第六章 Cant imagine life
11/29~12/10
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BFF エリィ
あ、○○○(プレイヤーの名前が入る)。
4周年のパーティ以来ね。エリィよ。分かんない?
無理もないね。あの頃のエリィとは全然印象が違うでしょ?可愛くなったでしょ?ね?ね?
あー、世界ってこんなに綺麗だったんだね!知らなかった。
あの頃は何もかもつまらなかった・・・世界が白けて見えたのもの。
それが今では水たまりに映る空も、夜の闇すら鮮やかに見えるの!
すべてに対して感謝の気持ちでいっぱいなの!
知り合ったばかりのあなたにも愛おしさを感じるくらい!
ねぇ、何でこんなに劇的に変わったか知りたい?
どうしよっかな~。何かこんな風に人から求められるのって久しぶり!気持ちいいね!
しょうがないな、君は可愛いから教えてあげるよ。特別だよ?
ここだけの話・・・エリィはね、魔王軍に知り合いがいるんだよね。ふふふ、すごいでしょ。
4周年のパーティでアラーニャがエリィと魔王軍の仲を噂してたでしょ?
あのとき、アラーニャは私を責めてたけど、ホントはアラーニャだって魔王軍と知り合いたいんだよ?
ただそういう機会がないからエリィのことを妬んでるの。
みんな魔王軍を悪者扱いするけど、そんなに悪い人たちじゃないよ?少なくともエリィには優しいね。
それでね・・・ここから秘密なんだけど、誰にも言わない?
・・・え、分からない?正直だね、君は。
後で言うつもりでも「言わない」って言っておくのがお約束なんだよ。
まぁいいや、教えたげるね。その魔王軍の知り合いの人がね、何でも願いを叶えてくれるって。何でもだよ、何でも!
だからエリィはもっと外見に自信を持てるようにしてもらったの!可愛く可愛く!
それまでは自分に自信がなかったから体にも顔にも包帯を巻いてたの。
別に怪我もしてないのに松葉杖をついたり・・・
それが、見て!こんな可愛い外見にしてもらったの!見て見て!もっと見て!
ふふふ、君は賢いね。そうね。いくらエリィが魔王軍と仲が良くても、ただでは願い事は叶えてくれないよ。
その条件ってのがね・・・「魔王軍を王都に入れてくれたら」って条件だったの。
エリィが魔王軍を入れたんじゃないかって、アラーニャが疑ってたでしょ?
あれはね、ホントだったの。たまにはあの子も正しい情報を流すんだ~って感心したもん。
大丈夫だよ、結局魔王軍が入ってきても何も変わってないじゃん。ただエリィが可愛くなっただけ。ふふふ。
魔王軍がパーティーに乱入してきたときはね、確かに驚いたし、周りにバレないか気になったわ。
でも、それより自分の外見が変わったかどうかのほうがよっぽどエリィには重要だったの。
マーリンたちが魔王軍と戦っている最中に、戦いそっちのけで急いで鏡で確認したんだから。
でもね、そのときはちぃ~っとも変わってなかったの。がっかりしちゃった。
魔王軍に騙された!って思っても誰にも言えないしさ。
周りからは魔王軍とつながってるって疑われるからその場にもいれないし―
仕方なく帰ったらロゼから尾行されるし、散々だったわ。
でもね、翌朝になったらちゃんとエリィの望む外見に生まれ変わってたの!
やっぱり持つなら上辺だけの友達より魔王軍の友達よね。
あんまり他の人には教えたくないんだけどね。あなただけ特別!
条件はそれだけだったかって?そうね、それだけ。簡単なんだから!
そういえばその魔王軍の人が言ってたな。
「願いを叶える代わりに、お前の大切な何かを貰い受ける」って。
でも何も変わった感じがしないもの。優しいわ~、魔王軍って。
エリィの大切なもの・・・?
生きてるし、エリィは可愛くなったし。これ以上大切なものなんてある?
あなたにもその魔王軍の人を紹介したげるから、一緒に行こうよ!
・・・ロゼ?ロゼに最後に会ったのは尾行してたのを見つけたときだよ。
ふん、エリィが怒ったからね。しばらくは顔を合わせたくないんでしょ。
幼馴染なんて言ってもそんなもんだよ。ただ一緒にいた期間が長いだけ。
小さい頃はね、ロゼなんかよりエリィのほうがず~っとクラスの人気者だったんだよ?
何、その顔!信じてないでしょ!
