【白猫】Phantom Of Memory ―機新領域TAIRA― Story
story
おめでとう!
おめでとうねえ!
よっ<代表者>!俺たちアンドロイドの代表として、明日はがんばれよ!
ど、どうもです……
――――
む。なんです、ポム。
ワタシが照れてる?ち、違います。慣れてないだけです。
天才は世間にうとまれてるのがフツーですから。
まあ、たしかに明日は、たいへん喜ばしい日でしょう。
なにせワタシとポムが、街のために大活躍する日なんですからね。フフン。
ポム?ポムっ。どこですっ?
いた……!なにやってんですかっ。
ワタシたちはー心同体。離れすぎると、エネルギー供給が切れちゃいます。ずっといっしょにいないと……
え?リボンが汚れちゃって、きれいにしようと?
ほんとですね、オイルの汚れでしょうか。
――――
落ち込まないでください。だいじょうぶですよ、ムスっとなんてしません。
ちょうどいいです。明日の前祝いにリボンを新調しましょう。
街の<代表者>としてみんなの前に出るのだから、オシャレしていくのです。
――ヤッタ。
やったっ。フフ。そうと決まれば、リボン屋さんにゴーです。
…………
……
なによ、がきんちょ。
ちゃんと店番やってるか、立ち寄ってやったのです。
なんで偉そうなのよ。
てか、ほんと店主には困ったもんよ。腰痛めたとか、アンドロイドとしてどうなの。
ま、アタシって極悪非道アンドロイドだから?テキトーに座ってるだけで、店番らしいこと何もしてないんだけど。
悪いアンドロイドなら、そもそも店番自体断るのでは?
ハッ……!
それに、どうせちゃんと店番してたのでは?ね、クロワ。
――イエス。
ふぎゃー!もういいからどっか行きなさいよ!
***
そうだ、近道しましょう。階段をのぼれば、すぐリボン屋さんです。
うんしょ、うんしょ。
なぜこんな段差が高いんですか。この街は増改築しすぎです……もっと天才の身長も考えて作るべきです。
――――?
え?重力操作で浮けばいい?
いえいえ、天才は自分の足で未来を切り拓くものなのですよ。
うんしょ、うんしょ。
――――!
そうですね。汚れた黒色のリボンを買いなおしましょう。
それも、みんなのレーダー感知でわかるくらい、つやっつやの良い生地のにします。
ふんぱつです。
……ポム。リボンがちょっとだけ高いところにあるので、とってきてくれます?
え?離れたくない?どうしたんです?
――――
さっき離れちゃったから……そうですか。
対策を立てるのは天才の特徴と言えます。さすが天才の相棒です。
これならきっと、ワタシたちが離れ離れになることは二度とありませんね。
――――!
あのリボンは、店員さんにとってもらいましょう。
その間、天才による無慈悲なよしよしタイムですよ。
――ヤッタ♪
ふふ、ポム、よしよしです。
story
<ここはアンドロイドたちの住む<ロクハラタウン>。自己進化を使命とするアンドロイドたちがアップデートを続けた結果、夜も眠らぬテクノロジーの坩堝となった街。
先日この街で、新品リボンで着飾ったエプリルとポムのコンビが街の<代表者>として重大な務めを果たした。
あの日を境に、平和な街の様子は様変わりすることになる――
んぎょわーー!!
p――――!!!
食らえーッ!
うんぎゃーーー!!
p――――!!!
はががーーー!今日はもうダメだーーーーー!!
***
はぁ、はぁ、はぁ……なんとか、化け物からは離れられたみたいだね……いったい、なんなんだいあれは……
なんです、あのあやしいやつは。
まあでも、この混乱に乗じて<目的のもの>も回収できたし、これ持ち帰れば、終わり……!
……おっと。
いけない、僕……俺としたことが、動揺してたみたいだね。
どこで女の子が見てるかわからないってのにさっ。
右ヨシ、左ヨシ、俺を照らすお星さまヨシ!
足元もヨシするべきです。
わぁーーー!?
なんでお空にウィンクしてたのですか?
(おお落ち着くんだゼロキス。子供に見られたくらいで動揺するんじゃない!)
(いやするよ!!)
……やっぱりアナタ、あやしいですね。
ほぁーっ!?あやしくないですが!?
いいえ、あやしいです。さっきから目を合わせようとしません。
そこはほっといてよっ。目を合わせるの苦手なんだよ。
フフン、ワタシは賢いので、すべてお見通しなのですよ?
