気性なドジっ子ミシュティ
2/14~2/27
あらすじ
魔王軍が何やら悪だくみをしているんですの。
魔王軍のエリートにもなると何だって演じられらしいんですのよ。
たとえそれがドジっ子だとしても…?
気性なドジっ子ミシュティ
お初にお目にかかります。ミシュティと申します。アッテンボロー様の部下として手足として、力を発揮させていただきます。
ミシュティ、か……ふん、覚えておこう。俺の部下になるからには相当有能なのだろうな?
もちろんです。それをすぐに証明してみせますよ。早速ですが、○○○(プレイヤーの名前が入る)への対策を強化すべきと進言させていただきます。
なんだと?
アッテンボロー様の計画はいつも○○○(プレイヤーの名前が入る)に阻まれています。○○○(プレイヤーの名前が入る)を排除しなければ、計画はまた挫折することでしょう。
……俺に意見するとは、随分と自信がある新人のようだな?
申し訳ありません。ですが、アッテンボロー様のますますのご活躍のためには……。
クククッ、いいだろう。気に入ったぞ。お前の考えを話して聞かせろ。
ありがとうございます……!
敵戦力がどの程度なのか、我々は把握する必要があるのではないでしょうか。
ほう?
○○○(プレイヤーの名前が入る)が火属性の武器を使うなら、水属性の武器を得意とする者を差し向けることが可能となり、こちらに有利になるでしょう。
100人仲間がいるというのなら、こちらは500人の戦闘員を事前に用意し、圧倒すればいいのです。
ヤツは手強い。そう簡単に調べがつくとは思えんが?
そこは私にお任せください。完璧に調べ上げてみせます!
お前が?……本当にできるのか?
私が失敗すると?……フフッ、ありえません!我が一族には高貴かつ有能な血が流れているのです!
このミシュティ、我が一族、そしてアッテンボロー様の名のもとに、必ずや調査を成功させてみせます!
ふん……では口先だけでないことを俺に証明してみせるんだな。
ええ、もちろんですとも!私の辞書には成功の文字しかないのだ!……っと、じゃなかった。ないのです!
では早速、行ってきます!
あっ、おい……!クソッ、もう行っちまいやがった!……ん?これは……。
……さて、あの騎士がよく立ち寄るという場所に来てみたが……。
この店は資料によれば、ケーキ屋兼喫茶店だったな。フフフ、確かアルバイトを募集していたはずだ。
ヤツは行きつけの店なら気を抜くだろう。その隙をつき、店員として近づく!ああ、完璧な作戦だ!
そのためにはまず下地を作ることだ。店員として潜伏するには、まずアルバイトに応募せねば……。
え、アルバイト?……ええと、今は特に募集してませんけど……?
なっ、なにぃっ!?……どういうことだ?調べによれば、募集しているはずなのに!
本当に募集していないのですか!?ちょっとした仕事でもいいのですが!
そ、そんなにうちで働きたいのかい?凄い剣幕だ……うーん、じゃあ長期休暇を取っている子の代わりでよければ。
はい、それで構いません!
その子が戻ってきたら辞めてもらう形になるけど、いいかな?
はい!ありがとうございます!……フフフ、やったぞ。店に潜り込むことに成功した!
ああ、それともうひとつ条件があるんだけど……。
どんな条件だって問題ありません!私、がんばりますので……!
長期休暇を取っている子はうちの店では「ドジっ子」属性だったんだ。だから君もそれでよろしくね。
えっ?ぞ、属性……ですか?
そうそう、つまり君も今日から「ドジっ子」として働いてもらうってことだよ。
ドジっ子……!?
ドジっ子ってお客さんから一定の需要があるんだよね。うちには他にドジっ子いないし、ちょうどよかったよ!
思わぬ方向に話が進んでいる……さすがに有能な私にドジっ子は無理なのではないか?辞退すべきか……。
じゃあすぐにでも働いてもうらおうかな!はいコレ制服。バックヤードで着替えてきてね!
