【黒ウィズ】子の神様は本当に強いのか? Story
story
Iみなさん、明けましておめでとうございましゅ。
『イヌミコ・イヌイのワンだほーでキャンだほー』。新年最初の特別版です!
m無事に年を越せて良かったわ……。
bイノセントさんがまた暴れ出したときは、どうなることかと思ったべな。
t魔法使いさんが止めてくれたおかげだね。原因も、魔法使いさんだったけど~。
w悪かったにゃ。でも、不可抗力にゃ。
とはいえ、大騒動の原因は君たちにもある。
……ということで、この異界にいる間、天女たちの番組を手伝うことになっていた。
wそれで、今日の番組はどういう企画にゃ?
I『ネズミVSネコ因縁の逆襲デスマッチ』です。
w……にゃ?
b前に話した通り、この世界では、1年ごとに、人に幸を与えてくれる福の神様の担当が変わるっぺ。
m去年は、12支神最後の亥の年。それが終わった今年は、1周して最初の子の年になったのさ。
tネズミの神様は、12支神決定戦で、本来の優勝候補だった猫の神様に見事、勝利を収めてるの。
wそういえば、そんなこと言ってたにゃ。ネズミが猫をやっつけるなんて、確かに大番狂わせにゃ。
tでもそれって昔の話だから~。本当は猫の神様を扁したんじゃないかとか、いろいろ囁かれてるの。
jそ・こ・で!疑惑を払拭するためにも、猫とネズミの因縁の対決を再現しようっていうのが、今回の番組の主旨よ。
wつまり私に戦えって言ってるにゃ?
j魔法使いさんも一緒でいいわよ。猫の弟子なら、猫みたいなものでしょ。
b12支神最強の神様VS異界から来た黒猫の魔法使い……これは燃えるっぺ!
mお客さんもたくさん観に来るらしいから、がんばってね。
wはあ……それで、そのネズミの神様が、ここにいるのかにゃ?
Iはい。この神社で待ってるそうでしゅ。
……あ、いまちた!子川分さんです!
nネミミちゃん、こんなとこで何してんの~?ひょっとしてあれかな?初詣系?俺もそうなんだよ~マジ奇遇じゃね?
mうるせえ。
nあ、い~ね、照れてるのもかわい~ね。でも、尻尾をつかんで逆吊りにするのは、ちょっとやめてほしいな~。
m事務所のスポンサーだからって、絡んでこないでくれる?うざいから。
w……あれにゃ?
mあれかな?
jあれよ。子川分さ~ん、そろそろ準備いいですかー?
nうぃーす、じゃあね、OKでーす。ネミミちゃん。
j来てくださってありがとうございます。今回は、猫とネズミの因縁の逆襲デスマッチということで――
nOKOK、わかってるわかってる。バトルっしょ?
俺マジ強えーから。猫とかマジワンパンだから。
ちゃちゃっとすましちゃおうぜ~。相手どこ?誰系?
w私にゃ。
nえ、何、女の子じゃん。俺フェミニストだからさ~。そゆのちょっとね~、女の子殴るとイメージ悪くなるしさ~。
そもそも、年明け早々ガチバトルってどうなの?むさくね?もっと明るい対決の方が良くね?ダンスバトルとか、ソングバトルとか。
jあの、因縁のデスマッチという企画ですので、今さら変更というわけには……。
nでもさ~こっちもさ~女の子とは聞いてないしさ~。マジ話違ってっからさ~ありえなくね?
jそう言われましても……
nつかさ~あれよ?こんなこと言いたくないけどさ、俺、福の神よ?頼まれたから番組に出てあげてるわけ。なんなら出なくてもいいのよ?
俺に出て欲しいんならさ~俺が納得できる内容にすべきじゃね?
wなんにゃ、アイツ。めちゃくちゃ難癖つけてくるにゃ。
bなんとかしてバトルを回避しようとしているみたいにしか見えないっぺ。
tやっぱり実はそんな強くないんじゃないの~?前に猫に勝ったっていうのも、ヤラセかも。
mどうせそうよ。あいつが戦ってるとこなんて、見たことないもの。口先だけでしょ。
nあーだめだ。やる気なくした。ないわ。これマジないわ。はいもう中止ね。ちゅーし。かいさーん。
j……このクソボケ福の神がぁぁぁぁあ!!
tあ、キレた。
j中止だぁ!?舐めたこと言ってんじゃねーぞ!こっちはなぁ、年末進行で準備してんだよ!金も!人も!ぶちこみきってんだよコラァ!
