【ストーリー】EPISODE 7-286 逃走ラビリンス! Side:トレイ

| EPISODE ◆ 7-286 逃走ラビリンス! Side:トレイ 深淵の支配者 |
登場人物
トレイ、オルト、ケイト、ケイト?
テキスト全文
── ハーツラビュル寮‐薔薇の迷路 ──
トレイ:「ハァ、ハァ、オルト、後ろは追ってきてないか?」
オルト:「うん、トレイさん。無事に振り切れたみたい。」
トレイ:「良かった。しばらく待つと、俺たちの後ろにある行き止まりが別の通路に繋がる。」
トレイ:「このルートは今回のパターンでしか通れないから、きっと見つかりづらいはずだ。」
トレイ:「なんとか他のみんなと合流して、態勢を立て直したいところだが……。」
オルト:「それにしても驚いたよ。」
オルト:「ハーツラビュルの薔薇の迷路って、ランダムマップ生成ダンジョンの要素も持ってるんだね。」
トレイ:「多分、お前が思っているほどのパターンはないけどな。」
トレイ:「必要に応じて、ルートを魔法で変えられるようになってる。」
オルト:「ホログラムじゃなくて、本物の植物の位置を動かしてるってこと?」
トレイ:「ああ。ハーツラビュルの庭に咲いてる植物はどれも、手をかけて育てられた魔法植物なんだ。」
トレイ:「命令すれば、自分たちで歩いてくれる。」
トレイ:「中には気難しくてなかなか動いてくれないヤツもいたりするけど。」
トレイ:「春には『庭の花によるコンサート』なんて伝統行事もあるぞ。」
オルト:「すごく面白そう! イグニハイドにはないシステムだから興味深いよ。」
トレイ:「魔法領域を解除できて、無事に春を迎えられたらオルトも遊びに来るといい。」
オルト:「うん!」
オルト:「……ねえトレイさん、この薔薇にかけられている魔法……」
オルト:「自律式の防衛魔法も組み込まれてるよね?」
トレイ:「わかるか? 外敵が侵入した時には、薔薇の木が攻撃するようになってるんだ。」
トレイ:「とはいえ、機械のプログラムほど精密に制御できるものでもない。」
トレイ:「薔薇の木に登ったり、飛行術でショートカットしようとしない限りは攻撃してこないんだろうな。」
トレイ:「たしかディアソムニアの寮を囲んでいる茨も、防衛に使える魔法植物らしいとリリアに聞いたことがある。」
オルト:「今話題にした2寮とはちょっとテイストが違うけど……」
オルト:「「ポムフィオーレの庭にある林檎の木も、特別な術に使うために魔法を使って育てた特別なもの」……」
オルト:「って、ヴィルさんが言ってたっけ。」
オルト:「もしかすると、創設が古い寮のほうが魔法植物や魔法道具が使われた設備が多いのかもしれないね。」
トレイ:「言われてみると確かに、そうかもしれない。」
トレイ:「一番古い寮はポムフィオーレ、次に古いのがハーツラビュル、その次がディアソムニアだもんな。」
トレイ:「ハーツラビュルの庭にある植木や花も、俺たちが植えたわけじゃない。」
トレイ:「俺たちよりずっと前の世代の先輩たちが大切に育てて、受け継いできたものだ。そりゃ……」
トレイ:「枯れたり、薔薇が変な色で塗られたりしていたら怒る奴もいるよな。」
オルト:「……リドルさんのこと?」
トレイ:「……あいつが寮長になってまず手をつけたのが、薔薇の迷路の徹底的な整備だった。」
トレイ:「だからこうして庭が荒れている様子を見ると、」
トレイ:「「ああ、リドルは今我を忘れてしまっているんだな」と思うよ。」
トレイ:「あいつがオーバーブロットした時もそうだった。」
トレイ:「おっ、行き止まりだった通路が動き始めたぞ……」
トレイ:「はっ!」
ケイト:「トレイくん、やっぱこのルートにいた!」
ケイト:「トレイくんなら絶対この隠しルート使ってくると思ったんだ。」
トレイ:「はは、ケイトに隠し事はできないな。とにかく合流できてよかった。」
トレイ:「ところで、お前はここまで1人で来たのか?」
ケイト:「え? うん。あの混乱の中でみんなとバラバラになっちゃって……」
ケイト:「1人逃げ出すのが精一杯だったんだ。」
トレイ:「……そうか。」
オルト:「ハーツラビュルのナンバー2とナンバー3が揃ったら百人力だね。」
── ハーツラビュル寮‐薔薇の迷路 ──
オルト:「実は、兄さんや『S.T.Y.X.』との回線がまだ復旧しないんだ……。」
オルト:「僕のエネルギー残量はまだ十分だけど、激しい戦闘や不測の事態が発生した場合はその限りじゃない。」
オルト:「とにかく、早くリドルさんを目醒めさせてここから脱出し、状況を確認したいんだ。」
ケイト:「そーだね。急いで他のメンバーを捜し出して合流しよ!」
