【白猫】聖夜の奇跡・マール編 Story
笑顔の生まれた舞台に、
己の宿命を強く感じる少女へ
クリスマスの小さな奇跡が舞い降りる――
「ん~♪ 楽しかったぁ!
舞台の上も、客席もみんな笑顔だね!
これってみんなみんなハッピーってことだから、とってもいいこと! でも……
このままだとあたしのあいでんてぃてぃが危ないかも!
だって、みんなをハッピーにするのが、あたしの役目だもんね!」
「……マール。」
「ってことで、あたしもみんなにハッピーとラッキー、プレゼントしにいっちゃうね!」
「……マール。」
「クリスマスだもん。ふんぱつしちゃう! いっくよー!」
「いくな。少し落ち着けマール。」
「えー! あたし、ちゃんと落ち着いてるよ!」
「落ち着いてるヤツが人の呼びかけを無視するものか。
お前はどうみても、この場の空気に感化されて、はしゃいでいる。」
「そーかなぁ? でもみんな楽しいのはいいことでしょ?」
「それは否定しない。だから邪魔をするつもりはない。
だが、勢いのまま行動するのではなく、きちんと考えた上で行動するんだ。
せっかくの幸せが、不幸になってしまわないようにな。」
「そんなのわかってるも~ん!
ガレアは、相棒のことしんよーしないとダメなんだからねー!」
「信用も信頼もしている。」
「ほんとっ!? えへへ~♪」
「ただ注意しろと言っているだけだ。」
「もー! その一言はよけーだよ! ぶー!」
いーもん! みんなのことハッピーにしてガレアもビックリさせるんだから!」
「……そうだな。楽しみにするとしよう。」
「そんなよゆー発言も今だけだからねー!」
あたたかなひと
…………-ル……
「? ガレア?」
……マール……
「……だれ? ガレアじゃ……ないの?」
マール……
「……うん。あたしだよ……? なに……?」
いつも元気でいてくれる?
「うん……あたし、いつも元気だよー。」
天使のお仕事は大変じゃない?
「大変じゃないよ。だいじょうぶ……」
……辛くはない?
「つらくないよ。ガレアがね、いつも一緒だから平気。」
そう……みんなのこと、好き?
「好きだよー。だーいすき!」
仲良くできてる?
マールは寂しがりで泣き虫だから、迷惑かけてない?
「かけてないもん。いっぱい仲良しだもん。」
ごはんはちゃんと食べてる?
「うん。たべてる。」
好き嫌いしないで、なんでも食べるのよ。
お菓子ばかりじゃだめよ。
「ガレアがうるさいから、ちゃんとお野菜も食べてるよ。」
そう。彼と仲良しなのね。ふふっ。
「ぷー! なんで笑うのー。」
マールがしあわせでいてくれて、嬉しかったの。
「えへへ……うん。あたし、しあわせだよ。」
これからもがんばれる?
「うん。がんばれるよ。
みんなのこと、もっとハッピーにしたいから!」
そう。でも、忘れないでね。
みんなをしあわせにするなら、マールもしあわせでないとね?
「大丈夫。みんながいいしょだから、あたしのハッピー、いつも満タンなの。」
それなら安心ね。
……うん。安心したわ。
「あんしん? じゃあ、ハッピー?」
ええ。しあわせよ。……マール……私の天使……
これからも元気で……幸せでいてね……お母さんとの約束よ?
「うん♪ やくそく!」
ありがとう。マール……生きていてくれて――
ありがとう。愛してるわ……
幸せのしずく
…………ール……
「……ん……?」
……マー……マール……
「……呼んでる……だれ……」
マール……起きろ。
「……ん……おきる……?」
「ふわぁぁ……あふっ……」
「起きたか……」
「……あれぇ? ガレア……?
ここどこ……?」
「まだ劇場だ。」
「ふぇ……? げきじょー?」
「椅子がふかふかだと、公演が終わったのに、動かなかっただろ。」
「あれぇ……そだっけ……?」
「完全に寝ぼけているな。……大丈夫か?」
「大丈夫って、なにが……?」
「眠っている間、泣いていた。」
「え……?」
ガレアの言葉に目尻を拭うと、たしかに涙に濡れていた。
「ほんとだ……」
「なにか嫌な夢でもみたのか?」
「ゆ、め……」
言葉と共にマールの頬を、あらたな涙のしずくが流れ落ちた。
「お、おい、マール?!」
「だいじょうぶ……だいじょうぶだよ、ガレア。
あのね……とっても……とってもしあわせで、とってもステキな夢だったよ!」
「……そう、なのか?」
「うんっ♪」
「……ならいい。
そろそろ俺たちもここを出よう。閉められてしまう。」
「そうだね! あたし、これからやらなきゃいけないことあるし!」
「やること? なんだそれは。」
「それはもちろん――
みんなに特大のハッピーを届けにいくことだよっ♪
だってあたし、幸運の天使だもんね!」
――今宵、あなたのところにも、
小さな奇跡が舞い降りるかもしれません……
聖夜の奇跡 ~想いをとどけて~