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【アナデン】クロード Story

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん

アナザーエデン・キャラクエスト「クロード編」
IDAスクールの最上級生で、IDEAのメンバーでもある。
大昔に滅んだ国の王族の末裔であり、祖国の再興を大真面目に掲げている。王たらんとしているため、品行方正で努力を怠らない真面目な生徒。気品ある物腰とルックスもあいまって、王子や貴公子と呼ばれ慕われている。


目次


Story1 第一の臣下

Story2 賽は投げられた

Story3 最後の王






story1 第一の臣下




「ん?なんだか騒がしくないか?」

「スクールの休み時間はいつもこんな感じだがね。」

「いやでもあそこ……。」

「ん?あれは……。」



「ちゃんと説明してください!それでは納得できません!」

「先生に納得してもらう必要はない。

「なっ!?そんなことを言って評価に影響してしまいますよ!

今ならまだ反省文と補習で無断欠席は許されますから!

「評価か……そんなもの勝手に下げるなりなんなりしてくれ。


「……待ちたまえ!」

「…………」


「むっ?行ってしまったか。」

「なあ今のヤツ知り合いか?」

「うむ幼い頃からの友人だ。いわゆる幼馴染というものだな。」

「そうなのか!?」

「なぜに驚くのかね?まるで私に親しい友人がいるのは珍しいかのように。」

「い、いや……そそうじゃなくてなんていうか冷たい感じだったな。」

「……ふむ。確かに近頃はお互いの時間を優先して疎遠になってしまっていたが………


失礼する。女史よ。さきほどの彼はいったいどうしたのだろうか?」

「えっと……クロード君。その学生らしからぬ口調。なんとかなりませんか?」

「不快な思いをさせたのなら謝罪しよう。

だが私は生徒である前にケリュケールの王族なのだ。

我が血族の誇りを忘れぬよう王族としての立ち居振る舞いは日々心掛けなければならぬのだよ。」

「そうですね……これがクロード君の個性ですものね少しずつ慣れていけるようにします。」

「うむ生徒の個性を尊重する素晴らしい校風と貴女の寛容さに感謝しよう。」

「ええ……ありがとうございます……。

そういえば彼の話でしたね。友人のあなたにも間いて欲しいのです。」

「何か問題を抱えているようだったが何かあったのだね?」

「……無断欠席です。ここ最近彼は頻繁に授業をサボっているのです。

このままでは単位を落としてしまうかもしれません……。」

「サボり?彼が?にわかには信じられんな。

彼の真面目さは勲章を授与してもいいほどなはずだが……。」

「ええ。何か事情があるとは思うのですが話してくれなくて……。

私の言葉を聞いてはくれませんでしたが友人の……あなたの言葉なら彼も耳を傾けてくれるかもしれません。

授業に出るよう言ってもらえますか?」

「ああ任された。

我が友の窮地……このクロードが解決してみせよう!」


 ***



「ただのサボりじゃないのか?

「私が知っている彼ならばそれはないと断言できるが……。

まずは彼の居場所について聞き込みをしてみるとしよう。


 ***


「あら殿下御機嫌よう。

「やあ今日もかわらず麗しいな。

「やだもー殿下ってば!そんなお世辞なんて言ったりして!

私は贔屓(ひいき)のスポーツチームと女性のことに関しては虚偽を言わないと誓っているのだよ。

「うふふふ……相変わらずね。


「…………。

「アルド……王族にその目つきは不敬罪を適用できるぞ。


「さて……本題なのだが。レディは私の幼馴染について何か知らないだろうか?

「幼馴染?え~っと……。

ああっ彼ね!最近ちょっと様子がおかしいわね。

あまり教室に来ないしたまに来ても様子が変だったし。

このあいだも来たと思ったらなんだか思いつめた表情で窓の外をずっと睨んでいたもの。

「外……この方角からするとエアポート辺りか?

……ふむ。感謝するよ。

名残惜しいが私にはやらねばならぬことがあってね。失礼するよレディ。

「うふふどういたしまして。


 ***


「君、少しいいかね?

「ぁん?ああ……あんたか。何か用かよ?

「聞きたいことがあるだけだ。手間はとらせないさ。

「……あんたには借りがあったな。でなんだ?

「私の幼馴染のことだが知ってるかね?

「……幼馴染?あああいつのことか?

