無邪気な魔女フロッシュ
2/9~2/22
無邪気な魔女フロッシュ
国王サマとお妃サマに赤ちゃんが生まれたッテ!嬉しいナァッ!嬉しいナァッ!
ふふっ・・・フロッシュもきっとお城にお呼ばれするヨネ?
うーん、お城にどんなお祝いを持っていこうカナ?悩むナァ・・・。
お外に出るのはあんまり好きじゃないけど、お祝いのためならがんばれるヨ!
生まれた赤ちゃんは女の子なんだッテ。きっと素敵な王女サマになるネ。
国王サマとお妃サマはフロッシュみたいな冴えない魔女にも優しくしてくれたんダ。
キミも一緒にお祝いパーティーに来る?フロッシュが頼めばきっと入れてもらえるヨ。
贈り物、ガマガエルのあぶらを使った妙薬は外せないヨネ。なんにでも良く効くんだヨ。
珍しい薬草を使って出汁をとったスープも一緒に持っていこうカナ?
国王サマたち、喜んでくれるとイイナ~ケロケロッ!想像するだけで笑顔になっちゃうヨ!
ねぇ、薬草を取りに行くのについて来てくれなイ?お礼に特製薬をプレゼントするからサ。
あ!見て見て!お城に大きな旗が出てるヨ!王女サマが生まれたお祝いの旗ダ。
ヒラヒラして綺麗だネ・・・王女サマが将来着るドレスもあんなふうにヒラヒラ綺麗なのカナ。
フロッシュはずっと森の奥の家にひとりきりだったから、あんまり友達いないんダ。
だからキミが訪ねてきてくれたときは、本当に嬉しかったヨ。
カエルを使った魔術や薬作りなら、フロッシュの右に出るものはいないんダ。信用してくれていいヨ。
さて、材料の薬草は集まったシ、そろそろ薬とスープを作り始めようカナ。
キミも手伝ってくれるノ?ありがとウ!
この大鍋は母サンから受け継いだものなんダ。母サンはおばあチャンがら受け継いだらしいヨ。
年季が入った大鍋はその分、魔力もたっぷりと溜め込まれているから、とっても使い勝手がいいんダ。
大鍋に採ってきた薬草とカエルの卵を入れて・・・フフフ、いい出汁がとれそうダヨ。
鍋が煮えるまで、お茶でも飲んで待っていようカ。
え?このお茶には何が入っているのッテ?心配しなくても、普通のハーブティーダヨ?
そんなにおっかなびっくり飲まなくても平気だヨ。あ、ケーキも作ったからいかガ?
フロッシュの魔術はカエルを使うから、それが周りのみんなには気持ちが悪く見えるみたいなんダ。カエルって可愛いと思うんだけどナ。
キミもフロッシュのことを気持ち悪いと思う・・・?フフッ、そう言ってもらえると嬉しいヨ。ありがとウ!
ソロソロ煮えたかな?鍋を確認してみよウ。
よし、いい感じだヨ。これを何度かこして、出汁を凝縮するんダ。飲めばたちまち元気になる薬膳スープダヨ。
ガマガエルのあぶらも・・・フフッ!たくさんとれているネ。可愛い瓶に入れてラッピングしよウ!
リボンはどの色がいいカナ・・・贈り物なんてしたことないカラ、迷っちゃうヨ・・・。
こんな感じでいいカナ?フフッ!招待状・・・ソロソロ届くカナ?
お城の人タチ、まだ忙しいのカナ・・・もう王女サマが生まれてから結構経つケド、お祝いの知らせがこないヨ。
ちょっとだけ・・・様子を見に行ってもいいカナ?でも、外はちょっぴりこわいんダ・・・。
キミもついてきてくれるノ?ありがとウ!心強いヨ。
あれ・・・おかしいナ。お城の上にお祝いの花火があがっているヨ。
国の魔法使いタチが、みんなお城へ向かっているのが見えル・・・。
もしかして、家に帰ったら招待状が届いているカモ!
