【白猫】推参!エクストリーム忍者ガール! Story
2014/12/01 |
目次
登場人物
リンゴ
story1 覆水フェイドアウェイ
潜入、かんりょーう!
気を抜くなよミカン。ここは敵地、それも忍者屋敷だ。どんな罠があるかわからない。
だいじょーぶ、だいじょーぶ!えーっと、この屋敷のどっかにある秘伝のみかんを持ち帰るんだよね?
<秘伝のみかん>じゃない。<秘伝の奥義書>だ。
奥義書を手に入れ、敵の忍術を分析できれば、我が里は優位に立てる。そのための潜入任務だ。
……あのさぁ。
<そのための潜入任務>に、どーしてアタシたちがついてこなきゃいけないのよ。
ヒマそうだったから。
そんな理由!?
予定が空いてたのは本当だし、楽しそうだからいいんじゃない?
うむ、助かる。ではおまえたち、さっそく陽動として敵に捕まって我々の潜入を楽にしてくれ。
いきなりオトリ!?
あまり大声を上げるな、キャトラ。敵に気づかれたらどうする。
これが叫ばずにいられるかー!
あ、なんか変な縄があるよー。なんだろ? えいっ。
ミカンが謎の縄をグイッと引くと、けたたましいサイレンの音が屋敷中に響き渡り、あちこちに赤いランプが点灯する!
ってなにこの忍者らしからぬ設備!
いたぞ! 曲者APPEARS!かかれ必殺デストロ──イ!!
気づかれたか……!
ちょっと待ってあいつらホントに忍者!? おかしくない!?
ヤツらはれっきとした忍者……<邪悪暗黒忍群>だ!!
ぜんぜんれっきとしてない!!
あいにく、すでに改名を果たしている。昨今のグローバルなリゼーションに合わせてな。
<グローバルなリゼーション>とか言ってる時点でダメっぽいけど……なんて改名したの?
<アメイジングニンジャーズ>!!
ほらダメだ────!!
ダメダメうるさい!ユーシャルダァ───イ!!
ええい、こうなれば強行突破だ!全軍、我に続けぇ────っ!
アンタもアンタで忍者のセリフじゃないっ!!
story2 呉越ライドトゥザシップ
あれ? ミカンは?
どうやら、はぐれたようだな。今頃、敵に捕まっているだろう。
早くない!?
ヤツは昔から、忍ぶのが苦手でな。どうも、潜入するとテンションが上がるらしい。
こういうの、ちょっとわくわくするものね。
遊びで来てるんなら、それでもいいけどねぇ……
まったくだ。ヤツには、プロの忍者としての自覚が欠けている。
むう、それは困った話だな。おぬしも、さぞかし大変だろう。
まあ、な。いつもいつも、ヤツには困らされてばかりいる。だが──
『だが』?
ヤツには、何かがある。忍者にとって、大切な……何かが、な。
大切な、何か……潜入する度胸であるとか、使命感であるとか、か?
それもある。だが、それだけではない──それらもひっくるめた、本当に、<何か>なのだ。
あるいは、それは……ついつい、ヤツを助けやりたいと思わせる、そういう部分かもしれんな。
今はまだ、ヤツは自分自身の眠れる才能に気づいてはいない。だが、もしもそれに気づいたなら──
ヤツは──ミカンは、きっと、真の忍者として、一皮むけることだろう……
……楽しそうだな。
楽しそう──?ワタシがか?
フ……気がついていないのか?頬がゆるんでいるぞ。
おっと……やれやれ。ワタシもまだまだ甘ちゃんだな。
ともあれ、いくら将来が楽しみだと言っても、敵に囚われてしまっては元も子もない。
確かに。早く助けてやらないと──だな。
ああ。……行くぞ!
おう!
行くな!!!
story3 油断アーチエネミー
動くなよ、貴様ら!こちらには人質がいる!
ごめーん!つーかまっちゃったぁ~。
<縄でぐるぐる巻きにされたミカンがミノムシのように吊るされている!>
たいへん!どうしよう……
さあ、武器を捨てて投降しろ!今なら書き取り一万回ですませてやる!''
ぬるい!?
──シャクリ。
<リンゴは、余裕シャクシャクという表情で、りんごをかじる。>
<アメイジングニンジャーズ>と名乗っていても、そんなものか……その意味ではアメイジングだな。
貴様、ほめても何も出ないぞ!
アメイジングバカだ!!
そのりんごも捨てろ!この小娘がどうなっても──
小娘? おいおい、どこに小娘がいるというんだ?
なにっ……!?ハッ、まさか<うつせみの術>──!
<忍者があわてて振り返ると……>
みかん食っべよー。ぶらーん。ぶらぶらーん。
ってやっぱいるじゃん!
スキありザッパー!!
げはあっ!
<リンゴの投げた輝けるりんごが、忍者を吹っ飛ばして昏倒させる!>
フフ……真ちゅう製のりんごだ。痛かろう。
わーい、やったー!
