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【黒ウィズ】スノウ編(謹賀新年2019)Story

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん

2020/01/01





story



 童話の住人たちが暮らす異界にも新しい年はやってくる。

年が明けたばかりのおめでたい、この日。

童話の登場人物たちは、演人という普段の役割から解放されてしばし、自由な時間を過ごすことが許されている。


 久しぶりに訪れた童話の異界。

君とウィズは、異国文化を取り入れたー風変わった造りの宿屋にいた。


むう~~~。

 スノウがいる。そして、なぜか怒っている。

どうして僕が怒っているのか、わからないの?

 君は首をかしげた。スノウに怒られることをした覚えがない。

命を助けてくれたお礼を言いたかったのに言う暇もなくどこかに行っちゃうんだもん。酷いよ!

 前回、スノウが死の淵から蘇った際、君は言葉を交わすことなく姿を消した。スノウは、それを怒っているのだ。

私たちは、あちこち旅をしている身。ひとつのところに長くとどまっていられないにゃ。許して欲しいにゃ。

もう!魔法使いさんへのプレゼントを用意しようと思ってたのにむかむかして、これだけしか作れなかったよ!

 君のために編んだセーターに手袋にマフラー。ウィズ用のニット帽やセーターまである。

これだけ……にゃ?

 黙っていなくなったのは悪かったとプレゼントを受け取りながら君は頭を下げた。

魔法使いさんたちが居ない間、色々なことがあったんだ。

話したいことが沢山あって、うずうずしてたの。

 君も、あのマルグリットがいなくなったあとの童話の異界がどうなったのか興味あった。

話を聞くぐらいお安い御用にゃ。今日は、なにもないから夜まで付き合うにゃ。

じゃあ、今日は魔法使いさんと黒猫さんを僕が独り占めだね?

 スノウは、近くにある『火鉢』という焼けた炭が入っている器を引き寄せる。

どうぞこれ使って。ここに手をかざすと温かいんだ。あと、ここでお餅も焼けるんだよ。

 言われたとおりにしてみると、なるほど温かい。ウィズは、先ほどからずっと火鉢の傍にいる。

落ち着いたところで、シラユキ王国はどうなったのかとまず訊ねた。

前の女王マルグリットをアーシュや魔法使いさんが倒してくれたのはよかったけど……。

いまシラユキ王国は大混乱。この機会に女王を決める掟を大臣たちが撤回に動き出したり、領主たちが独立したりと――

権力者同士の争いが続いているらしいんだ。

そんなところへ、お城から逃げ出した僕が戻っても、混乱に拍車をかけるだけだから……。

それで、宿屋を点々としているんだにゃ?

僕が、王子としても姫としても未熟だから、王国を混乱させてる。心が痛いよ

焦ることはないにゃ。スノウはまだ若い。これから色々学んでいけばいいにゃ。

優しいね黒猫さんは。

実は、マルグリットがいなくなってから童話の世界に新しい勢力が台頭したんだ。

また悪い奴が出てきたのかにゃ?

あのマルグリットの配下だった者たちで、みずから「童話四天王」と名乗っているんだ。

 マルグリットの配下だった童話四天王。新たな敵の登場に君の心がざわめいた。

いかにも悪そうな名前にゃ。

魔法使いさんたちがいない間、僕たちはずっと奴らと戦っていたんだ。

どんな敵だったにゃ?

 スノウは、火鉢の中を突いた。赤く燃える炭が、音を立てて小さく爆ぜた。

今から魔法使いさんに聞かせてあげるね。僕が体験した、彼らとの不思議な戦いの顛末を。

まずはじめは、童話四天王のひとり、コルベス様と戦った時のお話――

ちゃんと最後まで聞いててよね?

 そう言ってスノウは、君たちがいない間に起きた物語を語りはじめた。


 ***


 むかし。これは、むかし……。じゃないね。ちょっと前にあったお話です。

童話四天王のひとり「コルベス様」の噂を聞いた僕とアーシュは、情報を集めて彼のアジトを突き止めました。

コルベス様が、悪いことをする前に倒すべく、僕は、アーシュと共にアジトヘ向いました。

途中、猟銃を持った赤いずきんのメメリーと出会いました。

こんにちはなのです。どこへ行くのです?

