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【アナデン】レイヴン Story

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん
アナザーエデン・サブストーリー 「レイヴン編」
闇と死の力を追求する魔法使い。
過去の記憶がなく傷ついた顔を仮面で隠し他人を寄せつけようとしない。研究の邪魔をされたくないため単独行動を好む。
2017/04/12

目次


Story1



Story2 恋人の行方

サルーパで恋人を捜している女性がいる。彼女の恋人は魔物のことを調べる危険な旅をしていたという。



story1



「……うわぁぁああああーーっ!」


「な、何だ?今の悲鳴?」

「酒場のほうから聞こえたな。おおかたどこかの酔っ払いが暴れてでもいるんだろう。」

「行ってみようレイヴン。何があったのか気になる。」

「よせ。放っておけばいい。俺たちには関係のないことだ。」

「そんなに冷たいこと言うなよ。だったらオレひとりで行く。」


「……やれやれ。どうしてそうまでして厄介ごとに首を突っ込みたがるのか。まったくもって理解に苦しむ。」


***


「ううっ。お、恐ろしい……恐ろしい!」

「どうしたんだ大丈夫か?さっきの悲鳴はあんたなのか……?」

「あの宿には……泊まるな……殺される……夢の中で……殺される……!」

「……わかったかアルド。俺の言った通りだ。酔っ払いのたわ言だろう?」


「なあ、あんたら。悪いことは言わないからそこのお客さんには関わらん方がいいぞ。

旅の商人らしいが宿屋に泊まって恐ろしい悪夢にうなされてからずっと眠れなくなってるんだとさ。

また悪夢を見るのが怖いと言ってな。はぁー、いい歳した大人が情けない。」

「うるせえぞオヤジ!あんたはあの悪夢を見てねえからそんなことが言えるんだ!

あれはただの夢じゃねえ。まるで現実に体験したような感覚だった。俺は夢の中で殺されたんだっ……!」


「まるで現実のような悪夢……か。

おい、酔っ払い。詳しく話を聞かせてみろ。貴様の見たという悪夢に興味がわいた。」

「あ、ああ……俺はあの日この街の宿屋に一泊したんだ。悪夢はその夜に見た。

妙な気配はしてたんだよ。宿屋にいるだけで嫌な寒気がしてな。」

「そのときお酒は?今日みたいに酔いつぶれて妙な悪夢を見たってことはないのか?」

「ばかやろう!俺はあの日一滴だって酒は飲んじゃいねえよ!

そ、それに!悪夢を見たのは俺だけじゃねえ!その日宿に泊まった連中は皆悪夢を見たんだ!」

「ふむ……なるほど。どうやら単なる酔っ払いのたわ言ではないらしい。」

「お、おいレイヴン!急にどこへ行くんだ!?」

「決まっている。その男が泊まった宿屋だ。これ以上の詳しい話は宿屋の店主から聞き出すとしよう。」


***


「……いらっしゃいませ。本日はこちらにお泊まりですか?」

「……悪いんだけどオレたちは客じゃない。ちょっと聞きたいことがあるんだ。」

「……ここに泊まった客が見たという悪夢についての話だ店主。知っていることを全部話してもらおう。」

「……っ!!あ、悪夢?いったい何の話でしょう?ウチには心当たりなんて……。」

「ほう?何も知らないだと?この宿に泊まって悪夢を見たと騒ぐ男が酒場にいたんだがな?」

「たまたまですよそんなの。旅の疲れで悪夢を見るお客さんぐらいどこの宿屋にだっているでしょう?」

「ふん……では宿帳を見せてもらおうか。」

「なっ!お、お客さんちょっと!」


「ずいぶんと空室が目立っているな。ここ三日客足が途絶えているようだが。」

「…………。」

「本当のことを話してくれないか?もしかしたらオレたちが何か手助けできるかもしれない。」

「……わ、わかった。話すよ。本当は誰かに助けてほしかったんだ。

しばらく前からだがどういうわけかうちの宿に泊まった客は皆恐ろしい悪夢にうなされるようになったんだ。

それが噂になったせいで客も寄り付かなくなってしまった。」

「宿に泊まった者全員が悪夢を見る、か……。ふふっこれは面白い。」

「面白いって……。困ってるみたいだしオレたちで原因をさぐってみよう。」

「当然だ。とりあえずこの宿に一泊すれば何かつかめるだろう。」

「だったらあんたたちが泊まるときは店員ではなく私のほうに言ってくれないか?