トレイ:「ああ。しかし、リドルのもとにたどり着くだけなら俺とケイトが案内すればいい話だが……」
トレイ:「俺とケイトのユニーク魔法は、基本的に戦闘向きじゃない。」
トレイ:「リドルに挑む前に、レオナや、『闇』との戦闘に慣れたシルバーたちとは合流しておきたいところだな。」
オルト:「ふぅん、そうなんだ。ケイトさんのユニーク魔法は、かなり戦闘向きな気はするけど……。」
ケイト:「いやあ、実は分身したオレくんが使う攻撃魔法って、かーなーり威力が落ちるんだよね。」
ケイト:「分身を操ってる間は、本物のけーくんの魔法もパワーダウン。まあ、当然っちゃ当然なんだけど。」
トレイ:「2、3種類の魔法を同時に使っているも同然だもんな。」
ケイト:「そーそー。なんていうか、ホールケーキをピースに切り分けてるだけっていうか……」
ケイト:「MAXの魔力量は決まってるし、それを分身に分配してるからそれぞれのパワーはかなり下がっちゃう。」
ケイト:「しかもリドルくんの『オフヘ』って、複数人へ同時にかけられるじゃん。」
ケイト:「分身で撹乱しようとしても、全員が同時に首はねられちゃったらお手上げ。」
トレイ:「あいつのユニーク魔法は“先手必勝”の性質を持っていて、」
トレイ:「決まれば相手の魔法をほぼ無効化できるからな。」
トレイ:「だからこそリドルは、魔法の発動スピードを徹底的に研鑽してる。」
オルト:「『S.T.Y.X.』の本部でオーバーブロットした人たちに様々なテストをした時……」
オルト:「全員個性的なステータスはしていたけど、」
オルト:「その中でもリドルさんは「魔法の発動スピードが爆発的に速い」って結果だった。」
オルト:「つまりリドルさんに勝つには、」
オルト:「魔法の発動スピードがリドルさんを上回ることが最低条件……ってことだね。」
オルト:「まさに超攻撃型の遠隔アタッカーって感じだ。」
トレイ:「超攻撃型……か。あいつがそう言われるのを聞いてると、不思議な感じがするよ。」
トレイ:「出会った頃のリドルは、全くそんな感じじゃなかったから。」
トレイ:「入学式でフロイドを吹っ飛ばしたのを見た時は、同姓同名の別人じゃないかと思ったくらいだよ。でも……」
トレイ:「今思えば、先生たちに押さえつけられながらも怒鳴り散らす姿は、あいつの母親そっくりだったな。」
ケイト:「入寮した翌日、寮の廊下で突然トレイくんに……」
ケイト:「「クローバー先輩」」
ケイト:「「当校は全生徒に“寮長に決闘を挑む”権利があるそうですが、申請に必要な書類などはありますか」」
ケイト:「って聞いてきて、もう「えぇ~!? どゆこと~!?」ってカンジだった。」
トレイ:「生徒手帳には『決闘は必ず学園長立ち会いのもと』としか書いていないからな。」
トレイ:「当然、俺は申請方法なんか知らなかったし、一緒にいたケイトも知らなくて……」
トレイ:「結局3人で学園長のところに行ったっけ。」
ケイト:「あったねぇ、そんなこと。そっからはもう何もかもが爆速っていうか……」
ケイト:「「初めましてリドルちゃん!」の1週間後には、」
ケイト:「「リドル寮長のおなーりー!」」
ケイト:「ってラッパ吹いてたもんね。」
トレイ:「俺たちは……あいつがトップになれば、寮を良い方向へ導いてくれると期待してた。」
ケイト:「それがあんなことになるなんて……ねぇ?」
トレイ:「リドルは寮生たちを従わせるために、力と恐怖で支配した。」
トレイ:「そして……どんどん孤立していってしまったんだ。」
オルト:「カオスな無法地帯から、マッドな法治国家へ、か……。」
オルト:「変化が急激すぎて、寮生もみんな困惑しただろうね……」
オルト:「ああ、そういえば。」
オルト:「兄さんも寮長になってすぐの頃、」
オルト:「独断で寮のサーバーに新システムを導入して寮生に大反発をくらってたことがあったなぁ。」
トレイ:「イデアが? それはなんというかすごく……意外だな。」
オルト:「んー、例えるなら……」
オルト:「『安定してたから使い続けてた5年前のOSを無断で最新版にバージョンアップして仕様の違いに大混乱』」
オルト:「……みたいな?」
オルト:「まあ兄さんの場合は、」
オルト:「“良かれ”より、自分が使いづらいからっていう理由のほうが大きかったんだけど……。」
ケイト:「あはは~。寮長って基本、それくらい勢いがある人じゃないとなれないのかもしれないね。」
ケイト:「けーくんには絶対無理だな~。」
トレイ:「絶対無理? ケイトらしくない発言じゃないか。」
トレイ:「3年にあがる少し前……お前が寮長との決闘申請書を持ってきたことがあっただろ?」
