【黒ウィズ】シャロン・イェルグ
シャロン・イェルグ cv.雨宮天 |
2017/00/00 |
遠く、玉座から見下ろすその先に――宮廷に差し込む光の奥に。
そこに「世界」があることすら、シャロンは知らされていなかった。
神界の一つ「皇界」で、幼くして皇帝の座についたシャロン。
世に生を受けた瞬間から神輿としての宿命を背負い、
豪華絢爛、まばゆい宝石の散りばめられた檻の中で彼女は育った。
――右も左もわからぬ少女に、己の価値を計る術などあるはずもなく。
天子、傀儡、貴人、珠玉、象徴、玩具。
「座して居る」こと、ただそれだけがシャロンの価値。
宮廷は、何もかもが用意されていながら、何も与えられることのない孤独な牢獄。
彼女にとって、「世界」は意識の内側にのみ存在する冷たい虚空に過ぎなかった。
――あの日までは。
「皇の剣」が病に伏し、後を継ぎやってきた若き「剣」。
笑い、怒り、叱り、誉め、教え、育て……
「剣」によって与えられた温かき日々はやがてシャロンの虚空を満たし、彼女の視界は外へと向いた。
「わたし……もっと、色んなところに行って、色んなものを見てみたい」
無表情に、けれど優しくうなずく「剣」を見て、シャロンは無邪気にはしゃぎだす。
彼女に芽生えた小さな意志は、やがて皇界に大きな時代のうねりを巻き起こすこととなる――