【黒ウィズ】ソフィ編(GW2020)Story
2020/04/30
目次
登場人物
ソフィ・ハーネット | |
魔道山賊 | |
インゴットソフィ | |
メカリルム |
story
ソフィ・ハーネットは忙しい。
本日午後は、魔道製薬工場の視察。夜は魔道士協会筆頭理事・ミツボシ様との会食のご予定がございます。
ありがとう。じゃあ、書類仕事は午前中までだね。
笑顔で答え、様々な書類に目を通していく。
あれ?
そのなかに、気になるものがあった。
魔道……山賊?
ハーネット商会の商路に魔道山賊が現れ、物資を略奪していくのだという。
「この土地は、魔道卿ヴォルフラムが最後に確認された土地であり……おそらく、彼の実験場だった場所よ。」
過酷な実験のせいで土地は荒れ果て、不毛の地となってしまったの。
「それに、ヴォルフラムの魔道遺産が、どこに眠ってるかわからない……そういうことですね?エリスさん。」
「そう。魔道士協会としては、ヴォルフラムの遺産の回収に努めたいし、問題が起こったらすぐ対処できるようにしたい。
だから、ハーネット商会がこの土地を買うなら、魔道士協会も援助するわ。
「わかりました。不毛の地とはいえ、魔道新薬の実験や製造を行うには、この広さはうってつけです。
この土地、ソフィが買っちゃいますね。」
ということで。
ソフィは不毛の地を買い上げ、さらには建国まで果たしたのだったが――
魔道山賊さんの出没地域は、どこも国境近く……。
国境の外――旧ヴォルフラム領の外には、土着の民族が暮らしているはずです。
この不毛の地で生きてきたなんて、すごいよね。
はい。彼らは頑健な肉体を持ち、また、特殊な魔法様式を発展させて、この地での生存に適応してきたとされています。
ソフィも、その話は知っていた。そして――
襲撃は、どれも庫気の濃い場所で行われてるね。
はい。ヴォルフラムの魔力の影響で、人体に有害な瘴気が噴き出すエリアです。
輸送隊は対庫気障壁を張っていましたが、その魔法に注力していたせいで、襲撃への対応がおろそかになりました。
瘴気エリアは、ハーネット商会にとって悩みの種である。
あちこちに瘴気エリアがあるせいで、開拓に必要な資源の運搬がはかどらず、大きく計画が遅れてしまっているのだ。
対瘴気障壁を張った輸送隊は、その問題をカバーするための策だったが――
逆に、それゆえの防備の薄さを突かれた格好だった。
でも、瘴気エリアで襲撃してきたなら、悪条件は相手にとっても同じはず。
なのに、こっちがー方的に圧倒された。と、いうことは――
はい。
襲撃者は、おそらく、瘴気をものともしない周辺の土着民族と思われます。
***
防衛ッタは、むむむとなっていた。
魔道肥料がない。
防衛ッタは、アリエッタランドの管理を任されている。
というのも、主であるアリエッタがアリエッタランドに帰ってくるのは、とてもまれなことだからだ。
「任せた!わはは!」
それでもたまに帰ってくるあたり、自分の持ち家だという自覚はあるらしい。
さておき。
魔道肥料の買い置きが尽きた。これじゃ、いい野菜が作れない!
実家が農家な上、無駄にグルメなアリエッタの趣向を反映し、トワカントリーは肥料にもこだわっている。
ただの肥料ではなく、土地にも身体にも優しい、魔道肥料を使っているのがポイントだ。
難点は、魔道肥料を精製する施設はアリエッタランドにはないということ。となれば――
仕方ない。誰かにおつかいに行ってもらおう。誰がいいかなー。
「ぬあああああ。
「おうおうてめーら、ばくはつさせんぞ――
「ハコニ!ハコニィ!
「「わー!
ろくなのいないな。
うーん、と唸った防衛ッタの目が、あるー点で止まった。
世の中、金。
***
魔道山賊たちは、今日も、ハーネット商会の商路で待ち伏せをしていた。
奴らも対策を立ててきてるはずだ。てめえら、ぬかるんじゃねえぞ。
へっ。俺たちゃ、この不毛の地で代々生き抜いてきたー族だぜ。成金なんかにや負けねえよ。
成金の武装って、どんなだろうな?金で出来てたりして!