ロゼなんかね、エリィが一緒にいてあげなかったら何にもできない子だったんだよ!?
ロゼと他の子が仲良くなるように、エリィが一生懸命お膳立てしたりしてたんだからね。
ロゼはもっとエリィに感謝すべきなのよ!
それなのにロゼが可愛いからっていつからかみんな「ロゼ、ロゼ」ばっかり言うようになって・・・
ふふふ、でもエリィが可愛くなったから、これでみんなからバカにされずに済むわ。ロゼにも!
確かにロゼは人気者になってからもエリィとずっと一緒にいてくれた。
ロゼがエリィとずっと一緒にいた理由を知ってる?
ロゼはね、自分の可愛さを引き立たせるために、可愛くないエリィと一緒にいたんだよ。
証拠・・・?そんなものあるわけないじゃん。
でもホントなんだから!エリィの被害妄想なんかじゃないもん!
魔王軍の人にもロゼの話をしたらね、「それはロゼが悪い」って言ってくれたもん!
最後に別れてからロゼから連絡が来てないかって?
謝りに行くって言ってたの?ロゼが?
ふん!口ばっかだよ!ロゼから連絡なんか来てないもん!
・・・またロゼの話!?もういいよ!何でみんなロゼの話ばっかするの!?
エリィを見てよ!こんなに可愛くなったんだよ!?
え、ロゼが消えた・・・?エリィと会った後に?
・・・え、ちょっと待って。ナニナニナニナニ。ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ・・・
まさかエリィの大切な何かって・・・ロゼのこと・・・?
違うもん!確かにロゼと別れた後にエリィはこの外見を手に入れたけど―
これは魔王軍を王都に入れたご褒美だって!
ロゼはきっと友だちと遊んでるんだよ!エリィは関係ないよ!せっかく可愛くなったのに!!
なんでなんでなんで!?ありえないよ!魔王軍にはさんざんロゼの悪口を言ってたのに!
なんで自分でも気づいていなかったのに、エリィにとってロゼが一番大切だって分かったの!?
・・・エリィのせいでロゼがいなくなったの・・・?ヤだよ・・・
もうロゼに会えないの?あの笑顔を見れないの?あの明るい声で私を勇気づけてくれないの?
ロゼはいつも明るくて・・・人の悪口を言ってるのを聞いたことがないし・・・
ちょっとおっちょこちょいなところもあるけど、ロゼを嫌いだなんて言う人に会ったことがないし・・・
何より可愛いし・・・誰よりもエリィに優しくて、エリィのことを分かってるし・・・
でもロゼのことを一番理解しているのだってエリィなんだから!
お願い、ロゼを助けて!エリィも一緒に行くから!魔王軍に会える場所を知ってるの!
行って魔王軍の人にエリィの外見を元に戻してもらうから!
そしたらきっとロゼも戻ってくるでしょ!?
これを持っていけば、通行証代わりになって彼に会えるはず!
あぁ・・・エリィにとって大切なのはロゼだったんだ!!
【第七章へ続く】
エリィ IRL
キャー!エリィ!
アイタタタタ・・・
くしゃみで外に放り出されちゃった・・・
か・・・
か?
かわいい!!
な、何なんですか、急に!?
大丈夫か!?君、怪我はないか!?
だ、大丈夫です。大丈夫ですので、手を離して・・・
うーむ、かわいいな・・・うちの道場にいればこの子目当てで門下生が増えることは間違いないな。
自分は薙刀術師範の安曇だ。君の名は?
エ、エリィです・・・ロゼの幼馴染の。
あ、○○○(プレイヤーの名前が入る)さん・・・4周年のパーティーでお会いしましたね。
む!?こんなところにかすり傷が!
え?あぁ、さっきあのモンスターの中から放り出されたときに・・・
バイキンが入ったらどうするんだ!
きゃーー!何をするんですか!?
あぁ、こっちにも傷が!手当をしないと!
包帯でぐるぐる巻きにしないでください!
ロゼ!助けて、ロゼ!
あははは!アラーニャったら!そんな噂、絶対ウソなんですの!
ホットだって!実際に見たって人から聞いたんだから!
ロゼ!アラーニャ!助けて!
マーリンはただのフクロうさぎではないんですのよ?
魔王軍を撃退した騎士なんですの!
ホントだって!マーリンが暴走した箒に引きずられてたんだって!
フクロが破れて、中の人が見えてたんだって!
マーリンはフクロうさぎなんですの!中の人なんかいないんですの!
ロゼは知らないんだ?あれはフクロをかぶった普通の人だもん!
