アンナ海賊長
8/18~8/30
アンナ料理長
んん~~!!今日も最っ高に良い天気だ~~!!絶好の釣り日和だなっ!!
おう、野郎ども!!気張って大物狙えよぉ~!!新鮮な魚あってこそ、美味いもんが作れるってもんさぁ!!
お、なんだありゃ・・・難波船か??おい誰か!!望遠鏡持って来い!!!
やっぱどう見ても難破船だな・・・おい!野郎ども!!お客人だよ!あそこの船、引き上げてやんな!!
よぉ~!いらっしゃい!!あんなオンボロ船でよく生き延びたな!!
ん??なにビビってんだ?ああ、この船は海賊船じゃないのかって?
ハハハ!!ビンゴ!!ご明察!!お察しのとおり!!ここはアタシの海賊船さぁ!!
だがな、ただの海賊船じゃぁ、ない。ここはな、海上レストランだ!!!どうだ、驚いたか!?
アタシはこの海賊船の船長!!そして、この海上レストランの料理長だ!!
アンナ”料理長”ヘルゼン。それがアタシの通り名さ!
お前、腹すかせてんだろ?よっしゃ!!そうときたら、ここが腕の見せ所!!!アタシ達がなんでもうまいもん食わせてやるよ!!
遠慮すんな、遠慮すんなぁ!腹ぁすかせたヤツは全員客人だよ!!
さぁさぁ!たらふく食っていきな!!ここは海の上!新鮮な魚介類で溢れている!!
海産物だけじゃぁ、ない!船で各地を移動して、いろんな国から珍しい食材も集められる!!!
おまけに、アタシら海賊は刃物や火器の扱いにも慣れてるってなもんだ。
海賊とレストランってのは、相性が良いのさ!
飯ってのは元気の源だからな。しっかり食って、しっかり眠る!!それが我が海賊団の掟さぁ!!
それからもうひとつ、大事な大事な掟がある!これが一番大切なことだ。
その掟とは・・・出された飯は残さねぇこと!好き嫌いは一切禁止!!米ひと粒だって残しちゃあなんねぇ!
他のイキモノの命もらって、それを食って生きてんだ。そのくらい、当然だろうが。
頂く命への感謝ってものを忘れちゃなんねぇ。料理する時だってそうだ。骨のひとつだって無駄にはしない。
それがこの海上レストランの掟ってやつだ!
って、お前、聞いてねぇな??ハハハ!それにしたって良い食べっぷりだなぁ、お前!
気に入った!!どうだ、お前さえ良ければアタシの船のクルーになんねぇか?
一緒に大海原を旅しようじゃないか!!良いもんだぜ、どこまでも続く水平線!
気の良い仲間と西へ東へ・・・海風の向くままに航海するのさ!!
・・・は?なんでアタシが海賊になったのかって・・・?
・・・別に、そんなのはどうだっていいだろ。
なんだよ、しつこいなぁ・・・そんなに女海賊が珍しいかぁ??
・・・まぁ、アレだ。アタシが海賊になったのは、運命ってやつだな!
アタシは海と共に生きる運命を背負って生まれてきたのさっ!!
・・・なんて、な。ちょっと格好つけすぎたかな。いいよ、教えてやる。昔話だと思って、テキトーに聞いてくれ。
今でこそ、こうやって海賊船の船長なんてやってるけどな。元々アタシは、親に捨てられた孤児だったのさ。
アタシの母親がお貴族様と恋しちまってさ。それでアタシが生まれたわけだけど。
でも結局、アタシも母親も父親にはサッパリアッサリ捨てられちまって。
ついでにアタシの顔が父親にそっくりだってんで、母親はアタシの顔が大嫌いになってな。
顔も見たくないってさ。アタシは母親にまで捨てられちまった。酷いもんだろ?
でもな、アタシは今ではそれで良かったと思ってる。父親も母親も恨んじゃいねぇさ!
そうやって一人になって、はじめて見えてきたもんがある。アタシは一人きりでも逞しく生き抜いてやった!!
小さい頃からナイフだって銃だって扱った。生き抜くために必要なことはなんだってやった!
料理だってその頃に覚えたんだぜ!金なんてなくったって、豊かな自然がアタシを生かしてくれた。
その経験はアタシの誇りだ!10の歳に海へ出た!たまたま町にやってきていた海賊に頼んで、連れ出してもらったんだ。
雑用係として、だけどな。気の良い連中だったぜ!大酒飲みで、賑やかでな。人使いは荒かったけどなぁ。
あれから数年・・・当時アタシを連れ出してくれた連中は、大半が海軍に捕まっちまった。
海軍と戦いになる度、もちろんアタシも一緒に戦ったさ!!そして、私は生き延びた!!生き延びて、ここにいる!!