コルベス様を退治しに行きます。メメリーちゃんもー緒にどうですか?

面白そう。メメリーも付いていくのです。

頼もしい仲間が増え、勇気付けられた僕たちは、アジト目指して、さらに進みます。


リコラ、今からコベルスって人を退治しにいかない?

コルベスね。

心配だから私もついてゆくわ。

 さらに頼もしい仲間が増えて、僕たちは、意気揚々と先に進みました。


コスベル様のところに行くの?

コルベスね。

童話四天王と聞いては、放っておけないわね。私たちも力を貸すわ。

 その後、半狼のラグールさんも仲間に加え……僕たちは、コルベス様のアジトに到着しました。


なんだか、普通の家みたい。童話四天王のアジトらしくはないよね。

こんにちはー。

返事がありません。お留守でしょうか?

 僕たちは相談して、コルベス様を思い思いの場所で待つことにしました。

メメリーちゃんは、カーテンの中に隠れました。リコラさんは台所に行き途中で取ってきた山菜を料理しはじめました。

長期戦になるとお腹が空くでしょ?私に任せて。

 アーシュは、柱時計を楽しそうに見ていました。

カッチ、コッチ、カッチ、コッチ……うふふふ。

 ラグールさんは、金目の物がないか物色しはじめ、ケットさんは、お花の匂いを嗅いでいます。

ちょきちょき~ん。

 ピノキオさんは、はじめて訪れた家でとても落ち着かなさそうでした。

そして、僕たちの準備が整ったその時、ついにコルベス様が帰ってきたのです。


zああっ。可愛い子が、俺の家に!?これは妄想ではないのか!?

 僕を見るなり、コルベス様は、いきなり抱きつこうとしてきます。

きゃあっ!

 びっくりした僕は、思わずコルベス様を突き飛ばしてしまいました。

コルベス様は、足をもつれさせて台所にいたリコラさんにぶつかりそうになりました。

怖くなったリコラさんは、山菜の煮汁をコルベス様にかけました。

zあちぃ~!

 熱がるコルベス様は、顔を押さえて後ずさります。そして柱時計を見ていたアーシュにうっかりぶつかってしまい――

zうおっとぉ!

 金庫を開けようとしていたラグールさんに倒れ込みます。その時、ケットさんの近くにあった花瓶を倒してしまいます。

それを見たピノキオさんが怒り、ハサミを振りかざしたのです。

zわざとじゃねえんだ。勘弁してくれ~!

 コルベス様は青くなって窓から逃げ出そうとしますが、カーテンに隠れていたメメリーさんが飛び出してきたので急いで玄関から外に出ました。

ようやく外に出れたと安心したコルベス様でしたが、空からいきなり大きな白いものが降ってきて――

コルベス様は、押しつぶされてしまったのです。


こうして僕たちは、コルベス様を退治したのでした。

 コルベス様は、なんて不運な人だろう、と君は思った。

僕も、まさかこういう結末になるなんて、思ってもなかったよ。

 スノウに抱きつこうとさえしなければ、そんな不運な目に遭うこともなかったはず。

童話四天王コルベス様は、きっと運の悪い人に違いないと君は結論づけた。

最後にコルベス様を押しつぶした「大きな白いもの」ってなんにゃ?

それは、先の話を聞いてのお楽しみかな?でも、続きを話す前に……。

今の話。どうだった?魔法使いさんの感想を聞かせて欲しいな~。


 ***


続きを話す前にちょっと休憩しようよ。実は魔法使いさんのために用意したものがあるんだ。


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これは遠い異国で新年のお祝いに飲まれてる「あまざけ」だよ。

今日のために準備しておいたんだ。遠慮せずに飲んで。飲んで。

 カップに注がれた白濁した液体。これが『あまざけ』という飲み物らしい。

どうにゃ?