「「「ギャハハハハハハハ!
金だーーーー!?
こんにちは。お金いる?
あ、はい、いります。
じゃあ、どうぞ。
あ、すんません――って、違え待てコラ、ここは通行禁止だ!
そうなの?どうして?
ここは俺たちの縄張りだからだここを通りたきゃ――
じゃ、この土地、ソフィが買うね。はい、これで足りる?
通行料を――え?ええ!?なにこの大金!!?
やべえ……やべえよ……こんだけあったら街でどんだけ飯が食えるんだよ……。
ていうか、今、ソフィって言ったか?こいつ、まさか……ソフィ・ハーネットか!?
マジか!?ハーネット商会の!
すげえ……成金って、顔まで金ピカなんだな……。
じゃ、ソフィ、行くね。
「「「待て待て待て!
ソフィ・ハーネットと聞いちゃあ通せねえ。
ハーネット商会のトップを誘拐すれば、身代金がガッポリよ!
金が欲しいの?はい、どうぞ。
違え!嬉しいけど違え!とにかく来い!こっち来い!
え~?
どうするよ。あいつはとりあえず倉庫にでも押し込んでおくとして……。
やっぱ、あれでしょ。身代金でしょ。
いや、でもさ……もう、相当お金もらってるよ。この上、身代金までいただいちゃうの?
いいんだよ!この土地を買い上げようなんて成金からは、ぶんどれるだけぶんどってやれ!
なあ、みんな~。客が来たんだけど。
はあ?客?誰だよ。
ハーネット商会のソフィ・ハーネットだって。
「「「え????
わあ、なにここ、真っ暗。もっと金で飾ればいいのに。
……ん?あれ、なんだろ?ぴかぴかしてる――
story
初めまして。ハーネット商会のCEOを務めております、ソフィ・ハーネットです。どうぞよろしくお願いします。
あ、どうも……これはご丁寧に……。
(どうなってんだよ!じゃあさっきの金ピカはなんだったんだ!?)
(知らねえよ!おかしいと思ったんだ、成金だからって顔まで金とか!)
(とにかく要件を間こうぜ)
あー……今日は、どういったご用件で?
あなたたち、ハーネット商会の輸送ほうきを襲って、物資を略奪していますよね?
お、おうともよ。それがどうした。
どうしてそんなことをするのか、ソフィ、気になっちゃって。教えてくれませんか?
そ、そりゃおめえ、あれだよ。てめえらが気に入らねえからだよ!
気に入らない?どうして?
俺たちはな、先祖代々、ずっとこの土地を守って暮らしてきたんだ。
ヴォルフラムって野郎が変な実験を始めて、ここが不毛の地になっちまっても、ずっと、ずっと守ってきた!
それがよう。よそから来た金持ちどもが、金にあかせて土地を買って、開拓まで始めたって言うじゃねえか。
最新の魔道肥料かなんか使って、不毛の地でも作物が育つとか言うんだろ?ずりいぞ、こんにゃろ!
そうだそうだ!俺たちなんか、まずいイモで食いつないでるんだぞ!毒あるけど我慢して食ってんだぞ!
つまり、あなたたちは食べる物に困って、略奪をした……ってことですか?
こ、困ったからじゃねえ!ここで生きてくってのがどういうことか、教えてやろうと思ってだな……。
だったら、コーチになってくれませんか?
は?コーチ?
実は、ソフィたち、ちょっと困ってるの。
開拓を始めたのはいいんだけど、瘴気エリアが多いせいで、思ったほど進んでなくて……。
お、おう。そうだろうな。この厳しい土地で生きていくのは、なんだ、難しいからな。
だから、あなたたちをコーチとしてお招きしたいんです。
瘴気をものともしないあなたたちの力や、この地で生きていくためのお知恵をお借りできたら、とっても助かります!
え?し、しかしだな……。
あ、そうそう。あと、よかったら、ハーネット商会で開発した魔道肥料を試してみませんか?
魔道肥料を使えば、この土地でも、いろんな作物が育つようになりますよ。
ま、まじか?もうマズいイモを食わなくてよくなるのか!?