急いで帰ろウ!お祝いに遅れたら申し訳ないからネ・・・!
あれ・・・どうしてだろウ?招待状、届いてないみたイ。
もうちょっと待ったらくるカナ?ワクワクする時間が増えたと思って待とウ。
国王サマもお妃サマも、フロッシュにとても親切だったから、恩返しがしたいんダ。
フロッシュ、がんばって贈り物を用意したヨ。綺麗なリボンも結んだヨ!
喜んでもらえるといいナ。国王サマタチの笑顔を見たら、疲れもきっと吹っ飛ぶヨ!
フロッシュのガマのあぶらはよぉく効くんだカラ。
あっ、またお城のほうで花火があがったネ。
招待状・・・まだ届かないのカナ。早く届かないと、お祝いに遅れちゃうヨ。
もしかして、途中で川や湖の中に招待状、落っことしちゃったのカナ?
なんてネ。きっとちょっぴり遅れているだけだヨネ。
まだカナ、まだカナ・・・ソワソワ。
待ちきれないよ!ケロケロッ!
苦悩の魔女フロッシュ
あれ?使い魔、どうしたノ?えっ・・・もうみんな集まって、お祝いが始まっている・・・だッテ?
フロッシュだけが、王女サマが生まれたお祝いの宴に呼ばれなかったの・・・?
やっぱりお家に引きこもって魔術の研究ばかりしているカラ、印象が良くなかったのカナ?
フロッシュにはもう、何もわかならい!どうしてこんなひどいことをするノ!?
ああ、怒りに体が呑み込まれていくようダ!
このまま家に閉じこもってなんて、いられなイ・・・!
そうだ、呪いを作ろう。フロッシュにひどいことをした国王サマとお妃サマが悲しむような呪いヲ!
どんな呪いがいいだろウ?フフフ、考えるだけで口元がニヤケてしまうヨ。
早速、呪いに使う薬草を家中から集めないとネ!忙しくなるゾ。
心配してくれるのかイ?ありがとウ。でも使い魔がそんな心配することないサ、フロッシュは大丈夫ダヨ。
サテサテ、仕上げはあの薬草を使っテ・・・あれ?なくなってル!?
薬草、採りに行かないと・・・使い魔は留守番してテ。
はぁ・・・うまくいかないことばかりダヨ。
昔、フロッシュがこの国へ来たばかりの頃は、国王サマとお妃サマ、とても親切だっタ。
どうしてみんな変わってしまったんだろウ?・・・それとも、フロッシュが変わってしまったのカナ?
あれ?キミは・・・ずっとフロッシュのこと見てたノ?その膝の傷はどうしたのサ?
フロッシュ、今薬草を探していたんダ。とても珍しい薬草だから、なかなか見つからなくテ。
ついでにキミの傷に効く薬も作ってやろうカ?薬のことならお安い御用サ。
何に使うのかっテ?フフッ呪いをかけるためサ!国王サマとお妃サマに、フロッシュは裏切られタ。だから復讐してやるのサ!
復讐は何も生まない・・・?そ、そんなこと・・・わかってるヨ。
でも・・・だとしてモ!フロッシュはこの胸の中にある苦しみをどうにかしたいんダ!
あれ?どうしてだろウ・・・目から勝手に涙が・・・止まらないヨ。
そうだ、キミの膝にあったカスリ傷、フロッシュの涙で癒してあげようカ?
フロッシュの涙には治癒の力があるのサ。この程度のスリ傷ならあっという間に治っちゃうヨ。
ほら・・・もう痕すら残っていないだろウ?
キミを助けることができて、よかったヨ。ずっと心が暗闇の中にあって、苦しかったカラ。
お礼なんていいヨ、怪我をしている誰かがいたら放っておけないだロ。・・・フフッ、どういたしましテ。
・・・うん、キミがそこまで言うなら、考え直してみようカナ。
ありがとウ。もう怪我しないように気をつけて帰るんだヨ。
あれ、この音は・・・一体、どこから聴こえるんだろウ?