よくここでガラの悪い連中と話してるな。

「ガラの悪い連中とは?

「ロクでもない奴らさ。スクールじゃ大人しいが外で悪さしてるっていうな。

……これは独り言だ。連中最新の端末を半額以下で売りさばいていた。

どんな仕入れをしたらそんな値段で利益を出せるのやら……。

「……なるほど。それが合法的ならばその連中には我が国の経済を任せたいところだ。

「くくく……合法的ならな。

「いい情報をもらったようだ。対価を渡したいが……。

「よせ。今のは情報を売ったのでもチクったんでもない。ただの独り言をつぶやいただけだ。

「おっと私としたことが失礼した。なかなか君らの流儀には慣れないな。

「ふん……お前さんはこっちの水が合いそうだけどな?

「ははっ!興味深そうではあるが私は王族光の中を歩むのを宿命づけられているのだよ!


「また大げさな……


 ***


「……さて整理するとしよう。

彼はスクールには授業にではなく屋上にいる連中と会いに来ていた。

教室にいても思いつめた表情でエアポートを睨みつけているだけ……。

「……クロードの幼馴染はエアポートにいるってことか?

「おそらくそうだろう。それもただ遊びに行ってるというわけではなさそうだ。

「ガラの悪い連中が絡んでるって話だけど……このまま行ってみるのか?

「もちろんだとも。何人たりとも私の行動を妨げたりはできはしない!


 ***


「推測に間違いはないはずだが……。

「いた……あいつだよな?

「……間違いない。推測が当たって欲しくはなかったがね。


「……んじゃ手筈通りに頼むぜ。事が済んだらエントランスに集合だ。

いいか今更逃げられるなんて思うんじゃねえぞ?

「……ああわかっているさ。


「……だいぶ厄介なことになってそうだな。止めなくて良かったのか?

「待ちたまえアルド。

「なんでだ?あいつを助けるために来たんだろ?

「ああそうだ。しかし……そのためには彼の抱えている問題の大元を知る必要があるのだ。

「……つまりあいつを尾行してトラブルがないか探るってことか?

「話が早くて助かる。では行くとしようか。

「ク、クロード!尾行なんだから物陰に隠れたりとかした方がいいんじゃないのか?

「そうなのかね?実は尾行などという地味で目立たないことは苦手でね!

基本的に普段は人に任せてぃるのだよ。

「いやだから声を落として気づかれないようにしろって……。

「はははそういう小細工は君に任せるよ!

私は私らしく行動する。これまでの経験からそれが一番いい結果になったのでね!

「オレだけ気をつけても意味がないだろ!?


 ***



「……こんなところで何をする気なんだ?

「……いくつか想定していたが下から5番目くらいに悪い結果だ。

「ちなみに1番目は?

「毎日コンテナを愛でないと生きていけない重度のコンテナ好きだった場合だな。

「いやいや……いくらなんでも流石にそれはないだろ……。

「ふっ冗談だ。……さてそろそろ彼が何をしようとしているのかわかる頃合いだろう。


「……あれは!コンテナの中身を盗んでいるのか!?

「やはりな……。あまり手際はよくないので恐らくは初犯であろうが。

「クロード?どうする気だ?

「事態は大方把握できた。これから彼を説得するとしよう。

「説得ってどうやって?

「さて特に明確なプランがあるわけではないが……。

まあ男同士腹を割って話し合えば何か見えてくるものもあるだろう。

「……その自信の根拠はどこにあるんだ。


「やあっ!我が竹馬の友よ!そんなところで何をしているのかね?

「クロード!?どうしてこんなところに!?

「私はいつだって私が望む場所にいるよ。

それよりここで何をしているか聞かせてくれ。

私は君を友としたことを後悔しなければならないのかね?

「……君には関係ない。

「否!それは違う!この世界に私に関係のない事象など存在しないよ。

私の主観では世界は私を中心に回っているのだから!

「わけのわからないことを……。とにかく放っておいてくれ。

「それも否だ。……わかっている何か問題を抱えているのだろう?

遠慮なく言ってみたまえ。私ができることはなんでもしよう。

「わかってないな……。君は関わるべきじゃないって言ってるんだ。

「やれやれなんと強情な……。

だがいいだろう。君がどう考えていようと必ず私が救い出してみせる。

「……大切な友達なんだな。クロードがこんなに熱くなるなんてさ。

「ああそうだとも。

……私は以前に誓ったのだよ。何があろうと彼を守るとね。

「……なら早く追いかけて彼を止めないとな!

