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甘えん坊のノエル

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5/29~6/12

第二回スペボスホワイトデー 2位記念イベント

前回→ノエルのお留守番


あらすじ

ノエルさん、お久しぶりなんですのよ!

全然変わってないんですのね!?

相変わらず一人でお留守番なんですのね…



甘えん坊のノエル

ノエルはおうちでパパとママを待っているの。ふたりとも忙しいから、ノエルがしっかりしなくちゃいけないの。

あれ?……んと、あなたは……ノエルの騎士さん、だよね?

やっぱりそうだ!ノエル、おうちでずぅっと待ってたのっ……騎士さんとまた会える日を!とっても嬉しいっ!

ゆびきりげんまんしたの、覚えてる?……約束、守ってくれたんだねっ!

また……またノエルとたくさんお話してくれるって、楽しみにしてたのっ!



えっ?怒ってないよ!ただ……ちょっぴりさびしかっただけ。

あっ!ほ、ほんとーに……ちょっぴり、だよっ?

ノエルのパパとママは、前よりも忙しくなって、前よりもっとお家にいないの。

さびしいけれど……でも、またあなたが来てくれたからねっ、ノエルさびしくないのっ!

それに、まくらもあるし……。



まくらはノエル、ノエルはまくだらよっ!

どうしてそんなに心配そうな顔、してるの?

ノエルはぜんぜん大丈夫、だよっ!

そうだ、練習たくさんしたんだよ。騎士さんに見せたかったの!

雪の魔法を……だしてみるっ!今はあたたかい季節だけど、たぶん……大丈夫っ!じゃあ、いくねっ!



ぱ、ぱうだーすの~~っ!

……どう、かな?雪……見える?

あれれっ、どうしてかなぁ……ちゃんと魔法を使ったはずなのに!

外は晴れたまんま……失敗、しちゃったかな……?

……降らない、ね……雪。降らせる時間を間違えたのかも……。



はぁ……ノエル、やっぱり失敗しちゃったんだ……ふぇっ……。

誰にだって失敗はある!もう一度やってみたら成功するかも。

……そうかなぁ?

うん、騎士さんが言うなら、そうかもって思えてきたっ!

もう一回だけ……やってみようかな。



ぱうだーすの~~っ!

雪が、家の中に……!?

す、すごいすごぉい!おうちの中が真っ白!

あっ……でも、おうちの中がびしょびしょになったら、怒られちゃうかな?

……でも、でも……うずうずうずうず!



雪で遊んでみたい!ねぇ、騎士さんも一緒に雪だるま作ろっ♪

あははっ!こんなふうに誰かと遊ぶのは生まれてはじめて!

雪だるま作りに、雪合戦、雪にあしあとをつけるのも楽しいっ!

こんな雪の遊び方もあるよ。

え?……きゃっ!?わっ、倒れ込んだ跡が私の形になってる!うふふ、ジンジャーマンクッキーみたいっ!



(いつまでもこの時間が続けばいいのに……!)

あ、もうこんな時間……。

騎士さんは忙しい人だし……ずっとはいられないよね。

で、でもね!ママとパパ、しばらく帰って来ないから……騎士さんがいられるなら、しばらくいてくれてもいいの!

ごめん、帰らないと。



そうだよね……ごめんなさい。ノエル、わがまま言っちゃった!

ありがとう、楽しかった。きっとまた来るよ。

ノエル?裾を掴まれていたら帰れないよ。

ご、ごめんなさい……!



ほんとうは、引き止めちゃいけないって……わかってるのに……。

ノエル、またおうちでひとりぼっちになるのが……ほんとうは、さびしいの……。

泣かないで。予定はずらせるから、もう少しいさせてもらおうかな。

ほ、ほんとう!?

やったぁ!えへへ……何して遊ぼうかなぁ。

ノエル、騎士さんとやりたい遊び、たくさん考えてたんだよっ!



まどろみのノエル

私、ノエル……ここは夢の中。そして私は夢の中のお姫様……。

本当のノエルは、現実の世界にひとりきり。おうちでパパとママの帰りを待つ、かわいそうな娘。

眠っているノエルの中にいる、もう1人のノエルが、私なの……。

ノエルの騎士さん、どうしてずっと会いに来てくれなかったの?

私もノエルも、ずっと……待っていたのに。



許さない!私もノエルも、あなたを許すつもりはないわ。

ノエルはね、騎士さんが来てくれるのをずっと待っていたのよ。

毎日毎日、ひとりぼっちのおうちの中で……でもあなたは来なかった。

期待していたノエルが悪いの?……ああ、かわいそうなノエル。

私の力も、日に日に強くなってきているのを感じるの。



あなたが以前来たときは、心が温まれば私は消えるはずと思っていた。

でも……大きくなりすぎた私はもう消えない。ノエルは私の存在に……いずれ気づくかもしれないわ。

もしノエルが私に気づいて、ノエルでいるより私でいたほうがつらくないと感じるなら……。

ノエルは消えてしまうかもしれない。

もしくは……夢から覚めることを拒否するかにしれない。



そんな、くっ……!?

どう、痛い?でも、ノエルの孤独と痛みはもっと激しく……心は凍りついていたわ。

ノエルがこれまで通り、いい子でいようとすればするほど……私は大きく、激しくなるの。

そして……私がこうして感情を爆発させているからこそ、ノエルは現実の世界で変わらずいい子でいられる。

ノエルがいい子であるにはそれなりの犠牲が必要なの。



……ふふ、でも……悪いのはいつも私。

私がこんなに激しく感情を高ぶらせるのは、どうして?

誰が悪いの?ノエル?私?パパ?ママ?あなた?

ねぇ、教えてよ……!

