【アナデン】セヴェン Story
臨時彼氏
同級生の娘に声をかけられたセヴェン。
彼女はとある男に言い寄られ困っているという……。
異端の科学者
セヴェンは彼の能力に興味を抱く科学者と出会う。
アルドの勧めもありセヴェンは彼の研究に協力することに……。
臨時彼氏
「セヴェン?ねえあなたセヴェンよね?」
「お前は……ああえっと誰だったっけ?」
「ひどいわ!クラスメイトに対して『誰だったっけ』はないんじゃない?」
「セヴェンこの人は?」
「ああこいつはオレの同級生ってやつだ。」
「同級生?学校の?」
「そうよ。IDAスクールで一緒なの。といってもセヴェンったらほとんど学校には来てないけどね。」
「ふん!あんな胸くそ悪いところ行く気にもならないね。」
「学校のみんなも心配してるよ?そろそろ顔を出してみたら?」
「オレは誰かの言いなりになるのが大っ嫌いなんだ。あんな頭の悪い教師たちに指図されるのなんてごめんだね。」
「ふう。もういつもこんな調子なんだから。」
「お前こそオレみたいな問題児と話してるとマズイんじゃないか?」
「そんなことは別に気にしてないけど……
それより私いま困ってることかあって協力してほしいんだけど。」
「なんだそれ?お前いまオレが言ってたことを聞いてなかったのか?」
「あ!もうこんな時間!待ち合わせの時間に遅れちゃうから先に行ってるね。あとでガンマ区画に来てね!必ずよ!」
「あっ!勝手に決めるなって!」
「まったく……いったいなんだってんだよ。」
「困ってることってなんだろうな?」
「知らないよ。興味もないね。」
「同級生なんだし行ってあげた方がいいんじゃないか?」
「はぁ……まったくお人好しというかなんというか……
わかったよ!行ってやればいいんだろう?」
「じゃあ、あとでガンマ区画に行ってみよう。」
***
「セヴェン!よかった!来てくれたのね!」
「オレの連れがどうしても行けって言うからまあ仕方なくね。
それでいったい何を困って……」
「お前セヴェンじゃないか!」
「ん?……誰だ?どこかで見た気もするけど……。」
「セヴェン彼も同級生よ。覚えてないの?」
「……いたっけ?そんなヤツ。」
「こいつは驚いたな!まさかクラスメイトの顔を忘れるとはね!
まあ不登校野郎だから仕方ないか。」
「フン……意味もなく通ってるようなやつに言われたくはないね。」
「なにっ!?……おっとっと!今日はお前と話をしに来たんじゃないんだ。
さあ約束通り返事を聞かせてくれよ。」
「……確かにあなたは顔もいいしクラスでも人気者。
ついでに言えば裕福な家の跡取り息子だわ。」
「そうさ!オレと付き合えば幸福になれること間違い無しさ。だから……。」
「でもダメなの。だって私もうセヴェンと付き合っているんですもの。」
「なッ!!セヴェンと……付き合ってる!?」
「セヴェン!い、いつの間に!?」
「い、いや……ちょ……ちょっと待ってくれよ!」
「というわけであなたへの返答はノーよ。」
「いったいどういうつもりだ!オレを巻き込むなよ!!」
「声が大きいわセヴェン。私が困ってることってこのことなのよ。
私どうしても彼と付き合いたくないの。だから私の話にうまく合わせて。」
「だからってなんでオレが?」
「あなたぐらいしかこういうこと頼めそうな人がいなかったのよ。
それにこんな可愛い同級生が困ってるんだから協力ぐらいしなさいよ。」
「最初から巻き込むつもりだったな……。」
「どういうことだよ!そんな嘘つき野郎と付き合ってるなんて!」
「なんだと?いま何て言った?」
「嘘つき野郎って言ったのさ!