 喉ごしは爽やかで上品な甘さがある。なかなか美味しいよ、とスノウに言った。

じゃあ、もっと注いじゃうね?とくとくとく……はい。ー気に飲み干して。

あまざけもいいけど、そろそろ話の続きをお願いするにゃ。

これは、僕ひとりが体験したとても奇妙なお話……。


 ある日、僕のところに1枚の招待状が届いたのです。とあるお屋敷での昼食会のお誘い……。

招待状の差出人は、『窓辺の貴婦人』と名乗る人でした。

招待状の案内どおり、お屋敷にたどり着いた僕は、玄関のドアを叩きました。

ですが、反応はありません。だから勇気を振り絞ってお屋敷の中に入りました。

お屋敷は、奇妙な造りでした。入り口からいきなり、大きな階段が続いていたのです。

階段の1段目には双子の人形がいて、激しく言い争っていました。

wお兄ちゃんが、ノンビリしてるから、こんな目に遭うのよ!

zああ、そうさ!俺は最低の男だ。もっと、罵ってくれ!

 ふたりは僕には目もくれず、大声を張り上げていました。

あの……窓辺の貴婦人様は、どちらにおられるか、ご存じですか?

wさあ、知らないわ。1段上にいけばわかるんじゃない?

 僕はお礼を言って1段昇りました。

振り返ると階段の1段目にいた双子はいなくなっていて、代わりに物干し竿と洗濯ばさみが落ちていました。

hおよよ。いま、何時ぞよ?はて。私としたことが時間を忘れてしまうとは。このところ忙しすぎたのだな。

 2段目には、時間を忘れてしまった時計のおじさんがいました。

彼は、忘れた時間を思い出すので精ー杯らしく、いくら話しかけても答えてくれませんでした。

諦めて僕は3段目に上がりました。3段目には、白い骨のようなものが沢山散らばっていました。

骨たちは僕に「もう1段あがってみな」と言いました。

4段目には、お鍋に入った沢山の頭蓋骨たちが「熱い、熱い」と叫びながら、ぐつぐつ煮込まれています。

そして5段目に来て、ようやく部屋の入り口を見つけたのです。

僕は、部屋に入る前に窓辺の貴婦人様の顔を見てやろうと鍵穴からそっと中を覗いたのです。

zお入り。

 すると中から声がして婦人が僕を招いていたので、ドアを開いて中に入りました。


窓辺の貴婦人様。今日はお招き頂き、ありがとうございます。

zよくいらしたわ。あなたのことを、ずっと遠くから見ていたのよ。

 僕は、階段にいた人たちのことが気になったので婦人に尋ねてみました。

z人形が言い争っていた?それは言い争いじゃないわ。きっと彼らは、愛を確かめていたのよ。

2段目にいた時計のおじさんは、どうして時間を忘れたんでしょう?

z彼はイタズラ好きなのよ。きっと忘れたふりをしていたのでしょう。

次の段には、白い骨が散らばってましたよ?

zあれはチキンの骨よ。召使いに片付けるよう言っておいたのに。あとで皮を剥いで、お仕置きしないと……。

4段目では、頭蓋骨たちが「熱い」と叫んでました。

zそれはこの屋敷の住人よ。困った人たちだわ。死んだあとも、私に迷惑をかけるのだから。

 婦人は、長いソファーに腰掛けています。僕に隣に座るように言いました。

僕、鍵穴から覗いちゃったんだ。あなたが、大きな口を開けて、舌なめずりして僕を待っているのを。

zそれは……私じゃないわ。

 その時、部屋の中に何者かが現れてこう叫んだのです

「ここは、人食い魔女の屋敷よ!すぐに逃げなさい!」

 僕は、急いで窓から外に飛び出しました。しばらく走ってから振り返ると婦人が窓からこちらを見ていました。

z……。

 そして、化け物のような口を広げてこう叫んだのです。


z甘い美少女のお菓子ちゃ~ん。私は必ず貴方を食ってやるわ。

だから、捕まえたら、ただじゃおかないわ!

ひとつ教えてあげるね。実は、僕は男なんだ。女の子だと思った?ざんねーん。

z……なんですって!?

 婦人は絶句して、窓の奥へ引っ込んでいきました。

僕は、さらに逃げて――

もう大丈夫だろうというところで振り返ると、あったはずの窓辺の貴婦人のお屋敷は、きれいさっぱりなくなっていました。


奇妙な話にゃ。その婦人も、童話四天王のひとりなのかにゃ?

