プロローグ

プロローグ

後に「神々の千年戦争」と呼ばれる創世時代の争いが、

今もこの世界に影を落とすーー。

遥か古の時、無の空間に唯一生きる古の巨人がいた。

彼の名はリル・マズア、神々の言葉で万物の始祖を意味する。

永遠とも言える無の中、

生きる意味さえ分からなくなった古の巨人は命が燃え尽きる時、

無数の神を生み出したと言われる。

それと同時に世界には多くの精霊が生まれた。

古の巨人が踏みしめた虚空からは大地が広がり始め、

最後の呼吸が風となり、流した涙が水となり、

それまで燃えていた命が炎となる。

次世代への希望が光に、孤独の悲しみが闇となった。

生まれた源をひとつとした神であったが、

その中には光の勢力と闇の勢力が混在していた。

次第に彼らは互いを憎しみ、争うようになる。

その影響は精霊の中にも広がっていった。

光の精霊王を名乗る精霊は光の勢力へ、

闇の精霊王を名乗る精霊は闇の勢力へ別れていった。

自勢力の兵力を増強したいと願った神と精霊王は

自らの子を生成し始める。

光の勢力には我々人間や妖精が、

闇の勢力には悪しき怪物が誕生したのである。

この戦いは千年にも及び、

結果、双方の神や精霊王は肉体を失っていた。

我々はこれを「神々の千年戦争」時代と呼んでいる。

以来、悪しき怪物との戦いは今も続いている。

古の巨人が眠りについたとされる地には、

神々が自らを生み出してくれた聖父のために築いた神殿がある。

現代を生きる我々は、その神殿をリル・マズアの遺跡と呼ぶ。

自然の猛威に幾度と無く大きな被害に晒されてきた我々は、

その脅威を退ける力と方法を欲した。

ある者はリル・マズアを信仰し、偉大なる奇跡の力を得ようとし、

ある者はリル・マズアの生み出した精霊の力を借りようとし、

ある者はマナの力で自然を制御する精霊の力を押さえ込もうとし、

ある者は天候変化の統計を採り推移を予測しようとした。

様々な考えをもつ者たちが集い

リル・マズアの遺跡のそばにいつしか出来た街、

それが霧と静寂に包まれた「マズアル」の街であり、

自然の猛威に挑む者達が

修行、信仰、研究の為に建設したのが「予見の塔」である。

この予見の塔を統べるのが賢者ダムドであった。

彼は人々の生活に役立てる為、精霊の声を聞く修行のほかに、

他の考え方を持つ研究者や信仰者の意見を取り込み、

リル・マズアと自然に対して理解を深めていった。

そんなある夜、彼に不思議な声が聞こえた。

「貴公に我が力を授けよう。」

天啓を得たダムドは以来様々な奇跡を起こした。

痩せた土地に豊穣をもたらし、

枯れた森林を再生し、干上がった農地に雨を降らせた。

この話は隣国カルガルディの王ブラキオンの耳に届く、

カルガルディは他国に幾度と無く侵略を許していた。

ブラキオンは国を守るべく大きな力を欲していたのだ。

天候不順の国内を助けて欲しいと言うブラキオンに従ったダムド、

しかし、実際は小さな国を守るために登用されたのである。

数ヵ月後、再び敵国に攻め込まれたカルガルディ。

ブラキオンはダムドに出撃命令を下した。

敵とはいえ人の命を奪う事を躊躇するダムドだが

敵兵は王都を取り囲み、状況は彼の願いを許さなかった。

ダムドがカルガルディを救ったという話は、

すぐさま周辺地域へと広がった。

自らの研究や修行が軍事利用されることを恐れた

予見の塔に住む人々は、早い段階でマズアルの街を離れた。

ダムドはその後も小国を救い続けたが

戦う度に幾千という敵兵の命を絶やす自身に苦悩し続け、

ついにはカルガルディから失踪する。

数日後、ダムドの姿は寂れたマズアルの街にあった。

既に誰もいなくなった予見の塔へと閉じ篭り、

誰とも会わない日々が始まった。

数年後、

大きな地震が発生し裂けた大地に人々は飲み込まれ、

深刻な飢饉、収束が見えない疫病が発生した。

火山によって業火が数々の街を飲み込み、

人々は世界の終わりが来たと恐怖する。

自然の猛威に苦しむ人々は賢者ダムドに救いを求めた。

彼ならば世界の危機を回避できるのではないか？

多くの人々が予見の塔に殺到するが、

塔の中には悪しき怪物の徘徊する姿があった。

賢者ダムドは無事なのか？

最上階にあるダムドの部屋へ向かい救い出すのだ！

世界を救おうと冒険者達がマズアルの街へと集結する。

霧と静寂に覆われた街は、世界を救うための中心地となった……