夜叉丸のプロフィール
夜叉丸 'Yashamaru' | |
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夜叉丸
プロフィール
性別 | タイプ | 種族 |
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エピソード
破神大戦において活躍した、異界メグロナ出身のシ
ノビ。
メグロナのシノビの中でも屈指の実力者だとされて
おり、諜報や情報収集のみを行う他のシノビたちと
は違い、戦場にその身を置いて、秘術を駆使して敵
兵らを翻弄したとされている。
そして、魔術とも機械技術とも異なるその不思議な
技の数々は、同じ戦場に居合わせたグランゼリアの
者たちを敵味方問わずに大いに驚嘆させたという。
そのためか、破神大戦終結後は彼をモデルにした創
作物語が数多く作られ、グランゼリアにおける一大
シノビブームを巻き起こす原動力になったとされて
いる。
その一方で、夜叉丸はトラブルに巻き込まれること
が多い、とてつもなく不運な人物としても人々に知
られている。
例えば、彼がメグロナからグランゼリアに流された
原因は、討伐の命を受けたある魔獣との戦いだとさ
れているが、このグランゼリアでも同郷の剣士シン
とともにその魔獣の行方を追っていた。
やがて情報を得て魔獣の居場所を突き止めた夜叉丸
だったが、その矢先に人々を襲う別の魔獣と遭遇。
成り行き上、その魔獣を討伐した彼だったが、本来
の目的であった魔獣はすでに行方をくらました後で
あった。
結局、その魔獣はシンと戦った後、グランゼリアと
は別の世界に行ってしまい、夜叉丸は本来の目的を
果たすことは叶わなかったとされている。
「大きな被害が出さずに多くの人を救えたこと。
それだけでも良しとしよう。
俺は引き続き任務の完遂を目指すだけだ」
夜叉丸のグランゼリアでの活躍は、彼がこの世界に
やって来たその瞬間より始まったと言っていい。
グランゼリアに初めて降り立った時、彼が目にした
のは、魔獣率いる軍勢と、少数ながらも果敢にそれ
と戦っている人間の騎士、兵士たちの姿であった。
それが破神軍と神聖ロダール王国の部隊だとはまだ
知る由もない彼だったが、これまでの経験より自身
が今いる場所が戦場であるとすぐに察知。危険のな
い場所に退避しようとする。
だが、人間側の部隊が老人や女子供などの非戦闘員
をかばいながら戦っているところを見て、その足を
止める。
そして一瞬だけ躊躇したものの、即座に覚悟を決め
た。
「見捨てるわけには⋯いかぬな!」
夜叉丸は大きく飛翔した後、数体に分身しながら降
下。魔獣率いる軍勢に斬りかかり、まずは進軍の勢
いを削ぐ。そして狼狽する相手に煙玉を投げつけ、
その視界を奪ってしまう。
突如の乱入者に混乱したのは人間側も同様だったが
夜叉丸は姿を見せずに、部隊の隊長に語りかける。
「隙は作ってやったぞ⋯」
「だ、誰だ⋯!?」
「俺のことなど、どうでもいい。
逃げるか、戦って全滅するか⋯今すぐ決めろ」
隊長は状況を上手く飲み込めていないながらも、部
下に撤退を命令。無事に破神軍から非戦闘員を守り
きって、逃げおおせることに成功したという。
この後も破神軍との戦いで活躍する夜叉丸だが、そ
のほとんどは人類の軍が劣勢の時か、非戦闘員に被
害が出る可能性のある場合であった。
その際も、彼は己の名前を告げるようなことは決し
てしなかったが、シノビ装束をまとい、(グランゼ
リアの者たちにとって)謎の術によって破神軍を翻
弄するその姿は否が応でも目立ち、その存在はすぐ
に噂になっていった。
そしてある事件が契機となり、その名前も知られる
ようになる。
それはある任務の際、彼が1人の少女を助けた時の
ことであった。
夜叉丸はその少女に次のように告げる。
「ここはすぐに戦場になる。村の人に逃げるよう伝
えてくれ」
少女は感謝の言葉とともにうなずくと、夜叉丸に名
前を聞いた。
普段なら答えない彼だったが、その少女の姿を元の
世界にいた妹分の女性と重ねてしまい、懐かしさか
らか思わず名を教えてしまう。
ここまでなら夜叉丸の名はそう広がることもなかっ
であろう。
夜叉丸の不幸は、その少女が彼の言葉を村人たちに
伝える際に、 次のように付け加えてしまったことで
ある。
「夜叉丸っていうシノビの人が言ってたの!」
そのやり取りを離れた場所で聞いていた夜叉丸は、
なんとも言えない表情を一瞬浮かべたが、ただ黙っ
て村を襲う驚異を払うという任務へと向かい、これ
を完遂したという。
その後「夜叉丸」の名は、元々その存在が噂になっ
ていこともあって、グランゼリア中に一気に広がっ
ていった。
彼のシノビとしての矜持とは裏腹に。
破神大戦期に活躍した異界メグロナ出身の英雄と言
えば、夜叉丸以外に剣士シンもいるが、2人は同じ
魔獣を追っていただけあって、定期的に連絡を取り
合っていたとされている。
ある時、シンが1匹の犬に対してまるで苦労をねぎ
らうかのように、優しくその身体を撫でていた。
周囲の者が飼っている犬かと聞いたが、彼は違うと
答えた。
「これは、知り合いが俺の元に寄越した犬だ。手紙
を届けてくれたのだ」
