キース・スチュワート警部
8/31~9/13
キース・スチュワート
号外!!号外!!って・・・朝っぱらからウルセーなぁー!!
こちとら徹夜明けの休日だっけのに・・・騒がしくて眠れやしないぜ・・・
どうせ、昨夜のファントムローズに関する記事が一面だろ?
・・・まぁ、どんな記事になってるか、見てやらなくもねぇけどな・・・
仕方ねぇ、起きるか・・・ふぁ~・・・まだ眠いぜぇ・・・
おい、坊主、号外1部くれ。ああ、釣りはいらねぇ。取っときな。
ハッ!思った通りだ。見出しにドーンとファントムローズ・・・記事の内容はっと・・・
・・・はぁ!?無能な警察が、今回もファントムローズに踊らされ・・・!?!?
ダーーー!!!一体どこの記者だ!!この記事書いたヤツ!!
くっそ!!!こっちがどれだけ苦労してアイツを追いかけているかっ!!
正体不明の女怪盗・・・ファントムローズ・・・!!
わざわざ予告状を出してから盗みにやってくる怪盗・・・
しかも盗んだものは全部人助けのために使っちまう・・・オマケのオマケにものすごく美人だという噂・・・!!
市民の中にはローズのファンになっちまったヤツだって少なくない・・・!
義賊なんだから捕まえるな~、なんてことを警察に言ってくるヤツも出てくるし・・・!!
だが!!怪盗は怪盗だ!!盗みは犯罪!!
この俺、キース・スチュワートは!正義の警察官として!その行為を許すわけにはいかない!!決して、だ!!
俺は信念をもってアイツを追いかけて追いかけて・・・
俺のあまりの執着ぶり・・・いや、熱意だ!あまりの熱意に打たれて!!
上役はファントムローズ専門の追跡部署を設立!!俺をその部門の警部にしてくれた!!
この恩は仕事で返さなくちゃならねぇ・・・!
って思ってるのに~~!こんなナメた記事書かれちゃ、俺だけの恥じゃ済まねぇじゃねぇかっ・・・!!
こうしちゃいられねぇ・・・休日なんて俺にとっちゃ、あってないようなもんだ。
ファントムローズ・・・次こそは必ず捕まえてみせるぜ!!
そうと決まれば、まずは情報収集だな。いつものとこ、行くか。
・・・・・・・
おい!いるのはわかってんだぞ!!扉を開けろー!!
・・・って、開いてるじゃねーか・・・不用心だぞ?
よう、大親友。・・・は?来ると思ってた?ハハ!さすが名探偵フェリア様だな!
来ると思ってたってことは、俺様が何をしに来たのか、それももう察してんだろ?
昨晩の事件・・・ファントムローズが奪ったエメラルドの宝石。
アレがどうなったか、情報が欲しい。
義賊だかなんだか知らないが・・・昨日盗まれた宝石、どれだけの値段がつくか・・・フェリア、お前わかるか??
俺は宝石の価値なんざ、サッパリだがな。どうやら、相当な額になるらしい。
一体今度は、盗んだ宝石を何に使うつもりなんだ、ローズ・・・
それを知ってどうするのかって?そっからアイツの足取りを洗うんだよ!!
決まってんだろ!俺はなんとしてもアイツを捕まえる!それが使命だからな!
・・・ところで、今日、カリーナはいないのか・・・??
お前、まさかとは思うが、俺の愛しい愛しい妹に、変なマネしてねーだろうなぁ・・・??
もし邪な気持ちで指一本でもカリーナに触れてみろ・・・即座に逮捕してやるからな!!
は?シスコン??妹が好きでなにが悪い!!!あんなに可愛いんだぞ!?!?
それに素直で優しい!!俺の自慢の妹だ!!
・・・そういえば・・・昨晩カリーナは友達と外食するとかで、ずいぶん夜遅くまで出歩いていたようだが・・・まさか・・・!!!
その友達って、お前じゃねーだろうなぁ!?!?
ふん、違うなら良い。・・・まぁ、気立てが良い分、少し遠慮がちな性格だからな、カリーナは。
この探偵事務所で雇ってくれたことには感謝しているさ。
一応、お前のことは信頼しているしな。一応。一応な!!
え?信頼してくれていることに感謝して?情報をあげようって・・・?
お前なぁ~~!!そういうことは先に言えよ!!すぐ言えよ!!!
で?なんの情報だ!?!?なにか、ローズを捕まえる手がかりになりそうなモノか!・
は・・・?え、はぁ!?ローズの予告状!?
お前、それ、どっから!?どこで手に入れた!?!?
この探偵事務所に届いていた!?ちょっ、早く見せろ!!
マジか・・・本当にローズからの予告状・・・
いや、しかし・・・そもそもこの事務所からなにを盗もうって言うんだ・・・金目のものなんて・・・
とにかく読んでみよう・・・なになに・・・?