ゼノ・プリズマ無しに自然の力が使えるなんて嘘っぱちもいいところだからな!」
「貴様……そんなにオレの力を見たいのか?」
「ちょっと!二人とも落ち着きなさいよ!」
「断る。こいつはシャーマンであるオレを侮辱した。許すわけにはいかない。」
「許せないだと?いいぜ!じゃあオレと勝負しろよ!」
「勝負だと?」
「ああそうさ。ただしオレたちが直接戦うんじゃないぜ?私闘は禁じられてるからな。」
「ならどうやって決着をつける気なんだ?」
「最近合成人間の工作部隊が廃道ルート99にいるらしいんだ。
そいつらを先に撃退した方が勝ち。これでどうだ?」
「オレが勝てばさっきの発言は取り消すか?」
「もちろん!ただしオレが勝ったら彼女とは別れてもらうぜ。いいな?」
「ちょっと!なにを勝手にそんな!」
「わかった。その条件で構わない。」
「セヴェン!なに言ってんのよ!」
「よし決まりだ!じゃあオレは行くぜ。」
「もーッ!いったいどうするのよ!セヴェンがもし負けたら……。」
「オレは絶対に負けない。あんなヤツに負けるわけにいかないんだ。」
「セヴェン……?」
「さあアルド。オレたちも廃道ルート99に行こう。」
***
「いたぞ……あそこに合成人間がいる。
おそらくあれが合成人間の工作部隊だ。
あいつらを先に倒した方が勝ちってことでどうだ?」
「わかった。お前が先に行くか?」
「ヘ?オ、オレから行ってもいいけど……。
べ、別にお前からでもいいんだぜ?
オ、オレが先に戦ったらあっさり勝負が決まっちまうからな!」
「じゃあオレが先だな。」
「ヤツらはすごく強いって噂だ。お前なんてすぐにやられちまうさ。」
「そんなに強いのか?」
「ハハッ!そりゃそうさ!どうだ?ビビっちまったか?そら!早くいけよ!」
「行くのはかまわないんだが……本当にいいのか?
オレが先に戦ってあいつらを倒したらどうするんだ?」
「そしたらお前の勝ちだよ!だけどそんなの無理だよな。
だから意地張らないで早く降参したらどうだ?
おおいッ!ちょっと待て!本気で行くつもりかよ!
あんた!あいつの連れなんだろ?早くあいつを止めろよ!
合成人間なんかに戦いを挑んだら殺されるに決まってる!
「何か勘違いしてるみたいだけど……セヴェンは強いよ?
合成人間と渡り合える立派なシャーマンだ。
「ちょ、ちょっとあんた!ど、どこに行くんだよ!!
「セヴェンを手伝ってくるよ。オレもちょっとは腕に覚えがあるからな。
キミは危ないからどっかに隠れてオレたちの戦いを見ててくれ。」
***
「なんだ貴様ら……我らに用か?」
「悪いな……成り行きであんたたちを倒すことになった。
できれば逃げてほしいんだけどそういうわけにもいかないよな?」
「我らの邪魔をするならたとえ子供でも容赦はしないぞ?」
「……やっぱり戦いは避けられないみたいだな。」
***
「お、お前……本当に強かったのか……。」
「オレの勝ちでいいよな?シータ区画に戻ってもいいか?」
「あ、ああ……。」
***
「よかったわ!無事に帰ってきたのね!」
「セヴェン……勝負はオレの負けだ。お前の力は……確かに本物だった。」
「え?じゃ、じゃあセヴェンが勝ったのね?」
「だから……謝るよ。嘘つき呼ばわりしてすまなかった。
お前は強かった。オレなんかよりもずっと……。」
「わ、わかればいいんだよ……。
クッ……ま、真正面からそんな風に言われると調子が狂っちまうな。
もういいよ。わかってくれたんならそれでいい。」
「これでわかったわね。私はセヴェンと付き合うんだからもう構わないで。」
「……今回の勝負はオレが勝ったらあいつが発言を撤回するって話だぜ?」
「セ、セヴェン!?」
「ということはあいつがお前を好きでいるのは自由ってことさ。」
「な、なんですってぇ?」
「お、おい!お前はそれでいいのか?」
「別にかまわない。お前の方こそ勝負に負けたぐらいで好きな子のことを忘れるのか?」
「そ、それは……。」
「そもそもオレはシャーマンなんだ。このエルジオンでオレに勝てる奴なんていやしないよ
それとお前も。
「う、うん……。」
「こいつはちょっと不器用なだけで決して悪い奴じゃない。
友達なんだからウソでごまかさずに話ぐらいは聞いてやれ。
その上でダメだったらそう答えればいい。」
「わかった……ねえセヴェン!また学校に顔出してくれる?」
「ああ気が向いたらな。お前らがどうなるかも少しは気になるからな。」
「待ってるわセヴェン。」
「オレも待ってるぞ。」
「セヴェンは学校に行かなくてよかったのか?」
「別に。もとから学校なんて行く気はないしね。」
「ヘえあんな友達がいるなら意外と楽しいかもよ?」
「まあな……でもやっぱりオレは群れるのが嫌いなのさ。アルドと旅をしている方が性に合ってるよ。
それにオレがいないとアルドも困ると思うしね。」
「別にそんなことないさ。セヴェンの方こそオレがいないと寂しいんだろ?」
「……そんなことあるわけないだろ!」
異端の科学者
「まったく!あの科学者も困ったもんだぜ。
夢みたいなことばっかり言ってないでもっと役に立つ研究をすりゃあいいのによ!」
「夢みたいなこと?いったいどんなこと言ってるんだ?」
「それがよゼノ・プリズマなしに自然の力を使えるようにしたいんだと!」
「なんだって?」
「そんなこと無理だって俺も言ってやったんだけどよ。」
「その科学者はどこにいるんだ?」
「あん?なんでもゼノ・ドメインにこもって研究してるらしいぜ。物好きなこった。」
「ゼノ・プリズマなしに自然の力を……。」
「セヴェンその科学者に話を聞きに行くか?」
「いやいい……。どうせその科学者も学校のぼんくら教師どもと同じだ。」
「本当にそうかな?変人扱いされてるんだぞ?
