【黒ウィズ】ジェニファーの大探索
2019年11月7日
story
君は扉を開けて、魔道士ギルドに入った。
「おお、待っておったぞ。
「やっほー。
……。
――!?
どうしてジェニファーがここに……君とウィズは口をパクパクさせる。
「魔法使いと黒猫のウィズを探している、と聞いてな。おまえを待っていたのだ。
しかし、〝黒猫の〟ウィズか。確かに猫っぽいところはあったが、あいつにそんなあだ名があったとはな。
「〝四聖賢の〟ウィズさんは行方不明なんだって?いろいろ大変なんだね。
ジェニファーは、いたずらっぽい笑みを浮かべ、君たちの方に目配せをしてくる。
とりあえず、この黒猫がウィズだということを、バロンに話してはいないようだ……彼女なりに機転を利かせてくれたのだろう。
「知り合いなら、積もる話もあるだろう。私はちょっと席を外すぞ。
ばちこん、ばちこん、とウザいくらい大きな目配せをして去っていくバロンを見て、君は、目配せにもレベルがあるんだなと思った。
ギルドの談話室で、君たちは向かい合った。
「突然のことで、驚いたにゃ。
「やっぱりウィズがしゃべるのは内緒なんだ。あのバロンって人が知らなそうな反応してたから、もしやと思ったんだよね。
改めまして、ふたりとも、久しぶり!会いたかったよ!
こっちもだよ、と君は答えて、どうしてクエス=アリアスに?と尋ねた。
「それがねえ……。
ジェニファーは、にやにやとして、懐から取り出した地図をテーブルに広げる。
「遺跡で宝の地図を見つけたんだけど、ここに書かれてる場所、世界のどこにもなくってさ。
ヒントを探して、さらに遺跡を探索してたら、不思議なゲートでこの異界に着いちゃって。
それで、ピーンときたワケ。この地図は、こっちの異界のものなんじゃないかってね!
確かに……君が見たところ、クエス=アリアスの地形と合致している。
「でしょ!だから、この地図に従えば、この異界でお宝が見つかると思うんだよね!
一緒に探してくれるでしょ?お宝くん!
それはいいけど……と君は言った。元の異界に戻る方法は探さなくていいの?と。
「この地図のお宝を集めたら、戻れるんじゃないかな。
異界の宝の地図と、あったってことは、その異界に行くゲートが見つけてみろって「挑戦」でしょ?
なら、その挑戦を解いたら、ご褒美として、元の世界に戻してくれるのが筋ってもんじゃない?
「楽観的な考えだと思うけど……この世界の地図がそっちの異界にあったってことは、そっちに行く方法があるってことにゃ。
どうせ手がかりもないんだし、お宝を探す分には損はなさそうにゃ。
「そういうコト!
わかった、と君はうなずいた。
前に、自分がジェニファーのいる異界に飛ばされたときは、結果として、彼女のおかげでクエス=アリアスに戻れた。
なら今度は、自分がその恩を返す番だ。
「ありがとう、お宝くん!
じゃあ、さっそく行こうか。未知なる世界の冒険へ!
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宝の地図が示す場所には、遺跡があった。
君たちはその遺跡に潜り、奥を目指した……。
「あ、お宝くん。そこ落とし穴。
「にゃー!!!
踏んだ床が、フッと消えた。
君とウィズはあわててバランスを取ったが、ジェニファーの指摘がなければ、そのまま落ちていたかもしれない。
「落とし穴の上に幻で床を作ったんだね。そこだけ埃が乗ってなかったでしょ。そういうところは避けて進もう。よっと。
言うが早いか、ジェニファーは身軽な動きで、幻術の床だけを避けて進んでいく。
「慣れてるとはいえ、すごい度胸にゃ……。
そうだね、と言って、君は恐る恐る足を進めた。
「壁に擦れた跡……天井に黒い染み……うーん、これはわかりやすい。
お宝くん、吊り天井来るよ!魔法、お願い!
言ってジェニファーが駆け出すと、背後の扉が閉まり、音を立てて天井が落ちてきた。
「にゃにゃー!!
ジェニファーは部屋の出口に取りついて、扉の鍵を開けようといじくり始める。
君はジェニファーの傍まで滑り込み、障壁の魔法で落ちてくる天井を支えた。
「ほいっと。
ジェニファーが通路にボールを投げると、左右の壁から炎が噴き出し、ボールは一瞬で焼き尽くされた。
「にゃにゃにゃ!これじゃ通れないにゃ!
「そうでもないよ。炎が出るまで、一瞬、間隔があったでしょ。たぶん、何かが通り過ぎるのを魔法で感知してから起動してるんだね。
つまり、全速力で駆け抜ければ行ける!いっくよー、とっつげきぃぃいい!!
このフレーズどこかで聞いたな……と思いつつ、君は炎に焼かれないよう、必死に廊下を走り抜けた。
遺跡を攻略するのは、時間がかかる。適宜、休憩を取るのも冒険のうちだ。
というわけで、君たちは安全な部屋を見つけて、弁当を広げて談笑していた。
「シャーノが元気みたいで良かったにゃ。
「シャーノも会いたがってたよ、ふたりに。もちろん、他のみんなもだけど。
君は懐かしい面々を脳裏に思い浮かべた。短い間だったが、いろんな遺跡を巡り、苦楽を共にした仲間たち。
「そういえば今回、みんなは一緒じゃなかったにゃ?
「みんなには、待っててもらってる。転移ゲートに飛び込んだら、何が起こるかわかんないからね。
「よく飛び込もうと思ったもんにゃ。危ないとは思わなかったにゃ?
「そりゃ、思ったよ。でも、これはトラップじゃないな、ってなんとなく思ったから。
それに、スリルのない冒険なんて、そもそもワクワクしないじゃない?
生き生きとした笑顔で言って、ジェニファーは干し肉のかけらをほおばった。
そして、ついに辿り着いた遺跡の最奥に、それはあった……。
「宝石……だね。触ってみると、あったかい……。
強い魔力を秘めている、と君は言った。これは、きっと相当なお宝だ。
「石碑に何か書いてあるにゃ。
「えーと、なになに?
『これなるは道標の煌災石。各地の煌火石を集め、ひとつにしたとき、異界への道標となるであろう……』
……各地?
きょとんとなるジェニファーの前で、台座が重々しい音とともにスライドした。
中には、1枚の地図が入っている。広げると、別の場所に印がついていた。
「つまり……ここだけじゃないってこと!?
ジェニファーは顔を輝かせた。
「普通はガックリ来るところにゃ。
「だって、まだまだ冒険できるってことじゃん!
よし、行こうか、お宝くん!次の煌火石を集める旅に!
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