窓辺の貴婦人が四天王のひとりだったのかどうか、僕にはわからない。とにかく謎が多い人だったよ。

 あれ以来、窓辺の貴婦人からの接触は、ー切ないそうだ。

スノウが男だと知って諦めたのかにゃ?つまり、婦人は女の子にしか興味がない……怖いにゃ。

ねえ、今のお話は、どうだった。



 ***


お話を聞いてるだけなのに、お腹が減ってきたにゃ。

じゃあ、お餅焼こうよ。

やったにゃ!私は、カリカリに焼けたお餅をふーふー、さましながら囓るのが好きにゃ。



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次に出てくるのは、童話四天王のひとり、「物わかりのいいハンス」という人なんだ。

四天王なのに物わかりのいい……。その時点で既に怪しいにゃ。

でも、ハンスさんはとても良い人だったよ?


 コルベス様は、突然降ってきた白くて大きなものに押しつぶされたままです。

このままじゃ、コルベス様はあまりにもかわいそうだ。もしかして悪い人じゃないのかもしれないし……。

しかし、この大きくて白いものは、いったいなんでしょう?

カブ……かな?でも、これだけ大きなカブは見たことないなあ。

どれだけ大きいのか抜いてみませんか?

けど、僕……力仕事は得意じゃないんだ。

 それでもとアーシュに促され、スノウは腕まくりして地面に埋まったカブを抜こうと試みます。

うんとこどっこいしょ。うんとこどっこいしょ。

 だけど大きなカブは、ー向に抜けません。

zお嬢さん方、よかったら、なにかお困りかい?このハンス様が力になるぜ?

 アーシュとスノウは、大きなカブが抜けなくて困っていると伝えました。

z女の子ふたりじゃ大変だろう。いますぐ助けを呼んでくらぁ。ちっと待ってな!

 そう言ってハンスという若者は、カブを抜いてくれる仲間を探しに行きました。

戻ってきた時には、ひとりの老人を連れてきました。

wふがふが。なにごとじゃ~?

 ハンスは老人をまるで犬のように引き摺ってきたのです。

ご老人をそのように扱ってはいけませんよ。

こう……手を握って、優しくお連れしなきゃダメですよ?

z手を握ってか……なるほどねえ。次からは、気をつけるぜえ!

 ハンスは再びカプを抜くのを手伝ってくれる人を探しにいきました。

zお嬢さん方。今度はちゃんと手を握ってお連れしましたぜぇ!

 威勢の良い声と共に、ハンスは嫌がる牛の前足を握り、強引に引っ張ってくるのでした。

それは手じゃなくて牛の足だよ。牛なら、首に縄をつけて連れてこなきゃ。

zおう、わかったぜえ。じゃあ、次はそうすらあ!

 またまた勢いよく飛び出していったハンスでしたが、すぐに戻ってきました。

ちょっとなんなんですか?私をどこに連れて行くつもりですか!?

 なんとハンスは、リコラの首に縄をくくり付けて連れてきたのです。

牛じゃないなら、首に縄なんて必要ないからね!

リコラさんは、半狼ですが……か弱い女の子です。女の子は、お姫様のように扱うべきです。

zお姫様抱っこって奴だな?そんな風に連れてくればいいのか。待ってな!

大丈夫かなぁ?

zおーい、今度の奴は、役に立ちそうだぜ!

 次にハンスが連れてきたのは、半狼のラグールでした。

まるでお姫様のようにラグールを抱きあげ、得意げに戻ってくるのです。

なんだかよくわからんが……。俺様、今とっても恥ずかしい!

グールさんなら、普通に歩かせて連れてくればいいんだよ。

zおーい!今度はどうだい?

どうして、私を歩かせるの?私は歩くよりも、飛んだ方が早いのに!

ケットさんは小さいのであなたの肩に乗せて運んであげてください。

zよーし、今度は文句ねえだろ?

うわー。ひとさらいだー。

 スノウたちが見たのは、ピノキオを肩に乗せてやってくるハンスの姿でした。

……僕、もう疲れた。

でも、これだけ仲間が集まれば、カブは抜けるのではありませんか?

 そのあとも、次々に仲間が加わり……。

「「「「うんとこどっこいしょ。うんとこどっこいしょ。」」」」

 全員がー丸となって白くて大きな、なにかを引き抜こうと頑張ります。

うんとこどっこいしょ。うんとこどっこいしょ。

wも、もう、その辺で……。

 なんと、カブだと思っていた物体から声がするではありませんか。

wいま、顔を抜きますんでそんなに強く引っ張らないで……あんっ!

