刻忘れの森のクロノ
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刻忘れの森のクロノ
・・・。・・・あんた・・・もしかして迷子だろ?
この森は広いから気を付けろよ?オレも、連れの花嫁さんとはぐれて、現在進行形で、大変な目にあってるからな。
そうだ!あんた・・・よかったらオレと一緒に花嫁さんを探してくれないか?
良かったらこの林檎やるぜ?オレの食いかけで悪いけど・・・。
花嫁さんを刻の庭の番人の所まで、連れて行くのがオレの使命だったんだけど、途中ではぐれたんだ。でも、何ではぐれたか、思い出せねー。
うーん・・・やっぱりあの時のあれが原因かな・・・。
あんた、森を荒しちゃダメだぜ?悪い子はオレがオシオキするぞ!・・・えっ・・・オレが一番荒してる?
・・・腹減ったな・・・。んっ?・・・林檎じゃ腹は満たされないぞ・・・肉・・・そうオレは今・・・猛烈に肉が食いたいッ!!!!
あっ、しまった!一の刻の鐘が鳴ってるぞ!急がねーとな!
うーん・・・やっぱり居ねーな・・・。あんたの方はどうだった?・・・ふんふん・・・やっぱり収穫なしか・・・。
鏡の力でこの森に来たって言うリーディーっていう女に会ったぞ!気になる事も言ってたな・・・こっちに来る時、ドレスを来た女にぶつかったんだと・・・まさかな?
あと!ぶつかった時にガラスの破片が飛び散って大変だったみたいだな。花嫁さんだったら、怪我をしていないか心配だな・・・。
実はな、オレをここに差し向けたジィジに口を酸っぱくしていた言われてたんだ。番人に会えなくても、花嫁が消えたら帰って来いって・・・。どういう事だろうな。
むっ・・・またあんたか・・・また、森を荒らしただろ?隠しても無駄だぞ!?
聞いてくれよ!発想の転換をしてみたぜ。まず!リーディーを探してすれ違った女の人の特徴を聞く!頭にオレのと似た角が生えてれば、花嫁さん確定!名案だろ?
そういえば・・・さっきから風が止んでるな・・・。ちょっとだけ不気味だぜ。
えっ!あんたって王国のギルドに居んのかっ!!!凄げーな!オレ?あーこの角とかあるからな・・・。
ジィジが言ってたぞ!王国のギルドは強者はかりなんだろ!オレ、最近ちょっとだけ魔法が使えるようになったから手合わせしようよ!
この森って、実は魔王軍が作り出したって噂なんだぜ。刻忘れの森だなんて、ちょっと怖えーよな?
なーなー見ろよッ!手鏡が落ちてたぞ。あんたのかなって思って拾ったんだけど・・・違うか?
もぐぐ・・・もぐっ!?・・・っっっ!!!・・・ごっくん!・・・はっ・・・かー・・・死ぬかと思ったぜッ!!鐘の音に驚いたぜ・・・もう二の刻か・・・。
こんなに探してんのに見つかんねーのは、この近くには居ないのかもな?ジィジとの約束で、安全な七の刻までしか、オレはここには居られないんだよな・・・。
よぉっ!さっき、リーディーに会ったんだけど様子が変だったぜ・・・。何かを無くしちまったらしい。でも、その何かが思い出せないんだと。オレも何か忘れてるか?
んっ?・・・ジィジは誰か?・・・っても・・・ジィジはジィジだからな。説明は難しいな・・・。とにかく偉い奴な!
ちょっと休むか?ほら、あそこの木陰で一緒に昼寝でもしようぜ?
あー見ろよッ!あの雲、あんたに似てるぞ!ホラ、あれは、ジィジだろ?・・・うーん・・・あれは林檎かなー。美味しそうな形だな・・・・・・じゅるる・・・。
あんたって笑うと、ちょっと可愛いよな!お日様みてーで、オレは好きだぜ?ポカポカな笑顔だな・・・。ふへへ・・・なんか恥ずかしいな・・・。
危険かもしんねーけど、アリュシオンの門を潜ろうと思う・・・。あんたは連れて行けねーな。危ないからな!
へへへ!林檎を拾ったぜ!赤い林檎は、甘くて美味いんだぜ?
もう三の刻か・・・。なんか・・・この鐘の音って物悲しい響きだよな・・・どうして、そう感じるんだろな?