な、なんてことを言うんですの、アラーニャ!言っていいことと悪いことがあるんですのよ!?
ロゼったらお子ちゃまだね。
キーーー!!
ダメだ・・・ロゼは魔王軍に取り込まれて精神が錯乱しちゃってる・・・
いや、あの炉是というダメ弟子は取り込まれる前からあんな調子だったぞ。
そうだ!炉是の代わりにこの新弟子を連れて帰ることにしよう。
え、し、新弟子!?私が!?い、嫌です!
元新弟子の○○○(プレイヤーの名前が入る)!包帯を引っ張ってこの新弟子を連れて帰るぞ!
広告の一番目立つところにエリィの写真を載せることにしよう。
ロゼーー!
アハハハハ!アラーニャったらこの中でも噂話を集めるんですの?
全然聞いてない・・・
何だ、○○○(プレイヤーの名前が入る)?炉是を置いては帰れないだと?
もはや自分は炉是なぞどうでもいいのだが・・・
しかし魔王軍を放置して被害が出ても困るな・・・仕方あるまい。
エリィ。師範の薙刀術の腕前をとくと見ておくが良い。
何しろ自分はおぎゃあと泣いて生まれた次の瞬間には薙刀を―
や、やめてください。今あの魔王軍を倒したら、中にいるロゼやアラーニャがどうなるか・・・
む、確かに・・・それならどうすればよいのだ。
自分の意志で出てくることは可能なのか?
分からないです・・・でも強い意志があればもしかすると・・・
炉是を外に釣り出せそうなものは何か知らないか。○○○(プレイヤーの名前が入る)
何?唐揚げセンパイ・・・?誰だ、そのふざけた名前は。
何だ。唐揚げセンパイとはマリーヌが作る唐揚げのことなのか。
よし、じゃあマーリンに連絡してひとっ飛び配達してもらおう。
あの・・・私の包帯を解いてもらえませんか・・・?
だめだ。道場に連れて帰るまではそのままだ。今でもゆるいくらいだ。
そ、そんなぁ・・・
む、ギルドが連絡した仲間が来たようだな。
え・・・?あっちから来るのがギルドのお仲間ですか・・・?
正確に言うとあれはギルド仲間ではなく、ギルドが連絡した魔王軍だ。
えぇ!?魔王軍!?
慌てるな。今回はあのはぐれ魔王軍を引き取ってもらうために休戦協定を結んでいる。
○○○(プレイヤーの名前が入る)も相手を刺激するなよ。
何?相手が休戦協定を破って襲ってくることはないのか、だと?
ふむ・・・そこまでは頭が回っていなかったな。
まぁ、そのときはこの明鏡清流刀が黙ってはいないだろう。
えぇぇぇ・・・帰ってもいいですか?
だめだ。君には華麗なる薙刀の技を間近で見ていてほしい。
そんなぁ・・・○○○(プレイヤーの名前が入る)さん。後ろに隠れててもいいですか・・・?
ありがとうございます!お礼にこれを差し上げますね。
来るぞ・・・気を抜くなよ。
アハハハハハハハ!!
【第七章へ続く】
Nite nite エリィ
・・・何をしてるの。こんなところで。
私はエリィ。合ったね。君とは。4周年パーティーで。
違うの。ここは。私の夢の中ではないの。
ここは第1の夢の世界。夢の中でも魔王軍の影響力が強い場所。
私がね。詳しいのはね。好きだから。眠るのが。
夢の世界が好き。現実より。というか。現実が嫌い。夢の世界より。
だからね。暗くしておくの。たまに。目にも包帯を巻いて。いつでも眠れるように。
だからね。怪我をしてるわけではないの。この包帯は。
だからね。やめて。心配してるふりは。
後はね。見たくないから。見えないでしょ。包帯を巻けば。
見たくないもの・・・そうね。君かな。例えば。
何で君を嫌うかって。別に。嫌いなの。みんな。自分だけ特別と思わないで。
ロゼもかって?嫌いだよ。もちろん。
どこがって。そりゃ。好かれてるところかな。みんなから。
嫌いな人がいないから。ロゼを。だから嫌うの。私が。
分かったから消えて。ここから。邪魔なの。
探してるの。第2の夢の世界を。私はね。ついてこないで。君は。
必要ない。目的を。君に教える。
しつこいね。君。何なの。
『ロゼを助ける約束をした』って・・・君が?本当に?
