【アナデン】レレ Story
いつも走り回っている元気印の魔法使い。 大賢者と呼ばれた魔法使いの孫だが見るだけで祖父の魔法のほとんどを覚えてしまった天才児。ただあまりに世間知らずで力の使いかたを知らないため祖父から見聞の旅を命じられている。 |
2017/04/12 |
目次
ラトルの街に口がうまくてうさんくさい商売をしている男がいる。
明らかに詐欺師だと思われるのだが……。
story1
「うん。今日もいい天気だな。」
「ねえねえアルドくん! 今日はなにするの? なにするのっ?」
「おいおい。レレ。もう少し落ち着いてくれよ。みんな見てるぞ。」
「え? 見てるとダメなの? 目立つっていいことじゃないの?」
「いや、悪い意味で目立つというか……。」
「あれ? でもなんで見てるのかな。アルドくんが格好いいから?」
「オレ!?」
「剣とかシャキーンって差してるし。いつも格好いいのー♪」
「きゅ……急になに言ってんだよ。さあ行くぞ。」
「あ! ちょっと待って!」
「あれー! きみどうしたのー?」
「……な~ご……」
「大変なの! すっごく悲しそうなの! 助けるのー!」
「ヘ? いまの猫のこと?」
「そうなのー! いっしょに追いかけよーアルドくん!
きっとまだこの近くにいるはずなのー!」
***
「どうしたのかニャー? レレでよければ力になるから話してほしいニャー。」
「にゃーん……」
「ふむふむニャン。なるほどニャン。」
「レレ……何やってるんだ?」
「ミミちゃんは家族とはぐれたらしいのニャン。」
「……は?」
「ミミちゃんはこの猫ちゃんニャー……ってあれ? 猫ちゃん言葉のままだった! 恥ずかしい!」
「いやいや! そこはいいけどレレは猫としゃべれるってことか?」
「アルドくんはしゃべれないの? じいじはこれも魔法っていうけどただの猫ちゃん言葉だよ。」
「そんなんじゃ普通しゃべれないぞ。やっぱり魔法だろ?」
「でもレレはしゃべれるの。」
「まあレレがすごいってことか。」
「そう? えヘヘなんか照れちゃうの。アルドくんありがとニャー。
はれれ!? 変なの。また猫ちゃん言葉が出ちゃった。」
「とにかくその猫が家族を探してるってことか?」
「うん! だからレレ探すの手伝うの! アルドくんも手伝ってくれる?」
「ああ、いいよ。レレだけじゃ心配だから。親猫か兄弟の猫を探すんだろ?」
「ありがとうなの! アルドくんやさしいのー!
じゃあじゃあもっといっぱい頼んで手分けして探すのー!
まずはこの街のボス猫さんに話さないと! なの!」
『にゃーん……』
「あっちにいるみたいなの。アルドくん行くのー♪」
***
「あ! こんにちはニャー! お願いがあるニャン!」
『ぶぎゃにゃー』
(ぶ、ぶさいくな鳴き声だな……)
「ちょっと助けてほしいニャン!」
『ぶにゃにゃー』
「そんなこと言わずにニャン! 1本2本ん~太っ腹に3本ニャン!」
『ぶにゃ』
「本当? ありがとニャン!」
(はたから見ると不思議な光景だな)
『ぶにゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』
「みんニャー! この子の家族を探してほしいニャー!」
『ぶぎゃにゃーぶにゃにゃ!』
「これで大丈夫ニャー。……じゃなかった大丈夫なのー!
「こんなふうに猫に仕事を頼むなんてやっぱりこれ魔法だろ?
「んん? よくわかんないの。でもじいじはね……
『使役魔法っぽいが操るのではなく猫が自分で考えて行動する……ふむ?
レレの力が特殊な使役魔法なのか本当に猫とお友だちになっているのかワシにもさっぱりじゃ。わははっ!』
……って言ってたのー!
じいじはねすごい魔法使いなの。だからじいじがわからないならレレにわかるはずがないのー。」
『にゃーん』
「なにかわかったかニャ?