「うむ。……彼らはこの後エントランスに集まると言っていたな。急いで向かうぞ!


 ***


「……いたな。


「よし……リストのものはぜんぶそろったな。

お前はこいつをガンマの倉庫に持ってけ。


「……少し侮っていたか。思ったより組織だった犯罪のようだ。

「厄介だな。どうするつもりなんだ?

「たとえ相手が合成人間の軍団だろうと私の決断はかわりはしない。

「というと?

「窃盗団を一網打尽にする好機!これを逃す手はない。迅速かつ大胆に正面突破と行こうか!!

「……なんかクロードといるといっつも妙に派手に居じみてくるんだよなぁ。


「あ?なんだお前ら?俺たちは今大事な話をしてんだ。よそへ行きな。

「お断りしよう。そもそも私は君たちに用があるのだからな。

「どういうこった?


「なっ!?クロード!なんできたんだ!!

「うむ友よ。ここは私に任せるといい。


「さて諸君盗品の移送という生産性も独創性の欠片もない作業はさぞかし大変だろう。

「……!?なんで知ってやがる!

「あれだけ堂々とやっておいて発覚しないと思うのはどうかと思うが。

まあそのくらい杜撰な計画なのだ。速やかに手仕舞いにするのが賢い選択だと思うが?

「はっこんなボロい商売だれがやめるかってんだ。

「……君たちにリスクとリターンを計算する頭脳を期待したのが間違いだったようだね。

「んなもん知るか!てめえの余計な口さえ塞ぎゃあリスクなんて消えんだよ!!

おいっ!アレを使うぞ!

「よ、よせっ!!


 ***


「これで終わりか?

「なんだと!?あんだけのドローンが……。

「私と幼馴染の前に二度と顔を見せないならばこの場はこれで見逃すが?

「くっ……てめえ!覚えて…

「よしたまえ。君らのセンスのない捨て台詞など聞くに耐えない。

「くっ……。


「……見逃しちゃっていいのか?

「この場はと言っただろう?すでに彼らのことは通報済みだ。

「ははっクロードって結構ずるいんだな。

「ふっ詐術や権謀術数は王族の嗜みなのだよ。


「クロード……なぜ……。

「それはこちらのセリフだ。君みたいな男が犯罪に手を貸すなんて。

「……ハッキングの能力に目をつけられたんだ。奴らに嵌められて違法アクセスをして……。

……それをネタに脅されて奴らの仕事に協力させられてたんだ。

「そんなことだろうとは思ったが……。なぜ私に相談しなかった?

「はは……君はスクールのエリートで僕はハッキングだけが取り柄の落ちこぼれ。

僕のことなんて忘れていると思ったよ。

君の方こそどうしてここまでして僕のことを助けてくれたんだい?

「……王が臣下を守るのは当然のことではないか。

「……臣下?

……!?まさかあの時の?


 ***


「クロード……君は進路はどうするんだい?

僕はこのまま電子工学かプログラマーになろうかと思ってるけど。

「私か?常日頃から言ってるとおり……。

私は王になる。そして滅びし我が祖国を再興する。

「はいはい……またいつもの……。

……まさか本気なのかい?

「私は常に本気だが?

「でも王国って?

「……何度も語ってるのに聞き流してたな?

「はは……。

「このエルジオン直下にある大陸とは別の大陸……。

そこにケリュケール王国という小国ながら先進的な国があった。

だがそれゆえに周辺諸国から危険視され攻め滅ぼされた。

「あー思い出した!クロードはそのときに脱出した王族の末裔なんだっけ?

「……そうだ。守るべき国を民を守れなかった力なき王のね。

ケリュケールの名は私の誇りであると同時に……罪の証なのだよ。

「そんなの昔のご先祖様のことじゃないか。

「栄光も罪もすべてを継ぐ王族とはそういうものだ。

とはいえ国も民もない。裸の王様だがな。

「ふぅん確かに寂しいよね。

じゃあさ僕が国民にいや臣下になってあげるよ。

君が自称じゃなくて本当の王になったらね。

「いいのか?私の臣下になったとて栄達が望めるわけでもないぞ?