アタシの仲間の海賊たちはな、売られた喧嘩は買うけれど、わざわざこっちから略奪するようなことはしなかった。
なのに海軍の奴ら、海賊旗つけてるだけで、アタシ達を攻撃してきやがるんだ。
まったく、どっちが賊だかわかりゃしねぇ!
・・・なら海賊旗を外せばいいって?馬鹿言え!海賊旗はアタシらの誇りだよ!!
これだけは絶対、外せない。そういうもんなんだ。
アタシは逃げ残った仲間をまとめて、今こうして船長をしてるってわけだ。
いつか必ず、捕まった仲間を救い出す。海上レストランってのは、情報取集にも役立ってるんだぜ?
アタシの仲間は誰一人、殺されていないことがわかっているんだ。
なんでも海軍施設のどこかにある地下牢に捕らえられているらしい・・・
今はその情報を探っているところだ。お前、何か知らないか??
そっか、知らねぇか。いや、いいんだ。海軍の情報なんて、そう易々と手に入るとは思ってねぇ。
でも、この海賊団はアタシにとって家族であって、家なんだ。居場所、なんだ。
孤児だったアタシが見つけた、大事な場所だ。絶対に守る。仲間も助け出す!海軍なんかに奪われてたまるもんか!
さぁ、昔話はおしまいだ!!腹ごなしの退屈しのぎには丁度良かったか?ハハハ!
ああ、ほら、見てみろ。大海原に日が沈む。高台で、美しいだろう!自由だろう!どこまでも!!
この景色、それに腹ぁすかせて食った美味い料理の味、忘れんじゃないよ。
そういう記憶ってのはな、いつか、お前になにか大きな困難が襲い掛かってきた時、なにかと役に立つもんなんだ。
いざという時、踏ん張る力になる。あの時、ああだったな、こうだったな、ってね。
お前がどこの誰かなんて、野暮なことは聞きやしないさ。さぁ、もう行きな。お前の船はウチの野郎どもが修理しといたよ。
これ以上海賊と関わると良いことなんてないからね。この海上レストランでは、食い終わったらさっさとお帰り願う決まりだよ。
縁があったらまた会おうじゃないか、この広い海の上で!その時も美味いもん、食わせてやるよ!
アンナ海賊長
おう、野郎ども!なに騒いでやがる?仲間同士の喧嘩はご法度だぜ?
ん?喧嘩じゃねぇのか。・・・おお!?なるほど、アタシらの船の前方に大型船が接近中ってな。
・・・ハハハ!ありゃぁどう見てもレストランの客ってわけじゃあ、なさそうだぜ。
お前も見てみろ、客人!あの旗印。見間違えることはねぇ!
野郎ども!!どうやら海軍様のお目見えのようだぜ!!全員急いで支度しな!!
戦闘準備だ!!!迎え撃て!!!
表向きは海上レストランでもな、アタシらの本業は海賊なのさぁ!!
海軍には仲間を奪われた恨みがある!仲間を全員この船に返してもらうまで・・・容赦はしないぜ!!
勇猛果敢!!海に生きて海に散る覚悟!!その心意気をもってしての海賊団だ!!
そして!アタシはこの船の船長!!アンナ”海賊長!ヘルゼン!!!
善も悪も、この船の上じゃぁ、アタシが決める!!!
さぁさぁ、野郎ども!!準備はいいかい!?
出あえ!!出あえ!!!海軍の皆さまを丁重におもてなしだ!!!
よう、お前はどっかに隠れな!レストランの客に怪我させちゃ、悪いからな。
は?なんだって?お前も一緒に戦うってか?!ハハハ!!良いねぇ、ますます気に入った!
その根性、大事にしろよ!それさえありゃ、どこでだって生きていける!!
よっしゃ!アタシもいっちょ暴れるとするか!!野郎どもにばっかり楽しい思いをさせんのは癪だからな!!!
海軍様方よぉ、女だからって舐めてたら、あっという間に地獄行きだぜ!!
さぁ、覚悟しなっ!!海賊長の腕前、しかとその目に焼きつけ・・・って、はぁ!?
し、白旗・・・!?どういうことだ!?海軍が白旗をかかげてやがる・・・
罠、か・・・?いや、それにしゃちゃぁ様子が変だ・・・ここまで船と船の距離が近くなっても大砲ひとつ撃ってこない・・・
野郎ども!!武器を下ろせ!!・・・いいから、騒ぐな!とりあえず落ち着け。
誰が甲板に出てきたな・・・あの服装・・・海軍の・・・中将か!?