その犬は夜叉丸が手懐けて訓練したもので、その後
もシンは様々な動物、鳥などから彼からの手紙を受
け取っていたとされている。
夜叉丸とシンは必要以上の馴れ合いはしなかったが
それぞれの腕は信用しており、魔獣討伐などで人手
が必要な時は互いに協力を依頼したという。
このように良好な関係を築いていたとされる両者だ
が、一度だけ喧嘩をしたことがあったという。
それはある魔獣討伐の任務を2人で終え、 報酬を分
け合う際に起きたことであった。
その時のシンは珍しく懐に余裕があり、つい「今回
の報酬はいらない」と告げた。
だが、そのことが夜叉丸の逆鱗に触れてしまう。
「ふざけるな⋯!貴様は報酬を受取るに相応しい仕
事をした。そう俺は評価している。
その評価を踏みにじるつもりか⋯!」
その剣幕にはシンも驚き、慌てて謝って報酬を受け
取ったとされている。
「俺としたことが、シノビの任務達成の執念、そし
て報酬へのこだわりを忘れていた。
約束通りに報酬を受け取る、そしてそれを仲間内で
正当に分ける。それは夜叉丸⋯いや、シノビたちに
とって、何があっても変えてはならぬ、絶対的な掟
なのであろうな⋯」
破神大戦ではグランゼリア各地に現れ、神出鬼没の
活躍を見せた夜叉丸だが、大戦終結後の彼の動向は
よく分かっていない。
戦いがなくなったため、元来のシノビのように影に
徹して活動を続けた、というのが定説であるが、グ
ランゼリア以外の異界に向かった、という噂も存在
してる。
ともあれ、人々の前に現れなくなった夜叉丸の存在
は、荒廃したグランゼリアの復興を目指す人々の間
でしばらくは忘れ去られていた。
だが、「夜叉丸」の名前は思わぬ形で再び脚光を浴
びることになる。
『シノビ旋風録YASHAMARU』という物語が
発表されたのだ。
その内容は、夜叉丸を主人公としながらも大胆な脚
色が加えられた一大活劇で、子供たちに大人気を博
し、グランゼリアにおいてー大シノビブームを巻き
起こした。
そのことに対して、夜叉丸本人がどのような思いを
抱いていたかは、これまで不明であった。
だが近年、『シノビ旋風録YASHAMARU』の
著者アーネルの手記が発見され、そこには夜叉丸と
出会っていたことが記されていた。
それによれば、夜叉丸がアーネルの前に現れたのは
『シノビ旋風録YASHAMARU』が人気となり
続巻の原稿を執筆していたある深夜のことだったと
いう。
その夜、いつも通りに原稿と格闘していたアーネル
は、一息つこうと机の上のコーヒーカップを手にし
ようとした。
だがその時、彼は突如背後より何者かに押さえつけ
られて、身動きが取れなくなってしまう。
「その作品を書くのはやめろ⋯迷惑だ」
直前まで人の気配などまったく感じなかったアーネ
ルはパニックになりかけるが、その言葉を聞いて逆
に冷静さを取り戻し、そして確信する。
自分を背後から押さえつけているのは、 "あの"夜叉
丸本人であるということを。
彼とて作品を発表した時から、このようなことが起
こるのではないかとある程度覚悟をしていたのだ。
「⋯できません。たとえ、夜叉丸さん本人に言われ
たとしても」
「生命を取る、と言ってもか⋯?」
「子供たちがボクの描く夜叉丸の活躍を心待ちにし
ている以上、 なんと言われてもやめることはできま
せん」
その言葉に対し、アーネルを押さえつけている者は
嘲るように言葉を続けた。
「フンッ、あんな嘘だらけの話を子供に伝えて何に
なる?」
「⋯勇気づけることができます。
グランゼリアでは、破神大戦で親を亡くしたり、家
を失ったりして貧困にあえぐ子供たちが、まだまだ
たくさんいます。
そんな子供たちには⋯たとえ嘘でもなんでも、憧れ
が抱けるような、 勇気をくれるような英雄が必要な
んです」
アーネルの言葉に、彼を押さえつけている者より嘲
るような感じが消える。
そして、代わりに何か考えているような沈黙がしば
らく流れた。
そんな中、彼の部屋の扉が軽くノックされる。
それは、隣室に控えていた書籍編集担当によるもの
であった。
「来てはいけない!」⋯アーネルがそう叫ぼうとし
た瞬間、彼を押さえつけていた力がふっと消える。
勢いよく振り返るアーネルだったが、そこにはすで
に誰もおらず、目の前には扉を開けてこちらを見つ
める編集者がいるだけであった。
その後、アーネルは『シノビ旋風録YASHAMA
RU』の続巻の原稿を完成させ、それを出版所があ
る街まで船で送った。
だが、その船は運悪く途中で嵐に遭って沈没。原稿
も紛失したとの連絡を受ける。
落ち込むアーネルだったが、しばらくしてなくなっ
たはずの原稿がなぜか出版所に届いている、という
知らせが入った。
驚きつつも、アーネルには原稿を届けた者が誰なの
か、なんとなくだが分かった。
そしてさらに数日後、 彼の元に差出人のない一通の
手紙が届く。
そこには、次のように書かれていたという。
「シノビの道は、名を捨てる道。
名を成す道ではない。
成り行きとはいえ、かの大戦で自分の名が広まった
ことは、俺にとって不運以外のなにものでもない。
⋯だが、もし広まってしまった俺の名が、この世界
の子供たちを勇気づける役に立っているのならば
⋯こういう不運も時には悪くない」