「別にそんなのはいいよ。この時代にさ本物の王様が蘇るなんて面白そうじゃない。僕も一枚噛んでみたいな。

「そうか……ならば君は私の国の臣下だ。

ケリュケール王国当代国主クロード!汝の忠義に全力をもって応えよう。

何があろうと君を全力で守ることを誓おう……。

「大げさだなぁ……。


 ***


「あの誓い……あの言葉だけで僕を命がけで救ったというのか?

「あの程度命がけというほどではないが……。

誓いを立てた以上全力を尽くすのは当然だ。

王族たるもの一度口にしたことは決して違えぬものだ。

たとえ君が忘れたとしてもな。だから抵抗は無駄だぞ。

「くくくく……あははははっ!

そうだ……そうだよ。君は昔からそういうやつだった。

大真面目にそういうことを言って実際にやってのける。大馬鹿だ。

「む……そいつは不敬罪……

いや事実だから国家機密漏洩の罪だな。

「ぶはっ!?あははは!き、君ってやつは……。


「さて私はそろそろ戻るとしよう。……あのような連中とは手を切って授業に出るのだぞ。

行こうかアルド。

「待った……。

僕が君の国の民だというなら臣下だというのなら……。

ただ守られるだけだなんてお断りだ。僕も忠義ってやつを示すよ。

王国の再興って本気なんだよね?じゃあその計画を聞かせてくれないか?

「聞けば後戻りできぬがそれでもか?

「余計に聞きたくなってきたよ。

「よかろう。ふはははは……。

今日この日が我が王国再興の第一歩となった。

さあこれから再興のための計画を存分に語り聞かせようではないか!


「……うん。ちょっと変わってるけどこれも友情ってやつなんだなぁ。



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story2 賽は投げられた



「おうクロードの大将よ。

「大将ではなく王なのだが……。それで何か用かな?

「こまけえことはいいんだよ。それよりお前さんが前に持ち込んだやつ……。

「何かわかったのか!

「おお!?そう慌てるな。

知り合いに分析を頼んだんだがな。その結果があがってきたんだ。

「それで?分析ではなんと?

「あーそれがな。詳しいことはわからなかった。

「くっ……やはりそうなるか……。

「材質は俺も調べたんだがまったく見当もつかねえ。

で中身の方も専門家に見てもらったんだがなあ。

なにかが魔法で封じられてるってえのはわかったらしいが……。

それがどんな技術なのかさっぱりわからないとさ。

あげくこれは大昔に失われた古の魔法に違いないなんて言いやがる。

つまりはお手上げってこった。すまんな。

「……いやこちらこそ無理を言ってすまない。

通常の調べ方ではわからない。それがわかっただけでも十分だ。


「なあさっきの話なんだったんだ?

「ああ我が家に伝わる宝玉のことだ。

これには言い伝えがあり正式な王位継承者と認められるにはこの宝玉の力が必要らしい。

だが長い時のなかでこの宝玉の使い方は失伝してしまったのだよ。

「なるほど………その宝玉が使えないと正式な王になれないのか……。

「そう。正式な王になれねば王国の再興も夢のまた夢だろうな……。

それゆえなんとか使い方を見つけようと分析を依頼していたのだが……。

「ダメだったってわけか。

なあさっき古の魔法って言ってたよな?

「そうだな。言い伝えにも王家の秘術が施されているとある。

しかし古の魔法の……ましてや封印の専門家などこのエルジオンにもいるかどうか……。

「それならオレの時代に行ったらどうかな?

王都ユニガンに行けば優秀な魔法使いはいるだろうし。

そこでわからなかったらさらに遡ってパルジファルで調べれば……。

「それだっ!なぜ気づかなかった?

私としたことがどうも思考が硬直していたようだ。

アルドよこの宝玉を調べるため過去へと連れて行ってもらえるか?

「ああわかった。じゃあまずは王都ユニガンに行こう。

酒場とかで聞き込んでみたらいいんじゃないか?

「うむ……人の集まる酒場ならば情報も得られるだろうな。そうするとしよう。


 ***


「王都……王のおわす街か……。

マスター!つかぬことを尋ねるが封印などに詳しい魔法使いに心当たりはないだろうか?

「なんだ?仕事の依頼か?そうだなあ。めぼしいのはだいだい出払ってるなあ。

あ、いや。確か外からきた優秀なのが王城に行ってるな。

「王城に?士官しに行ったのかな?