……こんな私は、誰が慰めてくれるの?



ふふ、こんなときでも、涙は流せないのよ。

私にはそれは許されていない。泣くのはいつだってノエルの役割だから。

ノエルは良い子でいなくちゃいけない。そのために私は悪い子でいるのよ。

……あぁ、やめて!私にそんなふうに優しくしないで!

そんなに……優しくされたら……!



っ……う、っ……。

くくくっ……ふふふ、あはははは!

っ!?

あなたって本当に優しいのね、ノエルの騎士さん?

大丈夫、泣いていたわけじゃないわ。ただあなたをからかって遊んでいただけよ。



信じられないって顔をしているわね?ごめんなさい、演技がうまくいきすぎたみたいね。

ノエルの……そして私のやり場のない感情をぶつける相手が欲しかっただけよ。

あなたはとっても優しいから……攻撃するのが楽しくて仕方ないわ。

私が与えた痛みは気に入ってくれたかしら?

お気に召したなら……もっともっといたぶってあげる!



歪み、ね……あなたに私はそう見えるのね。

っ……急に、周囲の景色が……!?

そろそろノエルが目を覚ます頃ね。

少し……はしゃぎすぎたのかもしれないわ。

ノエルが私の存在に気づき始めている。



感覚でわかるのよ。あの子は私、私はあの子……表裏一体だから。

私もノエルみたいに前向きにがんばれば報われる?……甘い言葉はいらないわ。

あなたは……少し夢見がちね。まるでノエルみたい。

ああ、ノエル……本当に可哀想な子。

可愛そうなノエルちゃん、可哀想なノエルちゃん、可哀想なノエルちゃん……。

永遠に夢から逃れられない……ノエルと私は夢のトリコなの……。



ごきげんなノエル

私、ノエル。パパとママは忙しくて、なかなかおうちに帰れないから、私がしっかりしなくちゃいけないの!

あれ?さっきまで私……お部屋にいたはずなのに。ここはどこ?

あなたは、だぁれ?

知ってる……聞かなくても、わかってる……あなたはノエルで、私もノエルなんだね。

大丈夫だよ。こわくないよ。その力は強すぎて、どうしていいのかわからないかもしれないけど……でも、きっと大丈夫。



んっ……あ、れ……ここは……騎士さん?

ノエル、いつの間にか寝ちゃってたんだ……

どうしたの?ノエルの顔に何かついてる?

変な騎士さん。ふぁぁっ……ノエル、たくさん寝たから元気出てきたかもっ!

そうだ、魔法でおうちの中にさっき雪を降らせたでしょう?まだちょっと寒いから……おうちを燃やしちゃおう!



そんなことしちゃダメだよ。

どうして?あったかくなるでしょう。

パパとママが帰る場所がなくなってしまう。

……うーん、そっかぁ……よく考えてみれば、そうだよね。

じゃあ、騎士さんがノエルのお馬さんになって!



ほらほら、お馬さんはもっと足が速いんだよ?騎士さんもっと速く速くっ!

むう……つまんない。そうだ、魔法でお外からお馬さんを連れてきちゃえばいいんだ!

大きくておうちに入らない?ふふっ、それならねずみさんくらい小さくしちゃえばいいでしょう?

……これもダメなの?お馬さんがかわいそう?

それじゃあ、お外を歩いている人を小さくして、おうちにあるドールハウスに招待するのは?



お人形さん用のドレスに着替えてもらって、みんなでお茶会をしたら楽しいよっ!

ちゃんと招待状を作ればいいでしょう?

むう、どうして騎士さんは全部ダメって言うの?

……ノエルが悪い子だから?

だったら、ノエルを叱ればいいのに。どうして騎士さんはノエルを叱らないの?



ノエルが本当は良い子だと知っているから。

良い子……ノエルが?

君はいつだって、寂しくても両親にわがままを言わずに我慢している。

予定があるから帰ると言ったときも、素直に引き止めたことを謝っていたし……。

ノエルはとても優しくて良い子だけど、無理をしすぎたらダメだよ。



っ……う、うぅ……。

ご、ごめんなさい……涙が勝手にあふれてくるの……。

……あのね、騎士さんにだけ、ノエルの秘密……教えてあげるね。

ノエルの中にはね、もうひとりのノエルがいるの。

眠っているとき……夢の中の世界で、いつも自分じゃない誰かがそばにいる気がしていたの。



でもね、でもね……パパとママ、前よりもっと忙しくなっていたし……ずっとおうちにひとりでいたから、誰にも相談できなかったの。

もうひとりのノエルは、どんどん力がつよくなっていったけど、どうすればいいのかわからなかった。

このままじゃいけないって、わかっていたのに……ノエル、見ないふりをしてたの。

パパとママは外へ出ちゃいけないって何度もノエルに言ってたけど……。

ノエルの力は、もうおさえきれなくなってるの。



外へ出て、力を解放してあげなくちゃいけない……そうじゃなくちゃ、いつか爆発しちゃう。

あのね、あのね。家出じゃないから、心配しないで騎士さん。

かわいい子には旅をさせよ、って言葉……昔、本で読んだの。

パパとママもきっとわかってくれるって、ノエル信じてるからっ……!

よぉし!そうと決まれば、荷物のじゅんびと……ふたりにお手紙を!



外は危険だから、一緒に行くよ。

えっ、本当にっ!?騎士さんがいると心強いのっ!

……手紙はこれでよしっと。パパ、ママ……。

大事な枕も忘れずに。

うん、ありがとう騎士さん!これだけは絶対忘れられないの。

さぁ、出発だよっ!ふふふっ、騎士さんと一緒なら、きっと素敵な旅になるわ。



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