「いつもお世話になっているお礼にフェリア探偵事務所に遊びに行きますの~」
・・・おい、フェリア、これお前が作った偽物じゃないだろうな・・・?それとも誰かのイタズラかぁ!?
でも、この予告状に書いてあるサイン・・・本物そっくりだ・・・
まさか本当にこの事務所に・・・?
遊びに来るって、一体なんのつもりなんだローズ・・・
ふん!まぁ、なんでも良い!!要は今晩!俺はこの事務所で怪盗ローズを待ちかまえれば良いってことだなっ!!
というわけで。フェリア!お前もつき合え!!
今夜は眠れないぜ!!覚悟しておけよ!!
怪盗ローズ!!今度こそ!!この俺の手で捕まえてみせる!!
・・・お?カリーナからメールだ。
「今夜もお友達と外食して来ますの。遅くなるけれど、心配しないで欲しいんですの~」
まったく、友達が多いのは良いことだが・・・おい、フェリア!なに笑ってやがる!!
しかし困った妹だぜ。怪盗ローズが予告状を出してくる日に限って、いつも夜に出歩くんだ・・・
本来なら、夜遅くなる時は俺が迎えに行くんだが・・・ローズ出現時は仕事中だから手が放せなくてな・・・
は!!まさかっ・・・!!!
俺がローズにばっかり構うから・・・寂しくなって、俺に構って欲しくて・・・わざとローズが現れる時を狙って外出を・・・!?!?
なんてこった!!!あぁ・・・なんて健気で可愛いんだ、俺の妹は・・・!!
・・・おい!だから、なぜ笑うんだ、フェリア!!!
キース・スチュワート警部
怪盗ローズの予告時間まであと10分・・・本当にやつは現れると思うか?なぁフェリア・・・
おい聞いているのか!?起きろフェリア・・・!
お前・・・自分の事務所だからってだらけすぎだろ・・・怪盗が来るんだぞ、怪盗が!
後10分だ・・・10分もすれば、ここに怪盗ローズが現れる!・・・お前だって予告状を見ただろ?!そんなんじゃ名探偵の名が泣くぞ!
お前はこの俺!有能警部!キース・スチュワート様の親友なんだ。もっとしっかりしてもらわねーと困るんだよ!
・・・ああ、雲が晴れて月が見えてきたな。今夜は満月か・・・
・・・そろそろ、時間だな・・・ふぅ・・・
緊張してるのかって?そいつは勘違いだなフェリア!これは武者震いだ!
さぁ、予告時間ぴったりだ!!どこからでもかかってこい!怪盗ローズ!!
うわっ、なんだ!?突然、目の前が真っ白に!?煙幕か!?
げほ、ごほっ、くっそ!!現れたな!怪盗ローズ!!
(月明りの逆光でよく見えない・・・だが、あのシルエット!間違いなく怪盗ローズ!!)
おい!怪盗ローズ!名探偵と名高い俺の親友!フェリアの探偵事務所に現れるとは・・・!良い度胸だ!
一体なにが目的だ!ここは富豪の家でも美術館でもないぞ!金目のものなんてここにはない、はず・・・だよな!?
おいフェリア!!お前、とんでもない財産を隠し持ってたりしないよな!?っていうか、そもそも探偵って儲かるのか・・・?
・・・よかった・・・お前、親友の俺もビックリするようなことを、たまーに言うからな・・・油断できん・・・
というわけだ、怪盗ローズ!!残念だが、ここいお前が盗めそうなものはなにもないぞ!!
そして、お宝の代わりに!この俺!ローズ追跡班のキース警部がいる!!ついでに名探偵フェリアもいる!
観念してお縄につくんだな!!
よく見てみろ!この狭~くて汚いうえ、依頼人もめったに寄り付かない探偵事務所の中!もう逃げ場はないぞ、なぁ、フェリア!
って、アレ!?おい!フェリアどこ行った!!?ったく!肝心な時にいなくなりやがって・・・!!
に、逃げ場がないことには変わりはないぜ!!長かったお前との鬼ごっごも・・・今夜で終わりにしてやる!!
俺は・・・ずっとお前を捕まえるためだけに、頑張ってきたんだ・・・
ただの警察官だった俺が、お前を捕まえたい一心で努力した結果・・・気がつけば警部にまでのし上がっていた・・・
お前が本当のワルモノじゃないってことくらい、俺にだってわかっている!!
義賊ってヤツなんだろ?
盗んだ宝石、絵画、なにもかも全部!貧しい人達を支援するために使っていることも、知っているさ。
でもな、盗みは盗みだ。人のものを盗むのは、それがどんな理由であろうと、やってはいけないことだろう?
だからお前は、その罪を償わなくてはいけない!!それが義務だ!!道理だ!!正義だ!!