でも、そのためにはいろんな種がいるぞ。それに俺たちはイモ以外の育て方なんて知らねえ。
それなら、ソフィたちが教えてあげられます。
な、なんでそこまでしてくれるんだ。金持ちだからって、貧しい俺たちに恵んでやろうっていうのか?
ううん。
ソフィたちには、あなたたちの知恵と技術が必要だから。それにふさわしい対価をお支払いしたいんです。
それに、ソフィたちの技術で、あなたたちの暮らしが豊かになれば、あなたたちも、もう略奪なんてしなくてすむようになるでしょ?
うまくいったら、あなたたちが食べる分よりもっと多くの作物が実るかも。
そうしたら、ぜひ、ハーネット商会に買い取らせてくださいね。
「「「……。
どうする?と、魔道山賊たちは、お互い目配せをしあった。
その結果、わかったことは、みんな同じ気持ちらしい、ということだった。
代表の男は、その意を汲み、むっつりとソフィに向き直った。
……俺たちは、誇りある民だ。
それだけは、忘れねえでくれよな。
はい。もちろんです。
――よし!ならいい!交渉成立だ!そんじゃあ――
そのとき、凄まじい揺れがアジトを襲った。
きゃっ!
な、なんだ、どうした!?
た、大変だ!ソフィ・ハーネットが――
巨大化しちまったぁ!
………………え?
***
ずしーん、ずしーん、と。
インゴットソフィは、重々しい足音を立てながら、ー直線に街へ向かっていた。
ちょ、ちょっと待って!
ほうきに乗ったソフィが、その顔の横までついっと飛んでくる。
あなた、どうしてこんなところにいるの?
ソフィ、買い物に来たの。
ずしーん、ずしーん。
魔道肥料が足りなくなっちゃったから。
待って、止まって!このまま進んだら、街を踏み潰しちゃうよ!
そう?じゃあ、そのときは弁償するね。
そういう問題じゃなくて!
そうだ。魔道肥料だけなんて言わないで、この国、ぜーんぷソフィが買い取ってあげる。
無理だよ、そんなの!
無理じゃないよ。ソフィ、金ならいくらでもあるから。
世の中、金。
金さえあれば、なんでもできる。金さえあれば、世界も救える。
お金で世界を!?
そう。たとえば――
どんなに才能のある人でも、どんなに努力をした人でも、金を稼げなかったら、生きていけなくて、淘汰されちゃうでしょ?
だから、そういう人も、ソフィがが救ってあげる。
金になるものも、ならないものも、ぜーんぶソフィが金で買ってあげる!そしたら、みんな幸せでしょ?
愛も希望も夢も未来も!ソフィがまとめて買い占めちゃうね!
ぶうん、とインゴットソフィが腕を振るうと、大量の金貨が射出され、ソフィを襲った。
シューティングスター・ライド!
リソフィは見事なほうきさばきで金貨をかいくぐる。
落ちた金貨は、ついてきた魔道山賊たちが拾っていた。
ヒャッハー!金だ金だー!
――ってデケえよ!!!
あの子、なんだか様子がおかしい!
なんだかも何も、おかしくねえところがねえけど!?
ソフィは、ひらりと宙を舞い、インゴットソフィの前に出る。
だめだよ。あなたを街へは行かせない。
えー。邪魔するの?いくら払ったらどいてくれる?
お金の問題じゃないよ。みんなの笑顔のためだよ!
じゃあ、その笑顔もソフィが買うね!
インゴットソフィの手が、ソフィをつかむ。
きゃあっ!しまった……!
この世のすべて。メニューの上から下まで、みんなソフィが買ってあげる。
世界中、金の華で埋め尽くしてあげる!
そこへ。
グレェェートザッパァァァーッ!!
雄叫びと共に、巨大な杖が飛来し、インゴットソフィの顔面を直撃した。
ごぉ~~~~~~ん……。
錘を鳴らしたような音を上げ、よろめくインゴットソフィの手のなかから、ソフィはほうきに乗って脱出した。
もう、いきなり何?
インゴットソフィの前に現れたのは――
私だと思った?私だよ!
なにこれ。
アリエッタちゃんに教えてもらった技術で作った、スマート防衛兵器第1号――
メカリルムちゃんだよ!