「前に魔獣の襲撃があっただろ?そのせいでなんかいろんな魔法が解けちまったみたいでな。

それを修理に来たんだとよ。有名な専門家らしいぞ。

「ほう……それは好都合だ。

「幸先がいいな。さっそくいい情報をつかんだじゃないか。

「ああその人物が噂通り優秀であればいいが。ともあれ王城に向かおうか。


 ***


「これが……一度敵に攻め込まれた街だというのか……。

「活気があるだろ?魔獣たちが暴れまわったなんて信じられないよな。

「ああ……それだけのことがあったにもかかわらず民の顔は明るく希望に満ちている。

これも統治者……ミグランス王の手腕に寄るところだろう。すばらしい王のようだ。


「高く評価してもらって面映いが……。

これは私ではなく民自身の力だ。


「王様!?どうしてこんなところに?

「なに街の視察だ。このような無力な王でも姿を見せると喜んでくれる民がいるのでな。

「それはやはり国王陛下が民に尊敬されているからでしょう。

先程民の力と仰っていましたが国の要たる王が揺らがぬからこそ民も力を発揮できるのです。

「……国の良し悪しは王の優劣で決まると?

「すべてとは言いませんが……。

「ふむ。だがそのような国はよい国ではないだろうな。

「どういうことです?

「優れた王がいなくなったらその国はどうなると思うかね?

「それは……!?

「うむ。王ひとりの才に頼った統治は脆弱なのだよ。

国王がなくとも滞りなく動く国こそ理想と言えるだろう。

頼れる仲間優秀な臣下。粘り強い民……。そういった者たちをどれだけ味方につけるか。

それが王のもっとも大事な仕事だ。その方も覚えておくといい。


「……これが王というものか。

「いい王様だろ?

「ああ……王として学ぶべきところが多々あった。

さすがは現役の王ただ話をしていただけだが王威というものを感じたよ。

『その方も覚えておくといい』

「……何してるんだ?

「なにせっかくなので本物の王の威厳を身に付けたいと思ってね。

少し真似をさせてもらったのだ。

「そ、そうか……。

「まあ真似をしたところで王の威厳がそなわるわけではないがね。

私は私なりの王威を身につけていくとしよう。

「クロードの場合派手っていうかちょっと芝居がかってるよな。

「ふっ、王たる者見栄えもまた大事だろう。

「……やっぱりわかっててやってたのか。もっと真面目にやればいいのに。

「……いや。王が廃れてしまった時代にはわかりやすい王らしさこそ民衆の理解を得るのに必要なのだ。

私は王という役割を演じる役者のようなものだ。

王国復活という悲願達成のためならば道化にだってなるさ。

「それでいいのか?

「……ここだけの話だがこれでも意外と楽しんでいるのだよ。

「そんな気はしてたよ……。


 ***



「ふむふむ……ここの結界もダメだね。よくまあ壊したもんだ。

……こんなものかな。次は……。


「すまない。少しいいだろうか?

「はい?何か用ですか?見ての通り忙しいのですが。

「時間を取らせることは謝ろう。

だが優秀だと噂の君でなくてはならない用件なのでな。

「……いいでしょう。少しぐらいなら話を聞いても。

「それはありがたい。実は君に解析を頼みたいものがあってね。

「解析か……ガラクタを持ってきては解析を頼む人がいますがね。

「なにこれは我が家に古くから伝わる代物でね。ガラクタなどではないと保証しよう。

これまで幾多の者が解析に挑戦したが誰一人として成功しえなかった代物なのだよ。

「誰一人……それを私に?

「君にならば……いやもはや君にしかできないとそう見込んでね。

「……そういうことなら拝見しましょう。

「そうこなくてはな。


「……クロード人を使うのうまいなぁ。


「では解析を始めます……。

ほう……確かに複雑な術が………

……これは。隠蔽に隠蔽を重ねているね。こんな厳重な守り……国宝級………


「それで……何かわかったか?

「これを私のところに持ってきて正解でしたね。

並大抵の術者では解析できなかったのもうなずける代物です。

……この宝玉に施された術ですが中に封じられたものを守るように強力な結界術が施されていますね。

特定の条件を満たさなければ解けない堅牢な結界です。

「やはりか……。それでその結界を解く条件についてわかるかね?