お見通しも何も、僕はいたって普通のアンドロイドさ。ういーんがしゃん。
いや、生物ですよ。熱感知でつつぬけです。
言って!!そういう機能あるなら!!
まぁあやしくても何でもいいです。いまこの街は観光できる状態じゃないのでさっさと帰ってください。
……みんな、アレと戦ってるのかい?
今だ!撃てー!!
ダメだ!シールドが硬すぎる!
だからなんだってんだい、あのどでかい化け物は……
ポムです。
なんでそんなかわいい名前なのさ。
……ワタシにも、わからないことはあります。
え?賢いんじゃなかったの?
みんなが呼んでるからポムなだけですっ。
もうちょっとくらい知っててもよくない?
ななななんで急に涙!?
あれ?なんででしょう。不明です。
ごめん!なんかわかんないけど、もう二度と言わないよ!
むう……?ワタシもわかんないですけど、許してやるとします。
とにかくです。アレは……ポムは、ワタシが破壊してみせるのです。
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あれが、<ロクハラタウン>ですか。
遠目にも、黒煙が上がっているとわかる……急がねば。
お待ちしておりました。
顔を上げてください。アナタが文をくださった、アリーゼ様ですか?
はい。……あ!
アタシ性格ねじ曲がってて~、無礼かもだけど~、打ち首はカンベンね♪
え?呼びかけるまで手をつき頭を下げておられましたし……
き、気のせいじゃない?
街の危機を伝えるため、あなたがよこしてくださった文には、真摯な愛情がこれでもかとこもっていました。
気のせいですって!あの手紙は実に凶暴な裏がありまして……!
ほら、自然と敬語になってらっしゃいますし。
うう……なんかまっすぐすぎてやりづらいよ、クロワ。
――イエス。
もしやそのからくりが、クリカラ様の?
はい。クリカラ様を参考に作られた<クリカラユニット>。アタシのパートナーです。
pミュ?
――――
(参りました。アンドロイドのー派にここまで影響を与えていたとは)
<チハヤは、若くして軍神の島を統率し、戦火から民草を救った女傑である。>
<彼女が長の務めを果たしてこられたのは、類まれな智謀と人徳、そして――>
<クリカラから借り受ける力あってこそだった。>
(昔、お国のためだと泣きつかれ、クリカラ様を身に宿す瞬間を何度か見せたことがありましたが……)
(まさかあれだけで、クリカラ様を模したからくりを作ってしまうとは)
(ああ、しかし……ううぅ……)
(あの時はじっくり観察されて、恥ずかしかった……)
すごい!
?
チハヤ様は照れ屋さん!<チハヤデータベース>にあった通りだ!
で、でーた!?なんです、それはっ。
チハヤ様はクリカラユニット製造の恩人ですから、街ではチハヤ様の情報は必須科目ですよ?
ぇええ?
みんな大好きだし、基本、店には写真が飾られてますよ?
ああぁあ……!
――――
わかってるわよ、クロワ。ちょっとお返ししてみただけ。
そろそろ本題に入りますか。
ぜひ、お願いします……
だいたいは文に書いたとおりです。あの街では今、化け物が大暴れしてます。
あの化け物はアタシたちが戦っても分か悪い。
しかし、私なら討ち果たせると。
はい。街の恩人であるチハヤ様は、何からも拒まれることはないでしょう。そこに糸口がある。
(この子、震えてる?)
チハヤ様のお力で、あの化け物を……ポムを倒してほしいんです。
エプリルを、これ以上傷つける前に。
無論、力を賃すつもりですよ。共に街の民草を救いましょう。
あ、ありがとうございます、ママ!
ママ!?
あ、ごめんなさい。街では皆そう呼んでるから。アタシたち新世代機にとっては生みの親同然だし。
そ、そんなところに今から私が向かったら……
みんな大歓迎になりますよ!
恥ずかしすぎますっ。どんな顔をすれば……もうお嫁にいけません……
ママだし、お嫁には行ってるのでは?
行ってません!
あらすじ
Phantom Of Memory ―機新領域TAIRA―
アンドロイド・アリーゼは化物の凶行を止めるべくチハヤと共に、機械の街で奮戦する!
一方、なにやらコソコソやっていたゼロキスは、アンドロイド・エプリルに見つかってしまい……?
縁を辿り、記憶を辿り、果てに未来をつかめ!
登場人物