マカロン
キュイの資料
「マカロンはたったの数グラムの重さでありながら、食べると身震いするほどに美味である。薄くてもろく、丸い形状で、見る者を惹きつける色合いと挟まれたクリームのしっとりとした食感が、目もお腹も満足させる。指で触れるとつやつやとした表面の感触があり、薫り高く、外側を噛めばサクッとした耳障りの良い音がする、そしていよいよ、その味に満足させられる。」----フランスのスイーツシェフであり、スイーツ界のピカソと呼ばれたピエール・エルメは、マカロンをこのように表現する。
マカロンの起源については諸説ある。そのうちより一般的なのは、中世のイタリアであるという説で、16世紀半ばにフランス商人によって故郷へ持ち帰られた。フランスにやってきた当初のマカロンは、今流行しているような形とは程遠く、何も挟んでいない片側だけの、卵白とアーモンドパウダーで作られた小さな丸いクッキーだった。フランス皇室に注目され、地元のシェフが腕を競って作り始めると、秀でた想像力によって食感や見た目が工夫されるようになった。そしてジャム、チョコレート、コーヒーなどを用いてカラフルなマカロンが作られ、徐々に今のような形式一一色鮮やかで滑らかな丸形、層が分かれておりクリームがしっかり入っていて、きれいなヒダ(※「ピエ」という)がある――となった。
マカロンが優雅な外形であったことから、誕生してから数百年後にもなお貴族と密接なかかわりがあり、エレガントで贅沢なスイーツとされてきた。そのためか、マカロンはファッション業界でも人気が高い。有名なファッション、化粧品、さらにはジュエリーブランドまでもマカロンとコラボしており、世界中に流行の波が広がっている。
2007年にはマクドナルドがフランスでマカロンを出したが、もはやマカロンが階級の壁を破り、一般民衆のスイーツとなりつつあることを物語っている。