ケイト:「えっ?」
トレイ:「「オレ、一か八か挑んでみようかな」ってさ。」
トレイ:「寮長と寮生の間で板挟みになって、ストレスが限界にきてたんだろう。」
ケイト:「ちょ、ちょっと〜! オルトちゃんの前でその話するのやめない!?」
トレイ:「結局いつもの調子で「なんちゃって〜」と誤魔化して、書類はゴミ箱行きになったみたいだが……。」
ケイト:「そりゃそうだよ! 勝算もないし、寮内の雰囲気さらに悪くすることにしかなんないじゃん!」
トレイ:「プッ……アハハ! 随分焦ってるな。」
ケイト:「だってかわいー後輩ちゃんの前でそんな暗い話……」
トレイ:「アハハハ! 確かにケイトはこういう話題、嫌がりそうだよな!」
トレイ:「ふふ……あははは!」
ケイト:「もー! いつまで笑ってんの?」
トレイ:「だっておかしくて……」
トレイ:「ケイトが決闘の書類を持ってきたことも、リドルに挑もうって言ったことも……」
トレイ:「一度もないからな。」
ケイト・オルト:「え?」
── ハーツラビュル寮‐薔薇の迷路 ──
トレイ:「はぁ……“現実で想像できないことは、夢でも具現化出来ない”だったよな。」
トレイ:「……まあ、リドル自身が前寮長を打ち破って就任したんだ。下剋上されることを考えるのは当然か。」
トレイ:「だが……もしもケイトが寮長の座を狙っていたとして、」
トレイ:「あいつはそれを人前で口に出すなんてことは絶対にしない。」
トレイ:「万が一にもリドルの目に触れる可能性のある寮内に、決闘の書類を持ち込むような迂闊な真似も。」
トレイ:「だからこそ、俺はあいつを信頼してる。」
トレイ:「女王様を怒らせないためには、慎重が第一だからな。」
トレイ:「……ああ、『闇』(お前)にはわからないか。」
ケイト?:「そういうカマかけ、」
ケイト?:「性格わるーい。」
トレイ:「どっちが。最初に合流したときから変だなと思ってたんだ。」
トレイ:「ケイトの視野の広さは寮内でも随一だ。ああ見えて胆力もある。なのに……」
トレイ:「迷路の道順がわからない他寮のメンバーを放置して、1人で逃げ出す?」
トレイ:「ありえない!」
トレイ:「どうせ俺たちを泳がせて、他のメンバーに合流させた後、一網打尽にしようっていう魂胆だろう?」
トレイ:「そうはさせない。オルト、こいつはここで仕留めよう。」
オルト:「了解、トレイさん!」
ケイト?:「反逆者を発見! ダイヤのトランプ兵は速やかに集合ーー!!」
オルト:「大量の『闇』の反応を検知! くるよ!」
── ハーツラビュル寮‐薔薇の迷路 ──
トレイ:「はぁ、はぁ……まだいるのか?敵の数が多すぎる!」
オルト:「エネルギー残量が50%を切ってる。このまま戦いが長引くとまずいかも……。」
トレイ:「オルト、一旦退却しよう!次の突き当たりを左へ曲がれ!」
オルト:「了解!」
ケイト?:「逃がすな、追えーー!」
オルト:「はっ!トレイさん、目の前の生け垣が閉じていくよ!」
トレイ:「計算通りだ! 飛び込め、オルト!」
オルト:「魔導スラスター、出力全開!」
オルト:「トレイさん、通路が閉じちゃう! 早く!」
トレイ:「『白を赤に、赤を白に……」
トレイ:「薔薇を塗ろう(ドゥードゥル・スート)』!」
オルト:「トレイさん!?」
トレイ:「オルト、お前は先に行け! お前ならどうにかして、エースやデュースを見つけて合流できるだろう。」
オルト:「でも、それじゃトレイさんが!」
トレイ:「これでもハーツラビュルの副寮長だ。なんとか上手くやる。」
トレイ:「早く先へ!」
オルト:「……っ、わかった! 必ずエースさんたちと合流して助けるから、無茶してロストしないようにね!」
ケイト?:「トレイくん、見〜つけた……」
ケイト?:「っ痛! 何?」
ケイト?:「生け垣の薔薇の花に触れただけなのに、腕に傷が……」
トレイ:「この通路にある薔薇を、全て鋼鉄製に変えさせてもらった。」
トレイ:「薄い葉や花びらは、研がれた包丁のようによく切れるから、気をつけろ。」
トレイ:「お前たちがこの狭い通路を無理に通ろうとしたらどうなるか……」
トレイ:「わかるよな?」
ケイト?:「うーわ。1対1でしか戦えないようにして、粘る気?」
トレイ:「俺のユニーク魔法は、ケイトやリドルのように戦闘向きじゃないんでね。」
トレイ:「地道に、着実にやらせてもらうよ。」
ケイト?:「粘ったって結果は同じなんだから、苦しむ時間は短いほうがいいと思うんだけどなあ〜?」
ケイト?:「ダイヤのトランプ兵、一列に整列して、前へ!」
ケイト?:「反逆者を縛り上げて、女王の前に引っ立てちゃって〜。」