へいかもん、かかってきなよ。
お待たせしました、ソフィ様。メカリルムちゃん、出動完了いたしました。
ソフィのほうきに、通信が入る。この秘書も、アリエッタの技術を応用して作った、ソフィ専用の自律型サポート魔道AIだ。
ありがとう!あとは、ソフィがなんとかするね!
笑顔でうなずき、ソフィは、インゴットソフィの巨体に向き直る。
できれば、言葉で止まってほしかったけど……。
無理なら、戦うしかないよね。
あれが、ハーネット商会のCEO……。
な、なんてこった……虫も殺せないような顔して、あんなもん作ってやがったなんて……。
――君たちは、忘れてはいないだろうか?
魔道新薬の開発・販売に成功し、ー躍、世界的事業家となったソフィ。
広大な土地を買い上げ、ー国ー城の主となったソフィ。
そんな彼女が、これまで、レナ・イラプションやリルム・口ロットなど、名だたる魔道少女と正面から激突し、互角以上に渡り合ってきた事実を。
「ええい!ウィッチドライブ!
「くッ……やるね、ソフィちゃん!
「……ね、久しぶりに戦ってみない?ふたりだけの、季節外れの〈トリック・オア・トリート〉。
「いいねー。結局、決着はつかなかったし。
そう。彼女は――
ソフィ、久しぶりに血がうずいてきちゃった!
行くよ。超マジカルで――
超ラジカルッ!
story
ゴールドラッシュ!!金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金ぇ!
ぶうん、と唸る剛腕をかわしつつ、ソフィは解析魔法を展開する。
やっぱり――体内に何か呑み込んでる。この強い魔力は……ヴォルフラムの魔道遺産!
基本構成は、錬金術。第二世代型かな?大地の魔力を吸い上げて、金に変換してる……。
ノペポープレード!
インゴットソフィが金の延べ棒で斬りつけてくる。ソフィはなおも解析を行いながら、すいすいとそのすべてをかわしてのけた。
でも、妙に変換効率が良すぎるなあ……あ、これ、ひょっとしてあれかな?リルムちゃんが東の国で見つけた特殊理論!
木火土金水。木は火を、火は土を、土は金を、金は水を、水は木を生み出す。その理論を応用してるんだ。
なら、その逆で崩せるはず!
わからないことは、知りたくなる。それがソフィの本質だった。
ほうきで空を飛ぶ魔女を見て、どうしたらそんな素敵なことができるんだろうと、ー心不乱に魔道を学んだ。
その後、魔法製薬の研究と出会い、その可能性に魅了されて、とことん試行錯誤を重ねてきた。
〝空間a〟の研究を進めたのも。スマートほうきやメカリルムを開発したのも。魔道山賊が略奪に走るわけを聞きに行ったのも。
ぜんぶ、ぜんぶ、知らないことを知りたかったからだ。
そして――その果てに得た知識のすべてが、ソフィを前に進ませてくれる。
金は木を、木は土を、土は水を、水は火を、そして、火は金を剋する!
火剋金!メカリルムちゃん、ファイア!
うおおおおお!リルム式ロロット砲!
メカリルムの口から、強烈な火炎が放射される。
わっ、熱い!金が溶けちゃう~!
……見えた!
ソフィは見た。溶けた金の奥に光る、禍々しい輝きを。
ソフィは懐から小瓶を取り出し、中身をあおった。
超マジカルで、超ビースト!
すると、その身はー瞬にして野生的な変化を果たす。
がおー!野生のソフィだよ!
野生のソフィは、ほうきを蹴って跳び上がり、インゴットソフィに飛びつくと、すいすいその身体を登り始めた。
んもう、ちょこちょこまかまか!
インゴットソフィは、ぶんぶんと両手を振り回すが、野生のソフィはとにかく身軽だ。ひょいひょいかわして、相手の肩に飛び乗る。
あなたも金持ちみたいだけど、ソフィに比べたら貧乏人なんだから!
でも、ソフィには、あなたの持っていない大切な財産があるよ!
えっ、どんな?土地?城?株?
ううん。それはね、ソフィの学んできた、ソフィの知識!
言って、ソフィはインゴットソフィの頭まで駆けのぼった。
がおがお!
そこへ、こちらもソフィの体重を失って身軽になったほうきが、すうっと飛んでくる。
知識は財産!