むっ・・・今日はまだ拾い食いはしてねーよ?・・・えっ・・・それが普通!?おいおいマジかよ・・・。
あんたとオレって友達かな?・・・うん!・・・きっと友達だな!こんなに拳で語り合ってんだから、むしろ親友かもなっ!
・・・おいっ・・・親友・・・。あんたはオレの事・・・忘れないよな?
あのな・・・リーディーがオレの事も自分の事も忘れちまってた・・・。もしかしたら、花嫁さんも忘れちまって・・・家に帰れなくなっちまってんじゃねーかな・・・。
そろそろ雨がふりそうな空模様だな・・・。もし、門にも花嫁さんがいなかったら・・・オレ、一回、ジィジのところに戻って相談してみようと思う。
・・・。ダメだった・・・。オレ、一度、家に帰るわ・・・。
おいっ!どうしよう!森から出られないんだ・・・。何が起きてるんだ一体・・・。
久々にリーディーに会った・・・。今日は、まともなリーディーだった。なんかオカシイんだよな・・・。オレの記憶とリーディーの記憶が一致しねぇーんだ・・・。
四の刻がなったな・・・。七の刻まで、あと三つ・・・。なんっつーか、絶望的だぜ・・・。
この森ちょっとオカシくねーか。色んな場所で過去・今・未来・・・の時間がごちゃ混ぜになってんぞ・・・。どれが今なんだ!?オレは今だよな?
聞いてくれよ!!・・・なんかオレに似た奴をさっき見たんだ・・・。ってもオレよりも歳上だった・・・。雰囲気も違ってたしな・・・。
最近、空間がぶれて、あんたが見えない時がある・・・。オレは今、あんたから見えてんのか・・・?
やばいな・・・本当にぼんやりとしか見えない・・・おいっ!親友・・・いつ、あんたと話せなくなるかわかんねーから言っておくぜ!あんたと一緒に居るのたのしかったぞ!
なんか、事情読み込めちまったかも・・・。ここ、たぶんオレにとっての未来なんだよな?・・・なら。きっと・・・いつかまたあんたと会えるよな?
刻の庭の番人
・・・やっと来たな・・・待ちくたびれたぞ!さあ・・・オレと遊ぼうぜ?
十二の刻を告げる鐘が鳴り終わる前に、刻の庭の番人であるこのオレを倒せたら、この庭から解放してやってもいいぜッ!くく・・・さぁて、お手並み拝見ッ!
壱の刻を告げる鐘が鳴った・・・な・・・。森は深い眠りに落ち、その刻を待っている。
おいおいおい・・・弱っちぃーなッ!オレが鍛えなおしてやろーか?
林檎は青くて固めがうまいよな?特にこのシャリシャリ感が最高だぜ!
・・・ん?この林檎はやらねーぞ!?・・・。
二の刻を告げる鐘が鳴った・・・。夜の静寂が支配を解き、森が動き出すぜ。
リーディーにはもう会ったか?アイツが手鏡を持っていたら奪っといてくれよ?鏡とこの庭の相性は最悪だからな。
・・・ん?だから、この林檎はやらねーぞ!?第一、オレの食いかけだしな!
三の刻を告げる鐘が鳴った・・・。空は薄く明るみ、鳥たちが騒ぎ出す。さあ、オレを倒せ!
さぁて・・・もう三の刻か・・・。そろそろ本気出してくれよな?・・・ん?・・・刻忘れの森のクロノの花嫁探し?あー・・・まぁ、気が向いたら探してやってくれよ・・・。
刻の庭の番人っても特にやる事がなくて基本はヒマだな!たまーに鏡を通してやってきちゃうお客さんを元の場所に送り返す簡単なお仕事だぜ。お前もやってみるか?
四の刻を告げる鐘が鳴った・・・。夜から朝へ。陰から陽へ移ろい漂う変化の時間。そんなんじゃ、オレは倒せないぜ?
・・・んっ?なんでいつも座ってるのかって・・・ご老体なんだよ・・・察しろ・・・。
うわぁああ!・・・びっくりさせんなよ!!!・・・あっ・・・逃げちまった・・・子ウサギが居たからお前に見せようと思ったんだけどな・・・。どっか行っちまったな・・・。
この刻の庭は花嫁を迎える事で代替わりをする。ても花嫁は一生この庭から出られない。それがアリュシオンの掟だ。しかも庭が代替われば・・・辛気臭い話はやめるか。
五の刻を告げる鐘が鳴った・・・。光に溢れ、忙しなく、想像しい・・・始まりの時間。オレが一番好きな時間だな。
刻忘れの森にはあんまり長くいるなよ?その名の通りの場所だから忘れのモンが多くなると出られなくなるぞ。まっ・・・まぁ・・・アイツと仲良くしてくれるのは嬉しいが・・・。
最近、見たことが無いキノコが生えてくる事があってな・・・。一体どっから紛れ込んでくんのか・・・。この庭には幻覚キノコしか生えてないから間違っても食うなよ?