抜けた!

抜けました!

wふう……。苦しかった。みなさんが、助けてくれたのですね?

カブがしゃべりました!?

wカブじゃありません。僕は、月から落ちてきたお餅です。

名前は、鏡餅太郎といいます。どうぞよろしく。


 ***


 月では、ウサギたちがお餅をついています。鏡餅太郎は、沢山搗かれたお餅のひとつでした。

ですが、あまりにも大きく作られすぎたが故に、ウサギたちから邪魔がられ、月から追放されたのだそうです。

w月から地面に墜落して、そのまま気を失っていたようです。

助けてくださったのは、みなさんですか?なんとも、お礼の言いようもございません。

お餅でしたか……。カブじゃなかったのは残念ですが、こんな大きなお餅を見たと、人に自慢出来ます。

あ、見て。押しつぶされていたコルベス様が……。

z頭が割れそうに痛てえ。というか記憶飛んでる!?親の顔も思い出せねえ……って、俺に親はいないんだった。

マルグリットの配下。童話四天王のコルベス様だね?

童話世界に混乱をもたらす人は、私たちが許しません!

zあ……あんたは、シンデレラのアーシュ!?それに有名な演人の方々!?

皆様に楯突くつもりなんてなかったんだ!

でも、あなたは童話四天王なんだよね?

z俺は演人の中でも報われない地味な物語の演人。だからせめて悪役として輝けたらなと思って――

マルグリット様がいなくなったのを幸いに四天王を勝手に名乗っただけなんだ。

じゃあ悪いことは?

z泥棒を少々。あと、置き引きを。

かーっ!せこいな。コソ泥かよ!?

お前が言うな!

z他の童話四天王は、俺のマネをして勝手に名乗りはじめた奴らばっかりだ。

俺ひとりじゃ格好つかないと思ったから知り合いだったハンスにも名乗らせた。俺が知っている四天王はこいつぐらいだ。

z四天王って響きがかっけえよなぁ!

z噂によると俺たち以外にも、あと10人ぐらい四天王を名乗っている奴がいるらしい。

四天王多いな!

あと8人も探さなきゃいけないの?骨が折れそうだね。

この世界は広いです。時間をかけて探しましょう。

そんなアホどもはほっとけ。バカ真面目に相手することねえよ。


……というわけで童話四天王の騒動は、いまも続いているんだ。

もちろん僕とアーシュとで、2度と紛らわしい名前を名乗らないようにコルベス様たちには言っておいたけどね。

マルグリットがいなくなったことを幸いに動きはじめる演人たちは、この先も出てきそうにゃ。

あ、魔法使いさん。お餅焼けてる。ぷくーって膨らんで、とっても美味しそうだよ?

僕が食べさせてあげるね。はい。あーんして。あーん……。

 恥ずかしいなと思いながらも、君はスノウをマネして口を開く。

私も食べたいにゃ。このこんがり焼けたのをいただくにゃ!

あ、急いで食べると火傷するよ!?

はちちっ!はちっ!

もう、だから言ったじゃない。僕が、ふーふーして冷ましてあげるね?ふー、ふー……。

 ところで、鏡餅太郎はどうなったのと君は訊ねる。

彼?彼はねえ……。

ま、まさか、私たちが食べてるこのお餅がそうなのかにゃ!?

そんなわけないでしょ?いまは、ここのお庭で鏡餅として頑張ってるよ。おーい、鏡餅太郎(かがみもちたろう)さん!

wお呼びでしょうか、スノウ姫王子。

よかった。いたにゃ。

 そんな残酷なことスノウがするわけないよな、君は思う。

これは、僕が作ったお餅だよ。魔法使いさんのために頑張ったんだ。

 餅を作るスノウの姿は、あまり想像できないが、心が込められていることはわかった。

魔法使いさんが美味しそうに食べてくれるから、僕、いまとっても幸せ。

ねえ、次は魔法使いさんのお話を聞かせてよ。いいでしょ?

 こうして君とウィズは、スノウとー緒に年明けの静かなー日を楽しく過ごしたのでした。




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