悪夢の件をなんとかしてくれるならタダで泊まれるように手配しよう。」


***


「それじゃあ一番いい部屋を用意するよ。ははっ……どうせ他に泊まり客はいないんだし。」

「……本当に悪夢なんて見るのか?まあ、悪夢っていっても夢は夢だ。心配することはないよな?」

「さあな。たとえどんな悪夢を見ても貴様の責任だアルド。酒場に入る前俺の忠告を無視したのは貴様だぞ。

覚悟を決めろアルド。」


***


「……ぐっ!……がはっ!?」

「フィーネ!?や、やめろーーー!!」


***


「……ひどい顔だなアルド。どうやら話は本当だったらしい。」

「ああ、そうだな……。ひどい夢だった。」

「貴様はどんな悪夢を見た?」

「夢の中で森にいたオレは体が動物になっていて妹のフィーネと遊んでいた。

そこに巨大な魔物がやってきて目の前でフィーネを……うっ!いま思いだしても気分が悪い。

当然オレは魔物に向かっていった。だけど動物の体では結局何もできず魔物に……。」

「なるほどな。身内そして自分がやられる夢か。」

「レイヴンはどうだったんだ?何か悪夢を見たんだろ?」

「ああ見た。俺は見たこともない山で何かを待っていた。ところが急に得体のしれない黒い影に襲われた。

その黒い影を追い払おうとしているうちに崖下へ転落して……。というオチだ。

あの山……なぜか既視感があったな。」

「見たこともない山なのに既視感を感じたのか?」

「今の記憶には無い山だったが……。もしかすると記憶を無くす前に行ったことのある場所なのかもしれん。」

「レイヴンは昔の記憶がなかったのか……。」

「とにかくこの宿で見る悪夢には共通点があるようだ。

俺も貴様もあの酒場の酔っ払いも死に関する悪夢を見せられている。……これは偶然か?」

「それってつまり何者かが意図的にオレたちに死の夢を見せているということなのか?」

「俺はそう睨んでいる。あの夢の独特の気配といい間違いない。これは呪いの類いだ。

おそらくこの宿のどこかに呪いを発生させる呪物か何かがあるはずだ。探してみる価値はあるだろう。」

「よし!何か怪しいモノがないか宿屋の中を調べてみよう!」


***


「……待てアルド。そのツボには触れるな。」

「このツボがどうかしたのか?別にこれといって変わったところはなさそうに見えるけどな……。」

「貴様は感じないのか?こいつを中心に漂う陰湿な死の気配を。

……我が闇の声に応じよ。憑り代に宿りし呪われた魂よ。我が前に姿を現せっ!



「こ、こいつは!もしかしてこの怨霊が呪いの正体なのか!?」

「そうだ!こいつを倒せば悪夢は消えるはずだ!」

「よしっ!外におびき寄せて戦うぞ!」


***


「やったのか……?」

「ああ、これで呪いは解けるはずだ。」


「おおっ、君たち!さっきのはいったい何だったんだ……!?」

「この宿を呪っていた怨霊だ。だが期待したよりも低級な霊だった。まったくつまらん。

もっと凶悪な怨霊なら少しは楽しめたものを……。」

「怨霊を退治したということはもうウチの宿の客が悪夢を見ることはなくなったのか?」

「ああ。呪いの原因は宿に飾られたツボだ。

どこで手に入れたのか知らんが低級な怨霊が憑りついていた。」

「そ、そうだったのか……。あのツボは旅の商人から安く売ってもらったものだったんだ。

なんでも貴族が住んでいた廃墟に飾られていた値打ち物のツボと聞いていたんだが……。」

「おおかたその廃墟も怨霊の仕業だろう。馬鹿な貴族を呪い殺そうとしたヤツのしわざかもしれん。

これからは出自のわからない品は買わない方が身のためだ。まあ死にたいなら止めはしないがな。」

「うっ……わ、わかった。これからは注意するよ。世話をかけたなあんたたち。」


「………………。」

「どうしたんだよレイヴン。うまく片付いたのに浮かない顔して。何か気になることがあるのか?」


(……俺の見た悪夢。

もしかするとあれは……。

俺が失った記憶の断片……か?)