ありがとねー、リンゴー!
15分23秒……捕まるまでのタイムが伸びたな、ミカン。
確かにおまえはダメ忍者だが……それでもめげずに努力する、その根性には光るものがある。
えへへ、照れちゃうな~。ぶらぶらーん。
フフフ……意外と、おまえのようなタイプこそ、将来、里を背負って立つ忍者となるのかもな……
<目を閉じて語り、リンゴは、懐から取り出した新しいりんごをかじる。>
シャクリぃぶぐはあっ!!
うわあっ!? な、なに!?どーしたのよ!?
ぐ、ぁああああああっ……!ま、まちがえた……!
これ、真ちゅうのヤツだぁ……!!
…………。痛かろう。
story4 馬耳イーストウィンド
今度はどこの忍者屋敷よ?
<アメイジングニンジャーズ>の屋敷だ。引っ越しました、というお葉書が届いてな。
矢文とかじゃないんだ……
あら? リンゴ、ミカン、それ、なぁに?
これはねー、引っ越しソバなんだー!
忍者が新居に引っ越したときは、お祝いに引っ越しソバを届けるならわしなのだ。
それでね、お互いに引っ越しソバを振るまって先に食べさせた方が勝つの!
相手もソバくれるの!?
ていうか勝ち負けとかあるの!?
どちらの忍術が上か、はっきりさせておくためだ。
だから、気をつけて進め。
いかにも<どうぞ>という感じでソバが置かれていても食うなよ。失格になってしまう!
毒があるからとかじゃないんだ。
? ソバに毒なんて仕込んだら、食べられなくなるだろう。食べ物を粗末にするヤツがあるか。
なるほど──これがブシドー……!
忍者にいらないハズのヤツね。
とにかく、注意してくれ。怪しいソバを見かけても喰わない。いいな?
わかったー!
ずぞー、ずぞぞぞぞー。
なんで速攻で喰うとんのじゃ──!
ずぞ────ん!
リンゴに吹っ飛ばされ、ミカンは夜空の星となった。
クッ、さっそく1人、脱落とは……<アメイジングニンジャーズ>め、どうやら腕を上げているな……!
楽しそうね。アンタたち。
story最終話 梁上メテオストライク
ここまでたどり着く忍者がいようとはな……
だが……このビッグマウス・コタロウにソバを喰わせられると思うなよ!
<ビッグマウス・コタロウは、一瞬にして十人に分身し、こちらを取り囲んできた!>
分身した!
ククク、どれが本物か──
バーンナップ。
ギャー!
範囲攻撃で一発だった!そりゃそうだ!
フ、打ち合わせ通り。よくやってくれた、アイリス。
いいのかしら、いろいろと……
威力は抑えたから、けがはしてないと思うけど。
問題ない。この男が分身の術を使うという情報は、広く出回っていた。対策を打っておくのは当然だ。
秘密の奥義じゃないのね……さすがビッグマウス……
あっけない……いや、それだけ、ワタシの技量が上だった、と言うべきだな。
事前に敵の情報を集め、作戦を組み立て、つつがなく遂行する……
この戦術眼、極めれば一軍をも翻弄する武器となろ──
スキあり!
むぐーっ!?
床板を割って現れたコタロウが、リンゴの口にソバを叩き込んだ!
どうかね、我がソバの味は!! コシがあってうまかろう!!
バカな……ほどよい噛みごたえと濃厚に広がる深みのある味わい、さらにツルリといく最高の喉ごし!確かにうまい……!''
じゃなくって。
ハッ! そうだった。
ビッグマウス・コタロウ、おまえは確かに倒したはず──!
ククク……分身を出すだけ出して、本体は床下に逃げていたのだ。
分身の術が得意だと吹聴すれば、対策を打ってくると思ってな。
そして、勝ったと思い油断したスキを突く……貴様、ただのビッグマウスではなかったわけか!
口が大きいのは本当だがな!わーっはっはっはっは!''
ソバ食っべよー!
がはあっ!?
<天井から現れたミカンが、リンゴのソバを、コタロウの口にラッシュで叩き込んだ!>
な、なぜだ……貴様は我らのソバを喰って脱落したのではなかったか!?
へへー。アレは、あたしが持ってきたソバでしたー!おなか、空いちゃってさ~。
なるほど──ルール上、自分のソバを食べたなら失格にならない……考えたな。
いちおうコレ引っ越しソバだってこと、完全に忘れ去ってない!?
よくやった、ミカン。これで我らの勝利だ……今回はおまえに助けられたな。
えっへん! あたしだって、がんばってるんだからね~!
力を合わせてヤツの策を破る、この的確な連携──
ワタシとおまえ……ひょっとすると最高のコンビかもしれんぞ──
単なる結果オーライだったでしょ。力とかぜんぜん関係なく。
……<結果オーライ>力?
運じゃん!!