君を。頼る。ロゼが・・・信じられないな。
○○○(プレイヤーの名前が入る)・・・排除する。
理由。ロゼの周りを探る。怪しいやつ。
よく言えるね。その程度の腕で、ロゼを救うなんて。
さよなら。君とは。ここで。
彷徨えばいい。君は。永遠に。夢の中で。
・・・君が持ってるそれは。ロゼから。まさか。預かった?
そう・・・約束したんだ。じゃあ。君も。本当に。
ロゼは覚えてない。多分。私との約束を。
約束とも言えない。私とロゼの。幼いころに交わした。遠い記憶・・・
異形のものに囚われていた?ロゼが?
急がないと・・・夢を操る魔王軍がいる。第2の夢の世界に。
彼らが関わっている。はず。今回の件は。
だから。会いに行く。ロゼを解放してもらうため。
解放してくれないかもしれない。もちろん。魔王軍のことだもの。
そのときは戦うの。奪うの。ロゼを。力ずくで。私と。君とで。
なぜ私が嫌いなロゼを解放しようとするのか?
嫌いなわけがない。私が。ロゼを。幼馴染なのに。
嘘をついたの。さっきは。信用できなかったから。君が。
でも君は嫌い。これは本当。要素がない。好きになる。
お人好しだから。ロゼは。悪いやつも信じてしまう。
前回の魔王軍侵略時・・・幼いロゼは騙された。魔王軍の一部隊の司令官に。
その結果、ロゼのお婆ちゃんの容態が急変した。間接的にだけど。
ロゼはそれ以来自分を責めている。ずっと。今も。
それでもロゼは相手を信じることを止めないの。
だから。私が疑うの。代わりに。ロゼに近寄る人を。
・・・行くよ。じゃあ。○○○(プレイヤーの名前が入る)。一緒に。第2の夢の世界へ。ロゼを助けに。
第2の夢の世界への行き方?分からない。探すの。今から。君が。
・・・様子が変わった。周りの景色も。空気も。緊張感も。
これが。第2の夢の世界?誰かに誘われてるみたい。まるで。
分からない。罠なのか。罠じゃないのか。
気をつけて。穴が開いている。いたるところに。この奈落が虚無の世界。だと思う。
ここに落ちれば。二度と戻れないという。
でも。そこにいるらしいの。私たちの探してる相手が。その奈落に。
これはあくまで噂。虚無の世界に魔王軍がいるというのは。アラーニャの。だから違うかもしれない。
違う可能性が高い。むしろ。でもこれしか情報がない。今は。
穴がたくさんある。その中にあるはず。青白く光る穴が。
あった・・・青白い。この下に魔王軍がいる。らしい。
待って。あそこにもある。青白い・・・正解はどっちの穴なの?
分からない。でも時間がない・・・私が飛び降りる。こっちの穴に。
もし。30分経っても私から連絡がなければ。君はあっちの穴に飛び込んで。
・・・そのときは、私の大切なロゼをよろしく。君に託す。君に。
それでも良い?君は。約束したから、というだけの理由で。飛び込める?
分からない。戻る方法があるかどうかは。噂では。方法はない。
もし魔王軍と交渉できるなら。または倒せるなら。ロゼも。我々も。夢から戻れる。はず。
でも・・・怖い。戻れないのは。眠るのは好きだけど。一生眠ったままなんて。
もうないと思ってた。見たいものなんか。
でもまだいっぱいあった。今考えると。見たいものが。
春の桜が流れる川。夏の日焼けの跡。秋の雲のかかった月。冬の海に降る雪。
あぁ。何で見ておかなかったんだろう。もっと。ちゃんと。
でも。行かなきゃ。怖い。私が。助けるの。怖い。ロゼを。私が。怖い。怖い。怖い!
・・・先に飛び込むって?君が?
ありがとう。でも大丈夫。私が先に飛ぶから。
君を好きになったわけではない。けど。
君にこれを。私の信頼の証。
それじゃあ。また会いましょう。現実の世界で。
<エリィが奈落に飛び込んだ!>
<・・・30分が経過した>
<○○○(プレイヤーの名前が入る)が別の奈落に飛び込んだ!>
【第七章へ続く】
☆編者者注☆
唐揚げセンパイ曰くw/o uは、with out youの略だそうです。
gamerchは、/を入れるとページが作れない。
with out youを入れると完全にネタバレする。(その為、運営はw/o uにしたと思います)
以上の理由の為、w/o uを省いてます。許してください!マリーヌが何でもしますから!
(with you withoutの可能性もあるかな?)