「……わからん。なぜそんなことを考えてしまうのか……。」

「なんだよレイヴン。ひとりでブツブツ言ってないで話してくれよ。」

「なんでもないと言っただろう。あまり俺に関わるな。貴様とこれ以上馴れ合うつもりはない。」



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story2恋人の行方



「……あ、あの!すみませんそこのおふたり!

その……もしかしてあなた方は旅のお方ですか?」

「ああ。何かオレたちに用があるのか?」

「は、はい!私人を探しているんです。旅のどこかで魔物について調べていた男性に会ったりしませんでしたか?」

「いやそんなヤツは知らん。他を当たってくれ。」

「ほ、本当に知りませんか?そんな人がいたっていう話だけでも聞いたことなどは?」

「くどいぞ女。知らないと言っているだろう。さっさと消え失せろ。」

「おいレイヴン!そんな言い方はないだろ!

えっとクチの悪いヤツでごめん。オレで良ければ力になるよ。詳しい話を聞かせてくれないか。」

「ちっ……また貴様は。余計な人助けに首を突っ込んで……。」

「それで?男の人を探しているんだったな。」

「は、はい……。探しているのは私の恋人です。彼は各地で魔物の研究をしていました。

彼はいつも魔物を探して大陸中を飛び回っていたんです。でもその間こまめに手紙を送ってくれました。

だけどここ最近彼からぱったりと手紙が届かなくなってしまって……。」

「ふん……魔物の研究者が行方不明か。結論はわかりきっている。どこかで野垂れ死にでもしたんだろう。」

「やめろよレイヴン!彼につながる手がかりはあるのか?」

「彼から最後に届いた手紙があります。私にはよく意味がわかりませんが『闇の渦』がどうとか書かれていて……。」

「……待て。闇の渦だと?おい女その手紙を見せてみろ。」

「なあレイヴン。『闇の渦』ってなんだ?」

「詳しいことはわからん。だが闇の力を凝縮したような存在というのを聞いたことがある。」

「ふうん。それで手紙にはなんて書いてあるんだ?」

「……どうやらこの手紙によるとこの男は闇の渦について何らかの新しい発見をしたようだな。

ふっ……面白い。おい女。貴様の男を探してやる。感謝するんだな。」

「ほ、本当ですか?」

「だけどどうやって彼を探すんだ?この手紙だけじゃ手がかりが少ないぞ。」

「いやどうやらアクトゥール周辺で調査をしていたらしい。それを匂わせる記述があるからな。」

「そうか。それじゃあアクトゥールでいなくなった彼の目撃者を探そう。」

「お願いします。どうか彼を見つけてください……。」

「ああわかったよ。見つけたら必ず連れ帰ってくるから!」


***


「なんだお前たち?何か用か?」

「人を探している。魔物について調べていた研究者なんだが心当たりはないか?」

「魔物の研究者…………ああそいつなら知ってるぞ。ちょっと前までこの街にいた。」

「その人はいまどこにいるんだ?」

「うーんそういえば最近は姿を見ていないな。

ちょっと前に人喰い沼に住む魔物を調査するとか言っていたからそこにいるのかもしれんな。」

「人喰い沼か。調べてみる価値はありそうだな。」

「ああ。急いで人喰い沼に行ってみよう。彼が心配だ。」


***


「……おーい!誰かいないかー!」

「……!アルド!ちょっとこっちへ来てみろ。」

「どうした?何か見つかったのか?」

「見てみろ。この 落ちているメモ書きを。魔物について書かれている。

「……ってことはそのメモは行方不明の彼が書いたものか?