それにセヴェンもその研究には興味あるんだろ?」
「興味がないわけじゃないけど……。」
「ならちょっと見に行くぐらいいいと思うけど?」
「……シャーマンたる者仲間の言葉に耳を傾け尊重すべし……か。」
「なんだそれ?誰かの言葉?」
「うちの家に代々伝わる言葉さ.いままで気にしたことなかったけど……
たまには気にしてみるのもいいかもしれないな。」
「つまりオレに賛成ってことか。じゃあゼノ・ドメインに行こう。」
***
「わわわわッ!誰かッ!誰かァッ!!ワタシを助けてェッ!」
「セヴェン!あれって!?」
「うん。どうやらあれが噂の科学者のようだね。やれやれ。」
***
「むーッ!キミ!キミ!いまのはどうやったのかね?
特殊なゼノ・プリズマを使ってる?いや何か特殊な使い方をしてる?
頼むッ!頼むッ!もっかいやって!!」
「いやちょっと近い近いよ!」
「セヴェンはゼノ・プリズマ無しに自然の力を引き出せるんですよ。」
「ななんですとーッ!ゼノ・プリズマ無しに魔法が使える?
その謎を突き止めることこそワタシの使命!我が人生の宿願!!
ホント?ホントなのですかぁ!?」
「う、うん……オレはシャーマンだからな。」
「シャーマン!太古にいたという自然の力を直接引き出す者たち!
キミはその末裔だというのかッ!うひょーッ!なんたる幸運!
キミはワタシと会うためにこの世に生を受けたのだッ!!!」
「そんな人生なんかイヤだな……。
……でもまあそこまで喜ばれたらそう悪い気はしないな。
精霊魔法を研究している科学者っていうのはあんただよな?」
「いかにも!こんな画期的な研究ができるのはワタシぐらいだ!」
「オレたちあなたに協力できるかもしれない。」
「おおおッ!それはありがたい!ぜひぜひ協力してもらいたい!」
「おいアルド……オレは協力するとまでは……。」
「まあまあセヴェン!ここまで来たからには乗りかかった船だって!」
「うむ……まあお前がそこまで言うならそれでもいいけどさ。」
「じゃじゃあ!まずはデータ計測用のロボットと戦っておくれ!」
「戦闘をするのか……ここでかい?」
「いやゼノ・ドメインの工業セクターだよ。ワタシは先に行って準備してるからね!
必ず来てよ約束だよッ!」
「なんかせっかちな人だなあ。」
「……仕方ない。とりあえず工業セクターに行ってみよう。」
***
「来てくれたねッ!待ってたよッ!これがデータ計測用のロボットだ!
キミの力でこいつをぶっ倒せばシャーマンの力の秘密に迫れるってワケ。クーッ!楽しみィッ!!」
「なるほどね。それじゃあさっそく始めようか。」
「ダメッ!まだダメッ!これまだ動かないんだよッ!」
「動かない?いったいどういうことなんだ……?」
「これまだエネルギーを充填してないから動かないっ!」
「入れればいいじゃないか。ていうかちゃんと準備ぐらいしておけよ。」
「う……むー。実はワタシお金がもうない。研究資金が底をつきました。」
「え……じゃあこのロボットは……?」
「おいおいおいどうするんだよ?」
「そこでものは相談です。
ゼノ・ドメインの研究セクターに行ってエネルギー供給回路を解放してくれませんかッ!?」
「えー……オレたちがぁ?」
「うーん仕方ないか。セヴェン手伝ってあげようよ。」
「アルドはホント甘いよね。
まあお前が行くならオレもいっしょに行くしかないけどな……。
でもこれって無断でエネルギーを使うってことだよね。あんたそんなことして大丈夫なの?」
「まったく問題なし!