あっ!う、ううっ……何も言えないうちに制服を渡されてしまった。仕方ない、タイミングを見てやはり無理だったと断ろう。
ミシュティちゃん、ケーキセットを7番テーブルさんにお願いね!
は、はいぃ~!わっ、わわわぁっ!?きゃあっ!
わぁっ!?だ、大丈夫……?って、パンツが見えそうになってるよ!?
……へ?……!?きゃあああっ!(くっ、私としたことがぁっ!)
へぇ、いいじゃない?ドジっ子っぽくなかったから、ダメそうだったら辞めてもらうつもりだったけど……これなら合格だね!
……はぁ!?
ただし!言葉遣いが全然ドジっ子っぼくないね!言葉遣いの特訓しなくちゃ!
ぇぇ~!?
……もっと首を傾けて!もっとあざとく!
はわわわっ!いっけな~い!またやってしまったのだぁ!(な、なぜ私がこんなことを!?)
その調子!今の凄くよかったよ!
でへへ~ほめられたのだぁ!(屈辱だぁぁぁっ!)
根性のドジっ子ミシュティ
……あいつ、ミシュティは上手くやっているのか?
この書類を見る限り、ミシュティのやつ……もしかして……。
いや、考え過ぎか。あんなに自信満々で出ていったんだからな。そんなはずはない。部下を信じることも上司の勤めってやつだよな?
きゃあぁっ……!しゅ、しゅみませぇぇん!
あはは、いいんだよお茶をこぼすくらい。ドジっ子はそうでなくちゃね!
でへへ~!ありがとうございますぅ!(クッ、屈辱だ!)
(私はドジっ子ではなく、ドジっ子を演じているのだ、私は演じているのだ……!)
(私は魔王軍のエリートだ!!私は魔王軍のエリートだ!私は魔王軍のエリートだ私は……!)
ふふふっ。ミシュティちゃん、まだ入ったばかりなのにあんなにドジっ子を炸裂させて……お客さんとも馴染めているようだし、いい感じだな。
……はぁ。アルバイトとしてこの店に潜入してから数日経つが……○○○(プレイヤーの名前が入る)のやつ、全然来ないじゃないか!
はぁ~。やっぱりこのお店の紅茶はとっても美味しいですの!
あの能天気そうな女、しょっちゅう見かけるな……くそっ!私もさっさと作戦を成功させて、優雅に紅茶を飲んでやるのだっ!
ミシュティちゃん!紅茶のおかわりもらえる?
は、はぁい!今すぐに……きゃあっ!?
だ、大丈夫!?紅茶をこんなに見事にぶちまけられるなんて……ミシュティちゃんって本当に最高のドジっ子だね!
あははは……ありがとうございますぅ……。(やめろぉ!私はドジっ子なんかじゃないぃ!)
あれ?フレアちゃん!?どうしたの。まだお休み期間のはずじゃ……。
お母さんのお見舞いのためにお休みいただいたんですけど、案外元気だったので早めに戻ってきちゃいましたぁ!
店長、この子は……?
あ、ああ。フレアちゃんだよ。長期休暇を取っていた、うちの店の元祖ドジっ子ちゃん。
えっ!?じゃ、じゃあ……。
本当はフレアちゃんが戻ってきたらミシュティちゃんには抜けてもらうつもりだったんだけど……。
ミシュティちゃんのドジっ子、お客さんに凄く好評だし、ファンもついてきてるからね。しばらくの間は引き続き働いてもらえないかな?
わぁい!ドジっ子おそろいだね!うふふ、よろしくねミシュティちゃん。
よ……よろしく……。
おっ!ドジっ子が2人になったんだね。期待しているよ!
きゃっ!……やだぁ~ごめんなさい!よろけてお客さんにぶつかっちゃうなんてぇ!フレアのドジドジ!
あはは!フレアちゃんならいつでも大歓迎さ!
わっ、わわわ!あぶなぁい!!!
え?……わぁぁっ!?
