ニーナのメモリー

1話

「ボクを、 信じて……」

大人はウソつきだ。

ボクのこと、捨てられたんだって。

ちがうのに……ボクはただ、迷子なだけ。

きっと、そう……

悪い子は、お外に追い出される。

きっと、ボクが悪い子だったから、

おうちにいれてもらえないんだ。

そうなんだよね?

いい子になれば、きっとおうちにいれてくれる。

「はぁ……さむい……

はやく、おうちに帰らないと」

おかしいな……。

ここにも、ボクのおうち、 ない。

今度は向こうへいってみよう。

そこなら、きっと……。

……おうちって、なんだっけか?

ポカポカにピカピカに、 ほっかほか。

おうちって、きっと、 そんな所。

おなかすいた、 さむい……。

でも大丈夫。

おうちにさえ、 たどり着ければ、 きっと幸せになれるんだ。

悪い子は、おうちにいれてもらえない。

ウソつきも、ドロボウも。

大丈夫。 まだ、 歩ける。

今度は、あっちの町にいってみよう。

ここなら、きっと……。

みゅう? あなたは、 だあれ?

お姉ちゃん、 はじめてのともだち。

ひとりぼっちのボクに、 声をかけてくれた、 やさし一人。

ずっと一緒にいてくれるの?

ありがとう、うれしいな。

おなかすいた……。

でもドロボウは悪い子のすることだから、 がまんするの。

なあに? お姉ちゃん……

リンゴ? ボクにくれるの? ありがとう!

…… おーいしー!

なに……あなたたち……。

ボクが、リンゴドロボウ?

ちがうよ、これはお姉ちゃんがくれたんだよ。

ウソじゃないもん! 本当だもん!

ねえ、お姉ちゃん。

これ、お姉ちゃんが、ボクにくれたんだよね? そうだよね!?

おねえちゃん……?

どうして、笑っているの?

ボクのこと、だましたの?

最初から、 ぜんぶウソだったの?

ともだちも、ずっと一緒にいてくれるっていったことも、ぜんぶ……。

ボクじゃない。

ドロボウは悪い子がすること。

ボクは、悪い子じゃない……。

なのに、どうして、みんな……。

だれも、ボクのこと、 信じてくれない……。

痛いことばかり、ひどいことばかりする……。

魔女だから? ボクが、悪い子だから?

だから、みんな……

ボクのこと、信じてくれないの?

じゃあ、みんなは、なんなの?

ウソついて なげて、ぶって、 けって……

みんなのほうが、悪い子じゃないか。

悪い子はおうちにいれてもらえない。

なのに、どうして、みんなには……っ

悪い子にも、おうちはあるんだろう。

「ボクだけ、おうちがない……。

だれも、ボクのこと……信じてくれない。

ボクの言葉は、だれにも届かない。

ボクが、魔女だから?

魔女じゃなかったら、 信じてくれたのかな……。

新しい町にきたけど……

やっぱり、ここも一緒だ。

だれも、ボクのこと、 信じてくれない。 ……ボクが、 魔女だから。

変な人に会った。

町の大人から、 ボクのこと、 かばってくれた。

だけど、知ってる。 この人もきっと……。

「信じる? ボクを?」

……ウソだっ!

またボクのことを、 だますつもりなんでしょ!

あなた、きらい! あっちいって!

だって、 そんな風にやさしくされたら、 ボク……信じちゃいそうになるもん。

もう一度だけ、 信じてみようかな。

この人なら、きっと……。

みゅー、ナデナデしすぎ。

ねえねえ、りょーしゅさん。

ギューってして。

りょーしゅさん、すっごくポカポカで、 ほっかほか……ずっと、これがほしかったの。

りょーしゅさん、

今日は、一緒にねんねしてもいい?

りょーしゅさん!

これからもずっーとボクと一緒にいてね。

えへへ、 約束だよ?

りょーしゅさん、 だーいすき!