俺はこの町の平和を守る。守るためには、お前を捕まえなくてはいけない。
お前のファンだっていう市民だっているさ。だが、お前に財産を盗まれた者たち、被害にあった者たちの気持ちはどうだ?
みんな平等に!安心して、夜を過ごせる。俺はそんな町を取り戻さなくてはいけない!!
なぁ、俺なら、お前が裁かれる時、口添えしてやることだって出来るぞ!!
お前の罪が、なるべく軽くなるように・・・配慮してやることだって、出来る!!
だから頼む!!俺に捕まってくれ!!今、ここで!!
他の警察官ではなく、俺に捕まってくれよ、怪盗ローズ・・・悪いようにはしない・・・!!
なんと言っても俺は正義の味方だからな!!・・・お前のことだって、助けたいんだ。
・・・おい、なんとか言えよ!!
は?今日はいつも追いかけてくる警部さんとお話がしたくて来たんですの??
お、おいおい、なんの冗談・・・今日はなにも盗む気はない!?!?
警部さんがどんな人なのか、知りたくなって来たんですの!だとぉ!?
ちょっと待て!!ローズ・・・お前・・・
・・・暇なのか・・・??
いや、まぁ、そんなことはどうでもいい!!俺のことを知って、どうするつもりだ!!
知られたところで、俺に弱点なんてないんだからなっ!!・・・たぶん!
完全無欠!!正義の味方!それが俺だ!!
え、なに?もう満足したから帰りますの!?!?
いやいや、待て待て!!!今までの俺の話!!聞いてたよな!?聞いてなかったのか!?
ここで大人しく捕まってくれって言ってるんだろう!!
あ!!逃げるなローズ!!くっそ!!待てっ!!
って、おわっ!!!おい、誰だ!?俺のコートを引っ張るのは!
・・・お前、フェリアのとこの助手・・・ペティナ、とか言ったな・・・
なんの用だ!!今まさに絶賛取り込み中だ!!!急用じゃないなら後にしろ!ってかフェリアはどこいったんだ!!
・・・、なんだ!!言いたいことがあるならハッキリ言え!
え?手錠の鍵?手錠の鍵がどうしたんだよ・・・
落としていました?誰が??
・・・俺!?ハハハ!!!なに言ってんだ、俺の手錠の鍵ならココに・・・
あれ・・・??おや・・・
・・・おい、ペティナ・・・その、鍵って、どこら辺で落としていたか、覚えているか・・・?
やばい・・・これ、始末書出さなきゃいけねーやつじゃ・・・
いやいや、今はそれどころじゃない!!ローズだ!!
怪盗ローズを追跡する!!!今夜こそ必ず捕まえるんだ!!
手錠がないのにどうやって?もういい!!素手でいく!!!素手で!!!
怪盗といえども、相手は女!!!男の俺の腕力に適うわけがない!!
・・・こ、この間ジャムの瓶が開かなかったのは!!あれは、その、手がちょっと濡れれてだな・・・ってか見てたのかよ・・・!!
ええい!そんなことはいい!ペティナ!!お前もついてこい!今だけお前は俺の助手だ!ローズ捕獲を手伝え!!!
お前、俺より若いだろうが!!走れ!!!
って、遅~~っ!!お前、足遅っ!!嘘だろ!?それでフェリアの助手とか名乗ってんのか!?
くっそ!!もうローズの後ろ姿が見えなくっ・・・!!
絶好のチャンスを・・・!!俺としたことが・・・!!
・・・いや、ペティナ、お前のせいじゃねぇ・・・
俺が手錠の鍵を落とすなんて、そんなミスをしなけりゃ・・・
ん?なんだ・・・?なんか床からゴソゴソ音が・・・ああ!!お前、フェリア!!なんでそんなとこから!?
今までどこにいやがった!!ローズが現れてから、フラッといなくなったかと思えば!!
ってか今、お前・・・今、机の下から出てこなかったか!?
は?地下室?ローズが怖くて地下に隠れてた!?お前それでも名探偵か!!
・・・というか、地下があるのか?この事務所!?おい、初耳だぞ!?口笛を吹くな!!白々しい!
逃げた代わりに、探し物を見つけてきてやったって??
なんだよ捜し物って・・・地下の件は今度改めてじっくり聞くからな!!
で?なんだよ、なにを見つけてきたんだ?
・・・あ。
(手錠の鍵ぃいい!!よ、よかった・・・これで始末書は免れ・・・)
・・・ま、まぁ、これも俺の捜し物で間違いねぇから、その、うん・・・助かった・・・礼を言うぜ・・・
はぁ~・・・それにしても・・・またしても怪盗ローズを取り逃がして・・・
でも俺は諦めないぜ・・・いつの日にか、絶対に俺の手で怪盗ローズを捕まえてやる・・・!
待ってろよローーーズ!!!
必ず捕まえてやるからなぁああああーー!!
は?夜に大声出すな?近所迷惑!?
わ、わかってるよ!悪かったよっ!!