「決められた呪言とともに特定の血筋の血を垂らすことで解けるようです。

「……ああそういうことか。特定の血筋とはおそらく我が一族のものだろう。

呪言も家に伝わる文献にそれらしきものがあったな……。

「ただ……結界を解かれる際には十分に注意をしてください。

「ふむそれは何故だね?

「詳しくはわからなかったのですが結界とは別に何か強い力を感じました。解いた際になにが起こるか………

私にわかったのはこのくらいです。……時間があればもう少し詳しく調べることもできますが。

「いや!ここまでわかれば十分だ!感謝してもしきれない!

できるなら我が国最高の栄誉を君に授与したいところだ!

「はあ……我が国?

「さあこうしてはいられない。未来へと戻り宝玉を起動するぞ!

スクールのテラスならば人も少なくちょうどいいだろう!

「あっ待てって!そんなに興奮するなって!………


 ***



「さっそく始めるとしようか。

「まさか……ここで宝玉の結界を解くのか?もっとしかるべき場所とか時間とかあるんじゃないか?

幼馴染だって来てないし………

「ふっ……。私が望んだ今こそがしかるべき時と場所なのだよ!

それに我が友は戦えんのだ。むやみに危険に晒すわけにはいくまい。

「ああ……そういえば魔法使いも何が起こるかわからないって言ってたな。


「さあ始めるとしよう。鬼が出るか蛇が出るか。


ケリュケールの亡骸 我らが罪の証……。

其は 御国の血肉であり骨肉であり魂。

忘却の彼方より蘇り 罪深き我らに贖罪の機会を与えたもう。


「これは………

”ケリュケールの根幹に触れし者よ。王国を手にする器か証を立てよ……。

「なるほと………これが魔法使いの言っていた結界と別の強い力の正体か!

血をひいてるだけのボンクラには遺産は渡さぬというわけだな。

よかろう!このクロード・ケリュケールの器存分にはかるがいい!!

「一人で突っ走るなよ!!」


 ***


「はぁはぁ……はぁ……。試験にしては厳しすぎだろう……。

”資格は示された!汝王国の後継者と認めん……。

「!?知識が流れ込んで……。

やはり……この宝玉の中には言い伝えどおりのものが……。

これで……これで……ようやく王国が蘇る……。


「きゃああああああ!?

「なに!?なんなの!あの化物!!消えた!

「す、すげー!!どこだ、どこにいった!?


「まずい見られてたか!騒ぎになるぞ!

「今少し余韻に浸っていたかったが致し方あるまい。


「騒がせてすまない皆の衆!今のは今度私が主催する舞台の演出装置によるものだ!

「なんだホログラムだったのかずいぶんとリアルだったなあ。

「お芝居なの?殿下が出るのかしら?

「無論だ!監督私!脚本私!演出私!主演私!!私による私のための舞台国なし王の物語だ!

「全部クロードかよ!


 ***


「……見事な芝居だったな。」

「ふふ……私の言葉に嘘はないぞ?すでに舞台は始まっているのだからな。

『ケリュケール王国再興譚』最高の舞台にしようじゃないか!」


「派手な舞台になりそうだな……。」



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story3 最後の王



「クロード!!

「む、君か……。

「ひどいじゃないか!宝玉を起動させたんだって!!なぜ僕を呼んでくれなかった!!王国の大事だというのに!

「す、すまない……。しかしあの儀式はどんな危険が起こるのかわからなかったのだ。

「巨大な骨の恐竜と戦うハメになったよ……。

「それなら仕方ないけど………。はぁ……それでうまくいったんだね?

「ああついに私は王国の遺産を受け継ぐことができる。

「ということは例の計画は?

「当然実行する。準備は進めていたのだろう?

「当たり前だろ。今からだって大丈夫だよ!

「……よくやった!ならばあとは実行するのみだな!

早速テラスヘ行くぞ!そこで継承の儀を執り行う!


 ***


「では早速継承の儀を済ませて正式な王になろうと思う。

「そうだね。王様にならないと始まらないよね。

「なあクロードが言っている継承の儀って何のことだ?

「前回の儀式で受け取った知識に宝玉の制御や儀式などの情報があった。

この儀式は本当に王国の遺産を私が受け継ぐだけのものだ。

「なるほど………。

「では始めるとしようか……。


受諾せよ!