ソフィは、ほうきをつかむと、すべての魔力をその先端に収束させた。
ソフィの本気、見せてあげる!
ソフィの魔力が、ほうきの先端に収束する。
これこそ、〝割と昔から使っているわりにあまり認知されていないソフィの得意魔法〟!
ボルテック・ペネトレイト!
極度に収斂された灼熱のー線が、インゴットソフィのボディを上から下まで貫通し、ヴォルフラムの遺産を的確に撃ち抜いた!
貧乏人のくせに~!!
インゴットソフィは、ものの見事に爆散した。
金色のお花は綺麗だけど、全部同じ色じゃ、味気ないよ。
やっぱり、お花畑は色とりどりじゃないとね。
***
ソフィは、すうっと地面に降り立つと、茫然となっていた魔道山賊たちに、いつもの笑顔でにっこり微笑みかけた。
みなさん、おけがはなかったですか?
山賊たちは高速で首を縦に振った。
うー。破産しちゃった……。
爆発したインゴットソフィは、無事、元のサイズに戻った。
それでみなさん、さっきの話ですけど――
おたくで働かせていただく件ですよねやります!やらせていただきます!
なんならお金もいりません!タダでやらせていただきます!!だからお命だけは!!
そんなわけにはいきませんよ。
「「ヒイッ!!
タダ働きなんてだめです。お仕事には、正当な対価をお支払いしないと。
「「あ、そっち……。
ああ、でも、ハーネット商会の物資を略奪した分は、ちゃんと返してくださいね。
「「耳を揃えてお返ししますッ!
よくわからないけど――
やっぱり、世の中、金。ってことだね。
かくして。
ハーネット商会は、不毛の地で生き抜いてきた民族の協力を得て、開拓計画を推し進めるこりこ成功した。
また。
ソフィちゃん、東の国には、コンニャクっていう変な食べ物があるんだよ。
なんかねー、そのままだと食べられないイモをなんやかんや加工すると、つるんつるんになるんだって。常識ないけど、おいしいよ。
との証言を元に、不毛の地のマズいイモをなんやかんやした結果、見事にコンニャクができあがり。
――後年、ハーネット商国ハ、魔道コンニャクのー大生産地としテ知らレるよう二なっタんだっテ。
ふぅん……コンニャクか。どんな食べ物なんだろうね、アイ。
ー度、見てみたイね、アイ。
ふと、金色のアイは足を止め、落ちていた何かを拾い上げました。
あラ?これハ……金貨?
ほんとだ。かなり古いものみたいだけど、ぜんぜんくすんでないね。魔道金でできてるのかな。
アイのボディも、いろんなところに魔道金が使われてるよね。
うん。魔道金ハ、魔力伝道率がいいかラ。
自律型の魔道具を作るの二、昔かラよく使われテいたんだっテ。
ふうん。そうなんだ。
金色って綺麗だから、ちょっとうらやましいな。
私ハ、アイの銀色も好きダよ。
私のは、魔道銀なの。魔道銀は、耐久性が高くて加工しやすいから、兵器の製造に向いてるんだって。
私の魔道砲も、昔は、こ~~んな大きなポディにしか搭載できなかったんだけど、魔道銀の研究が進んで、ダウンサイジングできたんだって。
へエ……。
私たちハ、機械だけド……そう考えるト、私たちにモ、ちゃんトご先祖様がいるんダね、アイ。
そうだね、アイ。
いろんな人の知識がつながって、私たちが生まれたんだって思うと、なんだか……。
この気持ちを、どんな言葉で表したらいいだろう。
そう思ったアイのメモリーに、ふと、最近初めて聞いた言葉が浮かびました。
その言葉が、とてもぴったりなような気がして、アイは笑顔で言いました。
なんだか、すっごくグレエエートだね、アイ。
金色のアイも、嬉しそうにうなずきます。
そうダね。とってもグレエエートだネ、アイ。
ふたりのアイは、穏やかに笑い合いながら、てくてくと道を進んでいきます。
その道が刻まれた大地を、もう誰も、〝不毛の地〟と呼んではいません。
だって――
だって、こんなに色とりどりで美しい、グレェェートな花畑が広がっているのですから。