さ、流石ミシュティちゃん……まさか転んでお客さんのズボンを脱がせちゃうとは!
か、感心しないでくださぁい!(またドジってしまった!!!)
フン……それくらいのドジ、普通よ。調子に乗らないでよねぇ!……どうせ演じてるくせに。
えっ?それってどういう意味……わわわっ!?きゃああっ!
ああっ!今度はお客さんの顔面にパイが!な、何か拭くもの持ってこないと……!
ひぃぃっ!ミシュティちゃんに近づくとヤバイぞぉ!あれはドジの範囲を超えてる!
今度は一体何をやらかすんだ!気になるけど、ちょっとこわいぞっ!
ふぇぇっ……ごめんなさぁぁぁい!
あの子……どうせ全部演技だと思ってたけど、耳まで真っ赤になってる……もしかして、天然なの?
ううっ、普通に仕事をしたいのに……勝手にドジになってしまう……ふぇぇっ!
負けたわ……完敗よ。
フレアちゃん……?
ほら、手を出して。床に座り込んだままじゃお尻が冷えちゃう。仲直りの握手もしましょ?
(さっきまで好戦的だったのに、どういう風の吹き回しだ?)
あ、ありがとう……。(グィッ)
ちょ、ちょっとそんなに強く引っ張ら……あ痛っ!
イタタタ……ご、ごめんなさい!頭突きをするつもりでは……。
せっかく仲良くしてあげようと思ってたのに……。
この超ド級ドジっ子!!!
あいたっ!なんで叩くの~!?
天性のドジっ子ミシュティ
ミシュティのやつ……まだ連絡を寄越さない……クソが!この俺に心配をかけさせるなど!まったく良い身分だ!
だが……様子を見になど行けば、プライドの高いあいつは機嫌を損ねるだろう。それは面倒だ。
もう少しだけ……待ってみるか。
ケーキセット、パフェセット……以上でしめて5億ゴールドになります!
ご、5億ゥ!?
ちょっとちょっと!それ計算絶対間違ってるから!
ふぇ……?あっ、本当だ!ご、ごめんなさい!!!
……ミシュティちゃん。これ以上はもう、うちの店でも面倒見きれないよ……。
えっ?どういう意味ですか……?
最初はまだよかったけど、君のドジはどんどんエスカレートしていくから、君のカバーで他の業務が回らなくなってるんだ。
だから……悪いけど、クビってことで!
えええっ~!?そ、そんなぁ……!(まだ○○○が店に来ていないのだ!情報が全然掴めていないのにぃ!)
ごめんね~!お詫びにケーキの割引券あげるよ!それじゃあ、今までお疲れ様でした!
あっ、ちょっと待ってください!ああ……本当にクビになった、のか?エリートであるこの私が……!?
クソッ!これもすべて○○○(プレイヤーの名前が入る)がいっこうに姿を現さないせいだ!絶対に戦力を調べ尽くしてやるのだ!!!
あ、猫だ。
クククッ……能天気に野良猫と戯れているな……私に見張られているとも気づかず!
にゃーにゃー……ほら、餌をお食べ……。
ふむ、○○○(プレイヤーの名前が入る)は猫派ということか……戦力とは一見関係ないが、何かで役立つかもしれないから一応記録しておこう。
やぁ!こんなところにいたんだね。あれ、その猫さんは?
いつも見かける野良猫。いつか触りたいと思っていたんだけど、今日ついに触らせてもらえたよ。
うわぁ、いいなぁ!一緒に触ってもいい?
くぅっ……私が大変な思いをして見張っているというのに、呑気に楽しそうな顔をして……腹が立つ!
そういえば、ギルド仲間たちが探していたよ。武器について相談したいって。
ああ、そういえば相談されていたよ。攻撃力寄りの武器と魔力寄りの武器、どっちがいいかって……。
ムムッ!武器の話……これは役立つ情報の予感。
ふふっ……このまま後をつければ、簡単に○○○(プレイヤーの名前が入る)の戦力情報が手に入る……造作もなかった。
……。
○○○(プレイヤーの名前が入る)?どうかしたの?