我ケリュケールの正統がここに告げん!


復活の時 贖罪の時来たれり!


大いなる精霊と知恵司る蛇……。

我に王国の血を肉を骨を魂を宿らせたまえ……!


「これで継承の儀は完了だ。

「……そういえば宝玉には結局何か封印されていたんだ?

「今はまだあまり詳しくは明かせないが……言うならば一種の記憶媒体だ。

「……最初は眉唾ものの話だと思ったけど情報はちゃんとあるんだね?

「ああ……魔法的に記録してあるがこれならデータヘの変換も簡単だ。

「……そっちの準備はできたってことだね。こっちも準備は万端だ。

あとはこのデバイスを直接端末に繋げば………。

ゼノ・ドメインだろうとハッキングできるはずだ。

「すばらしい!これで計画を実行に移せる。

「それじゃあ僕は外からのバックアップに回るよ。

「うむ任せたぞ。

父祖たちよ……ようやく我が王族の最後の責務を果たすときがきた……。

さてアルド。私たちも行動を始めよう。行き先はゼノ・ドメインだ。そこに目的のものがある。


 ***


「よしこの辺りの端末でいいだろう。まずは第一フェーズの開始だ。

「第一?

「そうだ。まずはこのデバイスでここの端末の防壁を無効化……。

そしてゼノ・ドメインの警備システムを一時的に弱体化させる。


「うまくいったのか?

「ああ。これで次のフェーズに移ることができる。

「なるほど……次は何をするんだ?

「ゼノ・ドメインのメインフレームをハッキングする。

警備システムが弱体化している今なら問題なくハッキングできるはずだ。

「ずいぶんしっかりと計画を立ててたんだな。

「ああ……我が一族の悲願だからな。手抜きは一切なしだ。

端末は既に幼馴染があたりをつけていたものがある。深層区画へ向かうぞ。


 ***


「……これだ。この端末にデバイスを接続すれば……。


不明なデバイスが接続されました。

セキュリティチェック……クリア。


デバイス内にプログラムを検出。

……インストールを開始します。


完了まで1%……2%……



「……さすがのゼノ・ドメインでもこの規模の処理には時間がかかるか……。

「……これは何をしているんだ?何かオレに手伝えることはあるか?

「いや手伝いは無用だ。後は処理が完了するまで待つだけだからな。

今ゼノ・ドメインのデータペースにある情報を紛れ込ませているのだ。

「ある情報……?

「ああ。これが完了すれば……。



「なんだ!?

「ちいっ!やはりメインフレームのセキュリティは一筋縄ではいかんか!


『未確認ノ生命体感知。ID確認……照合ニ失敗……。

不正アクセスノ可能性ヲ検知。対処プロトコル起動。全体警報……』


「クロード!

「慌てることはない。既に手は打ってある。


『ガガッ……!通信混線……全体警報システム起動不可……。


「警備システムを弱体化されている今なら増援も呼べまい。


『第一種戦闘モード起動。排除対象捕捉……攻撃開始。

「全てが終わるまではここを死守せねばならん。行くぞアルド!


 ***


「どうだ終わりそうか?

「うむ処理は全て完了した。まもなく始まるはずだ。


……インストール完了。情報拡散プログラムを実行。

指定されたデータをエルジオン全土に拡散します。


「動いた……!ご先祖様よ民たちよ。私はやり遂げたぞ……!

「なあクロード。さっき言ってたある情報って……?

「悪いが今は先にプログラムが正しく実行されたかどうか確認させてほしい。

なに心配はいらん。全て終わったら事の次第をきっちりと説明させてもらうさ。

「ああ……。


「さて……我が友も気を揉んでいる頃だろうな。

一旦IDAスタールヘ帰るとしよう。

彼ならおそらく3階の教室で待っていることだろう。


 ***


「クロード!無事だったのかい!?

僕の技術では全てのセキュリティは突破できなかったんじゃ……。

「ふふ……この私があの程度のことに屈するとでも?

「……それじゃあ!

「無論計画は手筈通りに済んだ。あとは確認を残すのみだが……

「すぐに調べるよ!

ええと……歴史関係のデータベースを……。

あった!!すごいやクロード計画は成功だ!

「確かなのだな……!私の……一族の悲願がついに!


