ルークのメモリー
プロフィール
メモリ一
1話
私の家は、没落寸前の貴族だった。
代々騎士の家系で、女児として生まれた私も、男子と同じように厳しく育てられた。
男の養子をとる事も出来ただろうが、私の立場や、早くに病死した母を深く愛していた事もあり、父は男手一つで私を育ててくれた。
父の期待に応えるためにも、私は厳しい訓練に耐え、やがて騎士になった。
「最後まで誇り高くいろ、生涯を捧げるべき主君に忠誠を誓え。 それこそ騎士の誉れ」
そう説いた父の教えを胸に。
2話
最初の主君は、 中級貴族の旦那様だった。
強欲で傲慢な男だったが、 騎士として任命されたからには役目を果たそうと思った。
しかし彼の悪政に耐え切れなくなった市民による暴動で一一彼は死んでしまった。
ご息女様の避難を命じられ、彼の傍を離れてしまった間の事だった。
……情けない。
私は主君を護れなかった。
次の主君は上級貴族の御曹司だった。
二度と同じ過ちは繰り返すまい……そう誓い、私は彼のために尽くした。
けれども、私はまた護れなかった……。
一一彼を死なせてしまった。
3話
二番目の主君……跡目争いの真っ只中にいた彼は 命を狙われていた。
私の他にも何人か騎士はいたが、その中に暗殺者が紛れ込んでいて……
私以外の護衛は全員殺されてしまった。
私は主君を護るために単身敵に挑んだ。
刺し違いてでも止めてみせる!
騎士の本懐を遂げられるなら、 私は死んでも構わない……!
主君さえ無事なら、それで……。
しかし結局、 私はまた護れなかった。
それどころか、私は譲られた。
相打ち覚悟の私を生かすため、彼は自ら白刃の下に身を晒し……
——死んでしまった。
何故だ……。
何故、 私が譲られる……。
騎士は主君の守護者であるべきなのに……
私は、その役目を何一つ全う出来ていない!
それどころか、私に関わった者は皆……
死んでしまう。
4話
それから、私は色んな主君に仕えた。
ここで歩みを止めてはいけないと思ったから。
あえて危険な任務にもたくさんついた。
しかし私が仕えると、その主君に死が訪れる。
護り切れず、死んでしまう……。
……いつしか私は死神と呼ばれるようになった。
似合いの言葉だと思った。
最初の主君も、その次の主君も、私は死なせてしまったのだから。
誇り高い騎士である事が私の目標だったが、このまま騎士であり続ければ、また誰かを不幸にするだけ。
ならばいっその事騎士である事を捨てて、 生涯孤独に生きよう……。
そう決意し始めた頃、私の元に幼い令嬢が訪ねてきた。彼女は言った、私の騎士になって下さい一一と。
5話
私は死を招く……きっと君を不幸にする。
そう、一度は断ったのだが……
「あなたは強いから死なないだけ、現にわたしは生きている」
そう言われ、私はようやく思い出した。
この子はあの時の……最初の主君のご息女様。
そうか……私にも、 護れたものがあった。
いつも救えなかった数ばかり数えて、他の事は一切目を向けなかった……。
救った数も確かにあった筈なのに。
もし許されるなら……
私はもう一度、騎士として誓いを立てよう。
この子の未来だけは譲り抜くと。
それから数年を共に過ごしたある日の事……
町で暴動が起こった。
私は彼女を逃がすため、迎えの馬車まで護衛した。
6話
彼女が馬車に乗った、 その刹那——
馬車が爆発した。
木片が、火の粉が、 頬を擦った。
私はすぐに炎の中に腕を突っ込んだ。
助けないと、あの子を……。
私を信じてくれたあの心優しい少女を……!
しかし炎は止まらず全てを飲み込んでいった。
残骸すら渡さないように——強く。
連れていくな…… !
死の運命が私の傍らにあるのなら、私を連れていけ!
私が何度だって死んでやる!
だから彼女だけは……!
腕が焼け落ちる程に熱かった。
だが心は逆に冷えていき……
炎が完全に消えた時、私は腕の中の黒い塊を縋るよ うにかき抱いた。
目の前が真っ暗になった。
ナニカが、私の中から消えた……
——気配がした。
7話
後で知った事だが、 あの爆発は私を狙ったものだった。
私に恨みを持つ者が馬車に細工をした。
あの子は、巻き込まれただけだった!
私と関わったばかりに、 あの子は……
死んだんだ !
ずっと……騎士の誇りだけを胸に歩み続けてきたが……護るどころか、奪ってばかりだ。
その時だった……強い光が闇を引き裂いた。
誰かが、 私に手を伸ばしてきた。
だが私にそれをとる資格はない。
私と関われば、この手の主も……。
そう思った時……
小さな手が私の背を押した——ような気がした。
「あなたが生きる事で繋がる未来がある。……その事を忘れないで」
ーーそう、囁いて
ああ、そうか……
これは、彼女から私への最後の君命……
ならば応えなくては。
私は——騎士なのだから
私はまだ死ねない。
生きてなすべき事があると知ったから……。
「皆が繋いでくれたこの命で、 皆の未来を護らんがため……」
この剣を捧げよう、騎士の、『私』の誇りにかけて……!
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