シャーマンの力を解き明かしその成果が認められればあっという間にお金持ちです!
エネルギー代なんて後払いでどうにでもなるんですよッ!」
「ホントかなぁ。なんかうさんくさいなぁ。」
「まあまあセヴェン。とにかくゼノ・ドメインの研究セクターに行ってみようよ。」
***
「セヴェンこの辺のがエネルギーの供給回路みたいだけどやり方わかるか?」
「うーんオレも機械は苦手なんだけどな。でもたぶん……。
ここをこうすれば……いいんじゃないか?」
「お動いた。さすがセヴェン。」
「これでも一応IDAスクールの学生だからな。
機械工学の授業も……何度かは受けたし。これで大丈夫かな?
うん。エネルギーは無事下の階に流れてるみたいだ。
それよりさあの科学者だけど……。」
「あの人がどうかした?
「どうもうさんくさい気がするんだ。あいつ自然の力を使って何がしたいんだと思う?
「さあ?そういえば聞いてないな。科学者なんだからやっぱり世のため人のためとか?
「そんな感じがしないからうさんくさく感じるのさ。
「うーん……根拠があるわけじゃないんだろ?ならもう少し様子見してもいいんじゃない?
「まあアルドがそういうなら……ね。
「よし!それじゃあ工業セクターに戻ろうか。
***
「おかえりッ!エネルギー流れてきたよッ!これでこのロボットは完全に動くよッ!」
「それじゃああとはこいつと戦えばいいんだな?」
「そうッ!精霊の力を引き出した魔法で思いっきり戦ってほしいんだッ!」
「わかったよ。それじゃあいつでも来い!」
***
***
「すごいッ!すごいッ!キミの力は間違いなく古のシャーマンの能カッ!」
「そうさ。ゼノ・プリズマなんて使わずに自然の力を直接行使する。これこそがシャーマンの力なんだ。」
「クーッ!ワタシの研究も……これでついに完成する!
そして誰もがうらやむエルジオン最高の科学者に!
お金もガッポガッポ!豪華な暮らし!け、結婚だって……できるかもッ!?」
「うーん……清々しいまでに自分の欲に忠実だ……。」
「そんな気がしてたんだよな……。
まあいいよ。じゃああとはがんばって研究してくれ。オレたちはこれで……。」
「ちょ!ちょっとぉ!どこに行っちゃうんだよぉ!」
「どこって……オレたちはもう必要ないだろ?このロボットでデータは取れたんだし。」
「キミがいなくなったらダメだよ!
いいかい?このあとキミには適当なロボットの中に入ってもらうんだから!」
「はあ?どういうことだ?」
「だからキミがロボットの中に隠れて精霊の力を使うんだよ!
そうすればゼノ・プリズマを使わずに精霊の力を使うシステムの出来上がり!」
「な……なんだって……?」
「……あ、ちゃんとトイレも作るし外から食料も渡せるようにするから安心してくれたまえよ!
んーそうだな……一年ほど入っててくれたまえ!
そうすれば研究費もたくさん出てワタシの研究もはかどるはずだ!」
「……さっアルド帰ろうか。」
「うんそうだね。」
「ちょっとぉ!ど、どこに行くんだよぉ!
お金なら山分け!ワタシが6でキミたちが4でどう?」
「わかった!ワタシが4でいいから!
ね?ね?いいでしょぉ!?だめぇぇ!?」
「どうかッ!科学の発展のためにご協力をーーーーッ!!」
***
「……悪いセヴェン。オレが安易に科学者を助けてやれよとか言ったから……。」
「気にしなくていいよ。オレはさアルドに自分の力を認めてもらえて結構うれしかったんだ。」
「セヴェン……。」
「あ、いや、それはその……。
まあオレは天才なんだから当然なんだけどそれに……。
アルド以外のヤツにもオレの力を認めてもらいたいと思ったのは確かだから……。」
「そっか……よしッ!セヴェン!エルジオンでなんかうまい物でも食べようぜ!
今日はオレのおごりだからさ!セヴェン!」
「気を使うことないのにな……。ま、ありがとなアルド。」