「どういうことなんだ……?クロードそろそろ説明してくれないか?」

「ああ……済まなかったなアルド。やっと腰を落ち着けて話ができる。

まずは宝玉に封印されていた記憶媒体についてだが……。

あれにはケリュケール王国の滅亡までの歴史から文化や技術などありとあらゆる情報が記録されている。

ケリケル王国はその先進性技術力の高さゆえ諸外国から危険視され攻め滅ぼされた。

我が国を恐れた国々はケリュケールに関わる全てを破壊しその存在すら歴史から消し去ったのだ。

「そんなことがあったのか……。

「戦火から逃れた我が先祖たちは執拗に追われ続け逃亡生活の中で多くのものを失っていった……。

このままでは王国の歴史も伝統もそのすべてが失われる。

そう危惧した王族の一人が王国の情報を宝玉へと封じたのだ。王国再興の切り札として……。

そして今回 宝玉に封じられていたケリュケールの歴史をゼノ・ドメインのデータベースに紛れ込ませた。

これでゼノ・ドメインの中ではケリュケールの歴史にいつでもアクセスできるようになった。

「でもそれだとゼノ・ドメインの中じゃないと情報が見られないんじゃないか?

「ふっ……何のために危険を承知でゼノ・ドメインの深層区画まで潜り込んだと思っている?

メインフレームをハッキングした際情報を紛れ込ませる他にもう一つ仕掛けを施したのだ。


 ……インストール完了。情報拡散プログラムを実行。

 指定されたデータをエルジオン全土に拡散します。


「まさか……!

「そのまさかだ。エルジオンに存在するありとあらゆるデータベースに情報を拡散した。

「なるほどな。でもさクロード……クロードの悲願って王国の復興だったよな?

それと今回のことと一体何の関係があるんだ?

「フッ……まだわからんかアルド。

これからは誰もがケリュケールの情報に自然と触れられるようになる。

かつてケリュケールという王国がありそこで民が生きていたということが紛れもない事実として認識される。

歴史から葬り去られ人々の記憶からも消え去った王国のことをみなが思い出すのだ。

「思い出す……。

「そうとも。歴史から葬られた王国を再び歴史に刻み込む。

人々の記憶の中に王国とそこに生きた民の記憶を蘇らせる。

それこそが私の悲願。ケリュケールの復興というわけだ。

「そうだったのか……!復興って言うからてっきり国を作り直すんだと……。

「作り直したのだよ。人々の記憶の中で確かにな。

……国とは民だとミグランスの王も言っていただろう?

我が故国を支えてくれた民たちの記録……彼らか確かに生きていたのだという証。

それを未来へと遺していくことこそがかつてケリュケールという国がここにあったということの証明なのだ。

それが私にとっての国の再興だ。たとえ酔狂と言われようともな。

「……クロード。

「私も最後の王としての責務を果たすことができた。ようやく肩の荷が下りた気分だよ。

「そうか……ん?最後のって王様業はもう終わりなのか?

「たった二人で国を名乗るのはおこがましいというものだろう。

だがそうだな……。これまで王であろうと生きてきた。その生き方しかしらない。

困ったことにそんな生き方も嫌いではないのだよ。

「そのままでいいんじゃないか?クロードが王様以外のことをしてるところなんて想像できないしな!

「なにかするのなら僕も混ぜてくれよ。これでも臣下なんだからな。

「ふむ……そうか。ならば私の歩むべき道はたったひとつだな。

最後の王としての自分は今日ここまでだ。

私が新たな王国を打ち建て最初の王となろう!

「クロード。国を打ち建てるって何をする気だい?

「そうだな……企業を経営してIDAスクールのように自分のプレートを建設するのもいい。

あるいはなんとか汚染された地上に戻って本当に国を興すのもいいだろう。

「いやぁ……これはたまげたな。僕には想像もつかないや。

でも不思議とワクワクするよ。ちょっと計画だけでも立ててみようか。

「頼むぞ我が友よ王だけで国は立ち行かん。民があってこその国なのだからな。

「自分の国を建てるか……

ちょっと規模が大きすぎて実感は湧かないけどできるだけオレも手伝わせてもらうよ。

「ふむ。王に臣下に協力者が二人滑り出しにしては十分だろう。


ではこれより新たな王国の建国を目指す!

ケリュケールにも決して負けぬ、民のための素晴らしき王国を作るとここに誓おう!」





コメント (【アナデン】クロード Story)
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