素敵な音楽と楽しげな歓声が響いてくル。
ああ、お城のほうから聴こえてきていたのカ。みんなで楽しくお祝いしてるんだネ・・・。
やっぱりすべての闇を晴らすことはできないみたいダ。
復讐・・・するしかないみたいダネ。
あっ!ちょうどいいタイミングで、薬草が見つかったヨ。持って帰って、早く呪いを完成させようカ。
ただいま使い魔。無事に薬草は見つかったヨ。ケロケロッ!
さぁ、呪いを完成させよう。大鍋をかき回して・・・煮立たせて・・・仕上げに薬草をふりかけルッ!
紫から緑に色が変わったらできあがりダ・・・!ケロケロッ!
使い魔ヨ!ソロソロお城へ向かおうカ!
ケロケロッ!いつ見ても使い魔が大カエルに姿を変えるのは迫力がある光景だネ。
さぁ、大ジャンプでお城までひとっ飛びだヨ!ケロケロッ!
ふゥ・・・無事に到着したネ。使い魔、お疲れサマ。
こんにちは、お城のみなサン!何かの手違いで、フロッシュにだけ招待状がきていなかったようだケド・・・?
ふぅん、晩餐会のための金のお皿が、1枚足りなかったんダ?もしそれが本当だとしても、フロッシュの悲しみはなくならなイ!
王女サマは可哀想だけど・・・フロッシュから誕生の祝いに、特別な呪いを贈らせてもらウ。
よく聞くがいイ!王女サマは15歳になると、紡ぎ車の錘が指に刺さって死ぬだろウ!
ケロケロッ!今更あやまったって、もう遅いサ。もう呪いは発動してしまったヨ。
15年後が本当に楽しみだネ!今度は王女サマのお葬式の日にでも来るとするヨ・・・。
サヨウナラ、国王サマ!サヨウナラ、お妃サマ!サヨウナラ・・・王女サマ。
・・・あれ?キミは、さっき森の中で会ッタ・・・。
キミにそんな顔をさせてしまって、すまないと思っているヨ。
でもフロッシュの怒りは、こうでもしない限りなくならなかッタ。
元々ひとりぼっちで生きてきたんダ。疎まれるのは慣れているヨ。
冴えない魔女なのに、フロッシュは自分に期待をしすぎたんだネ・・・。
復讐って、もっとスッキリするものだと思ってたのにナ。ケロケロッ・・・。
復讐の魔女フロッシュ
王女サマは15歳になると、紡ぎ車の錘が指に刺さって死ぬだろウ!・・・あの日、フロッシュはそう言って呪いをかけタ。
あれからもう何年経っただろウ?呪いをかけたあとフロッシュはすぐ逃げ帰ったケド、国王サマはたいそうお怒りになったそうダ。
しばらくして、使い魔に城の様子を見に行かせたら、国中の糸車を燃やし尽くすようにと命令を出していタ。
はぁ。楽しかった日々は、もう戻らなイ。呪いをかけたあの日カラ、フロッシュの心はずっと雨模様なんダ。
あれ、使い魔のカエル・・・どうしたノ?何があったノ?
えっ!?森の中で王女サマを見つけた、だッテ!?まさか、そんなはずハ・・・。
とにかく、自分の目で確かめてみるしかないネ。行こうカ。
ふぅ・・ようやく到着しタ。こんな森の奥のほうに、あんな家があるなんテ。気づかなかったヨ。
やっぱり・・・魔法で結界が張ってあるネ。ということは、王女サマと一緒に国の魔法使いが暮らしているのカ?
あっ、隠れよう・・・!誰かがこっちへ来たヨ!