客だって待ってんだよ!金払ってチケット買って、貴重な時間使って観に来てんだよ!それを中止だ?ざけんなクソチャラチビ野郎!
nちょ、ちょちょ、君あれでしょ?天女でしょ?福の神にそんなこと言っていいわけ?いやいいわけないっしょ~。
jだらっせえダボがブッ潰すぞてめえオラ!
w……これ止めなくて大丈夫にゃ?
tいーや!チャンスだよ!イノジョプロデューサーの醜態を全国にさらして、更迭させる大チャンス!
Iトリテン先輩、まだリハ中でしゅ。
mていうか、このまま福の神様の機嫌を損ねたら、ホントに番組中止じゃん!うちらにとっては死活問題よ!
b止めるしかないっぺ!
t止めるってどうやって?あの人、めちゃくちゃ強いんだよ?
天女たちの視線が、君に集中した。
なんとなくそうなるような気がしていたので、君はため息とともにカードを取り出す。
tお願い、魔法使いさん!イノジョプロデューサーをぎったんぎったんにしちゃって♪
いやちゃんと手加減するから、と言って、君はカードに魔力を込めた。
***
君はなんとか魔法でイノジョを眠らせ、ボコボコに殴られていた子川分を救い出した。
とりあえず、なんとしても番組中止だけは避けるべし――ということで、天女たちがあれやこれやで機嫌を取ることになった。
t御神水です~どうぞどうぞ~。いや~悪いね~お酌してもらっちやって。傷ついた身体に沁みるな~うん。
mこら、イチロウにジロウ!ちゃんと言われたとおりに、整列しなきゃダメじゃないか!
そっちに並ぶんじゃないよ。ちゃんと一列に並ばなきゃ!
nお、い~ね、猿回しウケるね~。猿ってバカだね~ホント。
bさすがマワシ先輩だっぺ!その調子で盛り上げるっぺ!
mなんか久々にゃった気がするわ、これ……。
Iネミミちゃんはお酌しないんですか?
m嫌よ。あんなのに。あんたたちだけでやって。
nうい~、あ~、飲んだ飲んだ。
t子川分さん、プロデューサーの暴挙は忘れて、番組やってもらってもいいですかあ~?
nうん、いーよ、いーよ。あ、でもそっちの猫ちゃんと打ち合わせしていい?
mもちろんです!じゃ、うちらは準備してくるんで――
天女たちがはけていき、君とウィズと子川分だけが残された。
nさ~て……どうすっかな~。
wさては、酔ってないにゃ?
nほろ酔いくらいだね。俺ね、酒も強いの。マジでマジで。
しかし困ったな~。なんとかして、対決をうやむやにする気だったんだけど。
どうして?と君が尋ねると、子川分は困ったように頬をかいた。
nいや、俺さぁ……実はマジで強いんだよね。
強すぎて、制御効かなくってさあ……それで女房にも愛想を尽かされたのよ。
だから、ありあまるパワーを封印してさ。こうしてかわいいアピールしてんだけど。
wいや弱そうには見えるけど別にかわいくはないにゃ。
要は、本気で戦うと危険だから、戦わないようにしていたってことにゃ?
nそ。い~ヤツでしょ。俺。
本気を出さないでウィズに負けるのはダメなんですか?と君は訊いた。
nそれはね~。俺にも立場ってのがあっからさ~。こいつクソ弱え~じゃん!ってなると、福の神剥奪もありうるのよ。
だからなんとか、バトル以外の方向で対決するか、バトルを中止にするか、したかったんだけどな~。
wそういうことなら、安心するにゃ。
ウチの弟子の実力はピカイチにゃ。そっちが本気でかかってきても、渡り合ってみせるにゃ。
えっ。
nマジで?俺マジ強いよ?
w大丈夫にゃ。私が保証するにゃ。
nそっか~。そういうことなら信じようかな~。君、い~バトル期待してるよ~。
じゃ、俺トイレ行ってくっから。また後でね~。
ちょっとウィズ?と君が言うと、ウィズはふふんと笑った。
w大丈夫にゃ。いくら強いと言っても、しょせんはネズミにゃ。キミが負けるはずないにゃ。
もちろん、私もサポートするにゃ。私たちの実力を番組でアピールして、ギャラを上げてもらうにゃ!
それが狙いか、と君は思った。
tはいじゃあ、最終確認で~す。
ウィズちゃんが歩いていると、子川分さんがぶつかってきて挑発。
ウィズちゃんが怒ってバトルに突入!
nOKOK、んじゃそれで。ウィズちゃんと弟子ちゃん、天女のみんなもシクヨロね~。
Iよろしくお願いしましゅ!
bよーし、気合入れて行くっぺ!
mおー!
なんだか妙な流れになったけど、やるしかないか、と君は気を引き締める。
もちろん、君は知らなかった。
子川分の封印した力が、いったいどれほどのものなのか……。