【黒ウィズ】アイドルωキャッツ!! Story3-2
story リアル・ブラウンの弁当
『スナック くろねこ』。
きゃっつがアイドル活動を開始した頃に、ウィズが営み始めた紳士の社交場である。
どういう資金繰りをして、彼女が店を出せたのかは一切不明であった。
噂ではタイガー兄弟とのリンゴの密売で得た利益だと言われていたが、それも真実かはわからない。
だが、比較的安価な料金設定と、食べ物の持ち込みや出前の注文がオーケーというアットホームさで人気を集めていた。
ウィズは慣れた手つきでロックグラスに氷を入れて、2、3度マドラーでかき混ぜると、琥珀色の液体を注いだ。
それを人数分カウンターの上に用意すると、肉球でグラスを押し出した。
ウィズの腐った魚のような眼が鋭くきゃっつを睨みつけた。いつものように鼻息は荒かった。
少女たちは、気圧されるようにグラスを手に取り、恐れや不安もろとも、琥珀色の液体を流し込んだ。
ウィズは自分のグラスに入っためんつゆをひと舐めしてから、話を始めた。
アタイはこの世界のことを調べていたニャ。ここで人と繋がりを作り、情報を手に入れていたニャ。
そこでわかったことがあるニャ。この世界は、とても不安定に出来ているということニャ。
この世界では、人は容易に堕落し、ピュアを失い、〈ボエーナ〉に送られるニャ。そして容易に世界は滅亡するニャ。
ウィズは首を横に振った。
サンドイッチはただ売られているだけニャ。1度食べ、2度食べ、3度食べ、するうちに欲張りになっていくニャ。
人は自分の意思で滅亡しているニャ。このサンドイッチを売り出したヤツは、ただ、きっかけを与えているだけニャ。
アイラが事務所から与えられた携帯端末でネット検索を始めた。
悪魔はペオルタンひとりだけじゃないニャ。無数にいるニャ。人の欲望の数だけいて、世界を壊そうと暗躍しているニャ。
今回はその中の、誰かの仕業ニャ。
椅子を揺らして、リルムが立ち上がった。
ウィズは再びグラスの中のめんつゆを舐め、マホガニーのカウンターにグラスを置いた。乾いた音がした。
キャピタリズムでは、流行っている商品を駆逐するのは、より良い商品だと言われているニャ。
人々の欲望を別のものに向けるために、サンドイッチ以上のものを売り出せば、この流れを止められるかもしれないニャ。
***
yみんなー、パンケーキ出来たよー!
完成した新ラインから、焼き立てのバナナパンケーキが次々と生み出されていく。
その光景を眺め、労苦を共にした人々が、やんややんやと喜び、踊る。
騒ぎの渦中の中でも、ルカとユッカは冷静に次なる目標を確かめていた。
r次は作った物を売りに出さないといけませんね。具体的にどうすればいいのかというアイデアはありませんがー。
すると、緑の人が指さした。上を。
yうん。そうだね。まずは上に行ってみようか、ルカちゃん。
r上、行ったらーい! の精神ですね。ええ、行きましょう!
アイドルキャッツ!!
プロローグ
1 Heart break Work(初級)
無防備会議
2 キューリー(中級)
3 物販戦線異状アリ!(上級)
リアル・ブラウンの弁当
4 アイドル特攻大作戦(封魔級)
5 フルタイム・チケット(絶級)
6 番外編
7 嘘猫は眠らない