『にゃにゃーん』
「ふむふむニャ。わかったニャー! ありがとニャン。」
「……アルドくん! ミミちゃんの家族をティレン湖道で見た猫がいるって!」
「ティレン湖道か。よし行ってみよう。」
***
「………きゃああああああ!!」
『にゃーーーーーっ!!』
「ミミちゃん!?」
「レレ! 追いかけよう!」
「た、助けて。うぅ、ミミちゃん……」
『にゃーーーーー!!!!』
「ミミちゃん……? うそ……夢……?」
『グルルルルルル……』
「レレたちも来たのー! ぎゅーーーーん!!」
「ここはオレたちに任せろ!」
「あ、ありがとう……!」
「どうしてひとりでこんなとこにいたんだ?」
「あたしラトルに引っ越したの。でもミミちゃんとはぐれちゃって。
危ないからダメって言われたけどないしょでミミちゃん探しに……。」
『にゃー♪ にゃー♪』
「やっとミミちゃんに会えた!」
「家族に会えて良かったニャン。今度ははぐれちゃだめニャー。」
『にゃにゃ! にゃーん!』
「でも……飼い猫だったんだな。飼い主じゃなくて家族だって思ってたのか。」
「えヘヘ、会えてよかったの。」
「お兄ちゃんたちが連れてきてくれたんだよね?」
「オレはついてきただけだ。ほとんどこのお姉ちゃんのおかげだよ。」
「ありがとうお姉ちゃん! お礼にあたしのリボンあげる。」
「お礼? なんでなんで?」
「ミミちゃんと会わせてくれたから。それに助けてくれたもん。」
「ふふふふ、変なの。困ってる人を助けるのは当たり前のことなの。お礼なんていらないの。」
「え~!? じゃあ、えっとね、プレゼント!」
「プレゼントなの?」
「うん、お姉ちゃんのこと好きだから!」
「えヘヘ、それならうれしいの。大切にするの♪」
『にゃーにゃー』
「お? なんだ? お前も家族が見つかって良かったニャー!
……なんてな。ははは!」
(……ありがと……)
「え……!?」
『にゃーん』
「じゃあ、ばいばい! ありがとね!」
「……それにしてもレレ。猫たちに手伝ってもらったらすぐに見つかったな。
猫の手を借りられるってけっこう便利だぜ。」
「でもでもアクトゥールの猫ちゃんたちに今度ソーセージ三本ずつあげないと! なの。
手伝ってもらうとき約束したのー。」
「タダじゃないのか!? ちゃっかりした猫たちだな!
……だけど、まあ、はやく見つかったからなによりか。」
「なによりなのー♪」
story2 信じることの報酬
「ラトルの街って面白い模様がたくさんあるのー。
……そうだ!せっかくだからじいじにおみやげ買うのー!」
「じいじってレレのじいちゃん?」
「そうなの!レレはじいじに言われていろいろな場所を旅してるの!これもしゅぎょーらしいの。」
「ふうん。そうだったのか。それでじいちゃんはどんな土産をほしがってるんだ?」
「えっとねじいじが言ってたのは『おみやげは地域限定のえっちな本がイイのう。うひひ』だったの。」
「とんでもないじいちゃんだな。」
「うん。じいじすごいのー!昔きゅてーまほーつかいで大賢者って言われてたのー!
レレじいじみたいな魔法使いになりたいからしゅぎょーしてるの!」
「わかったよ。とにかく少しはまともな土産を探そう。」
「いっしょに選んでくれるの!?やったーアルドくん優しいの!」
「ラトルの街へようこそ!お嬢ちゃんちょっと見てってよ。」
「なになに?なに見せてくれるのー?」
「めずらしいモノいろいろだよ。ラトル土産にどうだい?ほら!この宝石なんてキレイだろ?」
「わ~とってもキレイなの!」
「それほんとに宝石か?ちょっとよく見せてくれよ。」
「ダメだよ!汚い手で触られたくない。見るだけにしといてくれ。」
「なんだかあやしいな。……ここはやめとけレレ。」
「これ買うのー!」
「まいどー!お嬢ちゃんお目が高いね。
こいつは特別なルビーでね。ちょいと値は張るがいいものだよ。」
「なあレレ。いきなり買わないでちょっと……」
「じゃあ、お金もらってほいっと。それじゃあ、まいどありー!」
「わーい!いいものが買えたのー!」
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫ってなにがなの?
……あれ?手がベトベトするの。」
「おいそれ溶けてないか!?
甘い匂いもするし……ただのアメ玉じゃないか!」
「アメ玉……?宝石じゃないのー?」
「くそっやっぱりか!さっきのヤツを追いかけよう!
あっちの方向だと……ナダラ火山に向かったのか。だましとられた金を取り返さないと!」
***
「へっへっへ!だいぶ貯まったな。」
「こんな場所に金を隠していたのか?」
「……あっ!てめえら!ちょっとだましたぐらいでしつこいヤツらだな!」
「おじさんだましたの?」
「へっそうだよ。まんまとだまされやかって。バカなガキだぜ。」
「……なんでなんで?なんでおじさん悪いことしたの?