六の刻を告げる鐘がなった。太陽は高く空を駆け上がり、森が囁く、優しい陽だまりの時間。なんつーか、ダルいよな?
ふぁーあー、気持ちぃー日差しだなぁー・・・。一緒に昼寝でもするか?
・・・お前・・・まだこの林檎を狙ってたのか・・・。涎が出てんぞ!あーあーしょうがねー奴だな。ホラ、これで拭いとけっ!
七の刻を告げる鐘が鳴った・・・。はしゃぎ、笑い、踊り、喜びに満ちた楽しい時間。あっちのクロノの調子はどうだ?
この前のキノコの原因がちょっとだけ分かったぞ!あれは魔王城の方角から来てる。許さねーぞ、キノコ・・・風に乗ってふわふわ来やがって・・・絶対殲滅してやるッ!
オレは基本的にこの庭から出れねーからな。お前の話を聞くのすげー楽しいぜ?王国を守ってんだろ?・・・えっ・・・何で知ってるのかって・・・あっ・・・いやっ・・・その・・・。
クロノと顔が似てる?・・・あー・・・まー色々あんだよ。そのうち理由は分かると思うぞ・・・そのうち、な・・・。それより、そろそろオレを倒してくれよな?
八の刻を告げる鐘が鳴った・・・。気怠さが体を支配し、微睡み、夢の世界へ誘う時間。ほらほら・・・いまが倒し時だろ?
何で刻忘れの森に行かないのか?別にアイツを嫌ってる訳じゃないぜ。限られた刻を生きる姿は愛おしいと思うぞ。今のオレは亡霊みたいなもんだからな・・・。
そろそろ・・・九の刻に移るから気をつけろ。お前には黙っていたが実はこの庭は不完全な状態が続いていて刻が所々で狂ってる。花嫁が居ないから正しようもねーけど。
九の刻を告げる鐘が鳴った。太陽は真っ赤に燃えながら、ゆったりと地に落ち、ひっそりと夜の住人達を運ぶ。危ない時間ってワクワクするよな?
その顔は知っちまったんだな・・・。ああ・・・そうだ・・・。あの森に居るクロノは過去のオレだ・・・。あの森は一番、刻が狂ってるからな。やっとお前に言えるぜ!久しぶり!
イメージが全然違うって?長い刻を渡るうちに性格も変わっちまったのさ。おいおい・・・今のオレの方が魅力的だろ?
十の刻を告げる鐘が鳴った・・・。白々と星が姿を表し、夜の支配を告げる時間だ。俗に言うと、すやすやタイムだな!
・・・手短に話すぞ・・・。リーディーを見つけたら手鏡を向けろ。鏡の向こう側に押し込め。因果律って知ってるか?正しい刻を動かす為には正しい配慮と手順が必要だ。
夜が深まってきたな。気をつけろよ。夜の森が動き出す・・・。今までの庭と同じように考えると痛い目みるぜ・・・。
なんだか森が生きているように言うのが不思議?オレがか?・・・違うな・・・この森は実際に生きてるぜ・・・。耳を澄ましてみろ・・・庭が嘆いてる・・・花嫁が居ないと・・・・・・。
壱拾壱の刻を告げる鐘が鳴った・・・。獰猛な獣の時間。森は姿を変え牙を向く。刻の庭は代換えの解きを迎える。そろそろ決着つけてくれよ?
・・・・・・この刻の庭と・・・・・・番人であるこのオレは一心同体。つまり共に散る運命なんだ・・・。最後の刻を迎える前にお前に倒されたら良かったんだけど・・・さ・・・ついな・・・。
・・・・・・つい・・・お前と居るのが楽しくて、こんな時間になっちまったぜ・・・。悪りぃな・・・。さあ、時間がないから、本気・・・出してくれよな!
壱拾弍の刻を告げる鐘が鳴った・・・。新たなる刻の幕開け・・・だ。アリュシオンの門は花嫁を迎え入れ。古き庭は朽ちていく・・・。
あんた、見ない顔だな?どこから来たんだ?オレと遊ぼうぜ?・・・なんてな・・・。