕まえようと怖いことをしてきた人間もいたんだ。
だから僕たちの一族は、鏡の中に羽を隠して、人間の世界と離れた場所で過ごすことに決めたんだ。
この泉のまわりにいれば・・・人間と巡り合うことも少ないでしょう?君みたいに、極まれにしか、ここにたどり着ける人がいないからね・・・。
僕たちの一族は、人間のことが好きだったんだけど・・・一度怖いことをされると、そのことが頭をよぎってしまって・・・
だから、僕たちの一族は・・・僕はここでしか過ごすことができないんだ。でも、君みたいな優しい人間が来てくれて・・・お話をしてもらえて・・・とてもうれしいよ。
歌を歌うのも大好きだし、周りの精霊や他の妖精とおしゃべりするのも大好きなんだけど・・・。
でも、この場所に新しい風が吹くことは、ほとんどないんだ。何年も何年も。同じ子たちと、同じ季節、同じ景色を見て過ごすんだ。
変わらないことも素敵なことでもあるんだけどね。あっ、大変!ちょっとだけ、感傷的になってしまったね!話題をかえようか。
そういえば、どこに向かっているのかって?ふふっ 今僕たちは、この泉の中でも一番「綺麗な場所」に向かってるんだ。
あと少し・・・もう少しだけ、頑張って歩いてね。
着いた・・・。ここだよ。一番美しくて・・・神聖な・・・セノーテの泉。
底にあるものが、全部見えるくらい水が透き通っているでしょう?
ふふっ、とてもうれしそうに笑うんだね。君の笑顔を見てると、心があたたかくなるよ・・・!
人間のいるところで、ここまで綺麗な泉はなかなかないだろうね。ここは、精霊や妖精以外が立ち入らない場所だから、この泉には、穢れがないんだ。
僕たちの一族はね、ここで僕たちを守ってもらっている分、この泉も守っているんだ。
外の種族がこの泉を穢さないように・・・。
人間も、君みたいな子ばかりだといいんだけどね。うまくいかないねっ
そうだ、君におまじないをかけてあげる。どんなおまじないがいいかな?
・・・今日の記憶が消えないおまじない・・・?・・・。
僕も・・・そんな素敵なおまじないをかけてあげられたらいいんだけど・・・ ごめんね・・・それはどうしてもできないんだ。
あっ・・・泉の妖精が言ってる・・・。そろそろ時間だよって・・・
もう、君を元の世界に戻さないといけなくなっちゃった・・・。楽しい時間は、一瞬で過ぎてしまうね・・・。お別れはいつだって悲しいね・・・
これが僕からの最初で最後の、君へのおまじない。おでこ、ちょっとコツンってさせてね?
「元の世界で、君の毎日に幸せが降り注ぎますように・・・セノーテの泉の加護がありますように・・・」
うん、これでよしっ。君が忘れてしまったとしても、僕からの願いはいつも君のそばにあるよ・・・。
じゃあ・・・約束通り。この記憶と「優しい夢」をとりかえっこしよう。
とても楽しかった!君も、この泉に来て楽しかったかな・・・。
君が嬉しかった気持ち、楽しかった気持ちを・・・僕の魔法でとりかえっこ・・・。
嬉しい気持ちと楽しい気持ちがたくさん感じられる記憶でよかった・・・。
ほんのちょっとだけ・・・ちょっとだけ、記憶のかけらを残してしまったのは、僕だけの秘密・・・ ちょっとだけなら・・・すべて思い出せないなら・・・いいよね?
優しい夢で・・・ゆっくりお休み・・・ 僕は君を忘れないね・・・。
蠱惑な妖精カノン
僕のかわいさに囚われてしまえ