あれは・・・王女サマ?美しく成長したんだネ・・・本当に、とても綺麗ダ・・・。
魔法使いたちも一緒にいル。フロッシュの呪いに対抗するために、身分を捨てさせた上で、王女を森に隠したんだネ。
ケロケロッ!残念だったネ!迂闊な魔法使いタチ・・・フロッシュは今キミタチのことを見つけたヨ。
王女サマ・・・本当なら綺麗なドレスに身を包んで、あんなふうに水くみや炊事なんてすることもなかっただろうニ。
彼女は自分が王女サマであることを知らないんダ。自分を森の奥に住むただの娘だと思ってル。
なんて哀れなことだろウ・・・すべてフロッシュの呪いのせいだネ。
ちょっとだけ・・・カエルに化けて、王女サマに近づいてみようカ。本当に、ちょっとだけダヨ。
ケロケロッ!ケロケロッ!フフ、完璧な化け術・・・これなら絶対にバレないサ。
わぁっ!キツネが来た・・・!フロッシュは本物のカエルじゃないヨ!こっちへ来るナ!
あれっ、王女サマ・・・キツネを追い払って、フロッシュを助けてくれたノ?
本当に心が優しくて美しい人に育ったんだネ。
身分なんてなくても、王女サマは生まれた瞬間に神から選ばれタ、素晴らしい存在だったんダ。
フロッシュは本当にひどいことをしてしまッタ・・・。
どうやって償えばいいんだろウ?ワカラナイ・・・ワカラナイヨ・・・!
えっ?『私は森の奥で暮らしていて友達がいないから、カエルさんと友達になりたいの』って・・・。
フロッシュは王女サマにそんなふうに言ってもらう資格はないんダ。
ケロケロッ!サヨウナラ!
王女サマ、突然フロッシュが手の上から逃げ出したから、びっくりしてる・・・ゴメンナサイ。
うぅっ・・・フロッシュはこれからどうすればいいノ?
どうしてあんなことをしてしまったんだろウ?悲しくても、呪いなんてかけるべきじゃなかッタ。
あれ、キミは・・・お客サン?ガマガエルのあぶらが欲しいんだネ?
元気がないように見えル?ケロケロッ・・・ちょっとね、昔の自分の行動を後悔していたところなのサ。
ウジウジしていても過去は変えられない、か・・・そうだよネ。
これからまた未来は選択できるんだカラ、まだフロッシュの未来は変えられるってことカナ?
ありがとウ!話を聞いてもらって、少しだけ楽になった気がすルよ。
後悔しない選択・・・今度コソ、フロッシュは間違えたりしなイ。
今日は王女サマの15歳の誕生日ダ。呪いが発動する日でもあル・・・。
王女サマ、まるで夢遊病みたいになって、家から出てきたヨ。お城のほうへ向かうみたいダ。
呪いをかけたフロッシュにも、それがどんな形で叶うのかまではわからないんダ。
ああ、お城の秘密の抜け穴に王女サマが入っていくヨ・・・追いかけよウ!
1つだけ残されていた糸車だ!危なイッ!王女サマー!
この姿見覚えがあるでしょウ!随分前に王女サマの手から逃げ出したカエルだヨ!
今度こそフロッシュは逃げませン!もしも許されるなら、今度こそ王女サマと友達になりたイ・・・!
王女サマ、目を覚まして!お願いダヨ・・・!
ダメダ、呪いの力が強くなっていテ、フロッシュには止められない・・・ウゥッ。
フロッシュがあんな呪いをかけちゃったせいで王女サマはこんな目に・・・なんてことをしてしまったんだろウ。
あっ・・・フロッシュの涙が王女サマにかかって・・・呪いが・・・解け始めた?
治癒の効果があるとは知っていたケド、フロッシュの涙は呪いにも効くのカ!?
よかった!王女サマの意識が戻ったゾ!
あ、あの・・・覚えていますカ?あのときのカエルデス。実はカエルじゃなくて魔女なんデス。
フロッシュは悪い魔女デス・・・王女サマに呪いをかけましタ。許されることじゃないハズ・・・どんな罰でも受けマス。
えっ・・・フロッシュを許してくれるノ・・・?
ケロッ・・・あ、ありがとうございマス・・・!
これからずっと、フロッシュはアナタのために力を尽くしマス・・・ケロケロッ!