なにか用件がある、って感じの雰囲気だな。ふん、面白いじゃないか。
おい、誰か。海軍の船とウチの船に渡し舟を!アタシが直接話をする。
大丈夫だって、心配すんな!アタシは今までだって、幾度となく死地を乗り越えてきた。
付き人はいらないよ。武器も下ろしたままでいい。
なんだ、お前も残っていていいんだぜ?一緒に来るって・・・?・・・まったく、アタシも変なヤツに懐かれたもんだな。いいよ、好きにしな。
・・・
よう、久しぶりだな、海軍のお偉いさん。丸腰で白旗なんてかかげて・・・一体なんのつもりだい。
頼みたいことがある??ハハハ!!海軍様が海賊に頼みごとかぁ!!冗談にしては面白くないねぇ?
こちとら海軍には散々嫌な思いさせられてんだ!仲間まで奪われて・・・そんな奴らの頼みごとなんて、聞いてやる義理はねぇな!!
・・・取引だぁ?ハッ!海軍様が海賊と取引ねぇ~?こりゃぁ、前代未聞だ。で?そちらさんは何を差し出してくれるんだい?
・・・!!な、捕らえられた仲間を全員解放するから、頼みを聞いてほしい、だって・・・!?
おいおいおい、一体そりゃ、どういう・・・いや待て、喜ぶのはそっちの頼みごととやらの内容を聞いてからだ。
なにが望みだ?アタシらに、なにをさせるつもりだい?!
・・・はぁ!?料理を作れ!?!?料理って・・・海上レストランのメニューってことか!?
いや、確かに、ウチの海上レストランは味が良いって評判だし・・・お忍びで有名人が食いに来たりもするが・・・
まさか、アンタ達・・・ウチのレストランの客になりたかったのか・・・!?
そうじゃない?アンタ達じゃなくて???か、海軍の元師が!?ウチのレストランの料理を食べたがってる!?
海軍元師が今年還暦をむかえるから・・・その祝いの席でアタシらに料理を振舞ってほしいって・・・正気か!?
元師自ら、それを望んでるってのかよ・・・はぁ~・・・こりゃ、たまげた。一体どんな風の吹き回しだ・・
まったく、波風を読むのも難しいってのに、人生の風ってのは・・・思いもよらぬところで吹くもんだな・・・
おい、もしアタシらがその申し出を受け入れたら、本当に仲間を全員返してくれるんだろうな?
もちろん、無傷で、だ。もしもアタシらの仲間が一人でも傷ついていたら・・・
その時は元師様の大事な祝いの席、一瞬で地獄に変えてやる。覚悟しときな。
それでも良いって言うなら、アタシらに断る理由はねぇ!!仲間を返してもらえるなら、料理くらい、いくらでも作ってやる。
それも、とびきり良い食材を使った、どびきり美味いもんをな!!
味については保証するぜ?もちろん、毒を入れたりなんて卑劣なマネはしないさ。
ウチの海賊団は卑劣なことは絶対にしない。約束は約束だ。キッチリ守るぜ!あ、でも仲間は先に解放しろよな?
んじゃ、交渉成立ってことで、アンタ達の船について行けば良いんだな。わかった。信じる。
・・・・・・・
お前も変なときにウチの船に乗り合わせちまったな。ま、これも何かの運命なんだろうな。
料理ってのは不思議なもんだなぁ。戦わずして仲間を取り戻せることになるなんて・・・
なぁ、お前、本当にウチの海賊団に入らないか?なんだかお前がこの船に幸運をもたらしてくれたような、そんな気がするんだ。
なんてな。無理強いはしねぇ。お前の人生はお前だけのもんだ。誰かに左右されたりするもんじゃねぇからな。
だけど、ちょっとでも気が向いたら、是非ウチに入ってくれ。歓迎する!
もしウチに入ったら、その時は美味い料理の作り方、みっちり叩き込んでやるから、そのつもりでな!!
さぁ、陸まで送ろう。海軍のやつらの船、このまま海軍本部まで向かうみたいだからな。アタシらもそれについて行く。
行き先は大都市だ。そこまで行けば、お前もなんとかやっていけるだろ。
これからどこへ行くつもりかは知らないけどな。
海が恋しくなったら、いつでもまた海上レストランに来てくれよな!
アタシらはいつでも海の上にいる。この広い海のどこかで・・・美味しい飯作って待ってるからな!