悪いこと好きなのー?昔から悪いことするのが夢だったの?」
「ゆ、夢?俺の……は……
……って!う、うるせぇこのガキ!なんて言われようと金は返さねえぞ。
おいお前たち!出番だぞ!!」
「こいつ……魔物を飼い慣らしてるのか!?」
「番犬がわりさ。俺がいない間にお宝を取られちゃたまらねえからな。
……そらやっちまえ!」
***
***
「な、なんて強さだ!てめえら化け物かよ!?」
「レレからだましとった金をおとなしく返せよ。」
「い、いやだ!俺が必死で貯めたんだ!」
「ねえねえ、おじさん?なんでそんなにお金を貯めるの?」
「どうせ遊ぶ金がほしいとかそんな理由だろ。気にすることないよレレ。」
「アルドくんの言う通りなの?」
「そ、そうだよ。図星……いや!
ち、ちがうんだよ!実は俺には病気の妻がいて……医者にかかるのに金がいるんだ!」
「お嫁さんが病気!?大変大変それは大変なの!!」
「あんた……見苦しいぞ?いま思いついたウソなんだろ!」
「いやぁ……ウソじゃねえって。ヘヘお嬢ちゃんなら信じてくれるだろ?
もう毎日毎日妻は苦しそうで薬代もバカにならねぇ。まっとうに働いても金が足りねぇんだ。
だから悪いことだってのはわかってても仕方なくやってたんだよ。あーつれぇ!毎日つれえよぉ……」
「だったらレレのお金みんなみんなあげるのー!」
「おい、レレ!?」
「レレのお金あげるから、他の人からだましとったお金はちゃんと返してあげてね?」
「す、すげえ大金だ!おまえどこの金持ちの娘だよ!?」
「じいじが旅のためにくれたの。」
「マジかよ!ヘヘヘヘっっ、よくわかんねえけど助かるぜ!
……あばよっ!!」
***
「はぁ……。」
「どうしたの?アルドくん。ため息は幸せが逃げちゃうのー!」
「レレはもう少しだけ疑うことを覚えたほうがいいよ……。」
「なんでなんで?じいじも前に『信じる者は救われる。だからレレ必ず返すからちょっとだけお金を貸してくれんか』って言ってたの。」
「聞けば聞くほどレレのじいちゃんろくでなしなんだけど。本当に大賢者なのかよ?
まあいいや。たしかに信じることも大事だよ。だから確かめに行こう。」
「うん。そうするのー!病気のお嫁さん心配だからー!」
「そうだな。病気のお嫁さんがいてくれればいいんだけど……。
……もうラトルに戻るとは思えない。アクトゥールに行ってみるか。」
***
「どうしたのアルドくん?ここはお酒飲むところだよー。」
「さすがにここまでバカじゃないと信じたいけどな。念のため調べとこう。」
「うんいいよー!信じることはいいことなのー!」
***
「……おーいマスター!じゃんじゃん持ってきてくれ!
いいカモがいたんだ!適当なウソで大金がっぽりだったぜ!
「あんた……つくづく困ったヤツだな。」
「げっ、てめえら……!」
「さっきのウソだったの?」
「う、うるせえ!だまされるほうが悪いんだ。」
「本当にウソだったの?病気のお嫁さんいないの?」
「へっ!いるわけねえだろ!」
「…………そっか。」
「レレ、ショックなのはわかるけど、これに懲りたら……」
「良かったの!レレ、うれしいの!」
「ええっ!?」
「とことんバカなお嬢ちゃんだな。だまされてうれしいだと?」
「だって病気のお嫁さんいないんでしょ?苦しんでる人いなくて良かったの!」
「そうか……うん。それはそうだよなレレ。」
「本当に良かったの♪」
「なんだよ……なんなんだよ……
うう……くそぉ……簡単に……だませたのに……そうだよ……俺だって昔は……くそぉ……
なんなんだよ……だました……俺のほうが……なんで……こんな……気持ちに……くそぉ!
「……あれれ?おじさんなんで泣いてるの?
ほんとはやっぱり病気のお嫁さんいるの?」
「いやしないよ!だから……さっきのお金はお嬢ちゃんに返す!」
「なんでなんで?だましてお金を取るのがおじさんの夢だったんじゃないの?」
「ちがうんだ。おじさんの夢はもっと違ったんだ。お嬢ちゃんに思い出させてもらった。
他のみんなからだましとった金もちゃんと返すよ……。」
「わかった。今度はオレもあんたを信じてみる。
ほら行きなよ。金を返しに……さ。」
「ああ、すまねえな。ありがとよお嬢ちゃん。」
「ねえアルドくん?なんでレレがお礼を言われたの?」
「レレが掃除してくれたからだよ。おじさんの心の中を。」
「ふうん?レレお掃除きらいなんだけどなー。変なのー!」
「それじゃあ、今度こそラトルに戻ってちゃんとした土産を探しにいこう。」
「うん。わかったー!ありがとうアルドくん~!」