いや、誰かに見られているような気がして……。
!?
えっ!?ま、まさか……。
……。
おばけ!?
……多分気のせいだよ。ギルド仲間たちの所へ行こうか。待たせたら悪いし。
はぁっ、はぁっ……緊張した……無駄にドキドキさせられて腹が立つ!○○○(プレイヤーの名前が入る)め、根こそぎ情報を持ち帰ってやるっ!
……それで、情報は手に入ったのか?
ええ、もちろんです!エリート一族である私に不可能はないのだ……コホン、じゃなかった。ないのです!
だが……お前の潜入した店は○○○(プレイヤーの名前が入る)の行きつけではなかったようだぞ?
えっ?それって、どういう……?
これを見てみろ。書類が入れ替わっていたらしい。お前が潜入したのはロゼという女の行きつけの店だ。
なっ、なんですって……!?ロゼ……あの能天気そうな女か!確かに何回も見かけたような……。
し、しかしですね!潜入調査は成功しませんでしたが、その後独自に○○○(プレイヤーの名前が入る)を尾行し、情報を得ることに成功したのです!
ほほう?……期待しているぞ。さっさと報告しろ。
はい!まずはですね……○○○(プレイヤーの名前が入る)は猫好きです!
……。
あ、あれ?反応が薄いですね……?それでは、とっておきの情報をお伝えするとしましょう!
この情報を得るために、私はとんでもない苦労を重ねたのですよ!なんせあの騎士、勘が妙に鋭くて……尾行に何度も気づかれそうになったのです!
○○○(プレイヤーの名前が入る)の使用武器と使用魔法、仲間の数を詳細に記載した資料がこちらです!さぁ、ごゆっくりご覧ください!
……。
まったく、あの騎士のやつ!パッとしない雰囲気のくせに、エリートであるミシュティの手を散々煩わせるなんて!
今回の調査結果を元にヤツを叩く際は、私が先頭に立ってヤツを追い詰めてみせましょう!
ドジっ子などという不名誉な属性を演じさせられた時間は、まったくもって無駄でした……ヤツに損害賠償を支払わせたいくらいです!
……アッテンボロー様?いかがなさって……
うるせえなああああああああああああああああ!お前はよおおおおおおお!
ひぃっ!?
お前はまんまとしてやられたんだよ!この情報は○○○(プレイヤーの名前が入る)がお前に調べられていることに気づいた上でわざと持ち帰らせたものだ!
今までの戦闘記録を見返せば、一目瞭然だ。ありえないブラフがいくつも紛れ込んでいる。
ちっとは骨のあるヤツが部下になったのかと一時でも喜んだ俺がバカだったぜ……ん?
っ……ひ、く……ひっく……うぅっ……うぐぐっ……。
はぁ?お前……泣いてるのかぁ?クソッ、面倒クセェなぁ……この程度で泣いてちゃ、魔王軍の仕事は務まらねぇぞ?
うぅっ、な、泣いて……ましぇぇぇん!
……ったく。おい、俺も少し言い過ぎた。……なぁ、立派な一族の名に恥じぬよう、魔王軍でもエリートとして活躍するんだろう?
なぁ、たい焼きは好きか?最近できたたいやき屋がうまかったからお前にも……。
ふぇっ……うっ……うぅ~……!
ああ、そうだ!○○○(プレイヤーの名前が入る)が猫好きなら、お前が猫のきぐるみを着て近づく作戦はどうだ?
……。
ようやく泣き止んだか……ほら、涙でぐしゃぐしゃの顔をこれで拭いておけ!
あ、ありがとうございま……きゃあっ!?
……おっと、本当にドジだなお前は。上司の目の前で転びかけるとは……怪我がなくてよかったな。
わ、わざとじゃないもんっ!アッテンボロー様のバカぁ~!
……あ?
はっ!しまった……アルバイトで特訓したドジっ子口調の名残がぁ~!