「おそらくそうだろう。

男は闇の渦によって魔物と精霊にどのような影響が生じたか調べていたようだ。

……闇の渦は魔物と精霊を狂わせ様々な影響を及ぼすか……。なるほどな。だがそんなことが……。」

「魔物や精霊を……?

もしかすると闇の渦って……サラマンダーに取り憑いていたアレのことか!?」

「……男は調査を進めるために沼のさらに奥に入ったようだ。」

「よし奥に進むぞ!早く彼を探そう!」


***


「……止まれアルド。」

「なんだ?どうかしたのか?」

「辺りを警戒しろ。この死臭……それにこの気配……っ!!」


***


「もう大丈夫だな。それじゃあ行方不明の彼を探すか。」

「いやその必要はなくなった。これを見ろ。さっき倒した怪物が持っていたメモだ。

筆跡が同じだ。このメモを書いたのは魔物を研究していた男に間違いない。」

「じゃあさっきのは彼の最期の姿なのか!?」

「……哀れなモノだな。ミイラ取りがミイラになるというのは。」

「まいったな……。サルーパの彼女になんて伝えたらいいんだ……。」

「何を今さら。この話を聞いた時から覚悟はしていただろう。

それにしてもくだらんメモだな。闇の渦についてのことは何も書いてない。あの女のことだけだ。」

「……!だったら!そのメモを彼女に渡そう!彼の最後の想いを伝えてあげるんだ!」


***


「あっ!あなたたち!あの人は見つかりましたか?」

「ああ。ヤツなら見つけたよ。人喰い沼にいた。」

「ほ、本当に!それで!あの人は今どこです?いっしょに帰ってきたんでしょう?」

「ヤツはもういない。この世のどこにもな。」

「えっ?いない?いないって……どういうこと……?」

「じつは……」


***


「……そしてこれが彼が死後もずっと手放さずに持ち続けていた最後の手紙だ。」

「……これがあの人からの……最後の手紙……。」


リザ愛してる。リザすまない。

魔物に襲われた。苦しい。

もう僕はダメだろう。


リザリザリザ君の声が聞きたい。

最期に聞きたい。愛してると言ってくれ。

リザ君を愛している。


リザ幸せになってくれ。

苦しい苦しいリザ助けてくれ。

リザ声が聞きたいリザリザ。


「ううっ……。」

「手紙というよりは遺言に近いな。死の間際に思ったことを書きなぐったのだろう。」

「彼を助けられなくてごめん。」

「……いいえ。あの人の最期の想いだけでもこうして届けてもらって……。

本当は……わかっていたんです……。彼が死んだってことは……。

魔物の研究なんて危険な仕事です。いつ死んでもおかしくないとそういう覚悟だけはしていました……。

本当に……ありがとう……ございました。」

「…………。」

「……ごめんね……声……聞かせられなくて。

私もあなたの声……もう1度だけ……

聞きたかった……。」


「……おい!ちょっと待て!…………声だけでいいんだな?

「えっ!?レイヴン……?」

「俺はネクロマンサー。闇の魔法使い。

冥府を閉ざす扉の鍵を開け死者の魂を呼び寄せることができる。」

「ほ、本当ですか……!?」

「だがいいか?できるのはこの一度きり。そして時間も短い。」

「……それでもかまいません!

もう一度あの人と話ができるなら!」

「……いいだろう。」


「…………まぶしい。」

「えっ……その声………あなたジャックなの!?」

「……リザ……?」

「ええそうよリザよ!信じられない!ああジャック!本当にジャックの声だわ!」

「ああ嬉しいよ……もう一度リザの声を聞くことができるなんて……。愛してるリザ……!」

「私もよジャック!愛してる!

何度でも言うわ。あなたがいなくなるまで何度でも何度でも……!」


 ***


「リザすごく喜んでたな。レイヴンにもあんなに礼を言ってさ。」

「……くだらんことをした。」

「くだらんこと!?だったらなんでやろうと思ったんだ?」

「ふん。単なる気まぐれだ。もう二度とやるつもりはない。」

「ははは。そうかな?レイヴンはまた気まぐれを起こしそうだけどな。」

「……だとしたらそれは気まぐれではない。愚か者になったということだ。

……貴様のような愚か者になアルド。」





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